刀鍛冶ですが、何故かボス討伐しています   作:そういうとこだぞ、ムラマサ!

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これは儂(オレ)のとある知り合いの言葉だ。


「『平穏』こそが至高!」


大金持ちに玉の輿して、大豪邸に住みたい……なんてもんには興味無し。波乱万丈なんてお断り。

そこそこの人生、生活、自由な時間。そんな平凡な毎日を穏やかに暮らしたい。


「冒険者なんて収入は不安定だし、昼夜問わず危険なダンジョンに命と人生を危険にさらすなんて、ブラックもいいとこだわ!」


だからソイツは受付嬢になる道を迷うことなく選んだ。だが、何故『受付嬢』なのか?


「だって()()()よ!冒険者がダンジョンに行ってる間は、可愛い制服着て、ギルドのクエストカウンターでニコニコ笑って、事務作業をして、定時になったら帰れる!コレこそ私が求めている平穏な日々!受付嬢こそ、私の天職なのよ!!」


そんなことを、アイツと出会った一年前に聞かされた。

共にダンジョンボスを攻略した帰り道で




プロローグ

 

 

 

現在 とある屋敷の工房

 

 

カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!

 

「………」

 

カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!

 

鉄を打ち続ける。ただ黙って

 

この時間は刀鍛冶にとって重要な時間であり、彼にとっては至高の時間でもある。

 

『素延べ造り』、造り込みでできた鉄を細長い四角に伸ばし、反り以外の刀の形を決める作業のことだ。

 

この作業の重要度は刀剣を打つにあたって、他の作業よりも抜きん出て高く、ここで少しでも調整を誤ればできるものはなまくらのみとなってしまう。

 

だが、彼はこの作業を何度も熟してきた。それも、幼い子供の頃から。そして何時しか、一族の中でも随一の天才と呼ばれるようになった。

 

カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!

 

「…………」

 

目は真っ直ぐ自分が打ってる鉄へと向けていた。

 

彼が目指すのはただ1つ。

 

そこに辿り着くことこそが、彼の願望であり、とある男との誓いだからだ。

 

赤に近いオレンジ色の短髪、上半身裸で、左腕には紅い射籠手の意匠。

 

彼の名前は、『ムラマサ・ソーディアス』

 

由緒ある鍛冶職人の一族『ソーディアス家』の若き当主であり、兼冒険者でもある。

 

「まだだ……(オレ)の目指す究極はこんなもんじゃねぇ……もっと……!」

 

カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!

 

 

 

 

翌日

 

 

「ハァ~……まただ……また辿り着けなかった……なんだ、何が足りねぇんだ?(オレ)の腕……もっと根本的なもんか……」

 

黒いライトアーマーの上に白色の袴を着たムラマサは大都市イフールの街中をブツブツ言いながら歩いていた。

 

彼の背中には綺麗に布に包まれた細長い棒状の物が4本背負っていた。

 

そんな彼を見かけた街中の人間は、彼に道を譲りながらヒソヒソ話していた。

 

しかしムラマサはそんなことつゆも気にせず、歩いていた。

 

そして街の人間たちも、別に彼を嫌っているわけではない。

 

 

「おい、ムラマサさんだぞ!」

 

 

「また名刀名剣が出来たんだな!」

 

 

「良いな〜、俺もいつかムラマサさんの剣を持ってみたいぜ……」

 

 

「お前みたいなペーペーには一生無理だよ。そうでなくてもあの人の剣は、短剣でもかなり値が付くんだぜ」

 

 

「でもそこらの鍛冶師のもんよりスゲー切れ味で、しかも長持ちするんだろ?」

 

 

「あの人の剣で一級冒険者になれた冒険者の話を聞いたことあるぜ!」

 

 

「あの『白銀』も、ムラマサさんに武器のメンテナンスを頼んでるらしいぜ。しかも、冒険者の腕も高いらしい」

 

 

「そうそう!白銀のリーダーや、ギルドマスターが何度も頼んでるらしいな、『白銀に入ってくれ』って。でもそのたびに断ってるって」

 

 

「コレはホントに、噂だが……あの『処刑人』とも交流があるらしい」

 

「何それ、俺初耳っ!?」

 

 

「それなら僕も聞いたことある。確か過去に出現したダンジョンボスを一緒に討伐したとか……」

 

 

「マジかよっ!?」

 

 

「あくまで噂だがな……」

 

 

 

『大都市イフール』は『ヘルカシア大陸』の中でも大陸随一の都市で、数多くのクエスト受注所がある。

 

ムラマサはその中でも特に最大級の規模と受注数を誇る『イフール・カウンター』へと向かっていた。彼の仕事のほとんどはそこから受けており、彼が背中にさげている刀剣たちも、今回受けた依頼の品物なのだ。

 

だが、正直に言って、ムラマサはあまり行く気はなかった。こうして移動する時間も、刀作りの時間にあてたかったのだ。

 

そして、もう一つ。それは――――

 

「この時間帯は……混んでるだろうな~……」

 

今頃だと、イフール・カウンターはどこも冒険者達のクエスト受注でいっぱい。つまり、()()の機嫌が最高潮に悪いという事だ。

 

 

 

周囲の建物より一際大きく、正面看板には【イフール・カウンター】とある建物。ここが目的の場所だ。

 

そしてその扉を開けると案の定、中はクエスト受注待ちの冒険者達でいっぱいだった。

 

ある程度覚悟していたムラマサは、いつものように入口近くある棚から番号札を取り、少し離れた場所の飲食スペースへと向かった。

 

そこでは受注待ちの冒険者達に、軽く料理や飲み物を出すところで、ムラマサはいつも通り、カウンター席の端っこへと座った。

 

新たに客が来たことを確認したカウンター内のマスターがムラマサの元へと向かった。

 

「いらっしゃいませ。おや、ムラマサ様でしたか。また刀剣が出来たのですね?」

 

「あぁ、だがしばらく時間が掛かりそうだからな。少し暇つぶしさせてもらうぞ。いつもの頼む」

 

注文を受けて、マスターは棚からムラマサ用に用意してある果実酒をコップに注ぐ。

 

「かの有名な()()()()()のムラマサ様なら、幾ら居られても、構いませんよ」

 

「む……おい亭主。何度も言ってるが、(オレ)はただの刀鍛冶だ。冒険者なんてなった覚えはねぇぞ」

 

このやり取り、一体何度目になるのやら。もはや飽き飽きしているムラマサ。

 

「ですがムラマサ様は何度かダンジョンにソロで行かれることが度々ありますよね。しかもボス討伐もご経験があるとか?」

 

「いや、それは……」

 

鍛刀するうえで、材料は重要だ。名剣名刀を生み出すためには、妥協は絶対許さない。

 

ほとんどの鍛冶職人たちは、ギルドに依頼し、依頼金を支払う。それを冒険者達がダンジョン等で調達し、ギルドに持ち帰る。その後報奨金と引き換えに材料を渡し、それから職人たちの元へと行く。

 

だが、必ずお目当ての物が直ぐに手に入るとは限らない。

 

場合によっては状態が悪かったり、想定した物とは違ってたりする。

 

なのでムラマサは、たまに自らダンジョンに潜り、自分の目で材料を探し、調達するのだ。

 

「ムラマサ様が初めて単独でダンジョンに入り、素材を大量に持ち帰った時は皆驚きましたよ。()()()が、()()()()()()()()に、()()でダンジョンを生きて帰って来るなんて」

 

「後が面倒だったがな。事実確認や、無理矢理冒険者ライセンスを取らされたり……」

 

当初は誰か護衛がいて、ムラマサ本人がウソを付いているんじゃないかと。

 

だが、その後に一級冒険者パーティとの模擬戦で、その噂は無くなった。

 

「模擬戦とはいえ、まさかあの()()()()()()()とは」

 

「たまたまだ」

 

「たまたまで選りすぐりの冒険者で構成された精鋭パーティー『白銀の剣』に完勝なんて出来ませんよ」

 

「おかけでその後の勧誘がしつこかったよ……」

 

白銀のリーダーやギルドマスター直々の勧誘。今思い出しても、実に疲れる日々だった。

 

「次の方、どうぞ!!」

 

そこに一際ドスのきいた声で、冒険者を呼び出している受付嬢が1人。

 

振り乱れている長い黒髪を直す暇もなく、一見笑顔だが、よく見るとギリギリ怒りを表に出さないように保っているようだ。例えるなら、決壊寸前のダム。

 

「あ~、大変そうだな……」

 

「受付嬢たちですか?そうですね、半年ほど前に発見されたダンジョン、『ベルフラ地下遺跡』の攻略が思うように進んでいないようですからね」

 

そこに別の客からのオーダーが入り、マスターはそちらへと向かった。

 

残されたムラマサは果実酒を飲み干し、先ほどの受付嬢の方へと顔を向ける。

 

ギリギリの笑顔で冒険者の対応をする受付嬢『アリナ・クローバー』。ムラマサがこの都市に居着いた一年前からの知り合いで、()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

「あの様子だと、また残業続きのようだな……」

 

コレはまたいつか夜食を作らればならないな、そう思うムラマサ。

 

 

 

アリナside

 

 

「次の方、どうぞ!!」

 

せっかくの長く綺麗な黒髪はところどころ手入れの行き届きのなさを感じさせながら、受付嬢『アリナ・クローバー』のほぼ怒号の大声が、冒険者たちの頭上を駆け抜ける。

 

無論、怒っているわけではない。多少は……

 

だが、こうでもしないと仕事が終わらないのだ。

 

「(早くしなさいよ、このノロマ共がぁーー!!)」

 

クエスト受注所の中で最大級の受注数を誇るイフール・カウンターは、まるで戦場のような冒険者の数と騒がしさでいっぱいいっぱい。

 

そして、笑顔の裏では、アリナの怒りもいっぱいいっぱいなのだ。

 

「やっと、俺の番か」

 

そんな大混雑の中で、一人の冒険者がゆっくり立ち上がり、アリナの元へと向かって来た。

 

全身を包むような鉄製の重鎧(ヘビーアーマー)と背中に巨大な戦斧(バトルアックス)。それだけで歴戦の証を思わせる。

 

「おい、アレって……」

 

「“暴刃のガンズ”だ!」

 

「ガンズって、あの白銀のっ!?」

 

彼の姿に、他の冒険者たちはざわめつく。ガンズと呼ばれる冒険者は有名なようで、皆、彼の方へと注目する。

 

が―――――

 

「(早くしなさいよ、このウスノロっ!!)」

 

アリナにとってはどうでもいい。

 

彼がギルド選りすぐりの冒険者だとしても、彼の武器が巨大迷宮(ダンジョン)でしか手に入らない最高ランクの武器“遺物武器(レリックアルマ)”だろうと

 

 

サッサと

 

 

手続きをさせろ!

 

 

後が詰まってんだよ!!

 

 

この鎧バカがぁぁぁーーー!!

 

 

それだけだった。

 

アリナにとってはどの冒険者も同じ。ガンズなんて、ただの“自慢したがりのおっさん”としか思っていない。

 

「ようやく俺の番か」

 

 

 

「そうだよ。だからチンタラしてんじゃねぇよ!!」

 

 

 

なんて言葉は胸の奥に仕舞って、営業スマイルで対応する。

 

「いらっしゃいませ、受注するクエストをお選びください」

 

「ベルフラ地下遺跡の二層階層(フロア)ボス、『ヘルフレイムドラゴン』討伐だ」

 

彼のクエストを聞いた他の冒険者たちはまたざわめつく。

 

「ついに白銀がボス攻略に乗り出したぞ!」

 

「攻略に王手か……!」

 

「あのガンズにぶった斬れないボスなんてねぇよ!」

 

「フフ…‥ずいぶん期待されているようだな……」

 

冒険者たちに言葉に、得意げになるガンズ。

 

しかしアリナの方は

 

「遅いんだよ、攻略するのが……」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「いえ、なんでも(危ない危ない……ここで面倒ごとになったら、即クビ……落ち着け、落ち着け……)」

 

アリナは素早くクエスト受注書を用意し、ガンズの前に出した。

 

「では、四人一人組(パーティー)での参加なら二級、単独(ソロ)での参加なら一級ライセンスカードが必要なので、ご提示と受注書へのサインをお願いします」

 

いつものお決まり定型文を早口で吐き出し、受注書を突きだす。

 

「(さぁ、サッサとサインして攻略に行きなさいよ!こっちはまだ仕事が残ってんのよ!)」

 

そんな彼女の願いを知らずに、ガンズはフン!と、自慢げに鼻を鳴らし、サイン用の羽根ペンを持とうとしない。

 

「俺は()()白銀の剣だぞ?受付嬢をしているなら、俺のライセンスなど知らないはずないだろう?」

 

「(あぁ、もう!!)もちろん存じております。しかし、どなたであろうとも、冒険者の皆様は常に危険と隣合わせであることも。だからこそ、間違いがないように、ライセンスのご提示を」

 

グッと笑顔を保ち、冷静に対応する。

 

ガンズの事は当然知っている。

 

かつて大陸を制し栄えていながら、一夜にして滅んだ“先人”が遺した“遺物(レリック)”。そして先人たちの高い技術で造られた遺物武器(レリックアルマ)は、攻撃力や耐久力、どれにおいても最高クラスになる。しかも、()()()()()()()打ち直しは出来ない。手に入れるには、ダンジョンの奥深く。ボス攻略した者が手に出来る。

 

ガンズもこの遺物武器(レリックアルマ)のバトルアックスでいくつものボスを討ち取った前衛役(トップアタッカー)。ライセンスは二級。

 

「だが俺は―――」

 

「ライセンスのご提示を」

 

対応の変わらないアリナに、ならばとガンズは鉄兜を取り素顔を見せる。そこには、濃い顎髭を蓄えた中年位の男性が

 

これでどうかと思ったが

 

「ライセンスのご提示を」

 

「いや、俺は―――」

 

「ライセンスのご提示を」

 

「白銀の―――」

 

「ライセンスのご提示を」

 

何度言っても対応を変えないアリナに苛つくガンズ。だがそれ以上に苛ついているのが、彼の目の前にいる受付嬢であるのは知らないだろう。

 

「(あぁ〜〜〜〜!!サッサとライセンス出しなさいよ!!ライセンス出すのは決まりなのはあんたも知ってるでしょうがっ!?後が詰まってんだから、早くしてよ、もぉぉーーー!!)」

 

 

「ハァ~……おい受付嬢、新人だから知らんだろうが、俺は―――」

 

「いい加減にしろ、ガンズ」

 

「あぁ?……って、ムラマサ」

 

突然肩を掴まれ、振り向くとそこにはムラマサの姿が

 

「彼女は何も間違った事はしてないぞ。そもそもライセンス提示は俺たち冒険者の義務だろう?もし、手続きを疎かにして、冒険者が命を落としたらどうなる?実力不足のソイツのせいかもしれない。だが、そもそも碌な仕事をしなかった受付嬢の責任にもなるんだぞ?それを防ぐために、彼女たちは必死に自分たちの仕事をしてる。お前の勝手な独りよがりで、彼女の仕事を邪魔をするな」

 

「………!」

 

何か言い返そうとするガンズだが、周囲の冒険者たちの目線と、目の前のムラマサ、背後のアリナに耐えきれず、ガンズは素早くライセンスをアリナに出し、受注書にサインをする

 

「はい、確かに確認しました。それでは、行ってらっしゃいませ」

 

「あ、あぁ……」

 

それからガンズは最初と違い、そそくさとカウンターをあとにした。

 

「あのガンズが……」

 

「あれが生きる伝説の()()()()()()()の『ムラマサ・ソーディアス』か……」

 

「かっけぇー、あのガンズに堂々と……」

 

「オレ、惚れたかも……」

 

「「えっ…」」

 

 

 

それから暫くして、ようやく順番になったムラマサは、アリナの元へと向かった。

 

「いらっしゃいませ」

 

「先日頼まれた剣が出来たから、持ってきた」

 

「はい、ではご確認しますね」

 

そして、ムラマサから受けった刀剣をそれぞれ確認し、依頼完了の書類をムラマサの前に出す。

 

ムラマサはいつものように、必要事項にサインをする。そこにアリナが周囲に聞こえないようにムラマサにこっそり話しかけた。

 

「ありがとう。おかげで仕事が少しは進んだ」

 

「気にするな。あのままだとこっちの順番が遅くなるかと思ったからな。それと、お前にはいつも感謝してるからな」

 

「そりゃどーも」

 

サインを終えたムラマサはアリナに書類を渡し、彼女から依頼金を受け取った。

 

「今夜もか?」

 

「確実に……」

 

それは残業確実、ということ。なら

 

「夕方頃にまた来る」

 

 

 

 

ムラマサがカウンターをあとにし、アリナは引き続き仕事を続けていた。

 

「次の方、どうぞーー!」

 

 

『彼女は何も間違った事はしてないぞ』

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

 

『そもそも碌な仕事をしなかった受付嬢の責任にもなるんだぞ?』

 

 

「それでは、ライセンスのご提示を」

 

 

『彼女の仕事を邪魔をするな』

 

 

「それでは、行ってらっしゃいませ」

 

 

『お前にはいつも感謝してるからな』

 

 

「……ハァ~、勘違いしそうになるわよ……ムラマサのバカ……」

 

 

アリナSide終了

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

ムラマサ宅 キッチン

 

 

イフール・カウンターでの用事を終えたムラマサは、市場で買い物をし、帰宅後にまっすぐキッチンへと向かった。

 

調理場にドサッと市場で買い揃えた食材を並べる。

 

業務用の大きな食パンに、ガンロックバードの肉、シャキリンキャベツ、新鮮なビビリンチキンの卵、その他調味料諸々。

 

「よし、それじゃ始めるか」

 

そう言うムラマサは、お気に入りのエプロンを付け、気合を入れる。

 

「まずは食パンを……」

 

 

食パンを一人分の薄さに切り、その状態でオーブンで焼く。

 

 

その間に、シャキシャキ感が普通より長ーく保つシャキリンキャベツを千切りに。

 

 

岩のような硬い肌を持ちながら、旨味をタップリ含んでいるガンロックバードの肉を一口サイズにぶつ切り。

 

それをにんにく、生姜、下味用の醤油、塩、胡椒、酒を混ぜたものに鶏肉を入れ、よく揉み、5分放置。

 

 

「さて、それじゃ揚げる準備でもするか―――」

 

 

漬け込んだ鶏肉は調味料をよくきり、ちょっとした音でもすぐ気絶する位ビビリのビビリンチキンの卵の溶き卵に肉を入れ、馴染ませるようにまぜる。

 

 

同量の小麦粉、片栗粉にまぶしたら、160〜180℃位の油で一分半ほど揚げる。その後オーブン油吸収の良い紙にのせ、一分ほど予熱で中に火を通す。

 

 

ペシッ ペシッ

 

「このくらいか……」

 

 

お玉などでからあげに軽く亀裂を入れ、同じ油で揚げる。これを2回。

 

 

ジュウゥ〜〜……

 

「よしよし…いい感じだな」

 

 

最後に200℃の高温油で40秒ほど一気に揚げる。竹串を刺し、透明な汁が出れば唐揚げはOK

 

 

焼けたパンに千切りにしたキャベツ、上に唐揚げ、肉屋の店主からオマケで貰ったソースをかけ、上にパンをのせる。

 

 

薄い調理用の布をかけ、その上にまな板を載せて、10分ほど具材同士を馴染ませる。最後にパンを半分に切って

 

 

「唐揚げサンドの出来上がりっと……」

 

ふと外を見ると、いい具合に日が落ちかけていた。

 

箱にサンドイッチをタップリ詰め、丁寧に箱を包んで、ムラマサは再びイフール・カウンターへと向かった。

 

 

 

すっかり夕方になった頃、冒険者たちはそれぞれ宿や自宅への帰路に着き、カウンターの受付嬢の殆どは帰り支度をしていた。

 

 

ただ一人を除いては

 

 

そしてムラマサは、イフール・カウンターの裏口へとたどり着き、そこで暫く待つ。

 

すると。裏口がギィー…とゆっくり開き、中からぐったりとしたアリナが出てきた。

 

そんな彼女に包んだ弁当箱と水筒を手渡す。

 

「ほら、夜食だ」

 

「ありがとう……」

 

「もうすぐ地下遺跡は攻略される。あと少しの辛抱だぞ?」

 

「わかってるわよ……でも、遅すぎるのよ」

 

「まぁ、俺も話に聞く程度だが、今回のフロアボスはなかなか厄介らしい――――」

 

「それをなんとかするのが冒険者でしょうがーーーっ!!」

 

ガァァァーーーー!と、フロアボスのような遠吠えをあげるアリナ。もう昼間のような受付嬢の姿はそこにはなかった。

 

「えっと……まぁ、アイツらも頑張ってんだ。だから、な?」

 

「……えぇ、わかってるわよ。わかってる……夜食、ありがとうね」

 

「あぁ、弁当は明日取りに行くから」

 

それだけ言い残し、ムラマサは自宅へと向かった。アリナも残業へと戻って行った。その疲れ果てた後ろ姿を見て 

 

「……大丈夫だ。ボスはもうすぐ討伐される。アイツが出張る事はない……無いはずだよな?」

 

自分に言い聞かせるように、何処かにいるか分からない神とやらに願い、ムラマサは自宅へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「号外、号外ぃーー!!遂に『ベルフラ地下遺跡』攻略ぅーー!フロアボスを討伐したのは、あの“()()()”ーー!!白銀を壊滅の危機を救っただけじゃなく、フロアボスを瞬殺ーー!!」

「何してんだ、あのアリナ(馬鹿)は……」

 

 

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