刀鍛冶ですが、何故かボス討伐しています 作:そういうとこだぞ、ムラマサ!
『スキル』は魔法とは違う。魔力を使うものもあれば、全く違う別の力で、全ての人々に潜在的に備わる唯一無二のもの。
魔力と知識さえあれば誰でも使える魔法とはちがう。
ムラマサのものも、最初は魔法と思われていた。それは当人も。
しかし、それを
「違う。それは魔法でもスキルでもない。それは
ん、今なんて言ったんだ?
「いずれ分かる。そして、お前はいつか選ぶ事になるだろう。家の後を継ぎ、刀鍛冶となるか、それとも――――――」
「それにしても、あんたホントにしつこいわね?」
「そうだろう、コイツは隙あらばパーティに誘って来るぞ。
お昼ご飯とデザートで満腹気味になったアリナとムラマサは紅茶を飲み、一息ついていた。
そして、アリナによって地面に座らされ昼食を食べてるジェイドに冷ややかな視線を送っていた。
「ウグっ!で、でもなんと言われようと構いません!俺は諦めないと決めたらしつこいんだ!伊達にギルド最強の
あまりのウザさに足が出てしまったアリナに、すぐさま距離を開けるジェイド。
「乱暴だな……モグモグ……そう言えば、お二人は何時スキルに目覚めたんですか?」
ムラマサ特製スコーン(4個目)をかじりながら、ジェイドはアリナとムラマサに聞いた。
「教えない」
「さぁな、気付いたらあった」
「そんな大雑把な。スキルが発芽出来なくて悩んでる”スキル難民“の人たちに恨まれますよ」
そもそもスキルは、“全ての人々が生まれつき備わってる”というのが通説だ。
しかし、その発芽条件は未だに不明。意図的に発芽させることは現状不可能。その性質を決定付けるものも、何を媒体にしているのかも不明。
過去、現在に至るまで、多くの研究者たちが調べてるが、結果は芳しくない。
「知らないわよ、そんなの。だいたいスキルが発芽するかどうかなんて、ほぼ運みたいなもんでしょ」
「まぁ、たしかに……」
素っ気なく答えられ、仕方なく食べかけ残ったスコーンを口に放り込む。
「ゴックン……でも、だからこそそんな力があって受付嬢や刀鍛冶をやるなんてもったいない。本当に」
「そんなの私たちの勝手でしょ」
そう言いながら、アリナは食べ終わった自分の昼食の後片付けをする。隣のムラマサも綺麗に完食されたデザートセットを片付けていた。
「ムラマサさん!あなたの力だって
「そこまでだ、小僧」
風呂敷にデザートセットを片付け終えたムラマサは、ゆっくりジェイドの方へと顔を向けた。
「アリナも言っただろ。その力を活かすも殺す
「………」
まっすぐな目と言葉を前に、ジェイドは口を閉じてしまった。その間にムラマサとアリナはその場を去って行った。
「じゃあ、あなたたちは何がしたいんですか………」
「ふぅ~、これで懲りてくれないかしらね?」
「さぁな……」
「………ところで午後からあんたもギルドに来るの?」
「あぁ、ギルドの調理師たちに新メニューの詳しい作り方を教えて、それと素材調達依頼を頼みにな……」
「そう……」
「…………」
会話が途切れ、しばし沈黙の時が流れた。
それから、イフール・カウンターの前まで続いたが、イフール・カウンターの入口前でアリナが破った。
「そういえば、あんたにスキルの使い方を教えてくれた人がいたんだっけ」
「あぁ………アイツがいたからこそ今の
「――――と言うことで、ここで10分ほど寝かせる。そうしたら中まで味が浸透していく。そして、時間が経ったものがコレになる。ここから―――――」
ギルドの飲食コーナーの一部を借り、エプロン姿のムラマサが講師となり、職員たちに新メニューの作り方をレクチャーしていた。
それを遠目でチラッと見ながら、アリナは受付窓口で仕事をテキパキ熟していた。
因みにジェイドはアリナに言われた通り、午後からはイフール・カウンターに来なかった。しかしそのため
「あれ、ジェイドさんは?」
「午前中にはいらっしゃいましたよ。お昼からは見ていませんね」
「えぇ〜、せっかく
こんな若手冒険者や
「ちょっと、ジェイド様はいるかしら?」
「申し訳ありません。お昼からは見ていませんね」
「ちょっとなによ!ジェイド様がいるって聞いて、せっかくオシャレしたのに!!」
こんな女性が
ジェイド目当ての人たちがまだまだイフール・カウンターに来ていて、その相手をするたびに、事務処理が止まっていた。
「(ホント、居ても居なくても私の邪魔して……やっぱり潰しておくべきだったか……)」
なんて物騒な事を考えていた時、突如として怒声がギルド内に響いた。
「だからぁ!さっさと出せっつってんだろうが!!」
ダンッ!と続いて机を思いっきり殴る音が。
連続で響く激しい音は、あっという間にカウンター内を静まりかえらせた。
原因は、アリナの隣の窓口。アリナの後輩の少女の前に、背の高い如何にもDQNな冒険者が怒鳴っていた。
「俺は一級冒険者さまだぞ!!だからさっさとだせっつったら出せよ!!」
「(げ、アイツは……)」
横顔に赤い入れ墨をした冒険者、数少ない一級冒険者の1人だが、気性が荒く癇癪持ちで、全ての受付嬢が毛嫌いする悪質クレーマー、『スレイ・ゴースト』である。
「で、ですが……そんなクエスト、こちらでも把握「はぁ!?聞こえねぇんだよ!!」ひぃ!?で、ですから、そのようなクエスト、こちらでも把握してなくて……」
スレイの厳つい顔に圧倒され、今にも泣きそうな新人受付嬢『ライラ』。もはや彼女では対処不可能だった。
アリナは素早く周囲を見渡す。1人を除く誰一人として、彼女を助けようとはしなかった。
悪質クレーマーでも、一級ライセンスを持った冒険者だ。下手に仲裁に入ろうとすれば、何をされるか分からない。
「ちょ、ちょっとムラマサさま!」
「離せ、マスター。前々からアイツには一回言ってやりたかったんだよ」
「今は他のカウンターの人もいるんですよ!しかもここであなたまで介入したら、火に樽一杯の油を打ち込む事になりますって!」
飲食コーナーで、マスターに止められてるムラマサが。あれではすぐに助けには来れない。ならば
「いかがなされましたか?」
アリナはすぐさま後輩の元に向かい、2人に声をかけた。
「あ、アリナせんぱぁ〜い」
アリナが声をかけると、ライラは涙目で振り向いた。
それからすぐ目配りで彼女を下がらせ、代わりにスレイの前に出る。
「どうしたもこうもねぇんだよ!隠してねぇで、さっさと“裏クエスト”を出せって言ってんだよ!!」
「(はぁ〜、コレか……)」
彼の言う“裏クエスト”に関するいちゃもんは、受付嬢ならば一度は言われる面倒極まりないクレームの1つ。
「先ほど担当した者が申し上げました通り、”裏クエスト“というものは取り扱っておりません」
「そういう決まり文句はいらねぇんだよ!いいから早く出しやがれ!!」
この様子だと、何を言っても無駄だろう。目的のものが出るまで帰らないといったところだ。
しかし、それは無駄な努力なのだ。
そもそも、”裏クエスト“なるものは
昔から冒険者たちの間に囁かれてる根拠のない言い伝え。
「誰も知らない、見たことがないダンジョンがある」
「普通のダンジョンよりも困難だが、攻略すればかなりのお宝が手に入る」
などと言った噂がある。しかし、それは全くの嘘っぱち。
ギルドも過去何度か調査を行ったが、そのようなダンジョンは影も形もなかったのだ。
その度に冒険者たちに公表しているが、未だにこのような冒険者が裏クエストを求めて受付で騒ぐ事があるのだ。
「知ってんだぜ、裏クエストで出てくる隠しダンジョンには、そこでしか手に入らない”特別な
スレイはアリナにも怒声で威嚇するが、彼女は冷静に対処する。
「冒険者ギルドに集約されてるクエストは、クエストボードに全て開示されております。それ以外は――――」
「口答えすんじゃねぇんだよ!!」
ドン!とカウンターを殴りつけ、スレイはアリナの胸ぐらを掴む。
「冒険者は神様だろうが!いいから言う通りにしやがれ!!」
「(あ〜、一発ぶん殴ろうかしら)」
スレイの恫喝を右から左に流しつつ、この事態を収束する手を模索した。すると
「てめぇ、さっきから俺をナメたような目つきしやがって!」
「(だって、あんたみたいなのは
頭に血が上ったスレイは、躊躇なく拳を振り上げる。
流石に周囲も慌てだし、ムラマサもマスターを引き剥がそうと奮戦していた。
その中、アリナは冷静に言い放つ。
「受付嬢への暴力行為は、冒険者ライセンスの剥奪になりますが」
「知るか!てめぇを一発殴らねぇと気がすまな――――」
「おい」
その時、低い声が割り込み、何者かがスレイの拳を掴んで止めた。
不機嫌に振り向いたスレイはその正体を見て驚いた。
「ジェ、ジェイド・スクライド!?なんで白銀がここに!?」
さすがに同じ一級ライセンスを持つジェイドに、スレイは慌てる。
「これ以上は許せない。スレイ、その手を離せ」
「は、ハッ!ギルドの精鋭がなんだよ!所詮
「え?」
「は?」
アリナの胸ぐらを離したスレイは、代わりにジェイドに殴りかかろうとした。しかしその前に、見覚えのある人物のドロップキックが、彼の顔面にクリーンヒットしたのだ。
スレイはそのまま床に一回転しながら倒れた。
突如のことで思考が追いついていないジェイドだが、アリナは咄嗟に室内の端の方に目を向けた。
そこには、ドロップキックをした者を諌めていたマスターが、ハァ~と頭を抱えていた。
「い、痛てぇ〜、て、てめぇ!何しや「てめぇこそ、何してんだおら!」るっ!?」
ドンッ!とスレイの目の間で仁王立ちする男、ムラマサである。
「ギャーギャー騒ぎやがって!
スレイほどでなくとも、ムラマサの怒声はスレイを圧倒した。
「か、鍛冶屋のくせに!オレ様を誰だと思「黙れ」っ!」
「次に
ギロリと、スレイを睨むムラマサ。近くにいたジェイドも、背筋が凍るような感覚を感じていた。
「す、スレイ。ムラマサさんの言う通りだ。お前の行動は俺たち冒険者の名前に泥を塗るようなことだ。それでも一級冒険者なのか」
「うぐっ……く、クソ!覚えてろよ!」
お決まりの捨て台詞を吐き捨て、スレイは慌ててその場を去って行った。
「さ……さすが一級冒険者たちだ!」
スレイが立ち去ると、カウンター内は歓声でいっぱいになる。
「さすがだぜ!ムラマサさん!」
「よく言ったぞ、ジェイド!」
「きゃあー、ジェイド様ぁ〜!」
「スカッとしたぜ、ムラマサの旦那ぁ!」
「私はヒヤヒヤしましたよ……」
カウンター内にいた冒険者や客たち、受付嬢は、皆ムラマサとジェイドを褒め称える。
そんな中、ジェイドは慌ててアリナの様子を伺った。
「大丈夫か、アリナさん!?」
「えぇ、まぁ……」
心配そうなジェイドの視線をそらしながら、発動しかけていたスキルを解除していた。あと少しジェイドの介入が遅ければ、大注目の中でスキルをお披露目するところだったのだ。
「ったく、冒険者全員
「えぇ、今後は気をつけます。ありがとうございます、お二人共」
職場なので、普段通りに話さず、営業スタイルで礼を言うアリナ。
「ところで白銀さま。
「(ビクンッ!)」
営業スマイルで続いた言葉に、ジェイドは先ほどとはまた違った背筋の冷えを感じた。
「ムラマサさまだけでなく、白銀さまのような方が
ニコリと笑っている、いや、笑った顔をして殺気を放つアリナ。それを分からないジェイドではない。
「い、いや〜、そろそろ帰ろうかな〜って思ってたんですよ!これ以上は迷惑になるから。か、帰りますっ!」
冷や汗ダラダラになりながら、スレイ以上の早さでカウンターを出て行った。
その後ろで、またの御越しを〜と心にもないことを言いながら手をふるアリナ。
「ハァ〜、助けてもらったんだから、少しは良いんじゃねぇか?」
「ムラマサさまも、まだお仕事の途中では?」
アリナの言う通り、飲食コーナーでは、マスターや職員たちが、まだかなと待っていた。
「そうだな……そんじゃ、行くわ」
これ以上は特になんともならないし、言われた通り戻ろうとしたとき、僅かに抵抗を感じた。
エプロンの端を、アリナが指で掴んでいた。
そして、他には聞こえない、しかしムラマサには聞こえるように
「……ありがと、私の代わりに怒ってくれて」
「………おう」
別side
「クソ、クソッ!どいつもこいつも……!」
ホント苛つくぜ、どいつもこいつも俺さまを馬鹿にしやがって!
特にあの受付嬢や刀鍛冶のことを思い出すと、腸が煮えくり返りそうだぜ!!
刀鍛冶なら、大人しく武器でも造ってろよ!なにお料理教室なんてやってやがる!それに冒険者の真似事なんかしやがって、どうせ他のヤツの手柄を横取りした卑怯者だろ。
調子乗りやがって、クソ刀鍛冶がっ!
あの受付嬢だってそうだ。
あの人をゴミのように見る目、悲鳴の一つもあげない。女のくせに生意気なんだよ!
「クソが!やっぱり一発殴らねぇと気がすまねぇ……」
そう思った時だった。
「はぁ~い、危ないですよ〜!」
「すいませんー、道を開けてくださ〜い」
「あ?なんだ」
足を止めると、俺の目の前に荷車に固縛された巨大な岩の像……いや、ゴーレムか?
しかもあのサイズだと、普通のボスじゃねぇ……レイドボスか?
何気なく野次馬に紛れて近くで見ると、どうやら眠ってるらしい。
討伐された魔物は普通霧みたいに霧散して消えるはず。
「なるほどな、武器や武具の素材を得るために、どっかのダンジョンから眠らせて運んでるのか……」
………そうだ、いい事思いついた。
俺さまには最強スキルがある!
これで、俺を馬鹿にした奴らに目にもの見せてやれる!
「は、ハハハ!どいつもこいつも、ぶっ飛ばしてやる!!」
Side Out
「ハァ〜……どうしたらいいんだ……」
大通りの中、ため息をつきながら、しょんぼり肩を落とすジェイド。
原因はもちろんアリナの事だ。
どうにかして、彼女をパーティーに加えたい。”白銀の剣“に与えられた権力を使えば、彼女をパーティーに加えることは出来る。
しかし、それでは意味がない。無理矢理組まされたパーティーほど、脆くて弱いものは無いのだから。
少なくとも、アリナから了承を得られるような条件を出す必要がある。だが、それが分からない。
「見たところ、金や物に釣られる人じゃないみたいだし……」
そうなると、また別の―――――
ズシンッ!!
突如として、大きな何かが揺れ動く音が響いた。しかも1度だけでない。2度、3度と続いて。
何事かと音の方に向かおうとした時だった。
『ゴァァァァァァァァーーーー!!!』
「今のって、まさかっ!?」
ジェイドは咆哮の元へと駆け出した。
少し前
イフール・カウンター 飲食コーナー
「ムラマサさま、今日はありがとうございました」
コトっと、ムラマサの前に紅茶を出すマスター。料理教室が終わり、イフール・カウンターや他のカウンターから来た職員たちが帰ったあと、飲食コーナーで一息ついていた。
「礼は良い。
「それは構いませんが……あまり先ほどのような事はなさらないで下さい。冷や汗が止まりませんでしたよ」
「
「まさか!ムラマサさまなら、あんな乱暴者には遅れは取りませんでしょうが、いささか心臓には悪かったですよ」
「ハハハ、それは悪かったな。それじゃ、マスター――――」
紅茶おかわり、と言おうとした時だった。
ズシンッ!!
突如として、大きな何かが揺れ動く音が響いた。
「っ!!」
「なっ、地震!?」
ズシンッ!!
また鳴り響く。マスターだけでない。カウンター内にいる者達もざわつき始めた。
そんな中、ムラマサだけは感じ取っていた。
「違う、これは……」
『ゴァァァァァァァァーーーー!!!』
「ひぃっ!?な、なんなんですか!?」
「マスター、すぐに避難しろ!いいな!」
「む、ムラマサさま!?」
バッと席を立ち、マスターが止める間もなく、ムラマサは外へと走り出した。
咆哮の元へと向かう途中、多くの人々が反対方向へと逃げていた。
「ま、魔物だ!」
「街中で岩の魔物が暴れてるぞ!」
「逃げろ!踏み殺されるぞ!」
「やはり魔物か……だが、なんでいきなり」
とにかく、その岩の魔物が暴れてるとされる場所へと走った。
「ムラマサさん!」
その途中、ジェイドと合流した。彼も、魔物の元へと向かうようだった。走りながら、彼からダンジョンから運ばれたゴーレムが暴れてるかもしれないと聞かされた。
「強力な催眠魔法で眠らせてるらしいのに、目覚めたんですかね?」
「知らん、とにかく急ぐぞ!」
たどり着くと、二人の目の前には、二階建ての建物をゆうに越える身体を持つ岩の魔物“クレイゴーレム”が大広間の中央にいた。
その周辺には、バラバラになった荷車や、砕けたベンチ、巨大な拳の跡を付けられた石畳。
恐らく抑え込もうとした数人の冒険者たちがあちこちに倒れていた。
「うっ……!」
「ち……ちくしょ……」
「う……動けない……」
生きてはいるようだが、剣や盾は粉々。身につけていた鎧も砕け、赤い血がにじみ出ていた。
「ひ……!」
「た、助けて……!」
クレイゴーレムの前には、まだ無事な冒険者がいるようだったが、他の者たち同様、武器はもう使い物にならないくらいボロボロだった。
しかし、そんなことはお構いなしに、クレイゴーレムは彼らに巨大な拳を叩きつける――――
「危ないっ!!」
ドオンッ!!
背負っていた大盾を構え、真正面からクレイゴーレムの一撃を受け止めたジェイド。
しかし、その衝撃は彼の体をビリビリ震わせた。
「くそ、なんて一撃だ!」
「じ、ジェイドさん!?」
「大丈夫か、お前ら!」
「ムラマサさんも!?」
「あそこで倒れてる奴ら担いで、逃げろ!」
ムラマサに言われ、冒険者たちは急いで倒れた仲間の元へと向かった。
それを確認したジェイドは腰の剣を抜き、地面に突き刺す。
「
幻覚魔法を唱え、クレイゴーレムの視線を誘導した。
対象の関心、視線を誘導し、仲間たちから意識を逸らさせる
「これでゴーレムの
「っ!ジェイド、来るぞ!!」
足止めしましょうと言おうとした時、ムラマサからの警告で、再び大盾を構え受け止める体制を取るジェイド。
『ゴァァァァァァァァーーーー!!!』
咆哮と共に殴りかかるクレイゴーレム。
大盾でなんとか受け止めるが、受けるたびにわずかに押される。他の者だったら、一撃受けただけで吹っ飛ばされるだろうが、防御力随一のジェイドだから耐えている。
「ヤバい……この間のボス戦並にヤバい……!」
だが、それもそう長くは保たない。
「だったら、その前にたたっ斬るまでだ!」
「だ、ダメです!」
スキルで白黒の刀身の双剣を投影するムラマサ。
しかし、先ほどの冒険者がそれを止めた。
「あのゴーレム、
レイドボスとは、普通のボスよりも巨体なのが特徴だ。巨体故に体力や攻撃力、防御力は他とは段違い。通常のボスの3倍以上はあると言われる強敵。
そのため、討伐には
なので、強力な催眠魔法を3重にかけていた。少なくとも、3日は目覚めないはずだが―――――
「それを叩き起こしたバカがいるのか!」
「ヒャハハハ!来たな、クソ野郎どもが!」
聞き覚えのある声。しかもつい最近聞いた声だった。
見上げると、ゴーレムの肩に人影が見える。顔の左側に入れ墨を入れた男。
イフール・カウンターで騒いでいたDQN冒険者の“スレイ・ゴースト”だった。
「お前は……!」
「スレイ!なんでお前が!」
「ヒヒヒ、どうよ。俺さまの最強
スレイの得意げな態度と言葉に、2人は全てを察した。
「お前が操ってるのか、スレイ!」
「その通りだジェイド。コイツは俺の催眠状態にある。夢の中で暴れてんだよ!」
「自分が何してるのか分かってるのか!こんな街中でゴーレムなんか暴れさせたら――――」
「よぉーくわかってるぜ?てめぇや、そこの刀鍛冶、あのいけすかねぇ受付嬢も、この街ごとぶっ潰してやるよ!!」
バキッと不気味な音が聞こえる。クレイゴーレムの片足から、鋭く尖った鉱石の塊が生えてきた。片足を覆い尽くすように鉱石が集中し、巨大な足へと成長させる。
「おい、まさか……!」
「潰れろ!“デスクラッシュ”!!」
「スキル発動、『
自身や触れている物体を硬化させ、防御力を向上させる能力。
それにより、クレイゴーレムの蹴りを受け止めた。
「で、デスクラッシュを受け止めた……!」
「スゲー!さっすがジェイドさんだ!」
「いや……」
ムラマサには分かっている。ジェイドは受け止めはしたが、
衝撃は殺しきれず、足元は大きく陥没していた。今はまだ良い。だが持って数分だろう。それを過ぎればジェイドの限界だ。
「この場で討伐するしかない!コイツは俺が引き受ける!ムラマサさんは彼らと一緒に、他の冒険者たちを集めて下さい!」
「そんな!ジェイドさん1人でなんて!」
「俺たちも一緒に!」
「いや、お前等じゃ足手まといだ。怪我人担いで早く行け。
「……わかりました」
冒険者たちは後ろめたそうに振り向きつつ、倒れた仲間たちを引き連れて、広場の外へと向かった。
それを見送ったムラマサは、白黒の双剣でゴーレムに斬りかかる。
ジェイドが受け止めてる片足目掛け飛び掛かり、双剣を振り下ろす。
ガキンッ!と硬い物同士がぶつかる音をさせ、片足の一部の鉱石が砕け、同時にムラマサの双剣は粉々になった。
だが、おかげでジェイドはいったんゴーレムから距離を取ることが出来た。
「すいません、ムラマサさん」
「気にするな、しっかし硬ぇな。まだ
「はい、まだ取れてます」
「それじゃあ……」
そう言い、新たに双剣を投影する。そして、再びゴーレム目掛け走り出す。
「馬鹿が!潰せ、クレイゴーレム!!」
「させるか、こっちだ!!」
ムラマサに攻撃させようとするが、ジェイドが前に出たことで、ゴーレムの顔はジェイドへと集中する。
おかげでムラマサはゴーレムの足元に入り、持っていた双剣を片足に刺す。しかし、刺さったとはいえ、岩の巨人にはあまり意味はない。
「ハッ、その程度でクレイゴーレムを倒せると思ってんのか!」
「
スレイの挑発には聞く耳を持たず、ムラマサはまた双剣を投影し、もう片方の足に刺す。
「
また双剣を投影し、ゴーレムの身体に向かって投げ、剣がゴーレムの身体に刺さる。
「
双剣を投影しては、ゴーレムの身体に刺す。それを2〜3回繰り返す。その間、ゴーレムの攻撃はジェイドが引き受けた。
「ヒャハハハハ!残念だったな、ジェイド!刀鍛冶さまにはコレが攻撃してるつもりらしいぞ?とんだ相方を持ったもんだな!?」
「ムラマサさん……一体何を……」
ジェイドにも何をしてるのかサッパリだったが、すぐに分かった。
「弾けろ」
ピカッと刺した剣全てが光ったと思いきや、一斉に爆発した。
『ゴァァァァァァァァーーーー!!??』
身体のアチコチを爆破され、悲鳴のような咆哮をあげるクレイゴーレム。
ボロボロと爆破により、砕けた岩の身体の一部が辺りに散らばり、爆破の煙で、その姿は見えなくなった。
「今のは……」
「剣に炸裂魔法“
「な、なるほど……」
「さて、これで仕留めたかどうか……」
念のため、新たに双剣を投影し構えるムラマサ。
すると、辺りに散らばったゴーレムの身体の岩が、勝手に動き出し、煙の方へと集まっていく。
「てめぇ……やってくれたな……」
煙の中からスレイの怒りの声が聞こえる。
そして、煙が晴れると、そこには爆破される前と近い状態に復元されたゴーレムの姿が。
「ぜってぇ、許さねぇ!!」
『ゴァァァァァァァァーーーー!!!』