刀鍛冶ですが、何故かボス討伐しています   作:そういうとこだぞ、ムラマサ!

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半年前 ムラマサ宅


「え、“ムラマサ”って本名じゃないの?」

残業で遅くなり、夕食を用意する気力が無かったアリナは、ムラマサ宅に泊まり込んでいた。

丁度次の日は休日。家主も特に嫌な顔もせず、前に1度泊まった事があるので、有り難くあがらせてもらっていた。

そして、遅めの夕食を食べながら、ちょっとムラマサの話をしていた時だった。

「あぁ……代々ウチの当主が受け継ぐ名前なんだよ。だから表向きは”ムラマサ“って名乗ってんだよ」

「へぇ〜……ねぇ。当主になってから”ムラマサ“って名乗ってるんでしょ。なら、前の名前は?」

「殆どの当主は捨てて忘れてたが、(オレ)は特に捨てる予定はないな。けっこうしっくりきてんだよ。親から貰った名前だし、なんか……忘れられないんだよな、何故か……」

「ふ~ん……ねぇ、なんて名前なの?」

「いや、”ムラマサ“で良いだろ」

「別にいいでしょ。特に呼ぶ事なんて無いと思うけど、あんたが気に入ってるなら、気になるし」

「まぁ、教えるくらい良いが……(オレ)自身の名前は―――――」




ギルドマスター来襲

 

 

クレイゴーレム討伐から3日後

 

 

イフール・カウンター事務室

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ、あのクソクレーマーとクソ上司、そして昼頃に来たあのバカップルパーティー、末代まで呪ってやる」

 

「明らかにとばっちりがいるぞ」

 

そんな会話が夜中の事務室に響き渡る。

 

事務室にいるのはアリナと、ムラマサの2人。他の職員は、事務処理がまだ残っているが、あれこれ理由を言い、早々に帰って行った。

 

それを聞いたムラマサは、夜食を作り、残業の手伝いに来たのだ。それを聞いた時のアリナからは「あなたは神かっ!?」と本気で感謝されたのは20分ほど前。

 

「まぁ……なんて言えばいいか分からないけど……元気出せよアリナさん」

 

「なんで居るのよ、あんた」

 

無責任なことを言い、いつの間にか事務室に堂々と居るストーカー…でなく、ジェイド・スクレイドに、ギロッと睨みつけ思いっきりしかめっ面になるアリナ。

 

本来、ギルド関係者以外の事務室への入室は禁止されている。冒険者もしかり。なのに何故入れたのか。

 

『白銀の剣』はギルドに選ばれた精鋭パーティー。そのリーダーは冒険者ギルドの幹部級の地位を持っているのだ。故に、堂々と彼女たちと一緒に事務室に居座れるのだ。

 

ならムラマサは?

 

簡単、ギルドに無断で入っている。特に見られても問題ない書類を手伝ってもらうだけなので、アリナも上には報告していない。

 

「てゆうか、アリナさんも帰って良いんじゃ?みんな帰ったんだろ?」

 

「帰る?ふっ、これだから素人は……┐(´д`)┌ヤレヤレ」

 

「え、急にどうしたのアリナさん?」

 

「いつもこんなんだろ」

 

「ムラマサうるさい。いい?この書類の山を置いて帰る。『今日は気分が乗らないから明日に持ち越す』、最初の頃はそれで良いかもしれない……」

 

「ふむふむ……」

 

だが、しかぁ〜〜しぃ!!それはただの甘えっ!それを清算するのは明日の自分!何より残業に対するやる気なんて、これっっっっっっっぽちも無いのよ!!」

 

「は、はい……」

 

「そして、後回しにすればするほど、この山は巨大化していく。ならばいつやるか?……今でしょ!?今日片付けて、明日は定時に帰る!!それが最善の道なのよっ!!」

 

「はいはい、力説ご苦労」

 

「アリナさんって、意外にくそ真面目だな」

 

「それにムラマサが夜食作ってくれるし、今日は手伝ってくれる。つまり、無問題(ノープロブレム)なのよ。それに今はムラマサ家に居候中よ!そこらの宿屋よりも断然サイッコォー!」

 

「それは嬉しいな」

 

「あ、それなんだけど……その、ふ、ふたりは……つ、付き合ってるんですか!?」

 

「「……は?」」

 

意を決して言い放った言葉に、ポカンと、時間が止まったような顔になるアリナとムラマサ。

 

「……一応聞くが、なんでそんなことになってる?」

 

「だ、だって2人とも、よく2人でいる事多いじゃないですか!」

 

「そりゃ、ダンジョン攻略した仲だからな」

 

「よく料理を差し入れしたり、食べさせてるじゃないですか!」

 

「そりゃ、よくギルドで世話になってるからな」

 

「家によく誘ってるじゃないですか!」

 

「知人を家に誘うのは普通だろう?」

 

「えっと……ホントに付き合ってない?」

 

「ハァ〜……邪魔しに来たんなら帰ってよ。こっちは仕事があんのよ」

 

「で、でも!街の復旧騒ぎに乗じて良からぬ事を企む奴が出てくる。女の子1人置いておくわけにはいかない!」

 

「いや、自分で何とか出来るし」

 

その通り。レイドボスをぶっ潰した彼女を襲うには、命が幾らあっても足りないだろう。

 

「そうかもしれないけどさ~……あ、こっちの書類片付いたぞ」

 

「……は!?もう!?」

 

ガタン!と椅子を蹴って立ち上がり、バッとジェイドの前に置かれた書類の山を掴み取り、その全てに目を通す。

 

「な………なに、これ………」

 

「簡単な記入ミスや漏れを直したくらいだから、あとで確認してくれると助かるよ」

 

「へぇ~、話しながらやっていたとは、やるじゃないか」

 

「いや〜♪」

 

………

 

えへへ~と少し照れるジェイドと、書類を見て、プルプル震えるアリナ。書類にはなんの不備も無い。完璧な処理済みの書類が目の前にあった。

 

どうせ大した事は出来ないと思い、適当に教えただけ。しかし処理は正確、並べ順にまで配慮した丁寧な書類の束のまとめ方。

 

事務作業は一つ一つは単純で地味な作業。しかし一つのミスは許されない重要な作業でもある。そして、想像以上に体力と集中力が必要なのだ。

 

「(一級冒険者がそれを成し遂げと言うの!?私でさえ未だに慣れないのに……この男……出来る!)」

 

アリナは初めて、ストーカー野郎(ジェイド)を認めた。

 

「……ねぇ、あんたってもしかして、こういう事務仕事をやったことあるの?」

 

「いや?俺はずっと冒険者一筋だけど。たまに戦闘の参考に指南書を読むくらいかな?」

 

あっけらかんとした回答に、はい?、とアリナは顔を強ばらせた。そして気付いたのだ。

 

「(コイツ……『少しの理解である程度最初からミスなく出来る器用タイプ』かっ!?)」

 

それは『どんなに頑張ってもとりあえず全ての地雷を踏み抜いて一通りミスしないと身につかない不器用タイプ』のアリナとは正反対のタイプ。今ジェイドがやってのけた事は、アリナが完璧に熟すには半年以上を要する。

 

因みにムラマサは『1つの事に全能力を集中させ、他のは普通に出来る程度のタイプ』に属する(アリナ曰く)

 

「う、むぐぐ……!」

 

アリナの中で、受付嬢としてのプライドが、音を立てて崩れるのを感じる。そして、ボソリと低い声でひねり出す。

 

「ムカつく……」

 

「え?」

 

「どうしたアリナ?ずっと書類とにらめっこしたと思ったら急に?」

 

「うっさい!ムカつくのよ、ソイツみたいなのが!私が受付嬢として頑張ってきた苦痛と涙の3年間を返せぇ〜〜!!」

 

「えぇ!?」

 

「理不尽この上ないな」

 

半泣きでガンガン机を殴るアリナ。

 

「うぅ……この世は理不尽だ……」

 

「今1番理不尽なのはお前だろう」

 

「ムラマサうるさい……人は生まれながらにして不公平ということを、改めて分かったわ……もう無理、頑張れない………」

 

「よ、よし!あとは俺たちがやるから、今日はもう寝ろ!大丈夫!全部完璧に片付けてみせるから!」

 

(オレ)はお前みたいに出来ないぞ」

 

「ムラマサさん黙って」

 

とりあえず、ジェイドの言う通り休む……わけにはいかない。それは受付嬢のプライドが許さない。結局無理矢理体を動かし、作業を続けた。

 

「ハァ〜……私に受付嬢としての才能があったらな〜。いや、スキルでも良いや……」

 

「いや、神域(ディア)スキルの方が良いだろう!?」

 

「そもそも受付嬢のスキルってなんだよ?」

 

「別にいいでしょ。神域(ディア)スキルなんかよりもそっちが良かったわよ。ムラマサみたいに、ある種の才能でも良かったわね……そしたら何か名前貰えるかしら?」

 

「あるわけないだろ、アホ」

 

「……ん?名前を貰うってどういうことだ?」

 

別の書類の山を崩しながら首を傾げるジェイド。

 

「あぁ、あんたは知らないんだ。『ムラマサ』って名前、()()()()()()()()

 

「え!?ムラマサさん、ムラマサさんじゃないの!?」

 

「まぁな―――――」

 

 

● ● ●

 

 

『ムラマサ・ソーディアス』とは、初代“ソーディアス家当主”の名前。初代は異国の島国出身らしく、鍛治師の腕も当代からかなりのものだったそうな。

 

 

国を出て、鍛治師の修行に出て、この大陸にたどり着き、イフールで鍛治師として活躍。それから腕と名をあげ、『マスティノ』と言う町で、とある貴族女性を娶り結婚。そこに永住する事になった。

 

 

それから初代ムラマサは多くの弟子をとり、子宝にも恵まれた。そして、その全てをソーディアス家の者として、受け入れていった。

 

 

それから数十年後、妻に先立たれ、自分の寿命が近付いた頃。子供や弟子たちにこう言い渡した。

 

 

『儂は後継者を血で決めるつもりはない。儂と同等、それ以上の腕を持つ者を後継者と認める。そして、その者に()()()()()()()

 

 

その後、ある1人を除いて子供や弟子たちは、今まで磨いてきた腕と、己が心血を注いで造った武具をムラマサに見せた。

 

 

その結果、ムラマサの次男が選ばれ、ソーディアス家当主に指名され、同時に“二代目ムラマサ”を襲名した。

 

 

それからソーディアス家は、次代の当主を決めるのは当主の血を受け継ぐ者でなく、その実力で選ばれた。

 

 

そのため、血縁が選ばれることや、分家、時には弟子が当主に選ばれ、その度に“ムラマサ”の名を与えられていた。

 

 

 

現在のムラマサは“十代目ムラマサ”になる。そして、彼は初代ムラマサの実子の1人、長男の血筋に当たる。その腕は“先祖返り”と言われるほどだった。しかも、その腕が開花したのはわずか5歳。

 

 

当時、少年は先代ムラマサとその弟子の仕事を見ただけで、彼は簡単なナイフ一本を打った。そしてそのナイフは、先代が造った盾を真っ二つに切り裂いたのだ。

 

 

それから5年後、先代ムラマサと少年は、それぞれ己が全力で打った剣をぶつけさせた。

 

 

結果、少年は歴代最年少で”ムラマサ“の名を受け継いだ。それと同時に少年は家を出た。

 

 

● ● ●

 

 

「へぇ〜……ムラマサの家は結構スゴイって聞いたことはありますけど、そんな子供の頃から当主に選ばれるのもスゴイですね」

 

ついつい事務作業の手が止まるほど聞き入っていたジェイド。

 

「別に。(オレ)はただ、打ちたいものを打ってただけだ。別に当主の座になんかどうでも良かった」

 

「うわ〜、そんなこと言ってたら家の人たちに恨まれますよ?」

 

「元々嫌われてたからな」

 

「えっ――――――」

 

どういう事だ、そう聞こうとしたとき

 

「口だけじゃなくて、手を動かしてくれる?いい加減にしないと明日になるから」

 

アリナに睨みつけられ、ジェイドは止まってしまった仕事の手を慌てて動かした。

 

「でも、”ムラマサ“って名前が当主の名前なら、本名は?」

 

「それは別にいいだろ……ただ襲名したから名乗ってるだけだ。特に表で名乗る必要も無いし」

 

「へぇ〜……それじゃ、戦闘の腕もご実家で?」

 

「それは別だ。ある旅人から教わった」

 

「旅人?冒険者じゃなくて?」

 

「あぁ、そういえば私も少ししか聞いたことないわね。確かその人に戦い方や料理の事を教わったんだっけ―――――」

 

ふと書類から彼らの方に顔を向けようとした時、彼女の腕が“あるもの”が当たり、コトンと、床に落ちた。

 

半分に欠けたような赤い水晶の塊だった。ジェイドがそれを見たとき、サァーと顔が青ざめた。

 

「なんだコレ?水晶の欠片……か?」

 

拾い上げたムラマサは、塊を色んな方向から眺める。

 

「あぁ……それ。前のダンジョンボスがドロップした赤水晶(レッドオーブ)よ」

 

 

 

それは以前ジェイド達が苦戦し、アリナが瞬殺したダンジョンのボス、『ヘルフレイムドラゴン』が、倒した後にドロップした物。

 

(ディア)の印を閉じ込めた遺物(レリック)。その希少性はかなりのもの。その耐久性と強度は現状、どの物質にも勝ると言われている。

 

だが、何故それが欠片状になってるのか。

 

ジェイドがアリナの正体を知った後のこと、彼女にこの赤水晶を渡した後、彼の目の前で()()()()()のだ。

 

 

 

「はぁぁぁーーー!!握り砕いただぁー!?」

 

「はい……あの時、身体が一瞬凍えたようになりましたよ」

 

「脅すには丁度良かったし、何より私には無用の物だったし」

 

「たわけっ?!遺物(レリック)がどれだけ希少なのかお前だって知ってるだろうが!?それを握りつぶすなんて……せめて(オレ)にくれよ!?」

 

「そこ!?」

 

「当たり前だ!刀剣の材料に遺物(レリック)は最高なんだよ!それを握りつぶすなんて勿体ない……」

 

 

そして、何故アリナがそれを持っているのか。それは

 

 

「重石に丁度良かったから」

 

 

「希少な遺物(レリック)を……」

 

「重石にって……」

 

「なによ。なんか文句でも?」

 

「あのな……ん、なんだコレ?」

 

遠慮なく文句を言おうとしたとき、ムラマサは唐突に赤水晶(レッドオーブ)をひっくり返し、断面をじっくり見る。

 

何事かと、アリナとジェイドもその断面を覗き込むと、何やら小さく、金色の文字が刻まれていた。

 

「なんだコレ?アリナ、何か書いたか?」

 

「そんなことするわけ無いでしょ」

 

「でも、書類の文字が写ったわけでもなさそうな……」

 

とりあえず、刻まれた文字をムラマサは何とか読み取る。

 

「なになに……く、クエ…スト……受注……確……認?」

 

なにか聞き慣れたその言葉。その瞬間、ピカッ!と欠片から強い光が放たれた。

 

「っ!?2人とも、下がれ!!」

 

目が眩みそうなりながらも、ジェイドは素早く2人の盾になるようにかばう。

 

その際にはムラマサの手から赤水晶(レッドオーブ)が床に落ちるが、光を発生させながら、空中にフワリと浮き上がる。

 

同時に、金色の文字が螺旋を描くように空中に飛び出す。

 

「今度はなんだ?」

 

「攻撃……じゃないな……」

 

「これって……受注書……?」

 

中に浮かび上がる文字にサッと目を通しただけだが、アリナにはすご~く見覚えがあるような物に酷似していた。。

 

 

【指定冒険者階級:なし

 場所:『白亜の塔』

 達成条件:全階層ボス討伐

 なお、依頼者明記なし。受注者のサイン省略

 上記内容により、クエスト受注を認める。】

 

 

しばらくすると、金色の文字はフッと消え、赤水晶(レッドオーブ)も、光を発しなくなり、床へと落ちていった。

 

そして、3人の間に沈黙が流れる。

 

「………疲れてるわね。今日はこれでお開きってことで」

 

「おい待てコラ」

 

「残念だけど、夢じゃないぞアリナさん」

 

サッサと帰ろうとするアリナをムラマサが抑え、ジェイドが慎重に赤水晶(レッドオーブ)を拾い上げる。

 

だが、もうソレには文字は影も形もなくなっていた。

 

「今のって、受注書。だよな?」

 

「あぁ……間違いないだろう。なぁ、受付嬢さん?」

 

「……まぁ、そうね……」

 

3人(主にアリナ)は受注書を腐るほど見てきた。これは間違いなく受注書。ただし、紙ではなく、遺物(レリック)から文字だけ飛び出してきたものだが。

 

「それじゃ、あとは白銀さん頑張ってね」

 

「お前、明らかに見なかった事にしてるだろ?」

 

当たり前でしょ!?そんなどう見てもメンドイ案件に関わりたくないでしょ、普通!?」

 

「たしかに」

 

「ムラマサさん!?」

 

「そういう事だから、あとよろしく!」

 

「まぁ、なんか分かったら教えてくれ」

 

そう言い、2人はサッサと帰り支度を済ませ、逃げるようにその場を後にした。

 

「……ホントに付き合ってないんだよな、あの2人……」

 

ハァ〜……と一人残されたジェイド。仕方ないので、彼も帰り支度をしながら、赤水晶(レッドオーブ)を調べることを考えた。

 

 

 

 

 

 

一週間後 ムラマサ宅 鍛冶場

 

「フゥ〜……」

 

一本の刀を目の前にして、ムラマサは今まで以上の手応えを感じていた。自身が持つ全てを注ぎ込んだ一刀。

 

それを持って、鍛冶場の外へと出た。鍛冶場のすぐ隣は出来た刀剣の試し切りをする場にしている。そこには幾つもの真っ二つにされた岩がゴロゴロしている。

 

偶に回収に来て貰っているが、まだ大丈夫だろう。

 

そんなことを考えながら、ムラマサはキョロキョロ見渡す。丁度良い岩を探しているのだ。

 

「ん……アレなら丁度良い」

 

まだ試し切りしていない、大きな岩を見つけ、その前に立つ。

 

フゥ〜と深く深呼吸をして、刀を振り上げ、岩に向けて振るう。刀はまるで抵抗を受けず、岩に刃を通し、綺麗に岩を2等分にした。

 

断面はまるで鏡のようになっており、外の風景を写していた。

 

今までギルドに卸していた刀剣や個人で依頼されていた刀たちとは、比べ物にならない位、最高の一刀が完成した。

 

そして同時に、落胆していた。

 

「ここまでやっても、“失敗”か……」

 

確かに最高に良く斬れる。いや、()()()()()()()ほどに。こんな暴れん坊を扱える人間は、おそらく一級冒険者でもかなり難しい。下手をすれば、持ち主ごと斬ってしまうかもしれないから。

 

「こういうのを“魔剣”って言うのかね……」

 

「ほぉ~、それは中々興味深いな」

 

「っ!……ハァ〜……」

 

突如背後から声が聞こえた。アリナはとっくに職場へと出掛けている。ジェイドは今日は顔を見ていないが、勝手に敷地に上がりこむ事はしない。

 

そもそも、つい先ほどまでムラマサしか居なかった所に、突如気配を感じた。まるで、いきなり出現したように。

 

こんな芸当が出来るのは、()()()()()()あの男しか、ムラマサは知らない。

 

「普通に訪ねて来れないのか、ギルドマスター」

 

ムラマサが振り返る。そこに立っていたのはギルドの紋章を織られたマントを羽織る初老の男。

 

短く刈り上げた頭に鋭い目つき。浅黒く焼けた肌。皺はあるが、まるでそれを感じさせない体格。

 

現役時代には“最強”の名を欲しいままにした大剣(バスターソード)使いの前衛役(トップアタッカー)であり、冒険者ギルド最高権力者、それが目の前に男『グレン・ガリア』

 

「ハッハッハ!それでお前さんが快く出迎えてくれるとは限らんからな!」

 

胸を張り、大きな声で笑うグレン。久しぶりに会うが、まるで変わっていないようだ。

 

最後に会ったのは、ムラマサが初めてダンジョンを攻略した後、ギルドマスター直々に『白銀の剣』への誘いを受けた時。

 

そして、ムラマサはそれを断固拒否。そして、グレンからの提案で、『白銀の剣』とのパーティー入りをかけた模擬戦が行われたのだ。

 

「しかし、いい剣じゃないか。俺の知る限り、ソレ以上の剣はこの世には無いんじゃないのか?(なまえ)はなんて付けるんだ?」

 

興味深そうに、ムラマサの持つ刀を覗き込む。だが、ムラマサはすぐに刀を鞘におさめる。

 

()はまた考えるよ。それにコイツぁ失敗作だ。岩だろうと遺物(レリック)だろうと、ダンジョンボスだろうと、片っ端から斬り払う暴れん坊だ。例え、あんただろうと、使い熟すには骨が折れるぞ」

 

「ほぉ~、そう言われると試したくなるが……()()()今日は諦めよう」

 

「なら、さっさと要件を言え」

 

「やれやれ……処刑人とはずいぶん仲良しだな?」

 

「………」

 

ジッと、グレンの目が更に鋭くなる。この様子だと隠し事は出来ない。()()()()()()()()()()()()

 

それはおそらく――――――

 

「………スキルで見たのか」

 

「まぁな」

 

 

スキル『時の観測者(シグルス・クロノス)』。

 

発動者以外、その場の時間を止める事が出来る超域(シグルス)スキル。

 

更に、制限はあるが、その場の時間を巻き戻して過去の事象を見ることも出来る。ただしあくまで“見ること”だけ。干渉の一切は出来ない。

 

 

「――――だが、あんたはそれだけで充分だろ?」

 

「あぁ、おかげでようやく処刑人の正体が分かったよ」

 

「それなら(オレ)に何の用だ?まさかアイツを白銀に入るよう説得しろと?」

 

「それも有りだな。だが、お前さんに頼みたいのは別だ」

 

「?なんだ。勿体ぶらずにさっさと言え」

 

「おいおい、俺一応ギルドマスターなんだが……まぁいい。簡単な事だ、立会人をしてもらいたい。明日、ギルド本部に来てくれ」

 

 

 

 




 
翌日 ギルド本部


闘技場


「(Ω\ζ°)チーン)」

「マスターさまァァァーーー!!??」

「ウソ……」

「マジかよ……」

「あ~あ~……」


「フシュゥ〜〜……!」


「あ〜……なんでさ……こうなるワケかよ……」

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