刀鍛冶ですが、何故かボス討伐しています 作:そういうとこだぞ、ムラマサ!
「今……なんて?」
「新ダンジョンが発見されたんだ。イフールから東に進んだ、エルム大峡谷の近くに。全4層の大型ダンジョン。難易度は……おそらく最高のランクS級」
「S級か……なかなか厄介なもんが出てきたな……」
「し……新、ダンジョン……?うそ……嘘よね……?」
呆然となり、まるでそうであって欲しいと願うようにジェイドにすがりよるアリナ。
しかし、その願いはあっさりグレンが打ち砕いた。
「いや、ジェイドの言ったことは本当だ。嬢ちゃんとムラマサ以外、この場にいる全員がこの目で確認した」
ピシッ!
そんな音が聞こえるかのように、アリナの中にある“なにか”が崩れ、彼女の体は時が止まったかのように動かなくなる。
「それも発見した探索班の見立てじゃ、ヘルフレイムドラゴンに手を焼いたベルフラ地下遺跡を超える難易度……白銀の
「――――――」
グレンの話を聞いているのか、そうでないのか、アリナは今だに停止状態になっている。
「ギルドもお前たち以外に前衛役を厳選しているが、適任なヤツははなかなか見つからねぇし、決まらなくてな。だから早急に優秀な前衛役を――――」
「んなことはぁどうでもいいのよっ!!」
「へっ?」
ようやく再起動したアリナは、きょとんとするグレンの胸ぐらを引っ掴み、ブンブン振り回しながらアリナは声を荒らげた。
「新ダンジョンが発見されたらどうなるか分かる?冒険者の有象無象共が寄り集まってきて、クエスト受注数が爆発的に増えるのよ!それを誰がさばくと思ってんのよ!?」
「ちょ……やめ、苦しっ……あと、耳が……」
「受付嬢よ!新ダンジョンに群がる冒険者どものクエスト受注を、攻略されるまで私が永遠に残業しながらさばくのよ!!」
「は?残業?」
「また、残業地獄がはじまる……」
ひとしきり叫んだアリナはグレンの胸ぐらから手を離し、力なく崩れた。ムラマサはそっとアリナの頭を撫でて慰める。
「うぅ……やっと地獄が終わって、しばらく平和になると思ったのに……」
「はいはい、また夜食作ってやるし、手伝ってやるからな。リクエストは?」
「……お肉」
「了解した」
「なぁ、ジェイド」
しくしくと、涙目になるアリナを横目に、グレンはボソボソとジェイドに尋ねた。
「嬢ちゃんが処刑人になってボス討伐していたのって、残業が嫌だったからか?」
「そうだ。それ以外に理由はないらしい」
「なるほど……」
膝を抱えて、残業…残業…と呪文のようにブツブツつぶやくアリナとそれをなだめるムラマサをしばらく眺め、グレンはごまかすようにゴホンッと1つ咳払いして言った。
「2人とも、実は今回のダンジョンは今までのとはワケが違う。
そう言い、グレンは懐から、見たことがある
それは一週間前、アリナと、ムラマサ、ジェイドの3人で残業処理をしていた夜、謎の受注書を出したあの欠片だった。
「“白亜の塔”。聞いたことはあるだろう」
「「!」」
唐突に出てきたその名称、2人はすごく覚えがあった。
「2人をわざわざ呼んだのはこっちが本命だ。ジェイドから話は聞いてた。遺物から突如現れた受注書のような文言。俺も長いこと冒険者ギルドに関わっているが、そんな現象は見たことも聞いたこともない」
そこに補足するように秘書が横から口を挟む。
「可能な限り過去の記録を調べましたが、ギルド創設から二百年にわたり、そのような現象は記録は一切ありませんでした」
「半信半疑だが……金文字が示した『白亜の塔』を探索班に調査させた。そしたら……本当に見つけちまったんだよ。
そこで一度言葉を切り、グレンはジッとアリナとムラマサを見つめて口を開いた。
「これはいわゆる、“裏クエスト”ってやつだ」
「それって―――――」
ムラマサはその言葉をつい最近聞いた覚えがある。
『どうしたもこうもねぇんだよ!隠してねぇで、さっさと“裏クエスト”を出せって言ってんだよ!!』
イフール・カウンターにクレームを出した、あのスレイが言っていたからだ。
「でも、それってただの言い伝えでしょ?本当にあるなんて聞いてないですけど」
「嬢ちゃんの言う通り、俺もそう思ってた。だが、嬢ちゃんがいなければ発見することさえ出来なかったクエストに、この異様な受注がなされるまで隠されていたダンジョン……これらをまとめて説明出来るのは、裏クエストしかないんだ」
「なるほどな……」
「あんた本当に分かってるの?」
「なんとなくな。そして、その新ダンジョン攻略は今まで以上に慎重にことにあたらないといけないのだろう?」
「その通りだ、ムラマサ。そこで2人に頼みがある」
ここまで来ると、次にグレンが出す頼み事が容易に想像出来る。
「
「ギルドマスターさま、さっきと言ってることが違う気がするんですけど」
「そうでも言わなきゃ勝負に乗ってこなかっただろう?」
「なるほど……まぁそうね……けど―――――」
クワッと目をカッ開き、血走らせた凄まじい剣幕で、アリナはグレンに詰め寄ろうと―――――
「待て待て、だから早まるな」
したが、ムラマサが首根っこを掴み、アリナを止めた。
「離してムラマサ。ちょっとそこのふざけたこと吐かしたギルドマスターに
「じゃあ、足元の魔法陣を消したら離してやる」
アリナの足元に白い魔法陣が描かれはじめ、にわかに輝き出したの見て、グレンは血相を変え、彼女から距離を取る。
「そ、そそそそそそそうだぞ、嬢ちゃん!暴力反対!話せば分かる!だから魔法陣をしまってくれ!?」
「……分かったわよ。けど!ムラマサはともかく、私を動かしたきゃ残業をなくす劇的な業務改善案でも持って来るのね」
「そうだな。
「普通はそうだ。だが、今回は今まで以上に未知のダンジョンだ。念には念を入れ、実力者は多い方が良い。お前さんたちがいれば、大抵のことは問題ないだろう」
「そもそも、そんなヤバそうなダンジョンなら、ちゃんと白銀の態勢が整ってから行けばいいじゃない。こういう時くらい、攻略を他の冒険者やパーティーに任せられないの?やっぱり
「待て嬢ちゃん、妙な誤解をするな―――――」
「冒険者は成果主義だ。それはギルドが選抜した白銀も条件は同じなんだ」
慌てるグレンの代わりに、ジェイドが答えた。
「だから白銀は、新ダンジョン発見時、最善の手を尽くして成果を取りに行く。他の冒険者に先を越されるされる前に攻略し、街の発展に貢献する。俺たちの状態が良かろうと悪かろうと、関係ないんだ。精鋭パーティーに相応しい結果が出せないなら“白銀の剣”を名乗れない。それだけだ」
ジェイドの真剣な視線がぶつかり、アリナは思わず目をそらし、ムラマサは理解していた。
冒険者は良くも悪くも成果主義。受付嬢とは違い、いつでも休めるし、サボれる。
しかし、それは成果があってこそだ。彼らは自由である代わりに成果に縛られる。ましてギルド精鋭パーティーならなおさら。
そのため白銀の前衛役不在は、かなり深刻な問題になっている。さらに裏クエストが見つかってしまった今、彼らも必死なのだ。
人手不足の苦痛は、アリナもよく知っている。もしイフールにあと2、3人受付嬢が増えてくれれば、たとえ冒険者がダンジョン攻略に行き詰まろうと、新ダンジョンが発見されようと、少なくても残業地獄にはならないだろうとアリナはいつも思っていた。
「だからって、私にこだわらなくてもいいでしょ別に。こちとら毎日掃き捨てるほど冒険者見てるのよ。まさかあれだけ居て、S級ダンジョンに行ける前衛役が1人も居ない訳ないでしょ。他あたってよね、他」
口調を強めに、グレンに人差し指を突きつけるアリナ。
そして、言いたいことは言ったので、今度こそここから出てって、明日からの残業地獄の準備をしなければいけない。
「なぁ、嬢ちゃん」
だが、その背中にグレンが声をかけ
「もし白銀に“協力“してくれれば、
「えっ―――――」
グレンの口から出た…いや、出るはずがないと思われた報酬に、アリナの足が止まった。
だが、これはグレンも出来れば使いたくなかった手だったのだろう。苦虫を噛み潰したような険しい顔で、しぶしぶ答えた。
「俺は、一応ギルドの最高権力者だぞ。俺の一言で組織を動かせる。たとえそれが職権乱用だとしてもな。イフール・カウンターの受付嬢の数を倍に増やす。これなら嬢ちゃんの業務量は軽減され、残業もなくなるはずだ」
「なっ……!?」
「“嬢ちゃんは白銀には入らない”。これはもう決まったことで変えるつもりはないし、勧誘も今後しない。ただし、
「………………………………………………」
長い沈黙が訪れた。その中、ムラマサは初めてグレンに感心した。
「(ほぉ~、ギルマスにしては思い切った提案をしたな。だが、ギルマスにしか出せない条件でもある。要するに、今回協力するだけで、イフールの業務改善と、今後アリナを白銀に勧誘することを辞める。更に今までの副業もお咎めなし、しかも今後見逃すときた。
果たして彼女はどうするかだ。
「…………確認するけど、
「そうだ。まぁ、これからも手伝ってくれるなら、大歓迎だが」
そこでアリナは黙り込んで考えた。
「(白銀に協力する……それってスゴーク面倒くさそうな新ダンジョンを攻略すること。今まで残業を無くすためにやってきたボス攻略だけじゃなく、本格的に冒険者として活動しなければならないと言うこと。けど、今回我慢すれば、今後残業のない真の平穏……私の夢が叶うってことに……いや、でも今までいちばん避けてきたことを……)」
う~んと悩むアリナを見て、ムラマサはやはりかと思った
「(ま、迷うだろうな〜とは思ったが、これならあと一押しか……)」
そう考え、ムラマサは彼女のそばに近寄り
「アリナ……今回協力して、結果が成功しようが失敗しようが、お前さんのリクエストした料理を何でも好きなだけ食わせてやる!」
「仕方ないわね、今回だけだからね!!」
「「それでいいんかい!?」」
悩んでいたアリナが、あっさり了承したことに、グレンだけでなく秘書のフィリやジェイドが揃ってツッコんだ。
「別にムラマサの料理のためじゃないわ。あ・く・ま・で!理想の定時帰りのため……」
「そうだよな……それでこそアリナさん―――――」
「それとチーズハンバーグと、オムライスと、シーフードフライの盛り合わせと、ムラマサ特製ケーキのためだからね!!」
「ちくしょー!やっぱりムラマサかよ!?」
「けっこう多いな……食材足りるかな?」
「心配そこ!?」
「それと、残業をなくす約束、絶対守ってよね!!」
「あ、あぁ……わかってるよ」
アリナはようやく言いたいことを言い尽くし、今度こそその場を後にした。
その背中をジェイドが慌てて追いかけ、メンバーのロウとルルリが付いて行った。
秘書のフィリも、手続きの手配をすると言い、闘技場を出ていった。
その場に残ったのは、グレンとムラマサのみ。
「はぁ~……俺が出来る最高の条件を出したんだが……まさかムラマサの料理に負けるとはな……」
「いや、儂はあと一押ししただけだ。もしかしたら、料理なしでも承諾したかもしれない。余計なお世話だったな」
「いやいや。お前さんのおかげで、処刑人の協力を得られた。それだけでも充分だ。しっかし羨ましいね~。ムラマサにリクエストした料理をたらふく食えるなんて……なぁ、その時俺も一緒に――――」
「さぁ~て、食材の買い足し行かないとな!」
「あぁ!!せめて一品だけでも〜!?」
ムラマサさまぁ〜…と、背中から悲痛の叫びが聞こえるような気がするが、ムラマサは迷わず足を進めた。
同時に、自分のスキルのことを考えていた。
『
「そんなこと、オレがいちばん知りたいよ……」
そういう大事なことを、
ー8年前ー
イフールの中央から離れた林地
「はぁ~……やっと必要な物は揃ったな」
生まれた家、土地から離れ、イフールにたどり着き、不動産からの紹介で、かつて鍛冶場として使われてた古い家を安値で買い取った。
それから自力で屋内の掃除と傷んでいるところの補修、家具類と食材の調達。そして鍛冶場を綺麗にし、ようやく満足に住めるようになった。
「ふぅ〜、あの家よりだいぶちっさくなったが、中々良いかもな……よし!さっそく1本打ってみるか!」
オレはあの家とは違う。
オレはオレの打ちたい
「やってやるぞー!!」
ドォーーン!!
「言ってるそばからなんだー!?」
音源からすると、震源地は……
「
パラパラ…
「イタタ……一体何事だ?私はたしか……ブーディカとパールヴァティーたちと一緒に今夜のカルデアの夕食の支度をしていたはず……なのにここは……何処かにレイシフトしたのか?」
鍛冶場のど真ん中、尻もちをつきながらキョロキョロと、辺りを見渡す、浅黒い肌に赤い外套を纏った白髪の男。
「鍛冶場……なのか?しかし、ところどころ古びてるが……つい最近手入れされたような……」
「だれだ!!」
そこに、ムラマサが駆け込んできた。ムラマサの眼の前には、片付けたばかりの鍛冶場が最初よりも散らかり、そのど真ん中で白髪の男が尻もちをついていた。
「なっ……貴様は、えm―――」
「ヒトんちで何してんだテメェーー!!」
「すていないと!!」
ムラマサの渾身のドロップキックをまともに顔面に受け、訳の分からない悲鳴をあげる白髪。
「―――――つまりなんだ?あんたはこことは違うすご~く遠いところで弓兵の仕事をしてて、何か魔術の実験に巻き込まれてここにいると?」
「―――――つまりなんだね。ここはイフールと言う街で、ここはきさま……ムラマサの家と言うことか?」
「「…………」」
しばし沈黙が流れる。
互いに相手を警戒をしているからだ。
「(仲間の魔術の実験で遠くの土地に飛ばされたって……普通信じられるかそんなもん。だが、見た感じ強盗のたぐいじゃねぇようだが……けど何かコイツ……どこかで見たような……)」
「(イフールなど聞いたことない……聞いた感覚だと、ここはおそらく100年前のヨーロッパ辺りか?しかしこの世界……霊脈の気配は感じないが、感じたことのない魔力に満ちているな……それにこの男。衛宮士郎ではないのか……?)」
グゥ~…
「「………」」
音の主は言わずともわかっている。
そこでようやく互いに口が開いた。
「まぁ、強盗じゃねぇようだし、帰る目処がつくまで居ても構わねぇよ。ただし、ここの片付けを手伝ってもらうぜ?その前に夕食だ」
「仕方ないが、そうしよう。それと、ここの掃除など、私1人でも構わないが?」
「そうかよ……なぁ、あんた。前に……オレと会ったことがあるか?」
「……いや、今日が初対面だが」
「だよな~。あんたみたいな、何かムカつくような顔の知り合いは居ねぇよな!」
「フッ……その言葉は宣戦布告と受け取るぞ、衛宮士郎ォォォーーーー!!!」
「えぇ、なんでさ!?」
「まず、その口調からぁーー!!」
それからソイツ……アーチャーと半年ほど過ごした。
アーチャーとは何度も喧嘩や衝突したが、アイツに闘い方や料理、家事を学んだ。ついでに屋敷も、今のように広く大きくなるよう改修も手伝ってくれた。
みんな儂の料理がスゴいと言うが、残念だが、まだアーチャーには勝てない。不本意だが、ホントに不本意だが!
その頃、儂はスキルが目覚めた。そして、アーチャーも儂と同じスキルを使っていた。
儂はスキルに目覚めて嬉しかったが、アーチャーのヤツは何故か悲しそうな目をしていた。
それからアーチャーにスキルの使い方を教わ…ろうとしたが、アイツはホントに最低限のことしか教えなかった。
いつもの稽古の時に、儂が投影した剣を見て、「まるでダメ」や「今日は最低限の良をやろう」など言うだけ。
あとは「私と打ち合えばわかる」と言うだけ。
確かにアーチャーと打ち合えば、いつの間にか儂のスキルに磨きがかかった。ホントに何故だろうか?
そして、アーチャーと暮らして半年後
月夜がきれいな日だった。
庭でアーチャーと儂の一族のことと、儂が何故家を出てたか話した。
「なるほど……家に嫌気が差して……貴様はホントに衛宮士郎か疑いたくなる」
「おいアーチャー。たまにあんたの言葉が分からないが、なんて言ってるんだ?」
「……貴様が知らなくて良いことだ」
「なんじゃそりゃ?」
「………ムラマサ。貴様はホントに鍛冶職人になるつもりか?」
「はぁ?今更なに言ってる。オレは死んだオヤジに誓ったんだよ。あんたが目指した“究極の一刀”を、オレがたどり着いてみせるって」
「それはお前の理想ではない。その者の理想が綺麗で、憧れただけだ。自身からこぼれ出たものじゃない」
「はぁ、なに言ってる?」
「かつて……ある男の理想に憧れ、その理想を代わりに叶えようとした愚か者がいた。その道は、決して楽で、幸福で、救われるものではない。そして愚か者は、そのことに死ぬまで気付くことはなかった」
「……………」
「地獄の道を、歩み続けた。そして後悔し、呪った。自分自身を。永遠と……」
「オレもそうなると?」
「……………そうだ。お前も衛宮士郎だからな」
「…………そうかよ」
「そうだ……………」
「お前はバカなのか?」
「なんだと?」
「てめぇは自分の選んだ道を否定しているが、オレはそうは思わない。どんな道だろうとお前が選んだ道だ。だったらそれは間違いなんかじゃない。オレの道もそうだ。間違いなんかじゃねぇから、お前みたいに後悔もしないぞ」
「…………」
「だから、そんなこと言うな……言わないでくれ」
「……貴様は私と違うのだな?」
「あぁ……オレは
「フッ………確かに私とは違うが、貴様はやはり……衛宮士郎なのだな………」
そう言って、アーチャーは儂の頭を撫でて、笑いかけた。
「ならば、見せてみせろ。お前が、オレとは違うのだと。いつか、見せてくれ」
それだけ言い、アーチャーは、いつの間にか消えていた。
わかっていたのだ。もう自分は帰るのだと。だがその前に、話さなければならないことがあると。
だからあんな話をしたんだ。
なぁ、アーチャー
今の儂はどうだ?
まだ、同じに見えるか?
だったら、そこであぐらでもかいて見とけ
オレは、お前とは違う。必ずたどり着いてみせる。オレの目指す場所まで。
そして、それをお前の前で高らかに自慢してやるよ。
「………夢、か………」
ムクッと起き上がり、窓の外を見ると陽が出かかっている。
ついクセでこの時間帯に目覚めてしまった。
「ここでいつも通りに起きてもなぁ……」
ムラマサが居るのは、自宅ではない。
大都市イフールの1等地に立つ白銀専用の宿舎。
あの後、ムラマサもグレンに協力の了承を伝え、アリナと共にしばしここで過ごして欲しいと言われ、必要最低限の荷物を持って、昨夜からここに泊まっている。
「だが!何もしない訳にはいかないよな……」
そうして、ムラマサは寝間着からいつもの私服に着替え、部屋から出た。