刀鍛冶ですが、何故かボス討伐しています   作:そういうとこだぞ、ムラマサ!

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いざ、白亜の塔へ!

 

 

「う~ん……あれ?ここどこ?」

 

何かに反応して起きたアリナの時間は彼女がいつも起床する少し前。

 

寝ぼけた頭で記憶を探り、ようやくここが白銀専用の宿舎だと思い出した。

 

昨日、ムラマサと共にムラマサ宅から、この宿舎に移動。今日は例の“白亜の塔”に向かうので、この2日間は休みなのだ。

 

昨日は最初は良かった。本当に久しぶりにゆっくりゴロゴロしようとしたのに、ジェイドがやって来て気分は急降下。

 

しかも、協力してくれるなら白銀と同じ待遇にするからと言うことで、ギルドからこの宿舎を暫く貸してくれるからと、仕方なく従ったのだ。

 

「それにしても、この綺麗で広い部屋と、ふかふかのベッドは最高ね……立地も良いし……休みの日に1人で来れたら最高だったろうな……」

 

そう言い、コロコロとベッドの上に転がるアリナ。

 

「あぁ…ずっと引きこもってたい……」

 

 〜 〜 〜

 

「ん?(クンカクンカ)」

 

そう言えば、何かに反応して目が覚めたのだ。

 

それは嗅覚がいちばん反応している。何か良い匂いがする。

 

「これは……もしや!!」

 

アリナはバッとベッドから出て、パジャマから着替えて、部屋から出た。

 

 

 

カフェエリア キッチン

 

 

「申し訳ありません。ムラマサにも手伝ってもらって」

 

「気にすんな。(オレ)も何かしたくて無理言っただけだ。こっちこそ悪かったな」

 

「いえいえ!あの“伝説の料理人”と呼ばれるムラマサさんと料理が出来るなんて、私たちは光栄ですよ」

 

「料理長の言う通りです。すっごく勉強にさせてもらってます!」

 

「わたしなんて、さっきの無駄のない包丁さばき見て、感激で倒れそうになりましたよ」

 

「おれは緊張で手が震えるよ」

 

「そこまで大したもんじゃねぇけどな……ほら、Aメニューのパスタ出来たぞ。誰か味見を――――」

 

「では私が」

 

「ズルいですよ、ここは僕が!」

 

「なに言ってるのよ!ここは先輩に譲りなさい」

 

「先輩なら後輩に譲れよ!」

 

「お前ら……」

 

「なにしてんのよ、ムラマサ」

 

料理人たちが何故かケンカになってるところに、キッチンからフロアにつながる窓口から、アリナが中を覗いていた。

 

良い匂いに導かれ、たどり着くと、知り合いの料理の味見をめぐって、料理人たちが騒いでいたのだ。

 

「見ての通りだ。いつも朝食は自分で作ってたら、体が疼いて、料理長に頼んで、朝食を手伝ってる」

 

「それがなんで、ああなるのよ」

 

「わからん。ともかく、もう少しでレストランも開くから、待ってろ」

 

「わかってるわよ。ところで、オススメはなに?」

 

「う~ん……どれも美味いが……Bメニューかな?このあいだのサーモンのムニエルと、さっぱりとした季節の野菜スープ。パンはふっくら焼いたクロワッサン。因みにムニエルには儂特製ワサビソースと、パン専用の特製ジャムが付いてる」

 

「じゃ、私それで」

 

 

 

ギルド本部で優雅な朝食を送る………ことは出来なかった。どこからかジェイドが現れ、「一緒に食べましょう!」と絡まれ、せっかくのいい気分を邪魔された。

 

それだけではない。ギルドマスターから、攻略中は特別休暇にしても良いと言われていたが、アリナは自身の命より大事な有給休暇を使った。

 

一介の受付嬢がギルマス勃命の特別休暇なんて取ったら、怪しまれるからだ。もちろん、たかが休暇ぐらいで処刑人の正体に気付かれる可能性は低い。だが周囲に余計な関心を引くのは避けたかったのだ。

 

「あぁ~〜〜〜私の……ゆうきゅうが………」

 

そんなこんなで、現在アリナは唇を噛みしめ、グスンと、鼻をすすっていた。

 

「もう何回目だ。そんなに後悔するなら素直に特別休暇にすれば良かっただろう」

 

「うるさいムラマサぁ!私はな!仕事の忙しさが落ち着いた頃に、休日と合体させてたくさん休みたい為に、今の今まで貯めてたのよ!」

 

「そういうヤツに限って、休めないって、いい加減学べよ」

 

「まぁまぁ二人共。たかが有給休暇ぐらいで―――――」

 

「たかがとはなんだ!!たかがとは!!」

 

ついついこぼしたジェイドの言葉に、アリナの機嫌は一気に悪くなり、彼の胸ぐらを掴み、これでもかと振り回す。

 

「有給は!社会人の!ご褒美なの!人権と同じくらい尊いものなの!!それを“たかが”とはなんだーー!!!」

 

「ちょっ!?そのへんは、どうにかならないか……ギルマスに聞くから……は、離し……!?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いてください、アリナさん」

 

ブンブンと振り回されるジェイドを助けるため、ルルリが止めに入った。

 

そこでようやくジェイドを離したアリナ。

 

「おい、そろそろ着くぞ」

 

そこで一行は巨大な転移装置(クリスタル・ゲート)の前にたどり着いた。

 

冒険者ギルド本部の敷地内、その中心にある広場には、ダンジョン行き専用の転移装置が設置されている。それには冒険者のライセンスカードが必要なのだ。

 

「白亜の塔にはすでに、ギルド探索班が転移装置を設置してある」

 

そう言い、ジェイドがライセンスカードをかざすと、視界いっぱいに青い光で埋め尽くされる。そして、視界が戻った頃には、すでに彼らはギルドの広場とは違う場所に立っていた。

 

そこは赤茶色の荒涼とした大地が広がる『エルム大峡谷』。

 

ここでは手つかずの自然が広がっており、大陸内でもあまりダンジョンがあまり発見されていないエリアであった。

 

そんな場所に出現したのが――――

 

「あれが、白亜の塔か……」

 

ムラマサが眺める先にある塔。赤茶色の荒野に一際目立つ、異様にまでに純白の螺旋状の塔。

 

想像していた円柱状とはまた違う。それは裾が広がり、上に登るにつれ先が細まっていく円錐形。渦巻くその様は、無骨なエルム大峡谷の中で更に目立たせていた。

 

「それでは、改めて自己紹介なのです」

 

そこに、ぴょコリとルルリがムラマサとアリナの前に出た。

 

「白銀の回復役(ヒーラー)を務める白魔道士の『ルルリ』なのです。わたしがいる限り、パーティーから死人は絶対出させません!」

 

ふふん!、と誇らしげに胸を叩いて見せた。

 

まだ幼さが残る可愛らしい顔立ちをしているが、圧倒的な回復力を持ち、その見た目を合わせて、他の冒険者からは“みんなの癒やし”と呼ばれている。

 

「俺は後衛役(バックアタッカー)の黒魔道士の『ロウ』だ。遠距離専門だから、近距離は頼んだぜ」

 

「私は『アリナ・クローバー』。本職は受付嬢よ」

 

「「え」」

 

「なによ?」

 

「「いえ、なんでも(先日のアレを見たあとだと、絶対受付嬢に見えない)」」

 

「このあいだのアレを見たあとだと、絶対受付嬢に見えねぇよな」

 

「ケンカ売ってる、ムラマサ?」

 

 

 

「しかし、ホントに“裏クエスト”なんてあったんだな……」

 

白亜の塔へと歩き出した一行の中で、ロウがつぶやく。それにジェイドとムラマサは頷く。

 

「たしかにな。遺物(レリック)を壊さないと受注出来ないなんて……今まで誰も見つけられないし、受けられなくて当然だな」

 

「ま、普通遺物(レリック)()()()壊すヤツなんて、そうそういないからな」

 

「そこの男ども、何が言いたい?」

 

「「いえ、なんでも」」

 

そんなこんなで、一行は塔の入口までたどり着いた。

 

白亜の塔は遠目ではそこまで高くないと思っていたが、近くで見ると、迫力を感じる。それは裏クエストのダンジョンだからか、それとも。

 

「そうだ、ダンジョンに入る前にコレを」

 

そう言いジェイドはアリナとムラマサに、銀の装飾に包まれた結晶をそれぞれ手渡す。

 

原石そのままの荒々しく角が立つ水晶の中には(ディア)の印が内包され、“白銀の剣“の紋章が刻まれていた。

 

「なにこれ、遺物(レリック)?」

 

「いや、コレはギルドが開発した”白銀の剣“専用アイテム、”導きの結晶“だな。まさか(オレ)がコイツを使うことになるとはな……」

 

「知ってるの?」

 

「欠片の持ち主が瀕死、それかコイツが壊れた時に、他の欠片が一斉にそこに導いてくれる。緊急連続アイテムだ」

 

「へぇ〜、そんな便利なものがあったのね」

 

「因みに、その装飾はムラマサさんがしてくれたんですよ!」

 

ルルリが嬉しそうに補足をする。

 

そう、この装飾は最近になって付けられたのだ。開発当初は装飾は二の次と言うことで、質素なものだった。

 

しかしジェイドたちが白銀に入ってしばらくのこと、装飾があまりに質素なことをギルマスに進言したところ、ムラマサへと装飾の依頼がされたのだ。

 

当初ムラマサから、装飾系の経験はそこまでなかったので、とりあえず試作を作ってみたところ、これが採用。今に至るのだ。

 

「ふ~ん、あんたこんな事も出来たのね?」

 

「たまたま上手く出来ただけだ」

 

ぶっきらぼうに言うが、嬉しそうにしてることは、アリナだけは分かっていた。

 

「なら、大事にしておかないとね」

 

「あれ、何故かアリナさんの機嫌が良くなったような……」

 

「ほら、さっさと行くわよ」

 

「おい、そう先々行くな」

 

「あ、待ってくださいよ〜!」

 

「「…………」」

 

アリナとムラマサが塔へと入って行き、ジェイドがその後を追いかけて行った。

 

 

「なぁ、ルルリ。もしかしてアリナさんって………」

 

 

「かもしれないです。でも、ムラマサさんの方は………」

 

 

「「ジェイド、可哀想に………」」

 

 

 

 

白亜の塔第1階層は不思議な空間が広がっていた。

 

延々と続く薄闇の中に、巨大な円柱がひたすら乱立している。壁や仕切りには何もないが、時折円柱に取付けられていた遺物の灯りが妖しく淡く光っていた。

 

変なダンジョン、そう言えば簡単だが、その変さは他のダンジョンとは何か違う。時々しかダンジョンに来てないムラマサとアリナでも、それだけは感じ取っていた。

 

そこに―――――

 

「みんな、止まって」

 

はたとジェイドが足を止めた。何かを感じ取ったのか、その場で数秒じっと押し黙る。

 

それと合わせるように、ルルリとロウが武器を構えたので、ムラマサたちも武器を構える。

 

ズシン  ズシン  ズシン

何か重たい足音が近付いてくる。やがて姿を現したのは、三首の巨大な黒犬《ケルベロス》である。

 

地獄の番犬と恐れられる魔犬は、その首全てをムラマサたちに向け、牙を剥き出し低い唸り声をあげる。

 

「うそ……ケルベロスなのです……!」  

 

「まじかよ~……A級ダンジョンでボスやってた魔物だぞ。普通に歩いてるけど……もしかしてボス部屋から散歩にでも出てきたのか……?」

 

冗談を言ってはいるが、ロウは警戒心を更に高める。ルルリの声も強張っていたが、杖を持つ力は緩めなかった。

 

ジェイドは油断なく盾を構え、ムラマサたちを手で制した。

 

「2人はパーティー戦初めてだろう?ここは俺たちが基本の動きを教えます」

 

 

まず最初に盾役(タンク)が先行し敵に攻撃を仕掛ける。これで相手の視線(ヘイト)を操作する。これをするとしないとで、戦局は大きく変わる。

 

 

後衛の補助役のメンバーに危険が及ぶのだ。更に、前衛役(トップアタッカー)も最初は攻撃に参加しない。前衛に視線(ヘイト)がいくと、パーティーの攻撃力を敵に抑えられるからだ。

 

 

「なるほど、了解」

 

「それじゃ、まず(オレ)は下がろう。ここはアリナに任せる」

 

「それじゃ、アリナさんからパーティー戦の練習だ、いくぞ!」

 

「「おう!・はいです!」」

 

『ガアァァァァーーーーー!!!』

 

ケルベロスの雄叫びとともに、魔炎のブレスがジェイドたちに襲い掛かる。だが、ジェイドは臆さず大盾を構え、真正面から迎え撃つ。

 

「スキル発動、《鉄壁の守護者(シグルス・ウォール)》!」

 

ケルベロスの魔炎が大盾に直撃するが、スキルにより、少しも焦げ目を付けさせず弾き散らした。それと同時に剣を抜き、切っ先を床に刺す。

 

魔惑光(ハストル)!」

 

幻惑効果の魔法で、ケルベロスの三首の視線をジェイドの方に釘付けさせた。

 

「よし!アリナさん、今――――」

 

 

ドガンッ゙!!

 

 

ジェイドが皆まで言い終える前に、全てが終わった。

 

ジェイドがケルベロスに魔法をかけたと同時に、アリナは大鎚(ウォーハンマー)を握りしめ、ジェイドの脇を通り過ぎ、強く地面を蹴り上げる。落下の勢いと持ち前の怪力をケルベロスに叩き込む。

 

それにより、一層すべてを震わす音と振動が発生し、巨獣の身体を叩き潰した。

 

ケルベロスもほとんど悲鳴を上げることは出来なかっただろう。いや、悲鳴を上げる暇さえ与えられなかった。巨体はあっという間に霧へと分解され、薄闇の中に消えていった。

 

「なによ、もう終わり?」

 

「いや、どうやらおかわりだ」

 

あっけらかんとするアリナに、ムラマサが声をかける。

 

それと同時に、再び奥から何かの足音が近付いて来た。そして、室温が上がるのを全員が感じ取った。

 

『グルァァァァァァーーーーー!!!』

 

次に姿を現したのは、全身に業火を纏う烈火の虎。ケルベロスと同じくA級ダンジョンのボスでもあった《ボルカニック・タイガー》。

 

「ま、マズイです!あの魔獣は物理攻撃が効きにくいんです!あの業火が物理攻撃を半減させるんです!」

 

ルルリの叫びで、パーティー全員が一歩下がる。

 

ボルカニック・タイガーはただでさえ物理攻撃が効きにくいのに、無理にでも近付けば業火で身体が黒焦げになってしまう。

 

「いくらアリナさんでもマズイな……俺が殿を務めるからみんなは―――――」

 

 

       ビュンッ゙!!   ドンッ゙!!

 

 

またもみなまで言う前に終わった。

 

ジェイドがゆっくり魔獣の方を見ると、烈火の虎の頭部が消えて無くなっていた。そして身体の炎も消え、そのまま霧化して消えていった。

 

「えっと…………」

 

「あぁ、すまん、(オレ)だ」

 

そう言ったのはムラマサであった。そして手にはいつもの双剣でなく、黒い弓を持っていた。

 

「あの〜ムラマサさん?俺なんかムラマサさんが弓を使って倒したように見えたんですけど……?」

 

隣りにいたロウが確認する。

 

「あぁ、知り合いに教わってな。弓もそれなりに使える」

 

「ムラマサさん。私、ムラマサの矢が剣に見えたんですけど……」

 

更にルルリも念のため確認する。

 

「あぁ。普通の矢より威力あるだろ?」

 

「あんたも大概常識外れよね」

 

アリナ(お前)にだけは言われたくない」

 

 

「ルルリちゃん。たぶん今日後衛役(おれ)いらないわ」

 

回復役(わたし)もなのです」

 

「あの2人にパーティー戦が向かないことだけは分かったな……」

 

そう言い、ジェイドはがっくり肩を落とした。

 

 

 

 

 

それからも白銀たちの攻略(殺戮)は進んだ。

 

 

巨大な大蛇は、ムラマサによってぶつ切りされ、その後唐揚げに。

 

 

硬い皮膚で覆われたクマは、アリナによってペチャンコ。

 

 

四本腕のゴリラは、大鎚によるフルスイングで壁の中に埋め込まれた。

 

 

全身鋭利な棘で覆われたイノシシは、匠の技により造られた包丁で綺麗に解体され、猪鍋となった。

 

 

 

「コレ、なんてサスペンス劇場?」

 

「S級冒険者の殺戮ダンジョン物語なのです」

 

「てかムラマサさん、さっきから料理してない?」

 

 

 

 

 

「なんか、今まで一番楽な攻略になるかもな」

 

「ですね。私たちほぼ何もしてませんから」

 

その後もパーティーは難なく攻略を進めている。アリナとムラマサの“パーティー戦の練習”という名の殺戮のおかげで。

 

現れてはものの数秒で塵になる。現れてはすぐ料理されて塵になる。それの繰り返しだった。

 

噂の裏クエストが体感C級ダンジョンより低くなっていた。

 

「いや〜、お二人のおかけで案外あっさり終わるかもな」

 

「かもな………でも俺は、魔物が瞬殺されるたびに、盾役の存在意義が消えてるような……」

 

「ふん!雑魚にかまってる余裕は無いのよ!長引けば私の有給が消費される。それだけは死守する」

 

「そうですよね~……」

 

「それとムラマサの料理が私を待ってるのよ」

 

「ソッスネ」

 

はぁ~…と何回目か分からないため息をつくジェイド。

 

「今更だが、このダンジョンってずっとここにあったのか?」

 

ムラマサがふと聞くと、ロウも疑問を口にする。

 

「それは俺も考えてたんスよ。今まで影も形もなかったのに、もうあんなに魔物が存在してた。このダンジョンって、人間には見えなくて、元からここにあったと言うことですかね?」

 

「そう考えるのが自然か……だが何故隠す必要があったのか……」

 

「そもそもダンジョンって、先人たちが造ったんでしょ?私たちが分かる訳ないわよ。ある日突然、姿を消したんだから」

 

かつて大陸を支配してた先人たちについては、アリナはそれほど知識は深くない。ごく一般的なことしか知らない。

 

(ディア)の怒りなのです」

 

アリナの言葉に、ルルリが答えた。

 

「神の……怒り?」

 

「先人たちは探究心が強くて、より強力な力を求めた。たくさんの研究をしていたことが分かってるんです。強力な性能を持つ遺物(レリック)もその名残なのです―――――」

 

 

過去に確認されたダンジョンの中には、研究施設と思われるものが多少確認されていた。

 

イフールの街で開催されている“百年祭”も、元々は(ディア)から力を得るための儀式だと言われている。

 

 

「――――きっと先人たちは、研究に没頭するあまりに、神の怒りに触れたと思うのです」

 

 

「ずいぶん突拍子もない話ね」

 

「そうしなきゃ説明がつかないってことだろう。でなきゃ、どうやって先人は足跡残さずある日ばったり消えれるんだよ」

 

「ムラマサさんの言う通りです。とんでもない魔物との生存戦争に負けたとしても、大陸中の人間を1日で滅ぼすことは不可能だ。二百年前に冒険者が大陸は渡って来て、冒険者ギルドが創設され、調査が進むようになったが、ほとんど魔物に荒らされていたらしい。おかけで解明が進んでないのが現状だ。けど、ここで新しいダンジョン発見は、先人の調査としてはありがたいだろうな」

 

「私としては、残業が増えるだけだから、別に進まなくても良いけどね」

 

 

 

 

 

その後も一行は難なく進んで行った。最後辺りは魔物の方が、彼らに道を譲るように逃げて行ったが……まぁ攻略が早く終わりそうなので、問題はなかった。

 

 

「なんか魔物の目が半泣きになって、震えてたような……」

 

 

「ロウ、無視なのです。きっとこころ優しい魔物だったのです」

 

 

「俺、もう盾役辞めようかな……」

 

 

 

それからも一行は進み続けた。そしてついに、その足が止まった。

 

 

 

「なによ、この扉?」

 

一行の眼の前には、巨大な鉄製の二枚扉。荘厳な装飾と複雑な魔法陣が彫られた鉄扉である。

 

「ボス部屋に続いてそうだな」

 

「やっとか……はぁ~長かった」

 

「いや、今まで一番早く着いたっすよ?」

 

「たぶん歴代最速なのです」

 

「なんでも良いから、さっさと殺るわよ」

 

「殺る気出してるところ悪いが、どうやらそうもいかないようだ」

 

アリナが肩を回しているとこに、ムラマサが止めた。よく見ると、鉄扉に鍵穴があり、男手全員が押しても引いても、びくともしなかった。

 

「ちょっと待ってよ……鍵なんて何処に――――」

 

アリナが最後まで言い終わるより早く、ジェイドが突然、背中の盾を抜き放った。

 

同時にムラマサはアリナを自分の背後に隠した。

 

「ちょ!?いきなりなに――――」

 

「ハハァ!こいつは誰かと思ったら、メンバーが足りない白銀さまじゃねぇか!」

 

アリナの声を遮って、薄闇から笑い声とともに現れたのは、数人の男たちだった。先頭には茶髪の剣士が、ジェイドの大盾を見て眉をひそめる。

 

「あぁ?どうした、盾なんて構えて?俺たちと一戦ヤろうってか?」

 

「いや、ただの用心だよ」

 

「ハハハ、臆病なこって。まぁパーティーの人数が足りないから仕方ねぇよな?」

 

アリナはムラマサの背後でフードを深く被り、こっそり現れた男たちを観察した。

 

先頭に立ちニヤニヤ笑ってるのは、長い茶髪を後ろでくくった若い冒険者。おそらく彼がリーダーだろう。その他の男たちは彼のパーティーメンバーか。

 

ただし、全員精鋭の白銀たちを見下すような視線を送っていた。

 

「おやおや〜よく見たら、()()()()()()をしてる鍛冶師のムラマサさんじゃねぇかよ〜?」

 

「よぉ、息災だったか、“ルーフェス”」

 

ムラマサも、彼らにはあまり良い印象を持ってないのか、言葉にあまり感情をこもってないように、アリナには聞こえた。

 

すると、ルーフェスと呼ばれた男はゲラゲラと勝ち誇ったように笑い出す。

 

「こいつは傑作だ!!頼みの綱の“処刑人”は手に入らかったから、()()()()()()の鍛冶師様に代わりを頼むとは!!精鋭様も落ちたもんだよな?」

 

ルーフェスがそう言うと、他の男たちもハハハと、笑い出す。

 

「まぁもっとも。あんな正体不明のイカサマ野郎なんかに頼ってる時点で、白銀なんて終わってるだけどな」

 

「「()()()()……?」」

 

ピクリ、ムラマサとジェイドの眉が跳ね上がる。

 

「そうだろ!ヘルフレイムドラゴンをぶっ飛ばしたのも、レイドボスを一撃で倒したのも全部インチキに決まってる!でなきゃ正体を隠すわけがねぇ!何か後ろめたいがある証拠だ。そんなことも見抜けないギルドは、間抜けもいいとこだな!」

 

ルーフェスたちがひとしきり笑いあげ、勝利を確信したのか、ジェイドたちに小さな鍵を見せた。

 

「あ、それって!?」

 

ルルリが声をあげる。

 

ルーフェスが持っていたのは、今彼らの眼の前にある鉄扉の鍵なのだ。

 

「どうやら、神さまは俺に味方してくれるらしい……隠しダンジョンには、他には無い特別な遺物があると言われてる。見てろよ、俺は処刑人よりももっと強い力を手に入れてやる!」

 

ギラギラと煮えたぎる獰猛な野心を見せ、唸るように呟いて、彼らは鉄扉の向こうへと消えていった。

 

 

バタン…

 

 

「なによ、あいつ等……」

 

「確かあれでも一級冒険者のパーティーなんだろう?」

 

「そうです……ギルド内でも白銀の次に実力を持ったパーティーだ。けど……見ての通り、あんな性格で」

 

「そうなんです!何かとすぐ突っかかって来るんです!」

 

プンスカと怒るルルリ。どうやら今回のような嫌がらせは一度だけでは無いのだろう。

 

あのルーフェスを含む男たちは、元々白銀に志願していたが、選ばれなかった者たちなのだ。そのため、度々ジェイドたちの前に現れては、邪魔ばかりしてくるのだ。

 

「さて、どうしましょうリーダー。アイツらが鍵を持って行ったままだから、俺たちはこの先に進めませんよ?」

 

「それは困る。私の有給がかかってんだから」

 

「アリナさんの有給はともかく……確かにこのまま指を咥えるのはマズイ――――」

 

 

ガチャ  ギイィィ……

 

 

「開いたぞ」

 

「「……えっ?」」

 

ムラマサの一言で、全員が扉の方を見ると、鉄扉が開いていた。

 

「………ムラマサさん。鍵持ってましたっけ?」

 

「いや、()()()

 

チャリンと見せたのは、先程ルーフェスが持っていた鍵だった。

 

「えぇ!?なんでムラマサさんがそれを!?てか()()()!?」

 

「もしかして……それもスキルなのです?」

 

「『武器投影(トレース・オン)』の応用だよ。武器以外のものはそう長く存在出来ないし、脆い。けど、これくらいなら簡単に作れる」

 

「スゲー!さすがムラマサさん!ウチのたまに頼りないリーダーとは大違いッス!」

 

 

グサッ!

 

 

「グハッ!!」

 

「そうね、どこかのチクリクソストーカータンクよりも、優秀よね」

 

 

グサッグサッ!!

 

 

「ゲボヴァッ!!」

 

 

バタリッ

 

 

「あぁーー!?ジェイドの(ライフ)が虫の息なのです!!」

 

「……早く行くぞ」

 

 

 

「ぶっ壊して進もうと思ったけど、手間が省けて良かったわ」

 

「なら作って正解だったな」

 

死にかけのジェイドを、あの場に放置するわけにもいかず、ロウとルルリの必死の励ましで、なんとか立ち直させ、先を急ぐ一行。

 

鉄扉の先は、大きなホールだった。一際濃いエーテルが充満し、明らかにボスが居たような気配があったが、影も形もなかった。

 

ルーフェスたちも姿が無く、次の階層へと続く階段が延びていた。

 

「もしかして、これで一層は終わりなのです?」

 

「……ルーフェスたちが先に倒したにしては早すぎる。おかしい……階層にボスがいないなんて今までなかったのに―――」

 

「いないなら、なお好都合。早く行くわよ」

 

怪訝に首をひねるジェイド。しかしアリナに急かされ、一行は先に進んだ。

 

 

二層は一層と違い、長い回廊が延びていた。左右には装飾の施された荘厳な石柱が等間隔に立ち並び、奥まで続いている。

 

「………ジェイド、どう思う?」

 

「はい……魔物の気配が感じられない。どういう――――」

 

 

ぎゃあぁぁぁーーーーーー!!!

 

 

「「っ!?」」

 

回廊の奥から聞こえたのは男の悲鳴。かすかではあったが、全員はっきり聞こえた。

 

「悲鳴なのです!?」

 

「今のって……さっきの奴らか!?」

 

「あぁ、ルーフェスたちだ!」

 

「急ぐぞ!」

 

一行は悲鳴の聞こえた方角、回廊の奥へと駆け出した。

 

先には二層のボス部屋らしき場所があったが、そこももぬけの殻。あるのは半開きの扉だけだった。

 

そこにジェイドが真っ先に飛び込み、中を確認すると

 

「な……っ!?」

 

 

そこには床に大きく描かれた巨大な魔法陣。そこに冒険者3人が全身血だらけで倒れていた。

 

 

 

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