・この作品は物語の作者の技量不足のため「アーサー王物語」をかなり曖昧且つ適当に描写してる。
・「そこはちゃうんやで」という致命的な相違、無理な展開が発覚した場合は出来るだけ修正しますが、どうしようもないところは生暖かい目でスルーしてください。
・亀歩且つ不定期更新である。
・「俺TUEEEEE」「ハーレム」などの地雷要素を含む目を覆いたくなるような駄文である。
・新設定の開示に伴い、原作との大幅な乖離が発生している。
以上の点が受け付けられない方は素直にブラウザバックを推奨します。
また注意事項が増えたりするかもしれませんので
『――――せせこましい、狡すからい。理屈臭く概念概念、意味や現象がどうだのと、呆れて我は物も言えぬわ。それで貴様ら、卵を立てたような気にでもなっておるのか。
――――嘆かわしい。くだらない。なんと女々しい。男の王道とは程遠い』
――――――――――中院冷泉
――――――――――――――聖杯戦争。
万能の願望器たる『聖杯』を求める七人のマスターと、彼らが召喚し、契約した七騎の霊長の守護者と呼ばれる
他の六組を悉く排除し、最後に残った一組にのみ聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられると言われている。
その戦争の舞台である冬木の街の、二つ目の魔導の館。蟲にまみれ、魔術師として最早破綻した間桐家に、その男は居た。
間桐雁夜。
つい先日に四度目となる聖杯戦争に参加するため、魔力消費の激しい英霊召喚に備え消耗を抑えようと、自室の床に倒れている。
否、既に消耗を通り越して死相すら浮かんでいる。
そう、もう彼の命は長くはない。
彼は殆んどの衰退した間桐家でありながら、確かに普通の域だが魔術回路を持って生まれた。
しかし彼は魔導の一切を捨て、間桐家を出た。
それも当然である。
魔術を学び、魔術師として純粋にいられるならば話は違っただろうが、しかし間桐家は違った。
間桐臓硯。
間桐家は、その500年を生きる妖怪に支配されていた。
仮に誰かと結婚すれば、その女性は蟲に体を凌辱され、改造、ただ間桐の跡継ぎを産む胎盤としてだけの肉塊にされてしまう。そして子を産んだら自分達は蟲の餌だ。
誰がこんな家に居たがるのだろうか。
雁夜はそんな魔道とは何の関係も無く、一般人として生きてきた。
誰かを好きになり、しかしその初恋の女性は自分では無い男性を好きになり、だが娘に囲まれて幸せそうだった。
―――――彼女の娘が、間桐に養子にされると聞くまでは。
彼女が嫁いだ家は魔術の家系だった。それも間桐とは数百年前に盟約を結んだ家。
勿論臓硯の様な存在は居らず、彼女の夫――――時臣もそんな外道では無いと彼女から聞いていた。
しかし彼女の娘は間桐に居ると聞く。
そして彼女も、悲しみながらそれを受け入れている。
――――だが、よりにもよって何故間桐に!!?
そう叫ばずには居られなかった。いや、きっと彼女は知らないのだろう。
あの家がどんな地獄か。
そして恐らく、彼女の娘を臓硯が欲した理由も解る。
雁夜には魔術回路が自分より少ない兄が居るが、その兄の子供は魔術回路が全て閉じていたそうだ。
跡継ぎが居ない間桐は、当然それを外部に求めるだろう。ならば何処からだ?
聞くまでもなく、間桐家と同じ彼女が嫁いだ御三家の内の一つ――――遠坂家だ。
彼女の娘は姉妹。そしてその両方が凄まじい才能を持っているらしい。それを見逃す臓硯ではない。
つまり――――――
―――――雁夜が家を出たから、彼女の娘――桜が間桐の養子なんかになったのだ。
元凶は臓硯だ。
その片棒を担いだのは時臣だ。
しかしその原因の一端は雁夜にもある。
そして今、雁夜は間桐家に居る。
臓硯と取引をし、近々行われる聖杯戦争に勝利し、聖杯を持ってくる事で、桜を解放するという物だ。
魔術師とは幼い頃からの鍛練を重ねることでその実力を得る。しかし雁夜自身にはその積み重ねた時間が無い。故に雁夜は、自分の命を捨てた。
彼は体に刻印蟲を埋め込み、無理矢理急造の魔術師になり、令呪を得てサーヴァントを召喚しようとしているのだ。
その代償が、余命一ヶ月。
(……構わない。)
桜を助けるためなら、この命を捨てよう。
それが彼なりの桜への償いだった。
(帰すんだ……桜を、あの頃の様な場所へ……)
思い出すのは、昔葵達に会いに行った時。
離れた場所で葵と話していた雁夜には気付かなかったろう、姉妹で仲良く遊んでいる二人。
花の様な笑顔を向ける桜と、恥ずかしそうにツンとしている凛。そしてそれを微笑ましく見守っている葵。
あの光景を雁夜は忘れない。
あの光景こそ、桜が帰るべき場所なのだから。
――――しかし、
「遠坂……時臣ィ……」
それとは別に、雁夜の目が憎悪に染まる。
何故、奴は桜を間桐なんかに養子に送った。
何故、奴は葵さんを哀しませた。
何故、奴は……桜をこんな地獄へ追いやったッ!!?
常人なら容易く発狂する、拷問とも言える間桐の業は、刻印蟲に体を蝕まれる苦痛は。雁夜から理性を少しずつ奪っていった。
――――奴さえ居なければ。
人は愛情を知ると、憎しみのリスクを負う。
胸のうちに仕舞っていた時臣に対する嫉妬が、殺意に変わっていたのだ。
雁夜は気付かない。
時臣を殺すと言うことは、想い人の愛する夫を、救うべき少女の父親を奪うことを意味するのを。
その矛盾に気付かなければ、雁夜は破滅するだろう。
そして彼は起き上がる。
聖杯を勝ち取るための戦いに向かうために。
そしてその時は来た。
「―――されど汝は、その眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―――」
普段は雁夜や桜を嬲っている蟲蔵には、今は夥しい程の蟲は姿を消し、英霊召喚の為の魔法陣と英霊召喚の触媒があった。
その場にいる人間は雁夜唯一人。そして元人間にて、現在文句無しの人外である500年を生きる老獪、間桐臓硯。
その醜悪な老人の姿は、更に醜悪な蟲の塊による端末である。
間桐臓硯が人外足らしめている要因は、人の体を捨て魂を蟲に移し人を食らって生き永らえている事だ。
故にこの臓硯を粉微塵に粉砕しようが無駄であり、殺すには魂を納める核となる蟲と、本体の代用に成りうる魔力ラインに繋がっている蟲全てを殺し尽くすか、魂そのものを何らかの方法で浄化、又は殺すしかない。
『雁夜よ、お主は他のマスターと比べ、些か以上に劣っておる。故に、召喚の際詠唱を一節加えるのじゃ』
ソレは、狂戦士のクラスでサーヴァントを召喚する事を意味する。
成る程、魔術師としての格は、急造の魔術師である雁夜と、幼少から魔術の鍛練を行っている正規の魔術師とは比べ物にならない。
そしてサーヴァントのステータスは魔力量と魔術師としての技量に左右される。どちらも劣っている雁夜が召喚しても、どれだけ優れた英霊でも弱小に堕ちる。
故に、狂化によりステータス補正がある狂戦士を選ぶのも一手であることは確かだ。
ソレが、マスターが雁夜でなければの話である。
バーサーカーはステータス補正の対価である燃費が最悪というデメリットがあり、強力なサーヴァントには先ず使えないクラスだ。
精々弱小の英霊に宛がう、キャスタークラスに次ぐ外れクラスなのである。
それは偏に、歴代のバーサーカーの敗退原因が全てマスターの魔力切れによる自滅だからだ。
故に、規格外の魔力保有量を持つマスターとはとても言えない、寧ろ既に半死半生で、一ヶ月保てば御の字である雁夜が絶対選んではいけないクラスだ。
そんなことがわからない臓硯ではない。
この老害は、ハナから雁夜に期待などしていない。
寧ろ臓硯にとって雁夜がもがき苦しむ事こそが目的なのだから。
そして、魔術行使の代償である体内の刻印蟲が雁夜の身体を喰らい、至るところから血が吹き出しながら英霊召喚は行われた。
現れたのは、二十代の黒い美青年だった。
真ん中で分けられたサラサラな漆黒の短髪に非常に整った容姿。
黒い貴族服を纏い、更に黒い外套を着流している。
腰にはこれまた黒い軍刀の様な剣が刺してあり、纏う雰囲気は人間を超越していた。
否、既存のサーヴァントすら超越していた。
そして男の閉じられた目が開かれ、暗く輝く宝石のような紫の瞳が雁夜を映し、雁夜は心臓を掴み取られる感覚に襲われた。
ソレだけではない。震える身体は強制的に固められ、指一本動かせない。本来魔術行使による刻印蟲の肉体の捕食活動すら止められた。
一睨み、いやこの英霊はそんなつもりは無いのかもしれない。異様な間桐に対するほんの少しの警戒からかもしれない。
なのに、雁夜の身体は蛇を前にした蛙の如く動かなくなった。
「――――なんじゃと」
故に、その召喚されたサーヴァントを視て漏らした驚愕の声の主は、雁夜ではなく臓硯だった。
臓硯の疑問は2つ。
1つは、バーサーカーとして召喚したサーヴァントの、理性的な面貌だった。
それはバーサーカーとしてあり得ない。いや、狂化ランクが低ければ有り得るかも知れないが。
そして2つ目が、そのステータスの高さ。
別に膂力や宝具のランクが高いのは納得がいく。しかし魔力ランクが高いのはどういうことか。
本来魔力のランクはマスターに依存し、比例する。
魔力量が低い、それこそ刻印蟲が必要になる雁夜がマスターだというのに、A++というあり得ない数値が出ていたのだ。
―――――無尽蔵に魔力を内包しているとでも言うのか、この
これはマスターが規格外だとしてもあり得ない数値だ。それこそ才能溢れる桜がマスターでもこの数値には届かないだろう。
幾ら触媒通り、アーサー王伝説の円卓の騎士最強と称される、あの湖の騎士といえどあり得ない。
このような数値、生前の、それこそ英霊の全盛期である肉体を持っていた頃でしか―――――
「――――――臭いな」
「!」
「臭い、鼻が曲がる」
その言葉が、臓硯の聞いた最期の言葉だった。
一閃。
その一太刀は、雁夜にも臓硯にも剣を何時抜いたのかすら解らないまま、臓硯の身体が縦にズレた。
「――――――は?」
雁夜が思わず呆けた、信じられないと声を吐く。
本来ならば、端末である目の前の臓硯など、幾ら斬ったところで直ぐ様蟲を補充すれば幾らでも再構築可能な蟲の木偶。
だというのに、崩れ落ちた臓硯の姿をしていた蟲群の残骸は、ピクリとも動かない。
そして長年暮らしていた雁夜には常に聞こえていた、屋敷の中を蟲が這いずる音すら聞こえなくなっていた。
――――――まさか、まさかまさかまさかまさか。
殺したというのか。
間桐の人間にとっての恐怖の権化を。五百年生きた魔術師を。
たった一太刀で――――!!?
「何故、どうやって」
思わず恐怖も忘れて口にした疑問を、怪物は意外にも律儀に答えた。
「生き物は、両断すれば死ぬだろう」
―――――――――意味が分からない。
返って来た答えは、常識的なようで何一つ雁夜の求める答えになっていなかった。
成程、生き物は頭から両断されれば普通死ぬだろう。
しかしそれはあくまで常識。
そして魔術師とは常識に対する脅威だ。そんな理屈は通じない。
だからこそ、本来蟲の群体たる臓硯の端末を両断したところで意味は無い筈なのだ。
――――――だが臓硯は死んでいるではないか。
そしてもう一度忘れかけた恐怖が思考を占めるも、予感が時間が経つにつれ確信に変わるその前に、バーサーカーとおぼしき謎のサーヴァントは、もう一度雁夜を視た。
「………ッ、お、お前は」
今度は何とか口を動かす事ができたが、再び振るわれた黒い刃が雁夜を何度も切り裂いた。
混乱し、混濁する意識の中で、雁夜は確かに聞いた。
その言葉の意味も解らないが、念話越しに確かに聞いた怪物のようなサーヴァントの言葉。
もしかしたら雁夜が、このランスロット・デュ・ラックの本当の声を最初に聞いた人間だったのかもしれない。
『―――――ッべー。マジヤッベー。ずっとモンハンかバイオハザードしてたから伝奇ものだって忘れてた。でも仕方無いね、俺虫苦手だもの』
本当は0時に投稿したかった……。
次回の更新はストックが五話溜まってからになりますので悪しからず。
修正点は随時修正します。
感想待ってまする(*´ω`*)