湖の求道者   作:たけのこの里派

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最初に感じたのは憧憬。(es fragt und führt aus.)
求めしものは研鑽(Habend sich zuerst gefühlt hat eine Sehnsucht.)
究極の才、至高の剣。(Äußerst Talent Höchstes Schwert.) ならば高め求めよう己が限界を(und eine Sache verfolgt seine Studien.)
此処で終わり? 否(Schließlich ist es nicht hier.)
まだ斬れるまだ終わらぬ(Es kann immer noch schneiden.)
相対する全ての敵手に感謝を。(Alle werden mit Fleisch und Blut als Essen benutzt.)
全てを糧に血肉とし、(Laß alles Fleisch und Blutessen sind)
この命が尽きるまで(Bis dieses Leben erschöpft wird)挑み続けるのだ(Es setzt das Herausfordern fort.)
この果てること無き求道の彼方へ(Zu dieser Richtung, die Wahrheit ohne ein Ende verfolgt)

――――――――――――求道踏破(Das Streben nach Wahrheitreise)



とまぁ、頂いた感想のものを思わずドイツ語に翻訳して載せてみました。
えがったです。有難う御座います。
今回はオリヒロインのお話。例によって原作から変化してます。




第二夜 私は魔術師だと言ったな? アレは嘘だ。

 

 ────────初めて彼に会ったのは、私が身分を隠すために変装して槍試合に参加しようとした時だった。

 

 我ながら安い女と思ったが、一目惚れだった。

 彼は彼の王が主催した槍試合で、優勝した者に賞金を与える役として。

 私は槍試合の選手として。

 

 私は彼とまた会いたい、言葉を交わしたい一心で、槍試合で優勝した。

 すると彼は、賞金だけでなく彼の所持品である短槍をも与えてくれた。

 

 天にも昇らんばかりの気持ちとやらを、私は初めて知った。

 

 このまま槍の腕を磨いていけば、また彼と会える切っ掛けになるのではないかと。

 

 しかしカーボネックに戻った私を待っていたのは、幽閉の時だった。

 自分で言うのもなんだが、私が『この国で最も美しい』という評判を立てられた為に、かの王の異父姉であり魔法使いから教えを受けた魔女に幽閉されてしまったのだ。

 幾ら槍の腕があろうと、魔女の魔術に私は抗えなかった。

 それから何れ程の時が経ったか、突然私の幽閉の時は終わった。

 

 それは斬撃だった。

 

 幽閉されていた塔を文字通り真っ二つにした斬撃が、私を助け出したのだ。

 その時私が眼にしたのは、腕を斬り落とされ逃げようとする魔女と、私が恋して止まない彼だった。

 それから彼は、私の国の王である祖父の決して癒えない呪いも斬り捨て、国を救いすらした。

 

 彼は、私にとって間違いなく英雄だった。

 

 私の恋は愛に昇華され、より一層彼に惹かれていた。

 彼が彼の国に帰還する数ヶ月間、それが私の今生で最も幸せな時間。

 

 彼が帰還した後、彼の国が侵略者に襲われたと聞いていた。

 彼が居るならば何の問題も無いと思いつつ、国の魔法使いが止めなければ彼のくれた槍を持って戦場へと駆け付けた程だ。

 その際遠くを見る魔法で、状況を見守った。

 

 しかし私が見たのは、国を覆う大嵐を始めとした天変地異。

 荒れ果てた戦場に人知を超えた神々の如き戦い。

 そして──────狭間へと呑み込まれる彼と、崩れ落ちる彼の王だった。

 

 それからだ。私が、後に侍女となる魔法使いに魔術を学び始めたのは。

 彼を育てた湖の精霊と契約すらした。

 彼は決して死んでいないと、取り戻せるのだと信じて。

 

 事実湖の精霊と契約した際、彼は世界の外側に跳ばされたのだと知った。

 

 世界の果てに行こうとも、彼は存在しない。

 ならば私も世界の外側に往こう。ソレができなくとも、彼を連れ戻そうと。

 

 そして見付けたのは、聖杯という願望器による彼の救出だった。

 

 だが私は、その生で聖杯へと辿り着けなかった。

 

 まだだ。まだ諦めはしない。

 寿命程度で、彼を諦めてたまるものか──────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二夜 私は魔術師だと言ったな? アレは嘘だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランスロットが間桐雁夜の召喚にビビっと来て、その場のノリで世界へと帰還する数日前。

 

 魔術協会の拠点である時計塔。

 其処にある一室に、二人の男女は椅子に向かい合って座っていた。

 男女といっても、二人の関係は異性のそれではなく教師と教え子のソレだったが。

 

 薄く青のグラデーションがかった美しい白銀の長髪。抜群の美貌にスタイルの絶世の美女。

 そんな彼女のルビーの如き紅眼で、目の前の男─────少年の提出した書類(レポート)を読んでいた。

 

「悪いことは言わん。今すぐ自分で処分しろ」

「なッ!?」

 

 淡々と告げられた言葉に、二十に届くか届かないかの、背の低さと童顔で更に幼く見える少年の顔が歪む。

 ウェイバー・ベルベット。

 彼はどうしようもなく未熟で、若かった。

 

「どっ、どうしてですか!?」

「お前の論文は此処の老人達や貴族共にとって鬱陶しい思想だ。もう一度言うぞ、邪魔だと思われる前にお前自身の手で処分しろ」

「っ……!」

 

 彼は祖母から数えて三代目と、魔術師としての歴史が浅い家柄の出身で、それを努力と才能でどうにか補おうと奮闘していた。

 白銀の美女に渡した論文も、また血筋ではなくそれ以外のアプローチに関する物だ。

 

「魔術協会上層は、残念ながら腐敗しきっている。唯でさえ百年単位で席は決まっていて、そしてお前のような考えを持っていてはその内潰されるからな」

「で、でも……」

「以前言っただろ。お前はお前の立場を覆せるほどの魔術の才能は無い。お前にはお前にしか出来ない事をやれ」

 

 教師。

 ウェイバーには人にモノを教える才がある。

 しかし魔術は学問であるとされると同時に、先天的な物だ。

 ウェイバーがどれだけ術式に改良を施そうとも、魔術に関しては凡才極まりない彼では彼の思う理想には程遠い。

 彼は、それを認められないだけだ。

 

「ケイネスの助手をしてから、奴の評価も良いだろう」

「しかしッ……!」

 

 最近の好評価も、魔術師としての物ではない。

 ただそれが不満なのだ。

 

 そんな中、ドアをノックする音が鳴る。

 

「入るぞユグドミレニア」

「アーチボルト先生!」

「丁度良い。ケイネス、コイツを連れていったらどうだ」

「何?」

 

 イキナリ話題を振られたオールバックの金髪の、プライドの高そうな男性が部屋に入ってくる。

 

 九代続いた由緒正しい魔術師の家系・アーチボルト家の正式後継者。

 天才の誉れも高くロード・エルメロイの二つ名で知られ、若年ながら時計塔での一級講師の地位についている神童、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。

 

「戦争に、コイツを連れていったらどうだと言ったんだ」

「えぇ!?」

 

 そして、此度の聖杯戦争に参加するマスターに選ばれた魔術師の一人である。

 

「……足手纏いだ。確かに彼の教鞭の才は認めよう、だが魔術師としては二流がいい所だ。聖杯戦争に於いて彼を連れて行く意味がない」

 

 傲慢に、しかし的確にウェイバーの事を評価する。

 一流の魔術師の競い合いには邪魔だと。

 

「英霊などの人を超える存在との接触は、得難い影響を与えるだろう。お前にとっても、ウェイバーにとってもな」

「貴様の才能探しは莫迦に出来んが……」

 

 それを差し引いても、ウェイバーは不要だと判断する。

 折角婚約者と二人きりになれるのに、という私情も入っていた。

 

 「それと、ソフィアリ嬢は絶対に連れて行くな」

 「どういうことだ」

 

 そんなケイネスの心情を知ってか知らずが、彼女はケイネスに一冊の資料を見せる。

 タイトルは『魔術師殺し』。

 それはアインツベルンのマスターであろう人物を調べたものだった。

 問題はその戦術。 

 

「何だコレは!?」

 

 狙撃、毒殺、公衆の面前で爆殺。標的が乗り合わせた旅客機ごと撃墜と、とある単一宇宙体が聞けば「流石ブッチーワールドのゴルゴ」と述べるだろう。

 

「錬金術専門のアインツベルンが選んだ此度のマスター候補だ。君がソフィアリ嬢を連れていけば、間違いなく人質に取られて詰みだろうな」

 

 そしてそのままサーヴァントの自害を命じさせられれば、ケイネスは呆気なく敗退する。

 そんな光景を脳裏に浮かばせ、憤怒と侮蔑に顔を歪ませる。

 

「魔術師の面汚しめが……!」

「恐らく魔術使いだ。お前とは違う価値観の人間に何を言っても無駄だろうな。それに他には代行者まで参戦するようだ。お前は確かに魔術師としては天才だが、異端討伐のプロとまともに戦って死ぬ可能性がないとは言い切れないだろう」

「むぅ……」

 

 代行者。

 教義に存在しない「異端」を力ずくで排除するスペシャリスト。

 法王を支える百二十の枢機卿たちによって立案された、武装した戦闘信徒。

 その戦闘力は、サーヴァントにすら届きうる。

 流石に、神童と呼ばれるケイネスでも100%勝てると断言できる自信は無かった。

 

「そこでコイツ(ウェイバー)だ。万が一君が敗北した後に、君の魔術刻印をアーチボルトに持ち帰る人間が必要だ」

「…………成る程な。しかしそれは貴様もそうだろう」

 

 ケイネスは彼女の右手に視線を移す。そこには聖杯戦争の参加者の証したる令呪が確かに刻まれていた。

 

 ケイネスが彼女に会いに来たのも、牽制する為だ。

 ケイネスが好敵手と認める、唯一の存在であるが故に。

 

「ソフィアリ嬢にまともなアプローチが出来てから出直してこい。どうせ自分が何れだけ優れているかや、高価な贈物しかしていないんだろう馬鹿者」

「ぐふぁッ!?」

 

 図星に胸を押さえるも、そこには好きな女性に対して及び腰な男しか居なかった。

 こうなると魔術師の才能とかは関係がなく、ケイネス個人の魅力の問題になる。

 ケイネスの資質や才能、そして経歴は完璧である。

 問題はその性格だった。

 傲慢でプライドの高い性格。

 魔術師以外の人種を完全に見下しており、同じ魔術師でも血筋の卑しい者は歯牙にもかけない。

 彼としてはあらゆる結果がついてくることが「当然」であるという認識であり、その為の努力もそれに伴うあらゆる結果がついてくることが「当然」。

 故に自身の意に沿わぬ事柄など世界に一切ないと信じていた。

 目の前の、本物の鬼才を前にするまでは。

 

 そんな彼のアプローチなど、目に見えている。

 

「まぁ、お前とは決闘形式でするつもりだから安心しろ。私に勝ったらソフィアリ嬢へのエスコートのやり方の一つでも教えてやる」

「…………フン。来いウェイバー・ベルベット。今から聖杯戦争の算段をする。勿論、君にそれだけの覚悟があるのならばな」

「─────! はいっ!!」

 

 一流の魔術師同士の戦い。それを観る事が出来る幸運。英霊と対面でき、何よりあの神童のケイネスが自身を連れて行くという事実が、ウェイバーは嬉しくて堪らなかった。

 コレで自分は更に成長できると予感して。

 

 ケイネスに付いていく、喜色に染まったウェイバーは、自身の才能を見出だしてくれた恩師の名前を、感謝を込めて呟く。

 

「ありがとうございます─────」

 

 彼女の名は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────エレイン・プレストーン・ユグドミレニア?」

 

 ドイツの雪の降る山奥に建てられた城の中で、色素の抜け落ちた白髪の美女─────アイリスフィール・フォン・アインツベルンが、話題を振った己の夫に問いを投げ掛ける。

 

 彼女の夫─────衛宮切嗣は、令呪の刻まれた手でキーボードを叩き、プリンターで資料を印刷した。

 

「ユグドミレニアという、かつて北欧からルーマニアに渡ってきた魔術師でね、歴史も決して浅くなく、事実当時の長は時計塔で『色位』。下手をすれば『冠位』に登り詰めたであろう政治力を持っていたようだ」

 

 ある魔術師が流した噂が広まり、周囲は掌を返し彼を冷遇するようになるまでは。

 『ユグドミレニアの血は濁っている。五代先まで保つことがなく、後は零落するだけだ』というありもしない、しかし呪いのような風評。

 

「彼───彼等はそれから一族の血を一つに束ね、更に他の魔術師の僅かな力も取り込み続け、そうして出来た集大成が彼女という訳だ」

 

 ダーニックから魔術刻印を受け継いでいる、くだらない噂を排した五代前(ダーニック)を遥かに超え色位に登り詰めた鬼才。

 

 その美貌と、才能を探し当てる事から生徒達からは好評。

 縁談も数多く持ち掛けられたが、悉くを断っており、また単独で死徒二十七祖の『混沌』を屠った功績も存在する武闘派魔術師。

 その姿と美貌から、『戦姫』という二つ名すらあるほどだ。

 

「単純な戦闘力ならサーヴァント並だろう。だが、彼女が魔術師である限り、僕に勝算が十分ある」

 

 魔術師相手なら切嗣は百戦錬磨だ。

 格上は当然。それを覆してこその魔術師殺しだ。

 何より油断している頭に死角から鉛玉をブチ込むのだから、まともに戦うわけではない。

 逆にこれだけ魔術の技量が高ければ、ある程度戦術も予測できるというのもある。

 

 だが、切嗣は一つだけ勘違いしていたことがある。

 尤もそれは、恐らく彼女のサーヴァント以外は知らないため、調べても精々経歴しか調べられない現状仕方のないことなのだが。

 

 彼女、エレインは根源の渦など欠片も興味がなく、己の最も信頼する武器は魔術ではないことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────どうだったか? ランサー」

『結界も設置できたぜ。後はバレない範囲で地脈から魔力を集めるようするだけだな。つかアンタ、召喚するの早すぎだろ』

「時は金なり、時間は正しく価千金だぞ? もし拠点にする場所がバレていれば、地雷を仕掛けられていたかも知れないしな」

『どんな魔術師だソイツは』

「魔術使いだからな、敵のマスターの一人は」

 

 ランサーと呼ばれた、姿なき男は自身のマスターの徹底ぶりに呆れた声を出す。

 何せ冬木まで一瞬で移動し(・・・・・・)、目立たない一軒家を買い取り拠点としたのだから。

 

「私が一体何年聖杯の研究をしていると思う? 冬木にあらかじめマーキングしておけば転移とて容易い」

『たぶん他の奴が聞いたらキレると思うぜ? ソレ』

 

 エレインは個室の机の引き出しから取り出したノートパソコンを起動させ、ケイネスが取り寄せた触媒に関する運送データを立ち上げる。

 

『ほぉう、コイツは便利だな』

「征服王イスカンダルのマントの切れ端か……ケイネスが御しきれると思うか?」

『そりゃ無理だろ。そもそも英雄、それも大英雄を魔術師如きが従えようって考えが間違ってる』

「私も魔術師だが?」

『俺と槍で打ち合える奴がただの魔術師であってたまるか』

「まぁ、コレも努力の賜物だ。何せそれこそ魔術で人でありながら伸ばせるだけ伸ばした前世で、欠かさず振るい続けてきたのだからな。それに、彼女の力(・・・・)でもある」

『はッ。折角極上の女に召喚されたってのに、そこまで惚れた男が居るんじゃしょうがねぇな』

 

 彼女はキーボードを叩き、新たなページを立ち上げる。

 「害虫」という項目の下に、彼女によって一文が加えられた。

 

「は、彼の遺品をマキリが手に入れたようだが……ご苦労な事だ」

『あん? 好きな男の触媒だろ。もっとリアクション取るかと思ったが』

 

 そんなランサーの言葉に、エレインは白けた表情を作りながら『アインツベルンの聖杯』と名付けられたファイルを開く。

 其処には、冬木の聖杯の全てがあった。

 

「冬木の聖杯の英霊召喚では、世界の外側に行った彼を呼び戻すことは出来ない。仮に召喚出来たとしても、個人的には複雑極まりない、くだらないフランス人が作った創作物が召喚されるだけだろう。彼の偽物など唾棄すべき汚物だ。もし居たら宝具を連射してでも確実に殺せ。私もアレを使う」

『でも、まだソイツが生きてるって保証はあるのか? だったら英霊の座に召しあげられる可能性の方が高いだろ』

「あるとも。それなりに信用を置ける相手からのな。それに彼のことだ、幻想種の血肉を喰らいうっかり幻想種にでも成ってそうでな」

 

 間違ってはいない。

 実際彼女の想い人は「バーベキューしようぜ! オマエ肉な!!」を実行した。

 しかし流石に、魔法を得て単一宇宙と化してるとは想像も出来なかったが。

 

『どんだけ出鱈目だったんだソイツ』

「まさしく出鱈目だったよ。何せたった一人で吸血鬼の万軍を相手にして、無傷で返り血一つ浴びず殲滅した。何より凄まじいのは、ソレが仮に神霊相手でも同じ様に斬り伏せる姿が容易に想像出来るということだ。今思えば神話出身じゃないのが不思議でならない。お前とて正面からコノートの軍勢相手に戦い、無傷で殲滅することなどできまい?」

『流石に正面かつ無傷は、()()()の勇士相手じゃ無理だ。つか、蛮族とやらが吸血鬼だってことに驚きだわ』

 

 彼女は、一度だけ見たかの英雄の雄姿を思い出す。

 戦場に於いて、彼は出鱈目で無敵で不敗で最強で何とも馬鹿馬鹿しい。

 一撃で何もかも一切合切決着するその姿。

 

「彼が居ると、不思議と負ける気がしない。そう思わされるんだ」

『へぇ………!』

 

 彼女はとてもとても愛しげに、何もない空間に手を突っ込み、西洋の発掘品のような体の、しかしそれに反して日本語で『らんすろ日記』と書かれた古びた本を取り出して撫でた。

 

「彼が聖杯戦争に参加すれば勝てる気がしないな」

『それはそれは。大歓迎じゃねぇか』

 

 姿を見せない槍兵は獣のような笑い声を漏らす。

 そんな自身のサーヴァントに苦笑しながら、次は「うっかり」と名付けられたファイルを開く。

 

「問題は遠坂の得た触媒だ。古代ウルクの、世界で最初に脱皮した蛇の脱け殻の化石など、どうやって手に入れたのやら」

『人類最古の英雄王ねぇ……』

「間違いなく最強の英霊だ。ただ戦っても勝機はない、私の許可なく戦うなよランサー」

『ハイハイ、判ってるぜマスター』

 

 ここ数日で、姿なき槍兵は自身のマスターがどういう人間か見て取っていた。

 

 元より初期から情報を集め続け、まるで知っていたかのように魔力消費が低燃費である自分を召喚した。

 

 自らのマスターは間違いなく最強だと、ランサーは確信する。

 そもそも自分と渡り合う武を持っているこの女が、他のマスターに負けるとも思えず。

 少々不服だが、仮にサーヴァントの自分が敗退しようとも勝てる札を用意した。

 

「戦う前に勝負を決める。成る程それは戦争だ。だが戦わずして勝つのも戦争だ」

 

 その為なら、目的のためなら聖堂教会丸ごと敵に回すモノを引き摺り出した。

 

 征服王? 騎士王? 英雄王?

 何故そんなモノを相手に莫迦正直に戦わなければならない。

 そもそもこの戦いが丸ごと茶番だというのに。

 

「連中は私を勝利者にする。せざるを得ない」

 

 この戦争の勝利条件は何だ? 優勝賞品を手に入れることか? 否。

 目的を達した者が勝利者だ。

 

 精々聖杯を求め合い争うが良い。

 そして何も出来ず、手に入れた聖杯を奪われるのを指を咥えて見ていろ。

 

 私は必ず願いを遂げて見せる─────

 

 

 

 

 

 

 

「─────待っていてくれ、ランスロット。必ず貴方を救いだしてみせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃間桐邸。

 

「そういえば、何でその血での治療を俺にしてくれないんだ」

「受け止めるだけの器が穴だらけだ。中身がこぼれるが、良いのか?」

「?」

『普通ないわーそんな状態。其処にドライグ達の出汁ブッパしたら北斗神拳喰らったみたいになるぞ? 頭パーンて』

「おにいさん、食器並べたよ」

「偉いぞ桜、じゃあ食べようか」

 

 間桐は今日も平和である。

 

 

 

 




全部原作でもモテモテだったらんすろって奴の仕業なんだよ!

というわけでオリジナルヒロインのエレインさんは『Fate/Apocrypha』のダーニックの子孫という設定です。彼女の前世については名前の時点でバレバレかと。
外見イメージは絶賛アニメ放送中でMF文庫とは思えないほど確り面白い『魔弾の王と戦姫』のエレオノーラ=ヴィルターリア。
理由は髪のグラデの色と、何か全然わからんと思うけど武器の属性から。

思いっきりチートに設定したのに、主人公と比べると全然大したことがなさそうに見える。これ不思議。最初はエインズワースも加えようと考えたんですけど、流石にケリィが泣くんで却下。
そして全然関係無いけどドリフターズ四巻発売おめ。

修正or加筆点は随時修正します。
返信出来ないかもですが、感想待ってまする(*´ω`*)



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