それ故に微妙な終わり方になってるかもです。
ご注意を。
Fate/Apocrypha最終巻発売おめ。
そしておもしろかった。
「ランスロットは、王に成りたいと思ったことはないのか?」
─────生前の話。
幾度となく観た夢がある。
「……どうした。まだ寝ていなかったのか」
何か書き物をしていた彼の邪魔をしてしまったか気になったが、彼は「日記だ」と軽く質問の解答を返す。
「あり得ないな」
その返答にオレは、やはり、と思った。
彼は何処までも騎士なのだと。
「俺には能力がない。俺を慕ってくれるのは有り難いが、仮に俺が王となってもアーサー王程には出来んだろう。俺は人を纏め上げる事はできない。俺は、戦場で敵を斬るしか能がない」
違う。
オレは咄嗟に答えるも、彼は否定する。
王を超え、国の過半数の支持を集めている彼に王の資質がないとは思えない。
彼が王で、自分が騎士として侍る、という妄想をしたことがないと心の中では否定できない。
「王には、自国をあらゆる手段を用いて防衛しなければならない義務がある。ソレこそ必要を迫られればどれだけ悪逆非道な所業も行わなければならない状況もあるだろう。その点に於いて彼女は優秀だ」
お前なら出来たのか。
もっといい具体案があるのか。
「余り好む理論ではないが、国という10を護るためには村一つといえど犠牲にしなければならない。その判断を、決断を俺は否定しない。誰にも否定させはしない。寧ろその程度で済んだ彼女の力量を誉める程だ。犠牲になった村には気の毒だがな」
彼は王を批判した騎士に問いつめた。
そして、王はそれだけの重責を背負っているのだと説いた。
お前にソレが出来るのか、と。
「如何に王が優秀であろうとも、その手足が言うことを聞かないのであれば国は終わる。ソレが統治者としての王道を選んだアーサーなら尚の事だ」
自分を含め、ブリテンの要である円卓の騎士は良くも悪くも個性が過ぎる。
「恐らく俺が王になれば、確実に偏りが出てくる。俺には統治者としての能力は無い。暴君の治世になるだろう。国を治めるというのは、それだけの能力と責任を問われるからだ」
その点において、騎士王は凄まじい。
暴君でなく名君として、騎士という極めて面倒な連中を治めているのだから。
にも拘らず、自分の理想を王に押し付ける。
ソレを受け止めるのも確かに王の役目だろう。
だが、だからと云って王とて人。
限界はある。
ソレを見ずに、ただ
彼は、民や騎士によくそう説いていた。
「───────────────……モードレッド。お前は、王のことが好きか」
オレの答えは是。
そもそもその王道に、そんな貴方と共に立つその姿に憧れて騎士になったのだから。
でも、
『─────オレは、えと……ランスロットも、そのっ、大好きだぞ!!』
羞恥に震えながらも、思ったより大きい声を出してしまったのか。
ビクッ、と彼の体を震わせ、静かに微笑んだ。
「……フッ」
オレは思わずその微笑みに見惚れ、見蕩れ。
「……そうか、そうだな」
彼は噛み締めるように呟き、オレと背を並べる様に腰を下ろし、
「俺もこれ以上、誰も喪うこともなく」
ソレは、在りし日の幸福の思い出。
「共に在り続けたいものだ─────」
オレの、替えのない至宝。
そして、思い出でしかない。
ランスロットはもう居ない。
国もオレが滅ぼした。
ランスロットの居ない国など、オレが唆すだけで容易く王を裏切る屑の群れなど死して当然。
寧ろ彼と引き換えに守ったモノが、こんなものかと絶望すらした。
こんなものを彼と天秤に掛けコレを選んだのかと、王の正気を疑い、憎悪した。
彼を踏み台に存在している、国そのものが憎かった。
その願いを踏みにじったのは誰だ。
彼の想いを裏切ったのは誰だ。
赦さない。
オレは、アーサー・ペンドラゴンを絶対に赦さない。
彼を奪ったこの怨み、晴らさでおくべきか。
第六夜 乱入者複数。ただし頭のおかしい奴に限る
血に濡れた様な赤雷が、倉庫街を蹂躙した。
コンテナは吹き飛び、破壊を余波という形で周囲に撒き散らしていた。
ライダーはその余波を神牛の雷で相殺し、ランサーとエレインは跳躍して避けた。
「チッ、気を付けろエレイン!」
「言われるまでもない!」
エレインは涼しい顔を憤怒に変え、襲撃者を睨み付ける。
まるで怨敵に向けるように。
「あらら、これは随分手癖の悪い狂犬だ」
ギルガメッシュはコンテナの上で笑みを携えながら、出現させた透明な壁で容易く防ぐ。
「うわぁぁあっ!?」
「ハッ! これは─────!?」
「ふむ」
イキナリの襲撃にウェイバーは悲鳴をあげるも、代わりにケイネスが正気に戻る。
そしてライダーは顎に手を当てながら襲撃者を見定める。
襲撃者────それは、赤雷を迸らせている、重厚な全身鎧に身を包んだ血色にまみれた白銀の騎士だった。
その騎士が纏う魔力はこの場の大英雄達に決して劣っていないことを示していた。
「セイバー!?」
アイリスフィールが灰になっていなかったのは、赤雷がセイバーを呑み込む前に、彼女がアイリスフィールを突き飛ばして庇ったからに他ならない。
お蔭で彼女は傷一つ無い。
「ぐッ……!」
セイバーは軽傷ではないものの、赤雷を聖剣で受け止め、直撃を避けていた。
片腕が特に酷く、籠手は熔け火傷に苛まれている。
即座にアイリスフィールの治癒魔術が戦闘に支障が無い範囲まで癒そうとするも、傷は浅くは無い。
「な、なんだよ今のは!」
「ほぅほぅ、あやつも中々。この場に負けず劣らずの英雄だのう」
兜でその表情こそ見えないが、憤怒、憎悪といった負の感情を撒き散らす。
つまりあの狂犬は、騎士王と顔見知りであるということ。
アイリスフィールは事前の話から、ランスロット卿は彼女を恨んでいないと察していた。
ならば、騎士王に敵対的な英霊など一人しか居ない。
「まさか、まさか貴様もこの戦争に参加していたとはな……アーサーッッ!!!」
「モードレッド……っ」
激烈な憤怒を込めて狂獣が吼え、王が苦々しく受け止める。
喋りさえしなければ即座に
だが、今のやり取りで真名はハッキリした。
「叛逆の騎士、モードレッド……!」
大英雄アーサー王を殺害した反英雄。
だが身に纏う魔力は、明らかにセイバーのそれを上回っていた。
ソレはモードレッドの実力か、それとも未だ見ぬマスターの実力か。
真名を隠す聖杯戦争の大原則が悉く覆されるが、今回は異例なのだろう。
故にセイバーがモードレッドの真名を隠す必要は無い。
「ぉおおおおおおァアアアッッ!!!」
「ぐッ」
よろめきながら体勢を立て直したセイバーに、狂犬は吼えながら突貫する。
ランサーのソレとも違う、餓虎のような乱撃がセイバーを襲った。
アーサー王とモードレッド。
二人は両者ともの実力を理解している。
宝具の性能は最強の聖剣を持つセイバーに軍配が上がる。
直感も、戦闘経験も技術もセイバーはモードレッドを上回っているだろう。
年の功と言うヤツだ。
その点については、アーサー王のクローンであるモードレッドは勝てはしない。
だが、モードレッドはアーサー王たるセイバーを斃す為にモルガンが造り出したホムンクルス。
その膂力は、アーサー王を上回っていた。
加えて両者ともその身はサーヴァント。
その現界の為の魔力をマスターに依存している。
ステータスも同様だ。
そして今、モードレッドのステータスは平均Aランク。そして一部はA+。
ケイネスが戦慄する程の数値だ。
だが、強者であればあるほど戦意を燃やす者こそ英雄。
強者との戦いを求めて現界した男は喜んでマスターの命に従った。
「邪魔するぜェッ!」
「!?」
「ランサー!?」
蒼き槍兵は狂獣へと魔槍を突き立てる。
「邪魔だテメェ!」
「ワリィな! 横槍はあんま好きじゃねぇんだが、マスターの命令でなァ!!」
赤槍で赤雷を引き裂き、今セイバーに振り下ろさんとするモードレッドの
そのまま懐が空いたモードレッドに
「ほぉう」
ランサーが感心の声を漏らす。
しかし鎧越しか、蹴りの瞬間後ろに飛び退いた為かダメージは無きに等しかった。
モードレッドは直ぐ様体勢を立て直し、獲物を逃さんと
「─────死ね」
ゴウッ!!!!! と、更に横合いからの
「─────らァッ!!!」
しかし流石はアーサー王を討った叛逆者。
魔力の奔流を切り裂いて吹き飛ばした。
「ウッゼェ。手前……、確かあの人に色目を使っていた売女か」
「喚くな畜生風情が。彼の守った物をブチ壊しておいて、一丁前に怒りなど抱くな。不快だ」
「オレが少し煽っただけで簡単に王を裏切る糞の山と、あの人を等価だとでも言うつもりかテメェは。あの人に対する侮辱だ、殺すぞ」
ケイネスとウェイバーは、その見たこともない程の怒気を纏ったエレインの姿に絶句する。
エレインのエーテル砲で、モードレッドの鎧がかなり焦げていたのだ。
モードレッドの鎧は魔力で編まれたモノ。
故に直ぐ様魔力で直せるが、問題は明らかに対魔力が高いサーヴァント相手にダメージを負わせたという事。
ケイネスは好敵手がどれだけ先に居るのか再確認し、しかし秘かに熱意を燃やしていた。
ただし、女怖い。
その点に於いて、自らの生徒と同意した。
「待て……ソレを斬るのは、私の責務だ」
「セイバー!」
コンテナの瓦礫から、セイバーが現れる。
アイリスフィールが駆け寄るが、ソレを片手を出して止める。
その表情は諦観でも憤怒でも悲哀でも無く、無表情だった。
舞台装置と成り果てた騎士王。
それは、かつて彼女が黒い騎士を喪った後の姿に他ならなかった。
叛逆者を斬る。
王としての役割を為す為に。
何より、道を違えた自分の騎士の始末の為に。
セイバーは、結局モードレッドを子供としては愛していなかった。
当然だ。腹を痛めて産んだ訳でもなく、身を削って育てた訳でもない。
だが如何に歪な関係であろうと、ソレが『親』としての役目なのであらば。
愛した男の言葉を、無碍にはしない。
「─────『
セイバーは静かに、その不可視の鞘を解き放つ。
風が消え去った、否。
魔力の暴風を纏う黄金の聖剣が姿を顕す。
「私は聖杯を獲る。如何に貴公といえど、邪魔立てされる訳にはいかない。ランスロットの為にも─────」
「─────貴様がその名を口にするなッッ!!!!」
それに対するように主の激昂に呼応し、その血に濡れた叛逆の宝剣が血色に煌めきながら、その暴力を尚増幅していく。
それと同時に隠されたセイバーと瓜二つな、そして憎悪にまみれた顔が現れた。
そして彼女のクラス─────
同じく莫大な量の魔力を纏いながら、各々の最強をゼロ距離で振るわんと凄まじい速度で激突する。
「イカン!」
─────勿体無い。
その成り行きを見守っていたライダーが、何ともくだらない理由で性懲りもなく動こうとしていた。
そもそもランサーとセイバーのどちらも脱落させたくないが為に、絶妙なタイミングで乱入したライダーだ。
かのアーサー王の命を奪った騎士モードレッドも、是非とも臣下にしたかった。
故に先ずモードレッドを鎮める為に、神牛の雷を奔らさんと手綱を握る。
何れだけ強力な宝具といえど、横合いから殴り付けられれば止められる、と。
だが、その行為は不発に終わる。
─────突如現れた黒い
◆◆◆
ドゴンッッ!! と、二つ同時に生じる音と共に、セイバーとモードレッドがそれぞれの方向のコンテナを吹き飛ばしながら突っ込んだ。
「へっ……?」
「はぁ?」
アイリスフィールが驚きの声を漏らす。
同時に、ウェイバーからも同様の物が零れる。
先程の、二人の上級以上のサーヴァントによる魔力放出で溢れ乱れていた暴風と赤雷が、今にも宝具を解き放たんとしていた二つの剣士がいつの間にか消えて。
代わりに、黒い外套で姿を隠した男が立っていたのだから。
セイバーとモードレッドはコンテナを瓦礫に変え、呆然と虚空を見上げている。
投げ飛ばされた二人は何をされたか理解し、驚愕の余り固まっていたのだ。
その事実を他の面々が理解した瞬間、戦慄が走る。
ランサーは新たな強者の出現に笑みを深め、ライダーは興味深く乱入者を見る。
アーチャーは浮かべていた笑みを消し、遊びの一切が消えた無表情に変えていた。
「な、何が起こった」
現代の魔術師としては非常に高い能力を持つものの、あくまで人間の知覚しか持たないケイネスが何度目となる冷や汗を垂らしながら口を開く。
「……あの黒いローブの男は二人の剣戟を受け止め、二人を投げ飛ばした様だな。信じがたいが、な」
それに答えるように、エレインが語る。
二人の衝突点に立っている黒い男に、セイバーとモードレッドは魔力放出を纏った聖剣と宝剣を素手で受け止められ、そのまま宝具ごと投げ飛ばされた。
「何者だあやつ」
手綱から無用な力を抜きつつ、ライダーが全員の意見を代弁する。
つまりあの乱入した黒いサーヴァントは、爆心地に両手を突っ込んで振り回したのだ。
にも拘らず、ローブから覗く両手は、着けている
並みのサーヴァントではあるまい。
「おそらく宝具だろうな。あの低ステータスでただ止められるなど到底思えん。だとすればライダー、奴が此方に近付いてきたら直ぐ様宝具を走らせろ。何の宝具かは分からんが、近付かれるのは不味い」
ケイネスが外套のサーヴァントのステータスを視て、己の判断を口にする。
ケイネスの眼には、全てのステータスがCを下回っている、英霊としては下級極まりない数値が映っていたからだ。
だが、エレインの言葉で直ぐ様その考えは覆る。
「……私には全てがAランクを超える化物に視えるが、どうやらそういう宝具のようだな」
「何!?」
「ふむ、ステータスの偽装か。ただ隠すより尚厄介であるな」
対してエレインの瞳には全てのステータスがAランクを優に超えている恐ろしい数値が視えていた。
この場に姿を現していない切嗣や言峰綺礼にもその影響は出ており、其々異なった数値が視えているだろう。
それにローブで隠された顔がどうやっても見えない。
恐らく隠蔽か認識阻害か、正体を隠す宝具でもあるんだろう。
ステータスまでは隠せないモードレッドの『
「っ、がぁあああああああッッ!!!」
崩れたコンテナ群を更に融解した瓦礫の山に変えながら、モードレッドは咆哮と共に外套の男に突っ込んだ。
モードレッドは自身を超える存在を唯一人のみと定めており、それを覆す存在は決して認めない。
先程のセイバーならば、アーサー王ならば互角と許容できた。
生前からの怨敵。
自身の父。
嘗て目指した至高の王。
致命傷を与えたとはいえ、それが死因だとしても、モードレッドを屠った騎士王ならば。
成る程、互角でも許容できただろう。
だが目の前の、どこの馬の骨とも知らぬ者に自分が、文字通り手玉に取られた。
彼女はその存在を認めない。
存在を許しておけない。
だが、先程の戦いよりも尚絶大な雷を纏った宝剣が掠りもしない。
魔力放出に全霊をつぎ込んだ、凡百のマスターならば数秒で残らず魔力を搾り取られる程の魔力を込めた一撃。
しかし正体不明の『黒』は、それを容易く避ける。
「……はぁ」
「な─────」
それ処か、素手で容易く止められる。
それは、モードレッドの理解を超えていた。
「何なんだ手前は!?」
外套の、フードに隠されその面貌を見ることは出来ない。
だが、明らかにノイズに乱された声がハッキリとモードレッドの耳に届く。
「────少し頭を冷やせ」
「なっ─────ッあああああああッッ!!!!」
投擲した。
宝剣を掴んだまま振りかぶり、モードレッドを遥か遠くに投げ飛ばした。
ギルガメッシュを除く全員を
戦場を文字通り荒らした狂獣は、山彦の様な
>モードレッド
イキナリ乱入した割には一話で戦場から退場した残念さん。
ステータス的には召喚されているサーヴァントの中では最高だったり。更に赤雷を纏うことを覚え、その間は対魔力がAと極めて優秀です。ただしセイバーに対して暴走機関車ですが。
真名を隠蔽する宝具としては中々の性能を誇るのに、セイバーのお蔭で初っぱなから真名がバレたサーヴァント。『
クラスは何度も変更しましたが、
クラス:
ステータス
筋力A+
耐久A
敏捷C
魔力A++
幸運D
宝具A+
保有スキル:対魔力:A、直感:B、魔力放出:A+、戦闘続行:B、カリスマ:C-、忘却補正:D、自己回復(魔力):A+、 復讐者:B
ステータスはセイバーオルタを参考にしています。
魔力の数値がおかしいのはマスターが理由です。
修正or加筆点は随時修正します。
返信出来ないかもですが、感想待ってまする(*´ω`*)
来年もよろしくお願いいたします。