湖の求道者   作:たけのこの里派

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未だストックが予定の五話に届いてませんが、もうすぐ期末テストなので投稿。

一話しか投稿してないのに、たくさんの感想とお気に入り登録、有難うございます。

感想欄で書いていたように、円卓時代編の主人公の視点は最後以外は日記形式に。
後半のBANZOKU編は三人称でいきます。
初めての日記形式なので変な感じになってるかも知れませんが、ご了承ください。


円卓時代編
らんすろ日記01


◆月■日 晴れ

 

 

 三歳の誕生日と、ペンを持つことが出来るようになったのを記念して、日記を書くのを始めようと思う。

 尤も、インクが無いので他の物で代用しているが。

 

 我輩は幼児である。前世は日本人で、今生の名前は知らない。

 ………とある有名な名無し猫の真似をしてみたものの、やはりしっくり来ない。

 まぁ取り敢えず、自分の身の上を話そう。

 

 俺は、気が付いたら赤ん坊に成っていた俺を育ててくれている『彼女』と大きな湖に住んでいる。

 少なくとも、俺が『俺』である事を自覚した時は既に、俺は『彼女』と共に湖に住んでいた。

 

 『彼女』はファンタジーである。

 

 いや、確かに女体はファンタジーで小宇宙(コスモ)だが、そういったものを抜きにしても、『彼女』は物理的にファンタジーなのだ。

 

 彼女は湖の精霊である。

 

 精霊。しかも水の精霊である。

 ファンタジーな加護を与えたり、試練を与える超自然的神秘。ウンディーネとかスピリット・オブ・レインとかのファンタジーの代名詞である。

 

 そこで確信した。この世界は物理法則を無視したファンタジーの、剣と魔法の異世界だと。

 

 

 

 

 

 

 

*月※日 晴れ

 

 

 俺は『彼女』に、自分が魔法を使えるか聞いた。

 異世界に生まれたら、やはり魔法を使いたくなるのはエンターテイメントが発達した日本を前世に持つ者としてどうしょうもない。

 ロマンとはそういうモノである。

 

 しかし残念ながら、俺には『彼女』の加護を与えられてはいるものの、魔法を使う才能は無いらしい。

 そう、『彼女』が申し訳無さそうに教えてくれた。

 

 俺は落胆こそしたが、寧ろ加護とやらをくれた『彼女』に感謝した。

 『彼女』の加護は水関係なら多岐に渡り、水の中で呼吸が出来、水の上を歩き、身体を清潔にし病に掛からなくする等の、清潔環境が現代と比べて酷すぎるこの世界では最高の一言な物ばかり。感謝してもしきれない程だ。

 

 そんな俺の感謝に、『彼女』は溢れんばかりの笑顔を見せてくれた。

 どの世界でも、美人の笑顔は最高である事を知った。

 

 

 

 

 

 

 

★月£日 曇り

 

 五歳になった俺は、木刀を振るっていた。

 『彼女』曰く、俺の剣の才能は人類最高クラスらしい。

 なぁにそれぇと、思わず気の抜けた声を出してしまった。

 

 人類最高クラス。何だその才能。バケモンジャマイカ。

 という事で、四歳の頃から木の棒―――というよりは木刀を振るい、『彼女』の指導を受け続けている。

 

 

 

 

ゐ月ゑ日 晴れ

 

 

 正直、人類最高クラスの才能を舐めていた。

 テレビで見たことのある剣道の試合とか、そんなレベルじゃない。

 ありのまま起こった事を話せば、落ちてくる大量の落ち葉を全て落ちるまでに打ち落とせるのだ。

 

 ということで予定を変更し、よくあるバトル漫画の動きが出来るので目標を漫画の中に求めることにしようと思う。

 

 剣士に於いて、俺の中の最強は複数ある。

 例えば某海賊漫画の世界最強の剣豪や、某鋼の兄弟漫画では対戦車爺、某人斬り抜刀斎、某マダオボイスの死神と様々である。

 これだけ目指せるモノがあるのだ。目標には事欠かない。

 俺はこれ等の目標の中で、彼らに一人でも辿り着くことが出来るのだろうか。

 

 取り敢えず、剣が音を置き去りにするまで振り続けよう。

 

 

 

 

 

ゑ月※日 雨

 

 なんと神々が俺に武器を造ってくれるらしく、『彼女』にどんな武器が良いか聞かれた。

 俺は世界最強の美術品である刀が良いと答えたが、『彼女』がどれだけのコネと交遊関係が有るのか非常に気になる話だ。

 

 尤も、『彼女』は刀を知らなかった為、機能に製法、果ては種類に歴史まで語ってしまった。

 何故製法処か歴史まで知っているか? 若さゆえの過ちだ。察してくれ。

 

 今まで十二分に世話になっているというのに、神様から得物まで貰えることに申し訳無く思う。

 俺は彼女に施しばかり受けているのに、俺は一体何を『彼女』に返せば良いのか解らない。

 俺は『彼女』に対し何を返せばいいのだろう。

 

 その旨を『彼女』に伝えたら、大きくなったら、一つだけお願いを聞いてほしいと言われた。

 俺に叶えられるのなら叶えたい。こんな右も左も解らない世界で、様々な事を教えてくれた『彼女』に恩を返したい。

 

 

 

 

 

£月※日 晴れ

 

 六歳の誕生日、俺は刀を手に入れた。刃が紫紺色の美しい黒刀である。

 何でも神造兵装という、決して刃毀れせず折れもしないらしい。神造兵装パナイ。

 

 銘は『無毀なる湖光(アロンダイト)』というらしい。

 

 

 ……………、アレ?

 

 非常に聞き覚えの有る、知っているのと色合いだけは同じな刀を持ちながら、俺は改めて『彼女』の名前を聞いた。

 『彼女』の呼び名は数多く有り、ダーム・デュ・ラック、ヴィヴィアン、ニミュエ、エレイン、ニニアン、ニマーヌ、ニニュー、ニヴィアン、ニムエと、パッと出てきただけでこれだけ有るのだという。

 俺はこの中で『彼女』の事をヴィヴィアンと呼んでいるが、俺はこの時初めて自分の名前をヴィヴィアンに聞いた。

 

 

 ――――――ランスロット。

 どうやら俺は異世界に生まれた訳では無いらしい。

 

 

 というかアロンダイトは仲間の騎士を斬ったから魔剣と化して黒く染まったのではなかっただろうか?

 

 

 

 

 

★月■日

 

 ネトリ騎士じゃないですかヤダー。という事実を知った俺は、取り敢えず型月世界のネトリ騎士――――ではなく、同じく型月世界の五次アサシンこと佐々木小次郎を目指すべく鍛練を始めた。

 

 尤も、あのチート農民を目指すと言っても燕返しをそのまま習得するつもりではない。

 ようは剣技による魔法(ファンタジー)への到達である。

 

 スーパーNOUMINである佐々木小次郎は、最高速度がマッハを超えるTUBAMEを斬るために全く同時に三つの斬撃を放つ多重次元屈折現象――――つまりは第二魔法にただ純粋な剣技のみで到達したのである。

 

 ならば、この世界が精霊や神々が存在するのならば。ヴィヴィアンに人類最高クラスの才能を持つとまで言われた自分でも、純粋な剣技でファンタジー現象を起こせるかも知れないのだ。

 

 ロマンが広がり、やる気が出てくる。俺は一層修練に打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

×月×日 晴れ

 

 十五歳の誕生日を迎え、いつの間にか刀以外の槍とか剣とか弓とかの扱いも上手くなっていた俺なのだが、ふとランスロットについて思い出した。

 

 確かランスロットは赤ん坊の頃母親から、湖の精霊に強奪されている筈なのだが、何故ヴィヴィアンは態々俺を育ててくれているのだろうか。

 勿論、拐かされた事などは彼女に対する恩や信頼でどうでも良いのだが。

 もしやそれが最近彼女の俺を見る目が野獣の様なのと関係あるのだろうか?

 

 そのまま聞いてみると、物凄く挙動不審になっていた。

 

 おそらく彼女には俺には想像も出来ない考えがあるのだろう。

 俺は未だにイメージ出来ていない剣技による魔法の修練を続けている。

 

 『ぼくのかんがえたさいきょうのけんし』には、未だ程遠い。

 

 

 

 

 

■月ゐ日

 

 十六歳の誕生日を迎えた俺は、斬撃を飛ばすことが出来るようになった。ハッキリ言って、佐々木小次郎と云うよりも某鷹の目の様な事が出来るようになっていた。何故だ。

 そのお陰か、ヴィヴィアンとの模擬戦も勝ち星を挙げられる様にもなり、自身の成長が感じられる。

 

 この辺りから気付いたのだが、前世の思い出は殆ど思い出せなくなったのに対し、漫画知識は忘れない事が解った。

 十年以上読んでいないのに、忘れる様子が感じられない。不思議だ。

 俺はインなんとかさんとは違うというのに。

 

 

 

 

 

*月□日

 

 対人経験がヴィヴィアン以外に皆無なことに気付いた。

 そもそも俺はこの湖周辺から出たことすらない。これは不味いと思いこの事をヴィヴィアンに相談するも、十八歳にならないと武者修行の旅は認めないと言う。

 

 そうか、武者修行があったか。

 俺はヴィヴィアンの見通しの凄さに感嘆するばかりだった。

 

 何故か俺の答えに、ヴィヴィアンが呆然としていたが、どうしたのだろう。

 

 

 

 

 

£月※日

 

 十七歳の誕生日を過ぎてから、俺はヴィヴィアンに模擬戦で負けることが無くなっていた。何故か飛ぶ斬撃も、この間湖から見える山を切り裂く事が出来るようになるまで成長し、そして遂に俺が思うぼくのかんがえたさいきょうのけんしの姿が見えてきた。

 

 要は斬ればイイのである。

 

 どんな屈強の戦士でも、どんな難攻不落の城塞でも、どんな素早い動きの戦士でも、どんな魔法でも、どんな攻撃でも――――― 一刀の元に斬り伏せる、そんな魔法(ファンタジー)を。

 

 己が想像する最強は決まった。俺はそれを目指すのみである。

 

 

 

 

 

・月ゐ日

 

 どうやら俺は狼に狙われた子豚だったようだ。

 直接的な描写は避けるが、十八歳の誕生日の前夜に俺は彼女に美味しく頂かれた。

 まさか赤ん坊の時から逆光源氏計画を立てていたとは、流石ヴィヴィアンである。

 そして俺は、艶々に潤った肌になったヴィヴィアンに見送られながら武者修行の旅に出たのだった。

 

 数時間後に追い剥ぎらしき連中と遭遇するも、熊や狼を狩るのと同じだったと感想を述べておこう。

 

 

 

 

 

 

 




アーサー王物語の作品群とTYPE-MOONの設定を抽出して、ことさら適当に纏めておりますので、かなり曖昧です。ぶっちゃけBANZOKU編のために描いてる感じですので、そこを念頭にして頂ければありがたいです。
次回はちょいと三人称が入ります。

修正点は随時修正します。
感想待ってまする(*´ω`*)



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