湖の求道者   作:たけのこの里派

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注:ほんの僅かなくそみそ描写あり


エピローグ

 

 

 

 

 四度の試行が行われた極東、冬木における魔術儀式についての報告書。

 英国の時計塔の一室でそんな書類を、ウェイバー・ベルベット────ロード・エルメロイ二世は懐かしささえ覚えながら手に取っていた。

 

 結果として抑止力が発動し、それを退けたという魔術協会が驚天動地する大事件。

 それらを経験して尚、生還した二人の協会講師の凱旋を見届けた彼は想帰する。

 

 エレインとケイネスが帰還した際の報告によって、ランスロットの存在が明るみになったからだ。

 無論、それは意図したものだったが。 

 

 武術によって根源に到達し、数多の幻想種をその身に宿し、魔法を会得、体現した現代にまで存命している英雄────意味不明である。

 しかしそんな新たな魔法使いの発見は、他の冬木の情報を覆い隠すには余りに大きな隠れ蓑になった。

 

 サーヴァントの幾人かの存命が正にそれだった。

 現代社会か、あるいは個人を気に入った幼少期の英雄王ギルガメッシュはそのまま己の持つウルクの大杯で、態々遠坂時臣との魔力パスを切断した状態で現界を続けていた。

 紛れもない最強の英霊の存在は、ランスロットが居なければそれだけで同様の混乱が起こっていただろう。

 幸いな事に彼はそんな聖杯戦争参加者と冬木の事情を鑑み、配慮をしてくれた。

 この寛容さは冥界巡りの英雄王ではどうやっても無かったものだ。

 少なくとも、彼のままならば人類淘汰の裁定は行わないだろう。

 

 そして此方こそ隠したい本命であるのだが、太極(ランスロット)の眷属となった間桐桜と氷室鐘。

 ランスロットが自分の情報を明かしたのは彼女達を隠す為である。 

 

 二人とも人間離れした莫大な魔力と、無尽蔵の魔力供給を獲ている。狙う輩はごまんと居るだろう。

 桜ならばまだ良いが、氷室の背景は完全な一般人。

 例え1500年前の人間の転生者であっても、毛ほども関係がない。

 

 加えて彼女のサーヴァントも未だに現界している。 

 復讐者のサーヴァント、叛逆の騎士モードレッド。

 劣化アーサー王と言える彼女もまた、英雄王程でも無いが充分な力を持ったサーヴァントである。

 彼女達を利用しようとする者は後を絶たないだろう。

 如何にモードレッドと言えど、彼女がサーヴァントであり氷室に依存している以上は彼女を押さえられれば抵抗自体難しくなるかも知れない。

 

 そんな彼女達を守るために様々な工作が必要だったが、幸いそんな彼女達を護るために動いたエレインがその力と立場で大きく貢献した。

 

 当初は自分が矢面に立つことを望んではいなかったが、エレインの情報によって方針を変えた。

 それはかつての朱い月のブリュンスタッド側近、『黒翼公』グランスルグ・ブラックモアの死。そして死徒勢力の大幅な弱体である。

 何らかの人理の影響か、その否定者である死徒達は当初ランスロットが想定していたほどの脅威を有していなかった。

 少なくとも死徒二十七祖と呼ばれる上位死徒の中に『獣』は存在せず、『ワラキアの夜』や幾人かの祖も存在しなかった。

 

 加えて、どうせ聖杯戦争や冬木には監視の目は向く、という時計塔の人間としての予想もあった。

 

 元よりエレインにとって氷室は1500年来の友人。

 彼女自身が魔術師らしからぬ善性を有していたことも相まって、ランスロットと間桐雁夜が求めていた力を持った魔術師の助力を得ることができた。

 尤も、助力した本人は期せずしてランスロットの力になることができて喜んでいたが。

 また彼女の手によって間桐雁夜の治療も行われたランスロットは、彼女に二度と頭が上がらないだろう。

 

 それと、ひっそりと行われたアインツベルンの解体である。

 セイバーのマスターである衛宮切嗣とその妻アイリスフィール、そして辛うじて現界を保っていたセイバーの襲撃によって、それは密かに行われた。

 

 魔術師殺しが悪性の呪いに侵されることも、魔術回路を使えなくなる訳でもない万全のコンディション。

 そんな彼にトップサーヴァントが付き従えば、アインツベルンに為す術など無い。

 彼等は愛娘とそれに個人的に付き従う二人のホムンクルスを連れ、日本に帰還した。

 

 以前の宣言通りランスロットが暴走。

 月読作戦とやらが行われ、当主が再起不能になった。

 これによって遠坂もエレインの庇護下に置かれるのは当然の運びだった。

 

 これ等を護るために、ランスロットは時計塔に対して脅迫した。

 

 時計塔からの侵入や干渉の一切を禁じ、侵した者を殺害すると言ったのだ。

 新たな魔法使いの脅迫だ、時計塔も混乱する。

 しかしやはり手を出すものは多かった。

 そんな彼等の目的は魔法でも現代まで存命している英雄でもなく────彼が手に入れたと思われる聖杯だった。

 

 聖杯戦争の事実上の勝者は、ランスロットという認識だった。

 事実、彼の本意とは反するにも拘らず、彼は大聖杯を保有していた。

 

 だが、それはやはり余談だろう。

 少なくとも彼、ロード・エルメロイ二世が想帰する事柄ではない。

 彼が思い出すのは、己がこんな役職に就く羽目になった事柄。

 

 即ち、初代ロード・エルメロイであるケイネスの死である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優秀で厄介極まる生徒達のレポートの批評を終え、自室に戻りながら時計塔のロードとしては有り得ないテレビの電源を点ける。

 

 ────ウェイバー・ベルベットがロード・エルメロイ二世となる切っ掛け。

 

 それはやはり、聖杯戦争だった。

 

「亜種聖杯戦争……か」

 

 冬木に於ける聖杯戦争は完全に終結した。

 戦争を司る舞台装置が絶対強者に握られている以上、再開のしようもない。

 だが、世界中で小規模ながら聖杯戦争は起き続けていた。

 

 事の切っ掛けは、やはり時計塔の冬木への介入だった。

 より正確には、時計塔に所属している魔術師の、だが。

 

 直接的な侵入、及び調査程度ならばまだ彼等の末路はマシだった。

 個々人ならば個人だけで完結し、大規模な対応を取る必要は無かった。

 

 ────だが、行われたのは魔眼保持者を大量に使った観測というモノだった。

 

 魔眼保持者を襲撃し、その頭部だけを生きたまま利用。それぞれの魔眼を使い観測することで聖杯戦争そのものを詳らかにしようとしたのだ。

 痕跡を調査する今までのものとは、ソレは明らかに危険度が違ったのだ。

 

 コレは流石に彼等は看過できなかった。

 跡を調べるのではない、過去視を含めたそれらを使われた場合二人の少女の────特に、マスターであった氷室の存在は確実にバレる。

 

 湖の騎士と、それに付き従う叛逆の騎士は即座に動いた。

 幻想種による感知によってその観測を逆探知し、下手人を確保せんとした。

 だが問題は、下手人だった男が心臓を妖精に奪われた、元時計塔の学部長だった事。

 彼は折角集めた魔眼という態々集めたそれらを、何の躊躇もせず即座に放棄した。

 妖精に奪われた心臓の代替として獲た特権で、幻想種に頼る感知タイプではないランスロット達の索敵範囲から易々と逃げ切ったのだ。

 

 しかし唯逃がした訳ではなかった。

 下手人は逃したが、残された魔眼や資料などによってその犯行の首謀者が発覚したのだ。

 下手人と同じく第四次聖杯戦争の全てを知った首謀者は速やかに幕引かれることとなり、時計塔はこの一件によって完全に冬木への干渉を食い止める側に回った。

 

 それはこの首謀者が、時計塔のロードの一人だったからだ。

 

 時計塔の主要人物の一人を何の躊躇も無く、何より容易く殺害せしめた冬木の英雄達との全面戦争を恐れた時計塔は、これ以上英雄を刺激したくはなかった。

 エレインとケイネスの報告によってサーヴァントを御しうる為の令呪が大聖杯によって一つ残らず回収されたのを知っていたのも、時計塔が諦める要因だったのだろう。

 

 斯くして冬木は魔術協会と隔絶した土地となった。

 英雄達の望む通りに。

 

 だが、それで終わらないのが世の常である。

 逃亡した下手人────ドクター・ハートレスが知りえた情報を元に、亜種聖杯戦争を興したのだ。

 

 時計塔はそれに干渉を決定した。

 ハートレス自体を時計塔が追っていたという事もあるが、第二の冬木の誕生の可能性を恐れたのだ。

 選出した魔術師は、聖杯戦争を生き抜いたケイネスだった。

 妻ソラウと共に聖杯戦争に参加し────しかし、その手腕が振るわれるものの呆気なく敗退する結末を遂げるとも知らずに。

 

 当時その参戦を絶対に止めたであろうエレインは、亜種聖杯戦争の事を冬木のランスロット達に伝えるために来日していた為、彼の参戦を知らなかったのだ。

 

『え? ケイネスが死んだ? 態々他の聖杯戦争に参加して? 第四次とゴルゴ相手も乗り切ったのに?』

 

 亜種聖杯戦争に対して情報収集に奔走していたランスロットが、突然のケイネスの凶報を知って内心のコメントがコレだった。

 そこまで関わりも無かったが、一方的に知っている相手の余りにも呆気ない死の報告に混乱していた。

 

 その後、彼の死によって情報収集段階だったランスロットが自重を止め、戦争そのものを終わらせたことによって終結。

 しかしその結末を予期していたハートレスは聖杯戦争の術式を世界へ流布。

 ハートレス自身は確実に死亡したが拡散した術式はもう止まらず、世界各地で小規模ながら聖杯戦争は多発することとなった。

 

 だが、ここまで語っても本題ではない。

 問題はここから、エルメロイ家の没落から始まった。

 

 件の亜種聖杯戦争、実はウェイバー自身も聖杯戦争を生き残った事から参加していた。

 万が一ケイネスが死んだ時に死体を回収する為ではなく、一人のマスターとして。

 しかし、ケイネスの死によって結果的に彼の死体を回収する羽目になったのだが。

 

 だが、将来を有望されたケイネスの死と魔術刻印の破損によって家は凋落し、膨大な財産と人材、霊地と魔術礼装を他家や分家に奪われ、

 もはや『エルメロイ』という家名と天文学的な負債しか残っていない。

 結果上位の分家がすべて離反、遠ざかったエルメロイ派にいるまだ魔術刻印の移植を受けていない血縁の子弟たちの中で、源流刻印の適応率がたまたま突出して高かったからという理由でとある少女が次期当主に選ばれた。

 

 ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。

 当時丁度片手で数えられる程に、幼い少女である。

 

 彼女が頼ったのが、冬木のランスロットとエレインであった。

 エレインにとっては旧知の、ランスロットにとっては不遇な境遇に落とされた幼い少女を助けるのに躊躇は無かった。

 負債は貴金属を生み出す幻想種を使い、エレインがそれを回せば簡単に返済が出来た。

 後ろ楯も、ランスロットの名前を貸せば時計塔にとっては無視できない。

 

 そこでケイネスの死体を回収し、見捨てられたエルメロイ教室を受け継ぎ奇跡的に存続させていたウェイバーが呼びつけられたのだ。

 

 他の講師たちに失点や弱みを一つも見せず奇跡的に教室を三年間存続させた彼は、それを面白がったライネスに拉致され、その後エレインたちによって、

 

『抑止力、いや人理定礎だ。素直に諦めろ』

『三田先生が孔明をガチャで引けないのと同じだからね、しかたないね』

 

 後半は完全に意味不明な宣告により強制的に復興に尽力させられ、二人の助けもあり立て直すことに成功したウェイバー。

 彼はエルメロイの名を与えられその功績を称えられると同時に、ライネスの下へと縛り付けられた。

 それに素直に従ったのは、直ぐ様駆け付けられる程近くにいたにも関わらずみすみす恩師を死なせてしまった自身への罪滅ぼしだったのかもしれない。

 

 ロード・エルメロイ二世。

 それが、彼が背負わされた称号だった。

 

 当初はロードになりたての若者に与えられた形だけの教室と周囲からは目されていたが、十年もしないうちにその認識は改められた。

 異様に分かりやすく実践的な授業、権力争いに敗れた講師たちを登壇させたそれまでの時計塔になかった多角的な教育体制により新世代の魔術師に人気を博した。

 

「10年前からは想像もつかん状況だな」

 

 在学生ですら位階持ちが何人もおり、生徒のスヴィン・グラシュエートが十代の若さで『典位』を取得したのを皮切りに、若手が数年の間に立て続けに『色位』や『典位』を取得した事で話題になったのだ。

 OBは全員十年以内に『典位』以上を取得、そのうち数名は時計塔の歴史上でも数えるほどしかいない『王冠』の位階に至るのではないかとされている為、Ⅱ世が教え子たちを集めれば時計塔の勢力図が変わるとまで言われている程。

 尤も、彼自身の純粋な魔術の腕前は第五階位の『開位』の下位レベル。

 魔術師としてどうしようもないほど平均的で凡庸なのだが。

 

「さて、何をトチ狂ったか履修科目を態と間違えたあの二人の補習課題を考えねば」

 

 そう口にしながら、彼はアメリカの大統領選挙のインタビュー中継を映しているテレビの電源を切ろうとリモコンを手に取る。

 間違いなく、科学嫌いの魔術師や他のロード達では見れない光景だ。

 

「────全く、相変わらずの様だな」

 

 そこには欠片も魔力を感じさせず、しかし溢れんばかりのカリスマを撒き散らしている二メートル近い筋骨隆々赤毛赤髭の大男が、十年前と変わらぬ笑顔で映っていた。

 そんな()()()()()を映していたテレビの電源を切り、同じく笑顔を湛えながらロード・エルメロイ二世は今日も仕事に励む。

 

 ────ライダー・イスカンダル。

 聖杯戦争解体後、タマモキャットとランスロットによって人間に転生。

 宝具もスキルの大半さえも含む神秘の全てを失いながら、しかしカリスマと軍略などの彼個人の魅力は残り、変わらず己の夢へと走り続ける。

 その姿に、陰りなど無いと言うように。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 日本、冬木の冬空の街を間桐雁夜は仰ぎ見る。

 冬風に白髪が揺らめく様が視界に入り、雁夜は思わず左側の顔に触れる。

 そこには嘗てあった歪みが無く、彼本来の顔があった。

 

「あれから十年か」

 

 彼は今、穂群原学園のPTA会の帰りである。

 間桐臓硯亡き今、地元の名士である間桐の当主である雁夜はそういった近所付き合いをしていた。

 それだけではない。様々な金銭面の遣り繰りなど、フリーのルポライターをしていた頃との違いに最初は四苦八苦していたのは良い思い出になっている。

 

「アイツもこういうのをやってたのか……」

 

 外道、妖怪、魔物。

 最低最悪の外法を用いていた間桐臓硯の意外な一面に、何とも形容できない感情になる。

 

「聖杯戦争、か」

 

 タクシーを呼んだ彼は暖かな車内で静かに目を閉じながら、十年前の魔術儀式、その顛末を思い出す。

 

 第四次聖杯戦争。

 そのおおよそに参加することの無かった彼にとっては、ランスロットを引き寄せる為の令呪を得るまでが全てだった。

 大聖杯の破壊に赴いたランスロットを待ちながら、消化の良い食べ物を食べていた雁夜に入った連絡は正直意味の分からないものだった。

 

『聖杯くんが召喚したタマモと大聖杯が悪魔合体した結果、タマモが大聖杯になってもうた』

「はぁ?」

『俺自身が大聖杯になることだ……』

「ちゃんと説明しろクソ野郎」

『えー』

 

 大聖杯に巣くう人間の悪性情報の化身が、自己保存の為にキャスターを汚染した状態で召喚。

 その悪性情報のみを幕引いた結果────

 

 

「────ご主人のお蔭で浄化爆誕! 我こそはタマモナインが一角、野生の狐タマモキャットだワン!! ご主人の居候先の家主ということを聞き、挨拶に参ったが……んー? えらく顔色が悪いな貴様」

 

 

 狐尾が三本の犬のような耳と手足の、太陽の様な笑みの美女。

 聖杯戦争の関係者と共に、円卓のフランス野郎はそんなよく解らないサーヴァントを連れてきていた。

 曰く、大聖杯が召喚したキャスターなのだという。

 目の逝き具合が完全にアレであり、また悪性情報に汚染された影響でバーサーカーとなっていたらしい。

 

 かの悪名高き傾国の美女が、完全に色物の不思議生物になっていたのだ。

 日本人である雁夜の頭には理解不能しか浮かび上がらなかった。

 そしてそれだけでは収まらず。

 

「なぁ」

「何だ?」

「お前大聖杯破壊しに行ったんだよな?」

「あぁ」

「だったら何で女二人も連れ込んでやがる!? しかも一人は寝てるし! お前が知り合いじゃなかったら通報不可避だわ!!」

『俺は悪くぬぇ!! はっちゃけたガイアが悪いんだ! 俺はニュータイプじゃねぇんだよぉ!』

 

 真祖の姫君、アルクェイド・ブリュンスタッド。

 そんな特大の爆弾をランスロットは連れてきたのだ。

 曰く、彼女の身体を星の意思とも言える存在が勝手に使い、大暴れしたそうな。

 そして星の頭脳体に彼女を託されたらしい。確かに連れて帰るしか無いのだが、いつの間にかランスロットの後ろに侍っている静謐のハサンも合わさり、本格的に犬猫を拾いまくる困った人の様だ。

 尤も、拾ってくるのがサーヴァントやら精霊種だったりするのを許容するのは、魔術世界に疎い雁夜にしか出来ないのかもしれない。

 

 何はともあれ、サーヴァントが大聖杯そのものと融合してしまった現在、再び聖杯戦争を起こすには大聖杯そのものと言えるタマモキャットが、態々地脈と接続し数十年掛けて魔力を蓄積し、七人の魔術師を選出しなければならない。

 そんな面倒を、あの野生の化身に望むのは余りにも難しいだろう。

 

 舞台装置が、本来の81倍強くなった太陽神の分け御霊という名の野生と化したのだ。

 聖堂教会も魔術協会もそんな報告を受けたのならどの様な顔をするのだろうか。

 兎に角そんな惨状に加えて、とある事件が発生する。

 

 遠坂時臣月読事件である。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…む? 確か私は────そうだ、私は英雄王により固有結界から脱出した筈。だが、ここは……?」

 

 自分のサーヴァントが最初から悲願の聖杯を所持していた事、加えて天の鎖に縛られた際に偶然首を圧迫された事で意識を失っていた時臣が目を覚ました場所は、冬の時期には見られない暖かな公園だった。

 

 最初に考えたのはギルガメッシュとのラインによる夢見だが、古代人であるギルガメッシュの生前に公園などあり得ない。

 ならば幻術か精神干渉、あるいは夢に干渉する魔術?

 

 時臣はその様な思考をしながら、即座に魔術回路を励起させる。

 魔術刻印もそれに呼応し静かに発光を始めた。

 

「私の精神防御を突破するとは……、英雄王とのラインも感じられない。だとすれば本当に夢への干渉か?」

 

 何か致命的な事を忘れている気がするが、彼は一先ず優先すべき目の前の事態に備えた。

 時臣は優雅に、手元にあった宝石が嵌め込まれている杖を携え、周囲を再度注意深く見据える。

 そうして変化は現れた。

 

 いつの間にか公園のベンチに一人の男が現れた。

 青いツナギを着て袖を捲り上げている、姿勢を崩しながら大胆にベンチにもたれ掛かる容姿の整った人物が、時臣を静かに微笑みながら見据えていた。

 

「────」

 

 直感があった。

 今すぐ逃げるべきだと。

 家訓もプライドも何もかも捨てて、唾棄すべき凡俗の如くどれだけ不様でも逃げるべきだった。

 だが、時臣は気付く。

 背後にも全く同じ男が全く同じベンチに座っている事を。

 そうして左右にも、同じ男が現れ八方塞がりを作り上げられていた。

 

 途端、魔力が蓄えられていた宝石から、魔術刻印から、光が消える。

 

「なッ!?」

 

 魔術回路もその励起を止め、時臣の制御を離れていた。

 あり得ぬことだ。あり得ぬことだが、これが夢の中ならばあり得る。

 

 夢魔に対しては、それが夢だと自覚した時点で術者は無力になるという。

 ならこの状況はオカシイ。

 夢では無いのか?

 

 思考に捕らわれ、四肢をモガれたも同然の時臣は────

 男達が迫る。

 一歩、また一歩近づく度に時臣の身体に震えが生じ、冷や汗が流れる。

 そうして静かに、彼等は絶望を口にした。

 

 

「────ヤ ら な い か」

 

 

 その後、複数の全く同じ顔とツナギを着た男に草影に連れ込まれた時臣の余りにも悲痛な悲鳴が響く。

 

『────これから128時間、彼等とハッテンし続ける────』

 

 そんなノイズまみれの言葉が響くが、聴いた者は居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

『以前殺した幻想種に、男にしか興味の無い特殊性癖の変態夢魔が居てなァ。マーリンに突撃させようとか考えてたが、いやはや如何に変態でも役に立つもんだなぁ』

「…………………」

 

 時臣の悲劇()に愉悦したいが、しかし蟲の影響をエレインやタマモキャットの治療により脱した雁夜には葵と凛のことを思うと素直に嘲笑も出来なかった。

 そんな雁夜は報告を受けた際、百面相だったそうな。

 

「夢魔は夢だと見破られた時点で無力になるんじゃないのか? お前がそう言ったろう」

「あぁ、だがそれは夢魔が一人だった場合だ」

「…………おい、まさか」

『そんな性癖だと露見している時点で、被害者が存在していると考えるべきだったね。一人無力にしただけでは無意味。夢に落とし精神防壁を崩した直後、複数の精神干渉系の幻想種による術の重ねがけとは』

「悪夢だ」

 

 翌朝遠坂邸で発見された遠坂時臣は、酷い憔悴状態で直ぐ様入院した。

 聖杯戦争のゴタゴタなどとうに終わった時期に退院した彼は、それこそ嘗ての魔術師然とした姿勢が見違える様に穏やかに、当たり前の日常というものに安らぎを覚えていた。

 それが間桐臓硯の死を知り、他の魔術師の家系に桜を再び養子に送ろうと考えた夜に、再び悪夢が起こったからか否か。

 彼の精神科通いはまだ続くだろう。

 彼はSAN値チェックに失敗したのだから。

 

 少なくとも、もう彼が聖杯戦争に関与しようとは思わないだろう。

 桜についても、後日エレインとランスロットが時臣の元へ訪問。エレインの庇護下に置かれる事が決定した。

 

 つまり、今と特に変わらないということ。

 

 彼の胃痛を加速させる英雄王とも、理不尽の権化であるランスロットとも関わりを出来うる限り回避しようとしたのかもしれない。

 

 これにより御三家の内二つが使い物にならなくなり、残るはアインツベルンのみ。

 最後にして最初の聖杯戦争主催者は、しかしてその後間も無く潰えることになる。

 

 衛宮切嗣と、そして大聖杯であるタマモキャットがランスロットとラインが繋がった為、大聖杯としての魔力供給が健在であった故に未だ現界しているセイバー・アルトリア。

 彼等によるイリヤスフィール奪還の為の、アインツベルン襲撃であった。

 

 唯でさえ大聖杯は事実上制御不能。

 かつて偶発的に造り出され大聖杯となった奇跡のホムンクルス、ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルン。

 そんな前例が存在する以上、最高傑作であるイリヤスフィールにどの様な扱いをするか解ったものではない。最悪、第二の大聖杯として人間性の悉くを剥奪されるかもしれない。

 

 そんな可能性を、エレインから示唆された切嗣の行動は早かった。

 元より戦闘向きでは無いからこそ切嗣を雇ったのだ。そんな魔術師殺しが歴戦の助手とトップサーヴァントを連れて襲ってきたのだ。

 アインツベルンは成す術無く、呆気なさ過ぎるほど呆気なくその千年の歴史に幕を下ろした。

 

「ん……あれは────悪い、止めてくれ」

 

 思い出から現実に戻り。

 タクシーから顔を覗かせた雁夜に、歩道を歩く三人の少女が気付く。

 

「おや、間桐氏」

「カリヤじゃない」

「おじさん、どうしたの……って、PTA集会だったの?」

 

 間桐桜、氷室鐘。

 そして冬木西側の古くから町並みを残す「深山町」の武家屋敷に居を構えている、衛宮切嗣の実子イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

「あぁ。折角だ、乗っていかないか? 今日はアイツが帰ってくる」

「乗せていただこう」

「ワーイ! 楽チンだわぁ」

 

 十年前の幼い少女達は、立派な大人にならんと美しく成長した。

 

「……」

「おじさん?」

「いや……、三人とも本当に大きくなったって。最近、妙に年寄りみたいな事を考えてね」

 

 今の二人、特に桜は雁夜にとって勲章の様なものだった。

 聖杯戦争直前の地獄の日々は、決して無駄ではなかった証明だった。

 

 彼女たち二人がとあるど阿呆に入れ込んでいることを除けば、何一つ問題など無かったのだが。

 

 ────間桐雁夜。

 聖杯戦争の事実上の再開不能、間桐の魔術そのものであった臓硯の死も合わさり、己の手で間桐の魔道に終止符を打つ。

 間桐の魔術資料は全てエレインに渡し、間桐家は唯の地主になったのだ。

 無論その判断は、ランスロットとエレインという庇護の下による物だが。

 

 彼の肉体の問題も、余命一ヶ月だったことを思えば十年生きている事がその快復の様子を示しているだろう。

 尤も、小聖杯と聖槍を持つエレイン。大聖杯そのものと化すことで願望器としての能力を備え、リスクを考慮し思い出しさえすれば評価規格外の呪術を扱えるタマモキャットがランスロットという無限の魔力源を以て治療を行ったのだ。

 死にかけの人間一人程度生き返らせられなければ、聖人の末裔、英霊などとは名乗れない。

 

 杖こそ常備して、後遺症の白髪などは残っているが常人と同じ様に雁夜は生きている。

 

「そうだ! 折角なので先輩も家で夕飯どうですか? あの人が帰ってくるので、お料理も奮発したいんです!!」

「だったらセラにも手伝わせようかしら」

「それは良いだろう。私も出来れば手伝いたいのだが、桜やセラ殿のソレと比べて料理は良くて並だ。足手まといは御免でね」

「雁夜おじさんも、今晩は楽しみにしてくださいね」

「あぁ、楽しみにしているよ」

 

 ────氷室鐘。

 ギネヴィア姫の転生体であり、太極の眷属である彼女は、しかし親族が完全な一般人である。

 彼女の素養が公になれば、どれだけの魔術師が彼女を素材として欲するか。これほど嫌な引く手数多もそうは無い。

 

 だがランスロットの大々的な自己アピールとエレインの情報操作により、彼女の情報は徹底的に隠匿された。

 その後はアインツベルンを滅亡させた後に冬木に居を構えた衛宮切嗣や、度々来日するエレインに師事。違法改造(チート)の如き素養を育てていった彼女は、中学卒業と共にロンドンに旅立った少女に負けず劣らず万能に成長した。

 

 惜しむらくは、彼女は魔術師ではなく魔術使いですらないということ。

 根源の渦には興味がなく、魔術師としての後継を作る気もない。

 彼女が魔術を護身術扱いするのは、ある種必然だった。

 

 尤も、彼女にはこれ以上ない護衛が存在する筈なのだが、とうの護衛は己がマスターを放置して生前の主人に付いて回っているので考慮するには少し足りなかったりする。

 

 彼女の将来は両親の後を継いで市長になるだろう。

 聖杯戦争というこの街の爆弾は取り除かれた以上、気兼ねなく後を継げる。

 ────尤も、とある男が居を別の街に変えた場合、彼女は迷わず後を追うだろうが。

 

「最近衛宮はどうしている?」

「相変わらずよ。母様と共に亜種聖杯戦争を潰すため、世界中を高飛び高飛び。まぁたまには帰ってくるけど」

「今回あの人は別件で同行していないから少々心配ですね」

「尤も、衛宮氏と舞弥女史は歴戦の強者。我等の心配など無用だろう」

「今思えば、いつもはキリツグとマイヤが情報収集、ランスロットとモードレッドが実働部隊と考えるのなら、よくよく考えれば相手が可哀想ね」

「アイツを敵に回して勝てる奴が、俺には想像できないな」

 

 ────イリヤスフィール。 

 魔術師殺しと騎士王に救出された彼女のために求められたのは、新しい肉体であった。

 胎児の段階で過酷な調整を受けていた彼女は既に新たな聖杯の素体であり、その寿命は十年が限界でありマトモな成長も見込めなかった。

 そして肉体が不安なのは彼女だけではない。

 聖杯の器としての調整を、彼女の母親であるアイリスフィールも受け切っている。尤も、彼女はイリヤスフィールと違いその為だけに生み出されたホムンクルスなのだが。

 

 そんなアイリスフィールの寿命はイリヤスフィールよりも差し迫っている。

 解決策としてはランスロットの眷属となることなのだが、それは彼女達も狙われ続けるリスクを負うことを意味する。

 桜のように始めから狙われる要因を持たない限り、それは出来うる限り避けなければならない。

 そんな彼女達に対してエレインとランスロットの解答は一致していた。

 

『型月における反則の権化の一人、困った時の蒼崎橙子』

 

 時計塔において『魔術基板の衰退したルーンを再構築』『衰退した人体模造の魔術概念の再構築』という非常に高い業績を上げ、時計塔の頂点である『冠位』となるが、最終的に高すぎる技術が元となり、協会から封印指定を受けた当代最高位の人形師。

 その技術は「本人と寸分違わぬ人形」を創り上げるまでに至っている。

 ホムンクルスに対して、人間の器を創り上げる事も出来るだろう。

 

 そんな彼女は気の乗らない仕事は受けないという芸術家らしい一面を持っているが、そんな彼女に対して用意したのがランスロットだった。

 正確には彼が内在宇宙に取り込んでいる幻想種達。

 彼等から素材として身体の一部を了承の元貰い受け(この了承にとある一角獣は考慮されない)、彼女に報酬として与えたのだ。

 尤も彼女は亜種とはいえ、時系列的にはある意味真の第五魔法である第六魔法の体現者であるランスロット本人の方に興味を強く惹かれたのだが、生憎と彼の番犬は気が荒い。

 

 モードレッドの可愛げさえ感じさせる壮絶な睨みに素直に引き下がった橙子は、依頼通りアイリスフィールとイリヤスフィール、加えてイリヤスフィールの御付きとして個人的に彼女に付き従っているメイドのホムンクルスであるリーゼリットとセラの人形さえも用意した。

 

『────アインツベルンのホムンクルスの人形を創るのは、中々光栄でね。報酬も最高と言って良い。久々に腕も鳴るさ』

 

 彼女によってあらゆる問題を克服した彼女達は、衛宮切嗣と共に穏やかに暮らす────とはいかなかった。

 亜種聖杯戦争の勃発である。

 

 マリスビリーとハートレスによって聖杯戦争の術式が拡散。各地で起こっている亜種聖杯戦争を仲裁、あるいは早期解決を図る為、切嗣はアイリスフィールと共に今も世界各地を飛び回っている。

 それは在りし日の衛宮切嗣が望んだ正義の味方とは、やはり違うのかもしれないが、それでも愛する妻と助手に娘が待つ帰るべき場所がある彼は、かつての魔術師殺しとは明確に違うだろう。

 彼はもう、独りではないのだから。

 

「というか、今回アイツは何の用件で何処に行ったんだ?」

「おや、雁夜氏は存じてないと?」

「出来限りその手の情報は遮断してるからね。折角体が治ったのに、胃痛に苛まれるのは御免被るよ」

「何でも、ブラックモアの墓守りからロンゴミニアドパクってクソ夢魔にぶん投げるって言ってました」

「クソ夢魔って、確かブリテンの宮廷魔術師の……」

「アーサー王が『アイツ』と呼ぶのは後にも先にも彼だけだろうな」 

「あの礼儀正しくて優しかったセイバーさんが、なんだよね。どんだけなんですか」

「どのみち自他共に認めるクソ野郎が、魔術師としては人類史上最高峰なのが人類の程度を示してるよね」

「……セイバー、か────」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 十年前、曇鬱とした雑草の生え茂る幽霊屋敷だった間桐邸は、見違えるように風通りの良い爽やかな屋敷へと変貌していた。

 

「御勤め御苦労、家主殿。今夜はご主人の帰還祝いでこのキャット、一足先に帰還し猛犬の如き勢いで調理を進めている故。共に帰った小娘共、手伝いたかったら手洗いうがいキッチリシッカリやってからキッチンに来るが良いぞ!」

 

 そんな間桐邸に帰ってきた四人を出迎えたのは、メイド服にキッチンエプロンを着けたタマモキャットである。

 屋敷を満たす香辛料の香りから、既に仕込みを半ば終わらせているのだろう。

 その犬のキグルミの手袋にしか見えない両手で、どうやってランスロットの身の回りの家事炊事全般を遣り熟しているのだろう。

 

 そんな彼女の言葉に桜が急いで手洗い場に走るのを見届けながら、彼女がこの屋敷にいる意味を理解する。

 玄関を進むと、一階ホールのソファに腰掛けている、十年前から何一つ外見的変化が見られない男────ランスロットの向かい側に、雁夜がコートを脱ぎながら座り込む。

 背後には当たり前と言わんばかりに静謐のハサンが侍っていたが、雁夜にとっては慣れきった景色であるので気にしなかった。

 

「帰ってきていたのか」

「────あぁ、今戻った所だ。そういうお前は?」

「俺はPTA集会にな。そう言えばアヴェンジャーは?」

「モードレッドはキャットの手伝いをしている。尤も、料理ではなく食器云々や味見役としてだろうな」

 

 ────アヴェンジャー・モードレッド。

 氷室鐘のサーヴァントであり、エレインの魔術によってランスロットのサーヴァントでもある叛逆の騎士。

 彼女には受肉という選択肢もあったが、その場合彼女のホムンクルスとしての寿命さえも再現するだろう。

 そもそも彼女が現界を続けているのはランスロットと共に過ごし、彼の役に立つことを望んだからこそである

 そして、彼女の力はやはりその戦力である。

 仮に寿命が何とでもなったとしても、受肉による老いなど彼女にとって自身の価値を下げるだけの物でしかなかった。

 

「────」

 

 冬木の聖杯戦争解体の立役者にして、第四次聖杯戦争を彼処まで混沌にした問題児。

 最新にして最強の魔法使いであり、現代を生きる地の英雄。

 そんな魔術協会にとって指向性を持つ天災の様な男を見ながら、雁夜は嘆息交じりに話し掛ける。

 

「お前は……変わらないな」

「そう言うお前は少し老けたな」

「普通はこうなんだよ。人間から逸脱しすぎだお前は」

『わっかんねっ☆』

「ったく……、先日レティシアちゃんが挨拶に来たよ。あの子、冬木教会のシスターやるんだってよ」

「……そうか」

 ────レティシア。

 ジャンヌ・ダルクという聖人の依り代となった少女。

 第四次聖杯戦争終結とその後始末を終えた後、ルーラー自身は自主的に消滅した。

 無論、聖杯戦争解体に尽力してからだが、雁夜にとっては意外や意外、

 その委員長気質を遺憾無く発揮し、ランスロットをある程度制御していた頼れる存在でもあった。

 

『貴方は一言以前に何もかも報連相が決定的に欠けています! 大聖杯の汚染を知っているのなら何故あの時言わなかったのですか!? 貴方の能力が私に気付かせなかったとしても、貴方なら解っていた筈でしょう! 全く全く!! そもそも幾ら会わせる顔が無いとしてもそれは貴方の都合でしかありません! セイバーやアヴェンジャーの心中を察するなら、早々に正体を明かして────────』

 

 おおよそ彼女は、雁夜が言いたかった言葉全てを用いて阿呆を叱り付けてくれたのだ。

 その有り難さから、雁夜が思わず冬木教会に寄付したのは完全に余談である。 

 

『────貴方とはまた何時か何処かで会う。啓示ではなく、そう思えてならないのです』

 

 寂しさを欠片も見せなかった彼女は、そう口にしながら笑顔で座に還った。

 その言葉をふむふむと頷いていた阿呆を見て、彼女が聖女から預言者に昇格したことを雁夜は確信した。

 

 そんな彼女の退去の後、残った依り代であるレティシアは聖堂教会の監視も受けながら故郷のフランスに帰国。

 

 彼女は聖女との二心同体だった。

 マスターとサーヴァントであるだけで相当の影響を受けるというのに、肉体を共有していた彼女が受けた影響はどれ程だったか。

 元々敬虔な少女だった彼女がその道を歩んだのは必定だった。

 彼女がもうすぐ、白髪の少女を連れた老いた言峰神父の後を継いで、この街の一員になると思えば、年寄り臭い思考にもなる。

 

「言峰神父と言えば、アサシンのマスターだった息子さん────確か言峰綺礼だったか。彼はどうしているか知ってるか? 確か時臣のサーヴァントだったアーチャー、ギルガメッシュだっけか。そのサーヴァントに随分気に入られていたそうだが」

「あぁ、確か紛争地域に介入して争いそのものを終わらせたり、負傷者の救命活動をしているらしい。まるで在りし日の魔術師殺しの様にな」

「へぇ……凄いとは思うが、神父からNGO紛いとは酔狂だな」

「それが最も奴が求めていたものが溢れている場所だったんだろう」

「?」

 

 ────言峰綺礼。

 その在り様を完全肯定されながらも、己の異常性と世間とを合わせるように生きることでズレを解消。

 かつての魔術師殺しの様に紛争地域に介入し争いを治め人々を癒す様は正に聖人の如く。

 しかしそれは善行を行いながら己が愉悦を感受する最適な場所の一つが争いの最中だったという話。

 紛争地域での野戦病棟が地獄であることは、最早言うまでもないのだから。

 そんな彼を支援している謎多き巨大財団のトップが、金髪紅眼の少年なのは周知の事実である。

 

「今思えば、受肉もしていないのにサーヴァントが現界し過ぎだろう」

「明確に受肉────いや、転生したのはライダーだけだからな。静謐は受肉したと言えるのだろうか?」

『結局血を飲ませたら毒のオンオフ出来るようになった上、歳も取らねぇし』

「我が君の傍に居られるのであれば、理屈など不要です」

 

 ────アサシン・静謐のハサン。

 全身を猛毒に浸した不触の彼女は、更なる毒を持つ様々な幻想種達の毒から血清を作り、彼女の毒を中和させる事に成功した。

 単にランスロットの血を飲ませたら毒の調整が出来るようになった、と言えばソレまでなのだが。

 そんな彼女は聖杯によって受肉しており、公には姿を出せないタマモキャットは勿論、戦う事以外は現代に於いて無能に近いモードレッドが出来ない、ランスロットの秘書のような立ち位置に収まった。

 その日常は陰湿なストーカーそのものなのだが、ランスロットに注意されれば直すのでそこまで問題にはされていない。

 尤も、彼女が夜な夜なランスロットのベッドに潜り込んでいる事が発覚した際に一騒動あったのだが、完全に余談である。

 

 そんな静謐のハサンから目線を離しながら、呆れたような視線を向ける。

 

「────で、その子は誰だ?」

 

 雁夜の視線の先に、ランスロットの隣の席に身を縮める様に座る目深にフードを被った銀髪の少女が居た。

 

「せ、拙は……」

「紹介が遅れたな。彼女は今代のロンゴミニアドの担い手、グレイだ」

『ぶっちゃけ話が破綻したから即行拉致って来たからそこら辺は良く解らぬ』

「ただの誘拐犯じゃねぇかッ!? 何考えてんだ!」

『村人がなんかキチってたから、つい』

「はぁ!?」

 

 何か事情があるのだろうが、やってることはただ少女を拉致誘拐しているだけである。

 湖の騎士とか魔法使いとか英雄とか以前に、ただの犯罪者であった。

 

『────イッヒヒヒヒヒヒ!! そォだそうだ! もっと言ってやれオッサン!! その湖の大馬鹿野郎を常識を以て糾弾してやれ!』

 

 そんな中、フードの少女の方から彼女ではない男性のような非難の声が響く。

 

「え?」

「アッド! み、湖の騎士に失礼を!!」

『少女誘拐犯に失礼もクソもねぇよ愚図グレイ!』

「ここでも兄貴分か。どうなってもお前は面倒見が良いな」

『言うに事欠いてこの野郎……ッ』

「そ、ソイツは……?」

「ロンゴミニアドの神秘性を喪わせない為の封印礼装、その疑似人格だそうだ」

 

 アッドと呼ばれた鳥籠のような檻の中に収められた、眼と口の付いた直方体の匣。

 それがランスロットと旧知の仲の様に彼を罵倒していた。

 

 聖槍ロンゴミニアド。

 かつてアーサー王の所持していた宝具の一つ。

 曰く、それは世界を繋ぎ止める錨であり、世界に複数存在する星の塔の影。

 そんなものを背負わされている少女の前に、雁夜は杖で体を支えながら跪いて、目線を合わせる。

 

「自己紹介が遅れたな、俺は間桐雁夜。君は?」

「拙は……(グレイ)です。黒でも白でもない、グレイ(どっちつかず)────」

「……ふむ」

 

 チラリと、雁夜はそのフード下にあるアーサー王に酷似した容姿に、しかし何の言及もせずに笑いかける。

 そこには、十年間子供を育てた大人の顔があった。

 

「俺は君にどんな事情があるか解らない。だけどまぁ、気楽に考えても大丈夫だろう。些か無責任かも知れんが、アイツの事だ。どれだけ盛大にやらかそうが、最終的には解決する。アイツと行動を共にするなら付き合いも長くなるだろう。魔術や神秘についてはやっぱり良くわからないが、宜しく頼む」

「……! はい、宜しくお願いします」

 

 雁夜の差し出した手を、おずおずと握る。

 居候が増えただけ、何の事はない。

 寧ろ他の面々に比べれば常識的ですらある。

 

 単一化宇宙に暗殺教団の教主、国を滅ぼした叛逆の騎士に万能の願望器を内包した太陽神の分け御霊。

 ……少し気が遠くなった気がした、雁夜である。

 

『……あのオッサンがアグラヴェイン枠か?』

「どちらかと言えば、お前とベディヴィエールを兼任しているな。昔は胃処か身体中に穴が空いていたが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も更け、気が付けば道々に芳ばしい香りが漂う夕飯時。

 晩餐の準備が整った間桐邸に、遅まきながらの来訪者が到着し、その扉を開く。

 二人は洋式の屋敷である外観に似合わぬ和式部屋に顔を出した。

 

「すまない、遅れた」

 

 一人はエレイン。

 彼女は馴染みであり身内同然のため、何の問題も無いのだが、その連れが問題だった。

 

「ランスロットー! 遊びに来たわよ────!!」

「はァ────ッ!?」

 

 来訪者の声に絶叫を上げたのは、今か今かと炬燵から身を乗り出し食器を構えて料理を楽しみにしていた叛逆の騎士である。

 

「おまッ、手前ェ! ソコのカーボネックの女は未だしも、何当然のように上がり込んでやがる吸血鬼!!」

「わーい暖かーい! ランスロット横入れて入れてー」

「無視してんじゃねぇぞゴラァッ!!」

 

 エレインと共に現れ、常人なら卒倒する怒気を無視しながら、悠々とランスロットの隣に金髪の美女が陣取る。

 

 ────────アルクェイド・ブリュンスタッド。

 十二世紀頃、真祖たちによって人工的に抽出され、「最強の真祖」としてデザインされて生み出された存在。

 その性能からアルクェイドが朱い月の器となりうる為、朱い月が復活することを恐れた真祖たちにより堕ちた真祖に対する執行者として運用され、記憶や感情などはほとんどが執行後に毎回リセットされていた。

 そこに感情は無く、機械的なまさしく兵器のようだったのだが────

 

「本当に見違えたな、彼女」

「元より感情は兵器にとって不要。つまり、彼女は既に兵器としては不良品となった。だがランスロットに斬られた時、彼女は個人として本当の意味で目覚めた訳だ」

 

 エレインの言う通り、彼女は一度破壊された様なものであった。

 影響で彼女のシステムが孕んだバグの様なものの結果、無邪気で天真爛漫。感情の起伏が激しく、わがままとも取れる行動をとる自由奔放な猫のように、明るくしなやかな女性へと成長した。

 そこにランスロットの意図があったかは不明である。

 

「尤も、彼の周りに異性が増えたのは些か不満だがね」

「ケッ、元々ランスロットの追っかけだった女が良く言うなオイ」

「聴こえてるぞ不良娘ェ!」

 

 ────エレイン・プレストーン・ユグドミレニア。

 ランスロットを取り戻すために転生したカーボネックの姫君の悲願は、しかし本人が勝手に帰って来るという思わぬ事態によって達せられた。

 結果、彼女の目的は現在を護ることに注力された。

 魔術協会への工作や地位的配慮。

 一時期セカンドオーナーである遠坂の当主が廃人同然となっていた際の冬木の管理代行など。

 兎に角ランスロットの側に居られるよう配慮し、ある意味都合の良い女と言えるほど献身した。

 それにランスロットが心苦しさを感じたのは言うまでもない。

 そこで返礼として何か出来ないかと問いを投げ掛けると────

 

『今、何でもって言ったのですか?』

 

 ────ランスロット病が感染してやがる。

 雁夜は飢えた狼と化したエレインを見てそう述べた。

 その後がどうなったか。

 その結実に一騒動あったのは言うまでもないだろう。

 

 十年経った今、聖杯戦争の苛烈さなどもうこの街には存在しない。

 あるのは当たり前の穏やかさと賑わいである。

 

 かつて復讐者として召喚されたモードレッドのその禍々しさは鳴りを潜め。

 桜の悲劇は時間と共に癒されていき。

 エレインの妄執は結実と共に溶けていった。 

 夜も更けた時間、賑やかだった間桐邸から声が消える。

 盛大に賑わった後に自然と眠りに就いていったのだ。

 

「……」

「? おじさん、どうかした?」

「いや、便利そうだな、と思って」

 

 使われた食器を次々に影へ落としていく桜を見ながら、複雑そうに雁夜が苦笑いを浮かべる。

 虚数魔術によって台所に陣取っているタマモキャットへ、次々に食器が送られていく。

 全て送り終われば、キャットを手伝うべく桜も台所へ向かった。

 

 かつて魔術そのものを忌避していた雁夜にとって、日用品の様に使われている希少魔術に笑いしか起こらない。

 おそらく通常の魔術師ならばぞんざいな使い方に椅子から転げ落ちるだろう。

 

「桜も、本当に明るくなったな」

「お前には礼しか言えない筈なんだが、突っ込んでばかりなのは何故だ」

『わっかんね☆』

「それ腹立つから止めろ」

 

 ────間桐桜。

 第四次聖杯戦争に於いて数少ない犠牲者の一人であり、真っ先に救われた少女。

 十年掛けて行われた治療により、心身ともに癒され、彼女本来の明るさを取り戻していた。

 また護身として魔術を学び、その希少な素養を開花させている。

 憧れた人に、追い付くために。

 

「桜は高校卒業後、お前の仕事手伝うんだってよ。死徒狩りとかもそうだが、お前やアサシンの苦手な対人の対応とか」

「……物好きだな」

「お前の周りには物好きばかりだよ。お前も含めてな」

 

 そう言い、雁夜は真剣な眼差しでランスロットを見詰める。

 余りにも人らしい癖に、余りにも人からかけ離れた超越者を見る。

 

「なぁ、お前はこれからどうするんだ?」

「?」

「お前は死なない。寿命も無ければ外的要因で殺せるとは思えない」

 

 雁夜の考えは正しい。

 ランスロットに外敵をぶつけても大抵は容易く蹴散らし、吹き飛ばす。

 仮にランスロットに匹敵、あるいは凌駕するほどの存在が襲来してもそれは逆効果。

 そんな超えるべき壁(比較対象)に、彼はより強大になって笑いながら凌駕するだろう。

 

 ランスロットを滅ぼすのに、敵では駄目なのだ。

 彼の強さは、彼の孤独を意味していた。

 

「お前は、一体何処へ行くんだ?」

「────何を言うかと思えば」

 

 しかし、ランスロットの答えは肯定ではなかった。 

 

「俺が死なない? ────そんなことはない。

 死にたいと思えば首を斬ればいいだけだからな」

『ジャパニーズハラキリィ! まぁ介錯役居ないと地獄らしいけど、俺程の上級者となると介錯役を兼ねることなど造作もないィ』

「………自殺、か」

 

 それしか無いのだろう。

 アロンダイトを解放したランスロットに斬れぬものなど在りはしない。

 己さえも、彼はするりと幕引くだろう。

「まぁソレ以前に、かなり待たせているからそんなことはしないが」

「……妖精郷にて眠る、いつか蘇る王か────!」

 

 ────アルトリア・ペンドラゴン。

 セイバーのサーヴァントとしてアインツベルン襲撃にも参加した彼女は、しかしモードレッドの様に現界を続けることなく、ランスロットとの会話の後、消滅することを選んだ。

 

「アイツは在るべき場所へ先に帰って、キチンと終わらせに行った。一足先に待っていると。桜達を見届けた後、俺も往く」

 

 その意図を知るのはランスロットと、彼女の背景をある程度把握しているエレインだけだった。

 ある意味公平さを持っているランスロットがそれでも特別視しているのは、やはり彼女だろう。

 

 アーサー王は理想郷にて眠り、いずれ蘇るであろう。

 それが、アーサー王伝説の締めくくり。

 

「そうか、お前は帰る場所があるのか」

 

 ────なら、安心だな。

 

 もしその逸話が本当ならば、きっと彼女は待っているのだろう。

 決して死ぬことのない男の、帰る場所を作るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────長い旅だった。

 かけられた時間も、叶えようとした理想も。

 

 何かと厄介だったからだろう。ある意味存在自体が極めて疎ましく思われたのかもしれない。

 その剣が、その技が、その精神が。

 どれほど道を歩もうと、その足が止まることはない。

 休むことなどなく、諦めるなど思考の埒外。

 長い道を、歩き続けた。

 

 永遠不滅など無いと人は謳うが、そんな永遠不滅となった者はどうすればいい。

 彼の旅には果てがない。

 人が当たり前に持つ終着、死の終わりがやってこない。

 それほどまでに、強くなりすぎてしまった。

 彼の強さに、最早意味などない。

 

 影の国の女王ならば共感を。

 晩鐘の代行者は哀れみを。

 でも────花の夢魔は、困った様に笑うだろう。

 

「普通にやったらまず出会えない。実現するには、まぁなんていうか、二つの奇跡が必要だ。

 一方が待ち続けて、一方が追い続ける。それも酷く長い時間耐え抜かないといけない。本来それは言いにくい、望むべくもない夢物語だ────だけれど、何の問題もない」

 

 魔術師は語る。

 そんな常識や論理など何の意味もないと。

 

「僕が言っているのはある意味義務の話だ。男は小娘の一人くらいは幸せにしなければならないという義務。それぐらいの働きくらい、してもらわないとね」

 

 何を思う必要がある。

 彼は己の歩みを止める場所を知っていたのだから。

 故に、苦しいと思う必要もなく、物事を忘れることがあってもそれは磨耗ではない。

 彼は一番始めに、旅の終わりをキチンと見つけていた。

 

「本来いい事ではないのは確かだ。

 アルトリア。時代も人も変わっている。あの頃のままなのは君だけじゃない。だけど、ありふれている訳じゃ決してない」

 

 無論心残りはある。

 切り裂いた呪いも、叶えられた理想も、残してきた者達の続きも。

 それがどれだけ平凡で矮小であっても、偽善などありはしないのだから。

 

 けれど────命令があった。

 

 それだけでいい。

 口にするまでもなく、その命令だけは消え去らない。

 注意深く何度も言ったのだ。これで忘れられては王の立つ瀬がない。

 

 誰も訪れず、ついには誰にも求められず。

 人々の幻想から王の姿が消え去るまでもない。

 その温かな約束を(かて)に、彼女は微笑みながら未来永劫待ち続けられる。

 そうして、かつて彼が幻想の虚を彷徨っていた時とは違い。

 彼にとっても、彼女にとっても長い時間が流れた。

 

 ────ふと、目が覚めた。

 どれほど次元を股にかけただろう。

 方向音痴に自信があるなど以ての外だというのに。

 荒れ果てた大地から世界を跨がぬよう気を付けると、深い森を通り抜けて懐かしい草原に出た。

 そうして確信する。

 漸く、旅の終わりに辿り着いたのだと。

 

『────』

 

 果ての無い青空に奇妙な既視感さえ感じながら、かつての歩みを思い出す。

 あの頃は馬鹿みたいなことを馬鹿みたいに馬鹿をしていた。

 他の面々も含めて、さぞ面倒だった事だろう。

 この空を見ながら、あの頃の宙を想起する。

 

【────諦めなければ、夢は叶うと信じているのだァッ!!】

 

 そんな誰から見ても馬鹿にしか聞こえない言葉を実践していた。

 追い続ければ、きっと叶うモノがあるのだろうと。

 風向きが変わった。

 草原の先に、溢れそうな涙を堪え────さようなら、と何かに別れを告げる彼女がいた。

 

 黄金の大地。

 かつて護り、失われて久しい彼女の郷に漸く辿り着いた。

 

 結局、彼女が報われる事はなかった。

 かつて絶望し、後悔し、目の前で喪ったけれど、守り抜いた末に出会えた者があった。

 生き抜いた先に、かつて溢した尊いものが見付かったのだ。

 その笑顔は、かつて一度も見たことの無い。しかし彼女本来であるのだろうと。

 

「────────ただいま、というのは些か不躾か?」

 

 まるで恋人や友人の家に上がり込むような所作で、そんな気の抜けた言葉を口にした。

 

「全く、貴方は何時も妙なところで変なのですから。

 ────────────素直に、おかえりと言わせてください」

 

 地を踏む足は軽く、少女は崩れるように微笑んで、

 そうして、永い路の末。

 湖の刃は王の元へ帰還した。

 

 

 




マスター/クラス
衛宮切嗣/セイバー:アルトリア・ペンドラゴン
遠坂時臣→要石と魔力を自前用意/アーチャー:ギルガメッシュ(幼少期)
エレイン・プレストーン・ユグドミレニア/ランサー:クー・フーリン
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト/ライダー:イスカンダル
汚染聖杯→ランスロット/キャスター&バーサーカー:タマモビースト→タマモキャット
言峰綺礼→ランスロット/アサシン:静謐のハサン
氷室鐘&ランスロット/アヴェンジャー:モードレッド

部外者:ランスロット、守護者、ARCHETYPE:EARTH

第四次聖杯戦争の結果
 大聖杯がサーヴァントと同化し自律行動したため、戦争そのものがオジャン。
 アインツベルンと間桐の両家の滅亡に伴い御三家の解散に伴い聖杯戦争の終結。

次回で最終話と言ったので一話に纏めたら文字数がこんもり。
修正は随時行います。ホント、いつも誤字報告機能助かります。
明日にあとがきを投稿します。

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