探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
「俺と付き合ってくれ、ニコ」
目の前でイケメン生徒会長がセーラー服姿の私に向かって告白してくる。
なるほど。
はい
→いいえ
「嫌ですね。あなたが私と付き合いたいと思うわけがありません。根拠が薄すぎます。名探偵を騙そうなんて100年早いんですよ」
「そうか……残念だ」
【BAD END】
「クソゲーですね」
[《¥2525》嘘だろ。頭おかしい」
[ゲームは名作なんだよ。クソゲー扱いすんな!]
[《¥2500》サイコ過ぎる。生徒会長可哀想だろ]
[ドヤ顔すんな]
私はゲームの背景表示をオフにして、グリモワール上の自室配信に切り替える。
最近のVR乙女ゲーは自室でAIイケメンと本物と見紛う学園セットで恋愛できるというすごいものなのだ。
私の衣装もいつものホームズスタイルに戻る。
「いやいや、だっておかしいでしょう。普通に生徒会の仕事してるだけで生徒会長が好きになってくるなんて不自然過ぎます」
[《¥2525》おかしいのはお前だよ!」
[これがネタ配信じゃなくて、ガチで攻略しようってんだからな]
[リアルのニコが心配になってくるトンチキっぷり]
[推理じゃなくてただの人間不信なんだよなあ]
「あなたたち、本当に私のファンですか……ボロクソ言いますね」
[そもそもなんで急に乙女ゲー配信?]
今日はゲーム配信をしているのだが、そういえば趣旨を説明していなかった。
「リアルの友達が恋愛小説を書くのに恋愛経験がないっていうのを悩んでいたんですよ。で、私はそういうの全然興味ないって言ったんですよね」
[だろうな]
[マトモな人間の感情がある人の選択肢じゃなかった]
なんなんだ、お前ら。
「まぁ、コメントにいちいち引っかかってても話進まないから続けますけど、自分が恋愛したいという欲求はゼロだとしてもですよ、ある程度どういう現象か理解していないと友達の相談にも乗れないなと。そう思ったわけですよ」
[何も理解できてなかったけどな]
[生徒会長の好意や気遣いを被害妄想で、罠だと疑ってフッただけ]
[《¥25000》俺はそんなニコが好きだよ]
「いやいや、これはゲームの方が良くないですね。こんなに都合良くイケメンがあらゆるところに配置されていて、自分のこと好きになるなんてあるわけないでしょ」
[そういうゲームなんだよ!]
[ゲームの根幹否定すんな]
[そういう体験をするためのゲームだろうが]
同じようなツッコミが怒涛の勢いで流れていく。
速読できると全コメント拾えるから鬱陶しさも100倍である。
「まぁ……一理ありますね。ちょっと私には早かったようなので、次は違うゲームにしますか。推理ゲームとか」
[いや、恋愛アドベンチャーもっとみたい!]
[乙女ゲーはレギュラーコンテンツにしよう]
[歌と同じくらいのヒット作になる]
私の乙女ゲー配信は謎に人気コンテンツとなり、次回を望む声が届いている。
釈然としないところはあるが、リスナーのリクエストを無碍にはできない。
「わかりました。今日の配信はここまでとしますが、次に私にプレイしてほしいゲームのリクエストはコメント欄に書いておいてください。リクエストが多かったのをやります」
[イケメンボディビルダーやって]
[ディストピアホストクラブで]
[アンデッドラブ]
どんなゲームだよ。乙女ゲー多様化し過ぎだろ。
※
「なんか……違った」
私の類稀なる推理力を持ってしても恋愛感情とやらは解き明かせないらしい。
被害妄想とか人間不信とか言われるの納得いかない。
まぁ、いい。次のゲームこそはパーフェクトにイケメンを落としてあげるとしよう。
とか考えながら、ゲームタイトルの物色をしていると……。
「リンちゃんからだ」
DMが来ている。
[あたし、本当の恋見つけちゃったかも!]
ホンマかいな?
こんな年の瀬に誰が読むねん、と思いつつも書き上がったので更新してしまいました。
お読みいただいている皆様、今年はありがとうございました。
ハーメルンで連載していなければ本作はとっくに完結していたと思います。
あと年明けにはちょっとしたお知らせがある……予定です。あまり期待せずにお待ちください。
気が向いたタイミングで今後もちょこちょこ書いていきますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。