探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~   作:正雪

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良い知らせと悪い知らせがあるらしい

「というわけで、私はぴーちゃんと麻雀で2億稼いでくるから」

「えー、そんな大会あるの?」

 

 私の家にリンちゃんを呼んで、今回のプランを説明している所である。

 

 リンちゃんは私の口から出た、麻雀で2億稼いでくるという言葉に一瞬固まった後、いつものテンションで驚く。

 私はまぁ何となくこういう稼ぎ方になるだろうなとは思ってた。

 

 これが治療前の段階なら、スパチャで寄付を募るとか、チャリティーライブやるとか、ちゃんと国や自治体の制度を利用して補助金を貰うとか、借金も一番利子が少なくなる借り先を見つけたりできたものを。

 でも、そういうことが思いつかないように洗脳するのがやり口なのだろう。

 

 面倒ごとに巻き込んでくれちゃってさー、という気持ちはもちろんあるが、エラ君とその妹(日比谷姉妹)は完全に被害者である。

 責める気にはなれない。

 探偵は警察ではないが、だからこそ警察ではできない/踏み込めないようなところまで踏み込んで事件を解決することができるのだ。

 

「大会っていってもグレーなやつね。VRでだから」

 

 国内なら一部カジノのハイレートフロアでなら可能だが、基本的には難しい。

 ところがVR空間内での電子通貨なら可能なのだ。現金化できるのでもはやその制限には何の意味もない。

 

「応援行くね」

「いや、無理じゃないかな……多分だけど」

「なんで?」

「そりゃそうでしょ、イカサマ防止しなきゃいけないんだから。そんなことはないってわかった上でのたとえだけどね、当然応援は私の後ろに座ってするわけじゃない? で、ライバルにニコの手牌を教えてくれたら、3億やるって言われて寝返らない確証はないわけ。逆も然りね。何か仕草とか、VRヘッドセット外でDM送るとかで伝えるとかズルできちゃうからね」

「あ、周りに人がいたらフェアじゃなくなるんだ。じゃあ、現地で応援はできないんだ」

「タイムラグありの配信はあるかもね。私たちの誰が勝つかの賭けもやるんじゃないかなぁ」

「そっかぁ。あたし、応援くらいしかできることないからさ……せめて一番近くで応援したいなって」

「その気持ちだけで十分だよ」

 

 しかし自分で言ってみて思った。

 大会の勝者を誰か当てる賭けがないわけない。

 ジョーカーは絶対賞金以外にも私たちの麻雀を賭けの対象にして一儲けしようと企んでいるに違いない。

 本当に食えないやつだ。

 

「ちょっと電話する」

「う、うん」

 

 私はVRヘッドセットを被り、通話アプリを立ち上げる。

 ジョーカーはすぐに応じた。

 

「ちょっと聞きたいことあるんですけど、いいですか?」

「あぁ、こっちから連絡しようと思ってたところだ」

「こっちの用件が先です」

「あぁ、うん。どうぞ」

 

 私の苛立ちに気づいたのか素直に聞くようだ。

 

「この大会。誰が勝つかの賭けもしますよね? 賞金以外にも私たちや有力な選手に幾ら賭けるつもりですか? 私が勝ったら最終的に幾らになるんです?」

 

 ジョーカーの息を呑む音が聞こえる。

 

「別に隠れて稼ぐつもりはなかった。信じてくれ。もし君たちが優勝できなくても2億3億くらい浮くように計算して賭けるつもりではあった。オッズもあるし可能かはわからないけどね。君が言うとおり、麻雀やポーカーのような運が絡む不完全情報ゲームはどれだけ強くても必ず勝てるとは限らないだろ?」

「そうですね」

「だから、もし君とP2015が負けても日比谷姉妹の借金分はプラスが出せるようにするつもりだったのさ。君が全力でやって負けてしまったとしても、彼女たちを不幸にしないためにね。それも君たちが上位に確実に入ってくれるっていう信用あって成立する賭けだし、先に言うとモチベーションが下がるんじゃないかと思って黙っていた。疑念を抱かせてしまってすまない」

「あなた、良い奴ですね、意外と」

「君に恩を売るためだよ」

 

 まぁ、それも本音なんだろうけど。

 でも……。

 

「お気遣いありがとうございます。でも、賭けるなら……私とぴーちゃんに一点賭けで十分ですよ」

「わかった……君たちを信じる……と言いたいところだが悪い知らせがある。あと良い知らせもね」

「なんですか、煮え切らない」

「聞けばわかる。どっちからにする?」

「良い方からで」


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