探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私とリンちゃんはVIPルームの個室に通される。
試合会場であるメインルームの他にいくつもVIP客が休憩できる控え室のようなものがあり、その一つが割り当てられたのだ。
一つの部屋の中に洋室と和室があるような造りで、私たちはソファに向かい合って腰掛ける。
「やば。何この部屋。こんな広くても困っちゃうねー」
「VIP客用だからねぇ。こういうとこ使う人はリアルでも広い部屋住んでるんでしょうねぇ」
「ニコちゃんってさー、基本リアルと似たような感じだけど敬語キャラは敬語キャラだよね。二人きりだから口調崩してもいいのに」
「この姿の時はカメラがあってもなくても藤堂ニコなんですよ。そこはストリーマーとしてね。ちゃんとしとくんです」
「あたしには無理だなー、二つのキャラ使い分けるのって。リアルとVRで混乱しちゃいそう」
「そういう現代病に悩まされる人多いらしいですよ。どっちが本当の自分かわからなくなって病んじゃうらしいですね。私は平気ですけど。鋼メンタルなので」
「すごいなー、ホント頼りになるわー」
ふふん、と胸を張りながら、リアル側では胃薬をがぶ飲みである。
平気なわけあるかいな。ストレスで死ぬわ。
とかやっているとジョーカーから連絡だ。控え室はまだ連絡つくらしい。
『ニコちゃん。大変だよ』
『対戦相手が棄権ですか?』
『えぇ! なんで知ってるんだい?』
『まぁ、予想はつきますね。麻雀大会だからといって麻雀で戦わなくてもいいわけです。リアル側で決着ついてれば不戦勝ですから』
『そうなんだよ、残ったのは4チームだけで後は全員棄権した。何故なんだろう?』
『証明はできませんが、対戦相手の中に運営と繋がってるチームがありますね。おそらく、触覚グローブを運営から提供してもらったチームが居場所バレてリアルで脅迫でもされたんじゃないですかね』
『リアル側で受け渡しが行われるからね、機材提供は』
『私はぴーちゃんが出場できなくなった時点で疑ってました。だから高額ですが自腹で揃えることにしたんですよ』
『たしかに。AIが禁止になったタイミングも怪しかったね。あそこで気づいて次の敵の手段を潰せるのが探偵ってわけか』
『そういうことですね。対戦相手が減るのはこっちとしても好都合ですし、良いんじゃないですか』
運の要素が絡むギャンブルは分母が小さくなればなるほどいい。
『というわけで、君たちは2回勝てば優勝だ』
『2回ならまぁ何とかなりますね』
『本当に頼もしいよ』
『で、一回戦の相手は? 日比谷姉妹を借金漬けにした反社会組織ですか?』
『いや、アメリカに本拠地があるマフィアだ。ゴールデンファミリーという。全員VR上では動物のアバターを使っているのが特徴だ』
送られてきた画像は黒いスーツを纏ったハムスターとウサギだった。
めっちゃ可愛い。
リンちゃんにも見えるように表示する。
「えー、すごい。まるでシルバニ」
「リンちゃん、それ以上は言っちゃダメ。こういう悪質なパロディみたいな奴らは書籍化する時にいなくなる運命なの。あんまり触れない方がいいです」
「ちょっと言ってる意味がわからないけど、わかった」
私は今回の件を小説にする際はコイツらはリアルな鳥頭の鳥ヒューマンだったことにしようと思った。