探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私は自分のスペースに戻り、呪井じゅじゅとコラボをして引退していった被害者(仮)リストを洗っていく。
もはや動画は殆ど残っていない。
もともと売れていなかった子たちだ。ハイライトの切り抜き動画なども存在していないのでSNSから痕跡を拾っていく。
あとは数少ない私のリスナーにも情報提供を呼び掛ける。
「皆さん、こんばんは。名探偵Vtuber藤堂ニコです。ちょっと遅い時間になってしまったんですが突発生配信やります」
[ニコちゃん、こんばんは]
[こんばんわー]
[〈¥250〉 待ってました]
[今日やるって信じてた]
「実はですね、私さっきまで呪井じゅじゅさんのライブに行ってたんですよ」
[ニコちゃん行ってたんだー]
購入したチケットやライブハウス前で撮っていた自撮りを表示する。
「で、そこでライブが始まってすぐくらいに平和(ぴんふ)ナオちゃんっていう引退したVのファンのお兄さんがじゅじゅさんのせいで推しが引退したって叫んで追い出されちゃったんですよ」
[俺、じゅじゅのライブ配信で見てたわ。なんか一瞬叫び声聞こえたと思ったら中継止まったんだ]
[そんなことがあったのか]
[ちょっと話題にはなってるな。またじゅじゅがV呪ったって]
「そうそう、今コメントで書いてもらいましたが、じゅじゅさんが呪った人がVを引退するというのが噂になっているみたいです。で、実はそのナオちゃんのファンだったっていう男性からお話を聞いてですね。まぁ……色々聞いているうちに本格的に調べてみようと思い立ったんです。もともとちらっとは耳にしていて興味があったからライブにも足を運んではいたんですが」
V殺しという異名についてはあえて口にはしない。実際に殺しているわけではないし、まだ本当に何かしていると確定したわけでもないのに「殺し」という強い言葉で呼ぶ気にはなれなかった。
[お、探偵活動再開か!]
[じゅじゅが本当にV殺しの真相突き止めたらめっちゃスパチャ投げるわ]
そして一つのコメントが目に留まる。きっと彼だ。
【スズキ】[頼む]
「ただですね。今回は私一人の力では真相に辿り着けないかもしれません。リスナーの皆さんにお願いしたいことがあります」
[お、なんだなんだ]
[俺たちのことも認識はしてたのか]
「認識はしてますし、ちょくちょくコメントも拾ってるじゃないですか。で、お願いがあるんですよ!」
[言ってくれよ]
[オレたちができるってなんだ?]
[ついに真の名探偵であるお前の出番だな]
[〈¥2500〉俺ができるのは資金援助くらいだ]
「お願いというのはですね、じゅじゅに呪われて引退したとされているVたちの情報を提供してほしいんです。もうチャンネルも動画も情報も消えてしまっててどんな人たちだったかわからないので。どんなものでもいいので」
[任せろ!]
[〈¥2500〉俺には金を出すくらいしかできない]
[金出す以外にもなんかあんだろ]
「はい、じゃあお願いはここまで。また調査結果は後日発表します。まだちょっと喋ったり遊んだりしたいので『ウミガメのスープ』でAIと対戦しまーす。私の類まれなる推理力をもってすれば質問ゼロで正解を導き出すことができるでしょう」
[質問ゼロは無理やろ]
「天才探偵を甘く見てますね。なんなら問題を聞いてる途中で正解わかりますからね」