探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私は彼女に指定されたスタジオへと足を運ぶ。
VR上のことなので、正確には私の肉体――足はワンルームのマンションの座椅子の上から一歩も動いちゃいない。
今回のスタジオは外観からして洋館風のスタジオだ。あまり大きくはないが、このVR空間において建物の外観はなんの意味も持たない。
現実の建築物とは違い所詮データでしかないのだ。犬小屋の中が東京ドーム並の空間なんてこともある。
とはいえ、わざわざそんなことをする意味もないし、利用者のニーズもあるだろうからここはちゃんと洋館風スタジオなのだろう。
しかして中身もちゃんと洋館風であった。私は手続きをして、指定のFスタジオへと足を踏み入れる。
中は明治大正の西洋館の客間風で広々としていた。
奥には暖炉。ソファ二つが向かい合わせになっており、中央のテーブルにはティーセットが用意されている。
しかし、私が一番気になったのは窓の外が雷雨であるところだ。部屋の中もどことなく薄暗い。
わざわざ雷雨の洋館での対談にするとは趣味がよろしい。
あと雨や雷の音がミュートになっているのも違和感がある。足音もないので完全な無音だ。むしろ私の部屋のPCのファンの音がヘッドセットの外から聞こえてくる。
そして私がソファに腰掛けると目の前に仮想ウィンドウが現れる。
『準備ができましたら、こちらの収録開始ボタンを押してください』
収録が始まるまでこの館の主は現れないということらしい。
私は自分のアイカメラの録画をスタートすると、開始ボタンをタッチする。
仮想ウィンドウが消えると同時にカウントダウンがスタートする。
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奥の扉から豪奢なゴシックロリータファッションに身を包んだ呪井じゅじゅが現れる。
――スカート何重になってるんだよ。お金かかってるなぁ。私も新しい衣装ほしいなぁ。
「ようこそ、いらっしゃいました。わたしが呪人館の主、呪井じゅじゅです」
ロールプレイに付き合うことにあまり前向きな気分にはなれないのだが、そもそもVtuberという存在がロールプレイであるのだし、こうして表舞台での対決を受け入れてくれたのだから多少は相手に合わせるのが仁義というものかもしれない。
彼女が向かいに座ったところで私も口を開く。
「私は探偵の藤堂ニコです。突然、お伺いしてしまい申し訳ありません。今日はあなたの異名……V殺しの謎を解明するために参りました」
「わたしのことをそのように呼ぶ者もいるようですが、心当たりはありません」
「いえ……あなたは嘘を吐いています。あなた……呪井じゅじゅが多くのVtuberを引退に追い込んだ犯人です」
一応、視界の端に表示していたコメントが尋常ない速度で流れていく。殆ど認識することもできないが僅かに見えたのは視聴者の驚愕だった。
[こいつ言いやがった]
[オロチの次はじゅじゅかぁ]
[お前がV殺しだろうがよ、ふざけんな]
「死神探偵降臨」
[じゅじゅ頑張れ!]
――なんでだよ! 私が正義でしょ! なんか死神とか言われんじゃん!! 酷い話よ!
「そこまで言うのであれば、実際にあなたが呪いの存在を証明してください」
証明して、あなたの化けの皮を剥がしてあげますよ。