探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私たちはライブハウスの入り口で2000円のチケット代を支払うと中に入る。
中はさほど広くない。200人も入ったらいっぱいになりそうだ。
呪井じゅじゅのライブ会場と比べてもかなり狭い。
じゅじゅは一人であれだけ広い会場だったのに、今日は三組もいてこの広さということに驚く。
相当に人気がないらしい。
とはいえ、マッキーが推しているということはポテンシャルは秘めているに違いない。
「VR上だと払わなくていいんだけど、リアルのライブハウスってチケット代と別に600円のドリンク代絶対払わなきゃいけないの知ってる?」
マッキーがなんか意味わかんないことを言っている。
「なんでドリンク代払わなきゃいけないの? しかも600円も。お酒でも飲むの?」
「600円だと水かお茶。お酒飲みたかったら追加で200円とか払わなきゃ飲めないよ。しかも拒否できない」
「はぁ?」
「なんでだと思う?」
「あぁ……ちょっと待って。考える」
これはちょっとしたクイズなのだ。
私の推理力をもってすれば大したことではないだろう。
「ポクポクポクポク……チーン! はい、わかりました」
「ちょっと効果音の意味がよくわからないけど、わかったの?」
「わかった。要するにライブハウスと名乗ってはいるけど、コンサートとかイベント会場じゃなくて飲食店として営業許可を取っている、ってことじゃない?」
「すごい、正解。よくわかったね」
「けっこう簡単だった。拒否できないっていうのがポイントなのね。もし飲食が発生してないってなったら営業の用途と違うじゃないってことになるわけだ。でも、それだけだと600円もする理由の説明がつかないな……ふつうに150円とか200円で売ってもいいわけだし……いや、チャージみたいなこと? このドリンク代はライブハウスの場所代が入ってるんじゃない? でチケット代っていうのはアーティストのギャラだけとか?」
「そういうこと。そこまでわかるもんなんだ。普段から藤堂ニコの動画観てるとこういうのもすぐわかっちゃうんだね」
「あー、ウミガメのスープの問題とか一緒に考えてるからね。あと別に藤堂ニコ関係なくミステリ小説もよく読んでるから頭の体操みたいなのは得意なのよ」
「ホント、賢いなぁ。TJは」
そう、私は結構賢いんである。
しかし、本当に全然お客入っていない。
「でもさー、VR上だし配信もあるっていってもこんなにお客さん少なくて成り立ってるの? チケット代かなり安かったけど。たった一人のじゅじゅの半額よ。何人で割るのよ」
「成り立つわけないじゃん。しかもチケット代なんて運営がだいたい持っていっちゃうんだから」
「わけないじゃんって。じゃあ、これから観るのはなんなのよ?」
「宣伝よね、基本的には。まずは知ってもらってなんぼっていう。あとアイドルたちの収入はチケット代じゃなくて、ライブの後のグッズ販売とかツーショットチェキの代金がメインなんだよ」
「チェキ? VRで?」
チェキというのはポラロイドカメラで撮影する写真のことだというのは知識としてあるが、VR上でチェキというのはどういうことだろう。
「VRで。このライブハウス内は撮影録音禁止エリアだからね」
「あ、ホントだ」
私はカメラ機能を立ち上げようとしたが――。
[許可のない撮影・録音は禁止されています]と表示された。
「ライブ後に特典会ルームが解放になるから、そこでアイドルとおしゃべりしてツーショットのチェキ撮って1000円とか1500円とか払うの」
「なんとなくわかってきた」
「お、始まるよ」