探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
フェアリーの少女リリーが凄まじい悲鳴と共に空中でそのまま動きを止める。
演奏は止まり、あとの二人もリリーに駆け寄る。
VR機器側の機能で緊急停止したのだろう。彼女の姿は掻き消えてしまった。
「なんだろうね」
マッキーが言う。
今の彼女の姿は金髪の少女だ。本気で怯えているようにも見えた。
「リアル側で事故があったんじゃないかな。何かにぶつかったとか……」
「にしてはすごい叫び声だったけど……」
「あ、配信の方止まってる」
[トラブルのため配信を一時停止しております。しばらくお待ちください]
と暗転した画面に表示されている。
[リリーちゃんの叫び声はなんだったんだよ!]
[おい、見せろ!]
[運営ナメてんのか!]
[事故隠蔽だな]
コメント欄はまだ封鎖されておらず、視聴者のコメントが次々に表示されていく。
視聴者も少ないためにすべて視認できるがやはりみな不安がっている。
「無事だといいんだけど」
「心配だよね。これは」
フロアのファンたちもざわついている。
面識がないであろう人たちも「大丈夫かな」「なにがあったんだろう」などと囁きあっている。
『えー、皆様。”ふぁんたすてぃこ”のリリーにトラブルが発生したため、パフォーマンスを一時ストップしております。申し訳ありません。現在、状況確認中ですのでいましばしお待ちください』
「TJどう思う?」
「かなりヤバいと思う。あの悲鳴の後、VR機器側からホームに戻ってないのに強制的にシャットダウンされるっていうのは心身に極度のストレスがかかった時なんだよね。多分、ヘッドセットから救急に通報もいってると思う。ちょっとゴキブリが出たとかそんなレベルじゃないのはたしかだよね」
「だよね……」
私は災害情報などを調べるが出てこない。
そういったものに巻き込まれたということではなさそうだ。
『大変お待たせいたしました。リリーと連絡が付かない状態が続いており、本人の無事が確認できていないため申し訳ございませんが本日の公演は中止とさせていただきます。チケット代につきましては払い戻しをいたしますので、後日の運営からの連絡をお待ちください。本日はご来場いただきありがとうございました』
フロアは静まりかえり、みな口を開かずにライブハウスを後にした。
ナイトメアリーズが別日に無料ライブ――さらに今日の来場者には特典も付ける――を開催するとすぐに告知をしたのも良かったと思う。
私はライブハウスの外に出ると水中から地上に出たかのように息苦しさから解放された。
「ふぁんたすてぃこから何もアナウンス出ないね」
「連絡つかないのかなぁ」
「運営はリアルの連絡先わかってるだろうし、家族に様子見に行ってもらってるとかかな」
「無事だといいね」
「どうする?」
「一旦、帰ろうか」
「うん」
なんだか楽しい気持ちが一気にしぼんでしまった。
マッキーもなんともいえない表情をしている。
※
「なんだかとんでもないことになっちゃったね」
「そうだね」
私たちはVRカフェの外に出て、駅前で立ち話をしている。
晩御飯を食べに行こうという感じでもないが、すぐに別れて帰るという気にもなれなかった。
「心配だけど、本人がどうなったかって私たちは知りようがないのが、中の人がわからないVtuberファンの辛いとこだよね」
「知らない方がいいこともあるかもしれないけど、今回ばかりは知りたいね」
「あ、”ふぁんたすてぃこ”からリリース出たよ」
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”ふぁんたすてぃこ”リリー脱退のお知らせ
この度、”ふぁんたすてぃこ”メンバーのリリーが本日付で脱退することになりました。
突然のご報告となり、ファンの皆さまにはご迷惑をおかけして申し訳ありません。
今後、”ふぁんたすてぃこ”はフローラ、コーネリアの二名で活動予定です。
引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。
”ふぁんたすてぃこ”プロデューサー 賀來悠仁
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「はぁ!?」