探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私は"ふぁんたすてぃこ"のプロデューサーである賀來悠仁にリリーのことで会って話がしたいとDMを送った。
おそらく真相に辿り着いているのだと。
しかし、今回の事件は推理ショーとして一般公開すべきではないと考えていた。
各所に許可を取らずに公開することは自分の良心が許さなかったのだ。
ゆえに本当にただ会って確認がしたいだけなので暴露の心配は無用であるとも添えてある。
依頼主であるフローラにだけは調査結果を報告する義務があるが、それも無神経にただ真実を伝えるのではなく、きちんとプロデューサーの許可を取るべきだと思う。
ファンへもクローズなメンバーシップ限定配信かつ個人情報をはじめ、本人が特定されないような配慮も必要だろう。
配慮しすぎだろうか。
だが、やりすぎくらいでちょうどいいのかもしれない。
他人が何を考えていたかなんて本当のことはわからない。他人の心はどこまでいっても推理で暴き出すことはできない。
そして私の端末がDMの着信を告げる。
プロデューサーからの返答はもちろんイエスだ。
VR上のクローズドな空間で話し合いの場が設けられることになった。
場所はリリーが姿を消したネオグラッドだ。
※
私は藤堂ニコの姿で再びライブハウス――ネオグラッドを訪れる。
今日のために貸し切りにされているらしい。
入口の鍵が開いており、そのまま中に入ることができる。
VR上の鍵の概念は現実とは少し違うのだが、ともかく私は付与されたパスによって扉を通ることができた。
リリーが消えたあの森が再びステージ上に茂っている。
私はステージ上に飛び乗り、切り株に腰掛ける。
木々も泉も本物よりも美しい。
きちんとパフォーマンスを見ることはかなわなかったが、はじめてここに来た時は本当にファンタジー映画や絵本の中のエルフや妖精たちの遊びを覗き見ているかのような気分だったのを思い出す。
――ステージ上からの眺めはこんな感じなんだ。
客席フロアはがらんとしているが、200キャパの箱というのは思ったよりもずっと狭く感じた。
リリーはこの景色を見ている時に、現実で背後から刺されたのだろう。
――怖かっただろうな。
「遅くなって申し訳ない」
入口から現れた男性がプロデューサーだろう。
スーツ姿のふつうのオジサンだ。
VR上だが、あえてリアルの自分の姿をそのままトレースしているパターンだ。
現実でもVRでも同じ仕事をする際にはあえて姿を美化させたりしない方が社会的信用が高いとされている。
VR上で会った取引先の人がリアルであったら全然違う人だったとなると、それが現実の方が美形だったとしても相手への印象が悪くなるというデータもあるらしい。
それなら最初から同じ風貌の方が良いというわけだ。
「いえ、私も今来たところです」
「初めまして、賀來悠仁《かくゆうじん》です。"ふぁんたすてぃこ"とナイトメアリーズのプロデューサーをしています」
「初めまして。探偵Vtuberの藤堂ニコです」
「お噂はかねがね」
――どんな噂だか。
彼はステージの上に上がってこず、腕を組んで私を見上げてくる。
「僕もそんなに暇ではないんでね。無駄話はなしだ。はじめよう」
「えぇ」