探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
藤堂ニコの過小評価
大学からの帰り道――。
「こないださー、コンカフェに体験入店してきたのよ。コンカフェっていってもまぁオーソドックスなメイドカフェなんだけど」
「えぇ!?」
牧村由実――マッキーが驚愕の声を上げる。
私たちは二人で並んで駅に向かいながらダラダラとしゃべる中で先日の土産話をすることにしたのだ。
「嘘でしょ? TJが?」
「そう、TJこと私が」
「なんで!?」
「なんで?」
「そりゃ、なんで⁉︎って言うでしょ! 意味わかんないもん」
――そんなに驚くことかよ。女子大生のバイト先としてはまぁまぁありうるでしょうが。
「なんでって社会科見学として」
「はえー」
口が開きっぱなしになっている。
――せっかくの美人がバカみてーな顔になってるぞ。
「急にどうしちゃったのよ。他人と話したくなったの?」
「そういうわけでもないんだけど。本当に社会科見学で」
潜入捜査のためっていう理由もたいがいよくわかんないし、藤堂ニコとしての活動のことは話していないのでうまく説明がつかない。
「よく一人で行けたね。TJがやってるバイトって接客業とかだったの? それでちょっとは慣れてたとか?」
「ううん。スーパーのバックヤードの品出し」
「全然意外性ないね。それが花の女子大生のチョイスかよ」
「ってなるじゃん。だから、コンカフェとかもやってみたいなって。まー、向いてなかったね。体験入店って周りのメイドさんもお客さんもわかってたからめっちゃ優しかったし、可愛い可愛いってチヤホヤしてもらったけど、私が客ならあんなコミュ障ポンコツメイド来たらイライラしてチェンジって言っちゃう。いい経験にはなったし楽しかったは楽しかったけどね」
「へぇ、一人のときもけっこう楽しそうなことしてるんだ、TJって。でもよくそんなとこ一人で行けたね」
「おっしゃる通り、めっちゃ緊張してさー、マッキーのことも誘おうかと一瞬思ったんだけどね」
「結局誘われてないってことは一瞬思ったけど、思い直したわけだ」
「だってさー、マッキーってモデルみたいなことやってるって言ってたじゃん?」
「あー、それで気遣ってくれたんだ?」
「流石に。どのくらい有名か全然知らんけどさ、一応芸能人の卵みたいなもんなんでしょ? コンカフェでバイトしてたとか事務所にバレたら怒られたりするかなーって」
「そりゃねー、めちゃめちゃ怒られると思うよ。ってか、お店で『きゃー、牧村由美だー』って大騒ぎになっちゃうからね」
「出た出た、有名人気取り」
「いや、マジで有名人なのよ、私」
「有名人がこんなに大学来てサークル4つも5つも入れないでしょ」
「雑誌とかモデルの仕事厳選して請けてるからね。ちゃんと学生生活がんばりたいし」
「っていう設定ね」
「私のこと過小評価しすぎだって。意外とちゃんとした事務所入ってるんだって。あとサークルはもう残り2つね」
「またサークル減ったの? 今度は何したのよ?」
「いやー、サークルの幹事長に告られて振った」
「そんなのよくある話でしょ」
「よくあるよ。よくあるけど、幹事長の人望がすごくてさ。なんか他の女の子みんな幹事長と付き合いたかったんだって」
「じゃあ、ラッキーじゃん。他の子からしたら自分が彼女になれるチャンスが巡ってきたわけでしょ」
「と思うじゃん? 私もそう思ってたんだけど、幹事長を振るなんて調子乗ってるって3年の先輩に怒られた挙句にみんなに無視されるようになって辞めた」
「ひでー」
「酷いでしょ。流石に帰り道にちょっと泣いた」
「クソサークルじゃん。そんなとこ辞めて正解よ。どうせ大したことない連中の集まりなんだからさ」
「まー、そう思って前を向いていくよ。ホントに美人ってのは罪なんだねぇ」
「自分で言うんじゃないよ。私が言ってあげるからあともうちょっと待てよ」
「へへへ。そうだ、ちょっとコンビニ寄ってこ」
私とマッキーは駅前のコンビニに入る。
「なんか買うもんあるの?」
私は特に欲しいものはないので、彼女の買い物に付き合うだけだ。
「別にないよ」
「じゃあ、なんで入った?」
「これ見せようと思って。じゃーん」
彼女が私に見せてきたのはマッキーがイカしたポーズで表紙を飾るファッション誌だった。
――こいつ、マジで有名人だったのか!
私はどうやら彼女をかなり低く見積もっていたらしい。