探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
「怪盗Vっていうのが最近流行ってるのよ」
「全然知らない」
私の中では地下アイドルP2015と"ふぁんたすてぃこ"、あと推理トークゲームが流行っている。
この間、神宮みこと呪井じゅじゅとフローラとコラボ生放送で対戦して圧勝した。
しかし、なぜか私のスパチャ額が一番安くて納得いかんかった。
「マッキーが流行ってるっていうのって本当に流行ってるか怪しいからなぁ。マイナーマニアだから」
「いやいや、本当にちょっと話題になりかけてるから」
「"なりかけてる"っていう表現がもう怪しいのよ」
「たぶん、そのうちとんでもないことになるから!」
なんだかすごく暑苦しい感じで語ってくる。
「まぁわかったけど……それ長くなる?」
コンビニ店内で美人がわーわー言っているのは目立つし、店員さんにも迷惑がかかる。
「長くなる気がしてきた」
「じゃあ、移動しようか」
「お、TJも興味を持ってくれたみたいで嬉しいよ。それならしっかり教えてしんぜよう」
「ちげーよ。マッキーの声がでけーし、長くなりそうだからだよ」
私たちはチェーンのおしゃれカフェに入り、一番奥のソファ席を確保することに成功した。
マッキーを荷物番&席取りで残していくことにして、私が二人分の飲み物を買いに行く。
「何飲む?」
「トールキャラメルスチーマーウィズホワイトモカシロップウィズエクストラノンファットホイップクリーム」
「あん? あぁ、はいはい」
――なんだ、こいつ? ノンファットって低脂肪? 太りたくないやつがホイップクリーム追加するなよ。痩せたいのか太りたいのかどっちかにしろ。あと、ウィズは1回にしとけ。
私は天才だからこんな呪文みたいなのでもすぐ暗記できるが、凡人では10回聞いても注文できないだろう。
こういう嫌がらせじみたことをしているなら、サークルから追い出されるのも納得だが、流石に他の人の前ではやっていない……と信じたい。
「はい、トールキャラメルスチーマーウィズホワイトモカシロップウィズエクストラノンファットホイップクリーム」
「え?」
「なんでビックリしてんのよ。あんたが頼んだんでしょうが」
「いや、本当に一発で覚えたの?」
「覚えられない前提で頼んだのかよ、性格悪いなぁ」
「ごめんごめん、ギャグのつもりだったのよ。そんな長いの覚えられないよ!とかツッコんでくれるかなって」
「まぁ、そうかなとも思ったんだけど、覚えられちゃうからさ」
「TJって本当に頭いいんだ」
「同じ大学と学部なんだから、そこまで差はないんじゃない?」
「本当にそう思う?」
「思ってるけど。マッキーもそこそこクレバーな感じはあるよ。別に物覚えがいいのと頭の良し悪し関係ないからね」
「TJって毒舌かと思いきや急に優しいときあるからなー、困っちゃうんだよなー」
「私はいつも優しいし、やさしさで言ってるわけじゃないから。実際に暗記力に助けられる場面もなくはないんだけど、それって何かを考えるってことの本質ではないからね。私はとにかく情報を詰め込んで、その中から使えそうな情報を選ぶような考え方をすることが多いんだけど、本当に頭がいい人は最初から必要な情報を選んで覚えたりするんじゃない? だから、私は色々と遠回りが多いんだよね」
「そういう自己分析ができてるのが賢いってことなんだと思うんだけどなぁ。私が勝ってるのって美貌くらいじゃないかと思うよ」
そう言ってマッキーは闊達に笑ったが、ちょっと違う。
「まぁ、美貌っていってもね。むしろそっちの方がそこまで差ないっしょ」
「え?」
「は?」
私たちはお互いの顔を見て固まる。
――いやいや。ゆーて、私は身長がないだけで顔だけでいえばそんな差ないって……。ない……はず。
この件は掘っていってもあまり良い宝は埋まっていなさそうなので話題を変える。
「まぁ、それは置いといて。怪盗Vだっけ? なんかその話したいんじゃなかったの?」
「そうそう。そっちの話よ、今は」
「Vtuberがなんか盗むの? リアルで盗んだものを配信で自慢するとかそういうこと?」
「そういうことじゃないのよ。ドロボウ的な感じじゃなくて、なんていったらいいかなー。ちょっと一緒に観よう」
そういって彼女はタブレットを鞄から取り出し、ローテーブルの上に出した。