探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
私は明日の対決のことが憂鬱で勉強にもライブ観賞にも身が入らない。
ライブは現地には行かず、配信で観ることにした。
こんな考え事をしているやつが来ていたらパフォーマンスをする側にも他の観客にも失礼だ。
――ホント面倒くさいなぁ。
名前や通っている大学がバラされたってどうってことはないような気がするが、嫌なものは嫌だ。
有瀬ルパンは他人の秘密を暴いて利益を得る存在である自分と私は同じ存在なのにその罪を認めないから認めさせたいと言っていた。
だが、本当にそうだろうか。
なんだか違う目的があるような気がする。
たしかにあの質問ゲームでうまく質問されれば、どんどん私自身の情報がオープンになっていくだろうし、それに伴い追い詰められたような気持ちになるだろう。
しかし、それは彼女も同じはずだ。
どれだけ効率の良い質問をしても返答がイエスかノーの二択であれば、1つ2つ程度の質問で相手を負けさせることはできない。
それに私はこのゲーム最大の弱点に気付いている。
必勝法ではないが、絶対に相手を道連れに引き分けに近い状態に持ち込めるはずだ。
――相手と同じ質問を返してやればいいんだよね。
ただ、後攻にならないとこのカウンター作戦は使いにくいというのはある。
先攻だと1問無駄打ちすることになる。
先攻、後攻はランダムで当日決めるということになっているし、非常に消極的過ぎる。
彼女はこのルールでも絶対に勝つ自信があるといった。
ということはやはり必勝法があるはずだ。
必勝法があるという前提で考えよう。
とてつもなく長い時間をかければあなたの苗字の最初の文字は「あ」ですか? 「い」ですか? 「う」ですか? なんて馬鹿みたいな質問で絞り込むことはできるだろう。
だが、そういうことではないはずだ。
それは怪盗としてエレガントでなさすぎる。
では、エレガントな勝ち方とは何か?
最短距離の質問で相手を追い詰めることだ。
私はもう少しで真相に辿り着けそうな気がしていた。
このゲームの勝利条件は相手の名前か住所、学歴、職業、家族構成といった個人情報を突き止めること。
それが確実にわかる質問とは何か……。
私は今回の件とは違うところで、つい最近何かヒントを得ているような気がする。
それが思い出せれば正解に辿り着ける予感がある。
私の特技は暗記だ。
はっきりとした記憶を自由自在に引き出すことができるのだ。
ただ何を思い出せばいいのかわからないことにはどうしようもない。
PCの画面上に映る"ふぁんたすてぃこ"の二人に申し訳がない。
せっかくのライブなのに現地にも行けず、配信すらきちんと見ていないのだ。
――いや、これだ。多分わかった。
そうだ。私は知っているはずだ。
ルパンの目的はわからないが、やりたいことはわかった。
この推理は正解でも不正解でもあまり愉快な結果にはならないだろう。
――憂鬱だなぁ。