探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~   作:正雪

66 / 169
エルフのお友達

 ぴーちゃんことP2015がライブの出演を急遽取りやめ、今後の予定も白紙にしてしまった。

 ライブハウスまでやってきたのだが、目的がなくなってしまった。

 私とマッキーは途方に暮れる。

 

「どうしよっか?」

「うーん、ここまで来たけど会えないんですかぁ。残念ですね」

 

 とりあえずライブハウス【大江戸ライブ】の入り口から少し離れたところに移動して、今後の作戦を練ることに。

 

「情報を集める必要がありますね」

「T……じゃなくて、ニコちゃん的にはなにかアテがあるの?」

「アテってほどじゃないですが、あれ」

 

 私が指さした先には今日のライブに出演するアイドルの一人がこちらに向けて手を振っている。

 "ふぁんたすてぃこ"のエルフ担当……担当でいいのか? とにかくエルフアバターのフローラだ。

 カブキシティがここまで似合わないアイドルもいないだろう。

 めちゃくちゃ浮いている。

 

「ニコちゃーん。今日来てくれたんですねー」

「そうなんですよー」

「……嘘ですね」

 

 私とマッキーはフローラの急速冷凍したような表情と声音に固まってしまう。

 

 ――ぎくり。

 

「ぴーちゃんが出るから来たんでしょう?」

「……………………はい」

 

 しらばっくれることはできない。

 

「そちらのお友達もたまにライブハウスでお見かますが、推しはどちらですか?」

「わたしはナイトメアリーズが最推しですけど……ふぁんたすてぃこも好きです」

「ありがとうございます。でも、結局こういうのがイマイチ私たちが跳ねないところですよね。誰の一番にもなれないというか」

 

 実際、ふぁんたすてぃこの新規ファンは徐々に増えてきてはいるものの最推しが別にいる掛け持ちファンが多いらしい。

 ファンタジー系は他にもいるので、ふぁんたすてぃこならではのカラーというのが出しにくいからかもしれない。

 ビジュアルが良くて、楽曲もパフォーマンスもクオリティが高くてもなお売れないのだから難しいものだ。

 

「でも、さっきぴーちゃんは出演取りやめになったってアナウンスが出たんですよ……でも……もちろん、私たちはフローラのことも推しているのでこのまま回れ右して帰ったりはしませんよ。ね? マッキー?」

「も、もちろん」

 

 フローラは明らかに訝しんでいるが、仕方ない。ここで会わなければ確実に帰っていた。

 

「ニコちゃん、ありがとう。ライブ終わったらちょっとお話ししますか。ぴーちゃんのこと」

「え?」

「本人から少しだけ話は聞いていて、もしニコちゃんが来たら話してもいいって言われてるので」

 

 どうやら無駄足にはならなかったようだ。

 

「ありがとうございます。是非聞かせてください」

「VRでもリアルでも構わないので連絡ください。あ、でもニコちゃんはリアルの正体は秘密なんですよね」

 

 まぁ、フローラとは直接会ってもいいのだが、少し悩むところではある。

 

「秘密も何も。リアルでもこの子、アバターにそっくりですけどね」

 

 マッキーがしれっと言う。

 

「いらんこと言わないでください。別にフローラに隠すとかではないですが、お互い都内在住でも会うのには時間かかりますからね。今日はVRにしましょう。近々、リアルでお茶する時間は別途とります」

「どっちがアイドルでどっちがファンかわかんないね」

「そうなんですよ。もともとは私がニコちゃんのファンで声かけたので立場が弱いんですよね。アイドルなのに」

 

 VRでもリアルでもアイドルのフローラに会うのがちょっと億劫なのは、彼女が確実に私のことを好きだというのがわかっているからかもしれない。

 でも、そういう人こそ大事にしなければ。

 私はアイドルじゃなくて探偵だけどさ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。