探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
ライブ会場は和風で檜舞台だ。
だが、電飾は外と変わらずド派手でまったく厳かな雰囲気はない。
文化がめちゃくちゃになった未来の日本はこんな風になっているのだろうか。
カブキシティはセンスが謎過ぎて良くわからないが、私はこういうゴミゴミしたところでも楽しく住める。
ぴーちゃんが急遽出演取りやめになった分は他のグループが2曲――だいたい5~10分程度持ち時間を伸ばしたことで埋めた。
今日はぴーちゃんの他に我らがふぁんたすてぃことカブキシティを拠点に活動しているサムライメイドとアンダーグラウンズの4組での対バンだったのだ。
そして”ふぁんたすてぃこ”のライブは盛り上がった。
というのもリリーが亡くなってからしばらくフローラ、コーネリアの二人で頑張ってきたのだが、今日は新メンバーのお披露目公演でもあったのだ。
新メンバーはワーキャットのミミ、ダークエルフのソフィアの二人なのだがこの二人がキャラが立っていて良い感じだった。
特にダークエルフのソフィアが尋常じゃなくカッコいい。他のメンバーと比べて頭一つ背が高く、咥えタバコでステージに出てきた時は「おいおい、アイドルちゃうんか。マジかよ」とビックリしたのだが、キャラ付けのためでリアルでは非喫煙者らしい。
ミミが関西弁でMCコーナーを盛り上げたのも良かった。
”ふぁんたすてぃこ”に足りなかったものが埋まったような感じだ。
リリーの代わりを探してこなかったのがよかったのだと思う。
これでリリーの2Pカラーみたいなよく似たフェアリーが加わっていたら私は失望していたと思うし、もう2番目にも推せる気がしなかった。
「こりゃあ、売れますよ」
私は隣にいるマッキーに耳打ちする。
ヘッドセットがリアルの音を遮断しているので、真横にいるのに私の声は直接は届かない。
「いいよね、あのダークエルフ。外国人のモデルみたい」
「ね。めっちゃカッコよかったですね」
「エルフ二人とかどういう判断だよって一瞬思ったけど、一回観てみるともはや他の選択肢ない感じするね」
「ホントそれ。ミミもねー、いいキャラしてますねぇ。ふぁんたすてぃこってトークがイマイチ面白くないっていうのも弱点だったんですよね」
「フローラもコーネリアも真面目なのよね。そこが良いところでもあったんだけど殻破った感あるわ」
とかなんとか後方カレシ面――カノジョ面か?で観ていたらライブ終わりのフローラがやってきた。
そして早々にこの質問だ。
「どうでした?」
「めちゃくちゃ良かったです。良いの見つけてきましたねぇ」
「それはよかったです。で、ぴーちゃんの話なんですが、特典会の後、楽屋に来てください。はいこれ関係者用のパスです」
入場パスのデータが私とマッキーに付与される。
「わたしもいいの?」
「いいですよ。二人で調査されてるんですもんね?」
「わたしはニコちゃんにくっついてきただけで調査してるわけじゃないけど、じゃあありがたく」
「あ、特典会の後って言いましたけど、別に先に入って待っててもらっても大丈夫ですよ」
フローラはそう言ってくれるがおそらく楽屋に行くのは同じタイミングだ。
「あ、特典会も参加するので一緒に行きましょう。ソフィアとチェキ撮りたいので」
「あーー、そうですかー」
「もちろん、フローラとも……」
「だからさ、あんたはなんでそうなのよ」
――先にフローラって言えばよかった。私はいつもこうなのだ。