探偵系VTuberの成り上がり ~謎を解いて、人気者になって、お金を稼ぎます~ 作:正雪
ニコとぴーちゃんのティータイム
私はグリモワール内のカフェでお友達とお茶をしていた。
こじゃれた喫茶店の個室で、藤堂ニコこと私は珈琲を一口飲む。
まぁVR上なので別に喉が潤うわけではない。別に美味くも苦くもない。
リアルでペットボトルの紅茶を飲んでいるので、なんなら口の中は紅茶の味がする。
「すみません、ニコちゃん。ワタシのワガママに付き合ってもらってしまって」
「いいんですよ。ぴーちゃんだけ打ち上げに参加できませんでしたからね」
私の感謝祭の打ち上げは当然リアル側で行われた。
ちょっとオシャレなイタリアンレストランの個室をマッキーが予約しておいてくれたのだ。
女子トークとか気が乗らねーとか思ってたけど、なんかそういう感じでもなく普通に楽しかった。
みんな、アイドルVtuberになる前は地下アイドルとか声優をやっていただけあってトークスキルが高く、私が一人浮いたりしないように自然と会話に混ぜてくれたのだった。
基本、一対一なら上手く喋れるが多数の中に放り込まれると途端に会話に混ざれなくなるという私のマイナススキルを補うだけのトークスキルの持ち主たちだったのである。
そりゃね、たかだか1分2分チェキタイムでオタクとトークして盛り上げて、自分に惚れさせてきたわけですよ。
私みたいなチョロいオタクが疎外感を感じないようにおしゃべりに加えることくらい朝飯前ですわな。
それはともかく。
リアル側に肉体のないぴーちゃんはその私を自然に接待するコミュ強集団の打ち上げに参加できないので、代わりに何か埋め合わせをしたいと言ったところ、VR内でお茶会ごっこがしたいということで付き合っているのだ。
ちなみに今日のぴーちゃんの衣装はいつものSFチックなスーツではない。
セーラー服だ。
似合っておる。
「セーラー服似合ってますね」
「はい、ワタシ学校には憧れがあるので制服って着てみたかったんです。ワタシが姿をお借りしているヒメコちゃんも病気で学校には通えなかったみたいなので、ひょっとしたらその欲望というか記憶がうっすら残っているのかもしれません」
「う、うん」
やめて、そういうの。泣いちゃうから。
もう私がVR大学作ろうかな。マジで。
何億かかるのかわかんないけど。
――くそぅ、ジョーカーに突き返したあのチップ……もらっておけば……。
「そっか……いつか学校通えるといいね」
「そうですね、大学がグリモワールと提携するの楽しみです」
ぴーちゃんはにっこり笑って、手元のミルクティーを少し減らした。
「そういえば、ニコちゃんはワタシが家に遊びに来てほしいって言ったら来てくれますか?」
「え? 家ですか? うーん……アイドルとオタクの関係性でそれはなぁ……恐縮すぎるんですよねぇ」
「そうですか……ファンでいてくれるのは嬉しいんですけど、やっぱり友達付き合いもしたいんですよ。ダメですか? マッキーさんやフローラさんと違って、やっぱりちょっと距離を感じてしまうというか……」
――いやー、私としてはあっちの二人に対しての方が距離あると思うんだけどな。
「いえいえ、私はぴーちゃん最推しですよ。あの二人とか10馬身くらいの差がついてます」
「じゃあ、遊びに来てくれますか? せっかく家具とかインテリア買ったのに見せる人がいないの寂しいんです」
「『じゃあ』に繋がってる気はしないんですが、まぁ……わかりました。ファンではなくお友達の藤堂ニコとして遊びに行かせていただきます」
「ワタシ嬉しいです!」
前にうちに泊めていた時と同じ罪悪感/背徳感で苦しいが……ぴーちゃんが喜んでくれるのがファンとして一番喜ばしいことなのだと自分に言い聞かせる。
そして、もはや私の口は珈琲どころか紅茶の味すらしなくなっているのだった。
しばらく休載期間をおいて、そこでネタ考えるつもりだったんですがちょっと書きたいテーマが出てきたので見切り発車でいくことにしました。
P2015編も書き貯めはゼロでしたが、今回もまったく書き貯めなしで書けた時に不定期で出していくというミステリーにあるまじき書き方でいきます……迷宮入りしたらごめんなさい。
でも、きっとニコちゃんが解決してくれると著者も信じています。
あと、あんまり使っていなかったんですが、ちょっとしたお知らせとかはTwitterアカウントの方で呟いたりしようと思いますので、よろしければフォローよろしくお願いします。
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