私の名前は雷狼剣だ。赤き太刀筋のバーサーカー。私の料理は最強で最高、炎の料理は至高で良好。
そんな私にも弱点がある。それは
「最近大会前に酒を飲む事がルーティンになってるから止めたい」
「それはマジでやめろ」
息子からのガチ説教である。息子である雷狼竜は遅刻魔だし、料理に関しては私が説教するのだが、それ以外の人間力は私よりも上なので、時々怒られている。
「多分それはおつまみが楽屋……選手控室にあるからだ」
「いや、この前の番組見たけどアンタ味付け用のワインを紙コップで一杯飲んでなかったか?」
「味見しただけだ」
「味見に150mlも飲まない件について」
「という訳で、今日は酒を抜く休肝日として、おつまみとはいえない、酒は進まないがご飯が進む料理を私が作る」
「母さんの料理はあのパーティ以来だから楽しみだ」
「リサちゃんも呼んでいいぞ。ましろにあこちゃん。ルナ君もな」
「いや、それがリサしか来れなくてな」
「お邪魔しまーす!」
「来たか。んじゃ、出迎えてくるわ」
「おう、私は冷蔵庫見てくる」
♪♪♪
よござんす。雷狼剣のクッキングマミーのお時間です。マミーはミイラの方ね。誰がミイラじゃ。
「という訳で今回はジャガイモを使って料理をしよう」
「「酒のつまみすぎて笑う」」
「バカップルは黙ってろ。私もそう簡単につまみにする気はないさ。世界の料理人だぞ? 知らないメニューはあんまりない。つまみじゃない料理を作るなんて朝飯前だ。料理だけにな」
「楽しみにするわ」
「まずはジャガイモを皮剥いて茹でてボールに入れたら全力で潰す。その時に煩悩を無くすために数字を数えるんだ……1、2、3、酒」
「今剣さん4(し)の事酒(しゅ)って言わなかった?」
「気のせいだと信じたい。今作ってるのはポテトサラダか?」
「そうだ。後は潰したジャガイモに塩胡椒とマヨネーズをかけてやれば……おいこれおつまみじゃねぇか」
「おつまみですよ剣さん」
「危なかった。ここから味変させて酒じゃなくてご飯が進むものにしてやる。まずはジャガイモにチーズを乗せてバーナーで炙る。その後は買ってきたイカの塩辛の缶詰を乗せて」
「待てやこら」
「バジルを盛り付けたら今日の私のおつまみ、塩辛ポテトサラダの完成だ」
「おつまみって言ってますよね」
「あざっしたー」
「ポケットから檸檬寺出して飲んでんじゃねぇよ、結局煩悩拭えてねぇじゃねぇか」
「美味いな」
「雷狼家のポケットって本当にどうなってるの?」
「そいえば母さん昨日また俺の学ランのポケットねタコ足入れただろ。お陰で調理実習タコワサになったんだぞ」
「すまねぇ、許せ」
「謝罪適当で笑う」
「ねぇ、だから雷狼家のポケットどうなってんの?」
「ついでに、春雨カルボナーラと青椒肉絲作ったから食ってもいいぞ。ポテトサラダは私のつまみだからあげないけどな」
「いらねぇよ」
「めっちゃ美味しい」
「お前も食ってんのかよ、あ、マジでうめぇ」
「あざっしたー」
「おい、2缶目開けてんじゃねぇ」
クッキング終了である。
♪♪♪
『後はこしながらコップに入れてあげればチョコレートミルクの完成です』
「こうして番組出てたらいい嫁になれそうなんだけどなぁ」
「なんか、ギャップすごいよね剣さん」
その翌日、俺とリサは俺の家でのんびりとテレビを見ていた。見ているのは母さんの番組。
こうしてみると料理人って感じなのに、家帰ってきたら真っ先に酒を開ける狂犬なんだよなぁ。
「竜と似てるよね」
「そうか?」
「うん。遅刻するって言ってんのに鶏肉の下味に10分待つとかめっちゃ似てる」
「それは似たくなかったな」
「でも、料理が美味しいのも似てるよ。なんなら優しい味がしたから」
リサの言葉で母さんの話を思い出す。
『誰かのために愛を込めて作った料理は、世界一の料理をも負かすんだよ』
母さんの言ってる事が、少しだけ分かった気がする。だって俺は今、リサのために
「……夕飯作るわ、何食べたい?」
「筑前煮」
「はいよ……リサ」
「何?」
「……好きだぞ」
「……アタシも。だから一生アタシのために料理作ってね」
「逆じゃね?」
誰かのために、真剣に飯を作ってるんだからな。