アタシが彼と会ったのは結構前からだが、話をしたのはほんの少し前だった。あの時は忘れたくても忘れられない。あ、会ったのは教室で顔見るくらいだね。
「今井、同じクラスの雷狼に学校来てないぞって言っといてくれ」
そんな教師の頼みを任された。雷狼竜。確かアタシ達と同じクラスで、あこの友達だったと思う。ましろやあこから聞いているが、どんな人なのかは分からなかった。ただ、あこが懐いてるしあのオドオドしたましろも懐いてるなら悪い人では無いという予想。
そしてアタシはあこから携帯番号を聞いて電話をかけた。
一言で言うなら意味わからない人だった。
だって、遅刻だよと言ったら今起きたと言い、間に合わないから走ってと言えば、鶏胸肉の下味に10分待つと言って電話を切られた。5分で遅刻するって言ってんのに料理の下味に10分待つとか意味わからない。
案の定彼は遅刻した。30分以上過ぎていた。そして、罰として課題と反省文を書かされていた。シャワー浴びて来たのでいい匂いがした。ふざけんな。
反省文なんて普通は書かないけど彼は遅刻常習犯だったらしい。理由の100%が料理作って遅れたそう。バカだよね。
それよりも驚いたのは、アタシに対して普通に接している事だった。
自分で言うのもアレだが、アタシはRoseliaのベースをやっていて、結構有名な方である。ナルシストとか言われたく無いけど、結構下心目的で男子が話しかけて来たり、告白して来たりする男子がいたから男子ってそんなもんかと思っていた。
でも、彼はそんな眼でアタシを見てなかった。一度、そう言った話を彼にしたのだが、彼曰く
「ああ、リサさんよりかなり有名な人が、多分Roseliaの数十倍有名な人が俺の家族でいるんで、俺にとって有名人なんてただの人間に変わりありません」
とのことだった。最初は疑ったけど、調べてみたら彼の母親は今、料理界の生きるレジェンドと呼ばれる大会最強の料理人、雷狼剣さんだったのだ。
そりゃ、驚かないか。なんて1人で思いながら彼と話をした。
アタシは料理が好きなので彼と話が合う。彼の筑前煮は絶品だった。惚れた。
「ねぇ、竜。今度ライブあるんだけどさ、元気の出る勝負飯みたいなのあるかなぁ?」
「任せてくれリサ。こんな時こそ、このエリート遅刻魔の俺の出番だぜ」
「何にも威張れないからねそれ」
「どんな感じの料理がいいかだけ把握したいんだが?」
「えーと、とりあえずライブだから餃子とか匂いのつくものは嫌だなぁ」
「成る程、安心しろ、それだけしか縛りがないなら良い料理がある。ライブ前でお腹壊さないように食べやすいパスタを使って、でもライブに集中出来るくらいのリサでも食べられるボリュームの料理を紹介するぜ」
「おお! 楽しみにしてるよ!」
「まずはニンニクを細かく刻んでから大量のオリーブオイルの中に入れるんだ」
「話聞いてた?」
「フライパンに入れたオリーブオイルとニンニクをしっかりと焼いて鷹の爪とヘルシーな鳥もも肉を入れて炒めるぜ」
「匂いがつかないとは」
「その間にパスタを茹でて、茹で汁をオリーブオイルと混ぜて乳化させる」
「成る程ペペロンチーノだね。ってなると思う? 匂うどころか臭うよ?」
「息をかけるのは人じゃなくてマイクだから問題ない。そしてパスタを入れてフライパンで最高の汁と混ぜ合わせ、隠し味に生姜とニンニクチューブをニュルッとかけたら」
「ダメ押しだよね」
「ライブ前に息リフレッシュ、夏バテ防止
「ニンニクでリフレッシュするとか頭やっちゃってるよね。後、ブレスケア作った人に謝って」
「リサ、臭いを気にするのはいいが、それであまり食べなかったらライブ中にぶっ倒れるぞ。こう言う時は自分のペースで食べたいものを食べて頑張ろうと気合い入れるのが勝負飯なんじゃ無いのか?」
「いい感じに言ってるけど誤魔化せて無いからね」
「後はこれ飲んどけ」
「檸檬寺とか絶対ダメだよ。お酒じゃん。馬鹿じゃないの?」
「母さんの好物だ。好きなだけ飲め」
「飲めるかぁ!」
とまあこんな感じで話してくれるのだ(ちなみに後日アタシのために親子丼を作って家まで持って来てくれたのは記憶に残ってる)。
なんだかんだ言って、料理でアタシ達を笑顔にさせてくれる竜が好きなのだ。
そうやって交流を深めているうちに、彼が遅刻魔でも、怠け者でも、ちょっとマザコンでも、やる時はやるし、良くアタシ達の頼みに合ってない料理を作ってくれるけど(味は本気で美味しい)、それでも最後にはアタシ達の為の料理を作ってくれる。そんな他人思いな、めんどくさがり屋だけどいざとなったら力を貸してくれる彼が好きなんだ。
でも、最近そんな好きからましろやあこがいるとなんかモヤモヤして、アタシじゃダメなの? って思ってしまうのだ。これって……
♪♪♪
「そんなの恋に決まってるじゃない」
「……だよね。でも、あの竜にアタシが……」
そんな話を我が弟の今井ルナにすると、返ってきたのはどストレートな言葉だった。
「私はリサが選んだ男なら別に良いわよ。リサだけなら不安だけど、あこも、そのましろって子もそいつを信用してるんでしょ? なんなら問題無いわね」
「そこはもっと、私の姉を簡単に上げないわよ! って言うんじゃないの?」
「私はシスコンだけど、ヤンデレではないわ。それに、私だけ彼女作って、リサだけ虚無って不公平じゃない?」
「まぁ、そうだけどさ。ってか虚無ってやめて」
「それに、一時の恋愛感情なら止めたけど、リサが安心する相手って言うなら長続きすると思うわよ。私もね、紗夜が好き好き大好き愛してるとかじゃなくて、あ、やっぱり愛してるわ。でも、それよりも紗夜といると素の自分を出せて気を効かせなくていいから楽……みたいな感情なのよ。それって長く付き合うことに重要なの」
「だから、リサとそのオオカミみたいな子、似合うと思うわよ。後、今度連れてこい、料理で負かしてやる」
「本音漏れてるよ。ってか、多分だけどルナでも敵わないと思うよ?」
「あら、好きな人贔屓かしら? お生憎様私は負けないわよ?」
「いや、そうじゃなくて……竜はあの料理人、雷狼剣さんの息子だから。しかも今もたまに本人から直々に料理教わってるし」
「……え? マジで?」
「うん。はいこれサイン」
「……うわぁ、泣きそう」
「でしょ? ルナこの人のファンだったもんね」
「なんでそんな男が羽丘にいるのよ!」
「知らないよ!?」
「ルナ。犯しに来たわよ、ベッド行きましょう」
「
「ルナが紗夜相手に混乱してるの初めてみた」
「今日は今井さんが出かけるということで、ルナ専用の首輪と手錠とエネ○グラを……」
「なんて恐ろしいものを持って来てんだお前は!?」
「……アタシ用事出来たからもう出かけるね!」
「逃げるなリサぁぁぁぁぁ!!」
「安心しなさいローションもあるから」
「何も安心出来ねぇって!」
「いつもは私が喘がされる側だけど、偶にはルナの喘ぎが聞きたいわ……それに、女の子の快楽……オネエ系男子なら体験しても良いと思うの」
「え……ちょっと紗夜さん? 冗談ですよね?」
「……ルナ、だぁいすき」
「じょ、冗談じゃないわよぉ!!」
その後、ルナがどうなったかアタシは知らないよ。翌日帰ったら、顔を真っ赤にして紗夜の名前を連呼しながら紗夜に抱きしめられて、頭撫でられながら初めて聞いた弟のエロい声なんて知らない。うん。アタシに弟はいない。いるのは紗夜の……うん、氷川ルナだけだね。
……まぁ、そんなことがあって同時にアタシは竜に恋心を抱く……うん。抱いちゃった。
竜を犯したら可愛いのかな? まぁ、まずは竜とルナを合わせて許可を貰ってから告白して付き合って、あ、まずアタシを恋愛的に見てもらわないとね。まずはあことましろは叩き潰そうかな。あこは問題ないけど、ましろはアタシよりも……多分胸大きいからもっとアタシも抱きついておかないと。後、竜が最近お母さんの話で精神が乱れてるからアタシがそこに寄り添って……うん。心も体もアタシの物にしよう。
とにかくまずは料理を通してしっかり仲良くならないと。そこからだよね!
「ほら、リサ筑前煮だ」
「わー! 美味しい!!」
あれ? アタシが餌付けされてない?
なんかルナ君出て来たけど気にしないでください。