ショタっ子魔法師は風魔忍   作:魔法非戦士

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1.ショタっ子魔法師

 魔法が現代技術とされてから一世紀。

 

 世界は『魔法技能師』通称『魔法師』の育成に力を注ぎ、未だ世界大戦の火種があちこちで燻っている。

 

 日本でももちろん魔法師育成に力を入れており、その一環として全国に九つの【魔法科高校】を設立し、日本中の将来有望な魔法師が入学する。

 

 

 

 日本の魔法師にはいくつかの分類が可能だ。

 

 まずは『古式魔法師』。

 『陰陽師』『忍術使い』などの日本古来の魔法を継承している魔法師の一族だ。

 

 次に『二十八家』。

 【魔法技能師開発研究所】と呼ばれる魔法師開発機関で、遺伝子操作も含めて生み出された魔法師達の直系一族で、十か所の研究所から生み出されたことから一~十の漢数字を名字の頭に付けて名乗っている。日本で最も力がある一派である。

 その頂点に立つ10の家系を『十師族』、残りの18の家系を『師補十八家』と呼び、4年に一度会議を行い、その座を入れ替えている。

 その力から、国軍とは別に国防、治安維持に尽力することを国から求められており、十師族が地区を分けて監視している。

 

 『百家』。

 様々な分野に突出した魔法技術を所有する魔法師の名門を指し、二十八家に次ぐ実力を持つ魔法師で、本流と支流に分かれる。

 本流は十一~千までの漢数字を名字に持ち、二十八家と加えて【数字付き】と呼ばれている。

 

 最後に『エレメンツ』。

 【魔法技能師開発研究所】や現代魔法の四系統八種が確立される前に生み出された魔法師の家系だ。

 『火』『風』『水』『地』『光』『雷』などの属性分類に基づき、遺伝子操作によって生み出された二十八家のプロトタイプと言える存在である。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 二〇九五年、三月。

 

 世間は年度末。

 学校は春休みを迎えており、新たな学生生活に胸を躍らせている少年少女達が街を賑わせていた。

 

 その雑踏の中を1人の少年が歩いていた。

 

 人の密林をすり抜ける様に止まることなく進んでいくが、周囲は誰一人として少年に目を向けない。

 

 少年の身長は150cmジャスト。

 赤茶色のくせっ毛ウルフカットに、フードパーカーにカーゴパンツを履いている。

 

 だが、もし周囲が少年を見たら、多くの者が首を傾げるだろう。

 

 ()()()()()()、判別できずに。

 

 そして、十人中七人は「美少女」と答えるだろう。

 それほど少年の見た目は中性的、いや()()()()だった。

 

(……本当にこんなところに潜んでるの?)

 

 今()()()がいるのは【ワンダーランド】というアミューズメントパークだ。

 マジックをテーマにしているためか、生垣やアトラクション施設などで迷路のような構造を作り出しており、まさしく御伽噺の『ワンダーランド』を思わせる。

 

 こんなアミューズメントパークで美少年は何をしているのかと言うと、実家の都合に他ならなかった。

 

(大亜連合の魔法師が逃げ込むところじゃないと思うけどなぁ……)

 

 この施設に密入国してきた外国の魔法師が潜んでおり、それを捕縛するというのが今回の任務だ。

 本来なら公安や国防軍が動くべきなのだろうが、実はまだ公安や国防軍にはこの情報を流していないらしい。ということを、美少年は叔父から聞いていた。ここに入る直前に。無理矢理呼び出されて。

 どうやら、密入国されたルートが依頼主の所有している会社の船だったらしく、バレれば最悪逮捕されてしまう。

 

 なので、バレる前に捕縛して追い返すことにしたようだ。

 始末しないのは大亜連合を刺激する可能性が高いからだ。捕縛する時点で刺激するだろうと美少年は思うのだが、殺さなければ問題ないらしい。

 

(後さ……遊園地なんだから、せめてもう1人付き添いいても良くない? ボッチって酷くない? いくら『隠れ蓑』で気配消せるとしてもさ)  

 

 周囲からの視線や意識を逸らすことが出来るとは言え、絶対ではない。

 バレた場合、非常に悲しい目で見られそうだなと、美少年は小さくため息を吐いた。

 

 しかし、文句を言ったところで追加の人員がすぐに来るわけでもないため、諦めるしかない。

 

 美少年はとりあえず人気が少なく、視線から隠れそうな場所を探すために捜索を再開するのだった。

 

 

  

 それから2時間後。

 時間的には昼食時だ。

 

(レストランは避けるだろうし、アトラクションは論外……。術を使って、スタッフ以外立ち入り禁止の場所に潜んでいると考えるべきかな)

 

 もちろん、スタッフ側にも捜査員が潜り込んでいるので、そちらの活動に期待しよう。

 

 そう考えた美少年は軽く何か食べようと、テイクアウト型の店を探すことにした。

 

 すると、すぐ近くの広場から悲鳴が上がった。

 

 美少年は弾かれたように駆け出し、広場から逃げようとする人の津波をすり抜けて現場へと急行する。

 

 到着した現場で目にしたのは、犬と鳥の形を模した炎の化成体の群れだった。

 

 大陸系の古式魔法だ。伝承の魔物を再現するものだ。

 魔物達は周囲を威嚇するだけで、誰かを襲い掛かる様子はない。

   

(人の目をこちらに向けさせる囮と時間稼ぎ。更には人質ってわけか!)

 

 ターゲットの狙いを看破して顔を顰め、仲間が合流するまでどうするか作戦を練ろうとしたが、

 

(駄目だ。それじゃあ騒ぎが大きくなりすぎる!)

 

 美少年は歯を食いしばって、フードを被って左手首の腕輪型CADを起動する。

  

 サイオンを操って、非接触型スイッチを操作し、起動式を展開し、魔法を発動する。

 

 右腕を振ると同時に、高温化された刃のように細められた圧縮空気を3枚、化成体に向けて放った。

 3体の化成体が直撃と同時に爆発して霧散する。

 

(動かない今のうちに全て無力化する!) 

 

 今ならパニックでそこまで目立たない。

 

 そう思っていたのだが、突如化成体達が動き出した。

 

 それと同時に耳に付けていた呪具から聞こえた仲間からの報告で、術者を発見して追撃を始めたとのこと。

 

(タイミング悪すぎじゃない!?)

 

 しかも、こっち側の応援は無し。

 

(なんでよ!?)

 

 色々と湧き上がるツッコミを一言に纏める。

 

 すると、1人の少女が逃げ遅れたのか転んでいるのを見つけてしまった。

 化成体が駆け迫っているのも。

 

「ああ、もう!!」

 

 美少年は素早く両手で印を結び、右手で地面を叩く。

 すぐ手前の地面が爆ぜて土砂が舞い上がり、それが猛スピードで土砂の波壁を作り上げるかのように突き進む。

 

 土砂の波壁は少女と化成体の間を走り、化成体は波壁に阻まれて足を止める。

 

 突然の土砂の壁に目を丸くする少女の視界を、小さな影が覆った。

 

「立てる?」

 

「……ごめんなさい。足を挫いてる」

 

「家族や知り合いは?」

 

「さっきの人波ではぐれた」

 

「なら、まずはここを離れようか」

 

 美少年は軽く言って左腕を大きく横に振る。

 化成体の群れを取り囲むように風が舞い上がり、気流の囲いが出現する。

 

 それを確認した美少年は素早く振り返り、

 

「ちょっと我慢してね」

 

 そう断って少女を横抱きに持ち上げて駆け出す。

 少女は少し目を丸くしたが、特に抵抗はしなかった。

 

 後ろを振り返ると、ようやくワンダーランドが雇っていたであろう魔法師達が到着していた。

 

(後は任せていいか。術者は状況を見れる状況にいないだろうから、指示や新しい化成体を出す余裕はないはず)

 

 化成体の始末を押し付け、今は少女を避難させることに集中することにした。

 しかし、やはり非常口は人で溢れており、とてもではないがすぐに通れるようになるとは思えなかった。

 

 美少年は少女を近くのベンチに座らせる。

 

「悪いけど、後はスタッフの人に頼んでね。それじゃ」

 

「あ」

 

 美少年は一方的に言い放って来た道を戻っていく。

 少女は声をかけようとしたが、あっという間に姿が見えなくなり、お礼を言うことも出来なかった。

 

「雫!」

 

「ほのか」

 

「良かったぁ!! 見つかった!!」

 

 そこに一緒に来ていた友人が涙を流しながら飛び掛かってきて、少女は友人を宥めるのに意識を向けざるを得なくなったのだった。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 美少年は建物の陰に入ってから『隠形』を再発動して、全力で駆け出す。

 

「標的は?」

 

『仕留めました。ただ、他にも仲間が1人いまして、現在追跡中です!』

 

「げぇ。どこらへん?」

 

『園内の外へと向かってます! 跳び越えるつもりのようです! 現在地は園内中央付近! 正面ゲートの反対側から逃げようとしていると思われます!』

 

「やれやれ……頑張り過ぎだってぇの!」

 

 美少年は先回りするために全力で走り続けるのだった。

 

 

 

 1人の男が汗だくで息絶え絶えになりながらも、走り続けていた。

 

 男は大陸から逃げ出した亡命魔法師だった。

 今回は大陸に戻るために、仲間と共に匿い先の仕事を手伝うことにしたのだが……。

 

「話が……違う、じゃない、か!! ここには、大した、魔法師、は、いないって!!」

 

《そんなわけないじゃ~ん。ここって百家本流がスポンサーだよ?》 

 

「!!?」

 

《まぁ、大陸から来たお馬鹿さんに百家とか分かるか知らないけど》

 

 響く声に男は足を止めて、慌ただしく周囲を見渡す。

 しかし、見渡す限り人の姿はない。

 

 だが、妙に違和感を感じた。

 

 すると、周囲の影が蠢いて盛り上がり、人の形を成した。

 

「ゆ、幽鬼……!?」

 

《違いますぅ。『影法士』って言うんですぅ》

 

 影方士達はユラリユラリと足を引きずる様にして、男に歩み寄る。

 

「ぐっ……!」

 

 冷や汗を大量に流しながら、逃げ道を探す男。

 男は逃げる途中で術を発動するための媒体を失くしていた。CADはサイオンが検知されてしまうという理由で、渡されなかった。

 

 それが裏目に出た。

 

 いや、そうではない。

 

「俺は……切り捨てられたのか……!」

 

《っぽいね。だから、もう諦めなよ》

 

 影法士が消え、周囲の景色が歪む。

 すると、男を取り囲むように、様々な服装の男達が立っていた。

 

「幻、術……」

 

「いかにも。……これ以上の抵抗は無駄だ。大人しくされよ」

 

 男は膝から崩れ落ちて項垂れる。

 

 その近くで美少年は印を解いて、大きなため息を吐く。

 

「あ~~疲れたぁ。ったく……ちょっと気ぃ抜きすぎじゃない?」

 

「も、申し訳ありません……。手練れが結界に手を取られてしまい……」

 

「だから、爺様の言う通りにしとけば良かったんだよ。はぁ……じゃあ、ボク帰るからね。叔父上にちゃんと十三束家とここに説明と謝罪、するように言っといてよ」

 

「そ、それは……!」

 

「もうバレてるんだしさ。うちの家格じゃ百家本流筆頭に逆らえやしないよ」

 

「ぐ……!」

 

「入学準備もあるしさ。そもそもボク、無理矢理呼び出されただけだし。じゃ、よろしく」

 

 美少年はヒラヒラと手を振って、その場から姿を消す。

 

 

 こうして、事件はそれなりに被害を出して、あまり表沙汰になることなく終わりを迎えたのだった。 

 

 

 

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