ショタっ子魔法師は風魔忍 作:魔法非戦士
放課後となり、咲宗達は華凜と合流してお祭り状態の校庭へと向かう。
深雪は生徒会の仕事があるとのことで、教室で別れた。
更に風紀委員となった達也も今日から早速任務に就くらしい。
ちなみに森崎も風紀委員に選任されたようで、友人達におだてられながら得意げな顔で深雪を見つめていた。
深雪は一切気づいていなかったが。
今頃、風紀委員会本部で達也と会って驚いていることだろう。
咲宗としては物凄くその様子(達也が困った様子)を見たいと思ったが、華凜に腕を掴まれて諦めることになった。
雫から「咲宗君の方が相応しいと思う」という幻聴が聞こえた気がしたが、咲宗は幻聴だと信じることにした。
ちなみに摩利と真由美も「風火奈(君)の方がいいんじゃないか?」と思っていた。
しかし、森崎を選任したのは教職員なので、今更拒否も出来ない。
摩利は以前の騒動で取り下げるつもりだったのだが、それでは達也も逃がしてしまうことになるので受け入れるしかなかったようだ。
それを聞いた達也は正直森崎と共に辞退して、咲宗に押し付けようかと考えた。
しかし、それでは咲宗にどんな嫌がらせと探りを入れられるか考えるのも恐ろしいので潔く諦めた。以前、悲しい慟哭を叫んでいたことを思い出したのもあるが。
校庭では大量のテントが立ち並んでおり、もはや学祭に近い熱気を擁していた。
そしてあちこちで華凜の予想通り、一科生が大量の上級生に囲い込んで腕を引っ張ったり、怒涛のように勧誘を行っていた。
「確かにこれは……」
「ちょっとヤダね」
「でしょ?」
やはりあれだけの人に囲まれるのは恐怖がある。
しかも、勧誘期間中はCADの携行を認められている。
ヒートアップして魔法が飛び交うことになったら、その中心に自分達がいたら、そう思うとゾッとする。
「というわけで、サキ! ヨロ!」
「まぁ、流石にこれはねぇ。了解」
咲宗はポケットから一枚の呪符を取り出した。
呪符には幾何学的な紋様と梵字と思われる文字が記されていた。
それに雫とほのかが興味を引かれる。
「これは?」
「古式魔法のCADって奴かな。CADみたいに汎用性もないし、なのに特化型のように速く発動出来ないから、廃れる一方だけどね」
「普段も使ってるの?」
「いや、普段ならいらないんだけどね。そうなるとボクを含めて2人が限界なんだ。今回はその倍だから、使わせてもらうよ」
「監視装置に引っかからないの?」
「引っ掛かるけど、ボクが使ったのかは分からないと思う。まぁ、ここでは問題ないけどね」
呪符にサイオンを流し、術を発動する。
雫とほのかは大して変化が起こったようには見えないが、咲宗は成功したのを確信していた。
「じゃあ、どこから行く?」
「とりあえず、彷徨う」
「はいはい」
何故か咲宗を先頭に歩き出す。
恐らくは魔法を使っているのが咲宗だからで、華凜が咲宗の後ろに控える様に歩いているからだろうが。
雫とほのかはまだ効果を疑問視していたが、すぐに実感することが出来た。
咲宗が近づくと、人が視線も向けていないのに自然と道を開けて行く。
まるで見えない目で見ているかのように。
誰1人こちらを見ていない。なのに、人が避けてくれるのはある意味不気味だなとほのかは感じた。
「これってどういう魔法なの?」
「今はこっちが認識出来ないだけだよ。見てるのに見えないように思わせて、声も少し遠く聞こえるって感じ」
「本気になれば声も聞こえないんでしょ?」
「出来るけど、そうなるとボクは動けなくなるから実質的に無理」
「誰にも見つけられないの?」
「知覚魔法とかでボクより魔法力が上ならバレる。他にも古式魔法に流通してる人がいたら違和感を持たれてバレるかもしれない。完璧な魔法なんてないし、あったとしても使い手が未熟なら十全に効果を発揮しないしね」
ほのか、華凜、雫の順で訊ね、律義に答える咲宗。
他にも破り方はあるのだが、もちろんそれを教える気はない。華凜にすら教えたことはない。團蔵が教えている可能性があるが。
「おい君! 一科生だね!? うちの部に入らないかい!?」
「え!? いや、僕は――」
「何だって!? ぜひ見学したい!? いいよいいよ! さぁ行こう!」
「いや、そんなこと言ってな――」
「待て!! 彼はうちに来ると言ったんだ!! 邪魔するな!」
「何言ってんの!? こっちに来るって言ったのよ!」
数の暴力とは何とも恐ろしい。
それも上級生達だ。新入生では色々な意味で下手に太刀打ちできないだろう。
あまりの強引さに、ほのかは心底咲宗がいてくれてよかったと思う。
女子でも遠慮なく囲い込んで腕を掴んでいる様子も見えて、頬を引き攣らせていた。
「すっごいわねぇ……。まぁ、上級生は今年の九校戦に気合入ってるっぽいからしょうがないけどさ」
「なんかあったっけ?」
「今年優勝すれば一高は三連覇。九校戦は新人戦の結果も大きく影響するから、選手を輩出した部活は結果次第で評価が大きく変わる」
雫の説明に咲宗は納得したように頷く。
「今の一高はすでに優勝確実視されてる」
「まぁ、3年生が恐ろしい面子だもんね」
「うん。七草先輩、十文字先輩、渡辺先輩の3人がダントツではあるけど、他にもA級判定持ちが数人いる。選手層はかなり厚い。2年生もあまり目立ってないけど、去年の新人戦は優勝したから決して弱いわけじゃない」
「で、今年の新人戦には深雪がいるってわけね。まぁ、深雪が強くても他の子達がどれくらいなのか分かんないけど」
「中間試験の実技を参考に決めるんだっけ?」
「多分。他には該当競技の部活の活動記録も参考にすると思う」
「実技の成績は良くても、得意魔法や身体的な理由で出れない可能性はあるもんねぇ」
「うん」
(ホントに九校戦が好きなんだなぁ)
雫の情報の中に九校戦を毎年のように見に行っていたとあった。特にモノリスコードが好きらしい。
恐らく今年は出場する側を狙っているはずだ。
ここ数日の実習授業を見た限り、雫とほのかの魔法力はかなりのものだと咲宗は思っていた。
A組では深雪が当然トップだが、次点ではほのか、雫、咲宗、そして森崎の4人が競っている状態だ。
華凜の話ではB組では華凜、十三束という男子生徒、明智という女子生徒がトップを争っているらしい。
残りの2クラスも調べてはいるが、流石に実習授業の結果までは調べられないのでどうしようもない。
咲宗はそこまで九校戦に興味はないのだが、やはり同年代の魔法師の実力を垣間見ることが出来る貴重な機会として注目はしている。
「それで北山さん達はどんなクラブを考えてるの?」
「雫でいい」
「……うん。で、雫さんは?」
「さんもいらない」
「………雫はどのクラブを?」
華凜が両手で口を押さえて必死に笑いを抑え込んでいる。
「どれも興味深いけど、やっぱり九校戦に関わるクラブに入りたい」
「スピード・シューティングやクラウドボールとか?」
「うん」
「その2つならすぐそこだけど……」
「はい!! 一個行きたいところがある!」
華凜が元気の手を上げる。
「どこ?」
「SSボード・バイアスロン部!」
「「SSボード・バイアスロン部?」」
雫とほのかが首を傾げる。
「季節ごとにスケボーとスノボーを使い分ける射撃競技だね。移動しながら決められた的を破壊し、ゴールしたタイムを競う、だったかな?」
咲宗の説明にいまいちピンと来なかったようで、2人は変わらず首を傾げている。
苦笑を浮かべた咲宗は確かに見学に行く方が早そうだと思い、SSボード・バイアスロン部のテントを探すことにした。
10分ほど動き回ってテントを見つけ、ゆっくりと術を解きながら歩み寄る。
テントの前で完全に術が解け、向こうも咲宗達の存在に気が付く。
SSボード・バイアスロン部のユニフォームを着た上級生は、輝かんばかりの笑みで声をかけてきた。
「ようこそ! 入部希望かな? それとも見学?」
「見学予定です。大丈夫ですか?」
「もちろん!! もうすぐ第二小体育館裏でデモを行う予定だから是非見て行って!!」
そう言った上級生は後ろにいた部員達に振り返って親指を立て、部員達も親指を立てて答える。
待ち構えていた周囲の他クラブの者達が悔しそうな表情を浮かべていたが、もちろん咲宗達は無視をする。
上級生達に案内されて移動を始めた咲宗達。
その道中、咲宗の携帯端末に着信があり、バイブレーションの音が響いた。
咲宗はメールを確認して、目を細める。
「すいません、先輩。少々家から呼び出しが来たので」
「え? あ、うん。いいよ、また明日来てくれれば」
「はい。ごめん、華凜、雫、光井さん」
「今度何か奢ってね~」
「はいはい。では、失礼します。また明日」
雫は不満な表情を浮かべたが、華凜が止めなかったので事実なのだろうと何も言わなかった。
咲宗は上級生に一礼し、雫達に挨拶して駆け出した。
認識阻害の術を発動して、誰にも止められることなく校外に出る。
路地裏に入ったところでミニバン型の自走車が停まっており、咲宗は滑り込む様にそれに乗り込む。
社内には運転席と後部座席に人が座っていた。
咲宗は乗り込んだドア横に座るのと同時に口を開いた。
「報告」
「はっ。『ブランシュ』と繋がっていると思われる者達が、銃器などの兵器を購入したことが判明しました。保管場所はここから約10kmほどの場所です」
「目的は?」
「申し訳ありません。連中は『ブランシュ』との繋がりを巧妙に隠しておりまして……。仲間の一人が『ブランシュ』構成員と接触したことで判明したした次第で、現在調べた範囲でも『ブランシュ』との繋がりを示す物証や連中の目的が分かる情報は出て来ていません」
「つまり拠点は別にあるということか」
「恐らくは。しかし、昨日から監視している限りでは拠点らしき場所に向かった者はおりません」
「……人手が足りないか」
「……面目次第もございません」
「いや、これはボクの人望がないのが悪い。本来6人でやれる量じゃないからね」
「「そんなことはありません!!」」
「現実は受け入れないとね……。しょうがない。中立派に声をかけるか」
「あんな日和見共など必要ありませぬ!」
「相手が兵器まで持ち出して来てるんだから万全を期す必要がある。『ブランシュ』と繋がってるなら、『エガリテ』が潜んでる第一高校も標的の可能性が高い。ここで手を抜けば後で十師族に何を言われるか分からないしね」
「ですが……」
「お前達はこのまま捜査を続けろ。ボクは連中に話を付けてくる」
「連中が素直に従うとは……」
「その時は嫌でも理解してもらうだけだよ」
咲宗は絶氷の笑みを浮かべる。
「ボクが誰で、ボク達が何者なのか、思い出してもらうだけさ」
部下達の背筋にゾクリと寒気が走る。
だが、それと同時に興奮も覚えていた。
これこそが自分達が主と認めた男なのだと。
「『忍び』に中立なんて存在しない。風魔を名乗るのであれば、尚更ね」
今日はここまででごさる(ドロン!)