ショタっ子魔法師は風魔忍 作:魔法非戦士
深夜。とある山奥にて。
咲宗は黒のジャージに身を包んで、1人佇んでいた。
「はぁ……ホント、いよいよ風魔も看板を下ろした方がいいかもね」
両手を上着のポケットに入れて、大きくため息を吐いて独り言をボヤく。
「ボク1人に勝てないんじゃ『忍術使い』名乗っても意味ないと思わない?」
咲宗の周囲には同じく黒い服装の者達が老若男女問わず倒れていた。
全員が風魔に属する者達だが、彼らは一族の中では『中立派』と名乗り、『後継者争いに関わらない』『後継者が決まるまで活動に参加しない』と言って咲宗や叔父からも距離を取った者達だ。
現当主である團蔵は咲宗を指名している以上、後継者争いなどありえないのだが、結局『中立派』も咲宗が子供だからと侮っているのだ。
故に咲宗や團蔵達―通称『正統派』―は、『中立派』はただの日和見集団と思っている。
ちなみに叔父一派は『革新派』と名乗っているが、咲宗はただの俗物集団としか思っていない。
咲宗は部下達に話した通り、『中立派』と名乗る日和見集団に応援を頼みに来たのだが、案の定断られてしまった。
しかし、咲宗は怒るどころか笑みを浮かべて、
「そうですか。そんなに腕に自信を無くしておいでなのであれば、これからは平凡な魔法師として余生をお過ごしください」
と相手を挑発した。
相手は咲宗が呆れる程想定通りに「若造がいい気になるな!」と挑発に乗った。
しかし、直後目の前にいた咲宗の姿が消えたかと思うと、後頭部を踏みつけられて顔からテーブルに突っ込んでテーブルを砕き、床に顔を打ち付けた。
もちろん踏みつけたのは咲宗。
周囲にいた者達は目を見開いて固まっていたが、
「若造の幻術すら見破れないんだから、そう思われて当然じゃないか」
咲宗の冷め切った声にハッとして反撃に出るが、攻撃が当たる前に咲宗の姿が霧のように消えた。
《あんた達も動きが遅いんだよ。ほら、さっさと裏山においでよ。稽古つけてやるからさ》
その後の結果は語るまでもなく、咲宗の周りに広がっている。
『中立派』の誰1人として咲宗にまともに一撃を当てることが出来ずに倒された。
咲宗の何倍も生きて、修行を積んできた者達が全く手も足も出なかった。
ようやく『中立派』の者達は咲宗の異常さと、團蔵が咲宗を後継者にすると固執している理由を理解した。
「はぁ……これじゃあどっちにしろ仕事は任せられないな。別にさぁ、後継者争いとか任務に日和見するのは構わな……ホントはよくないんだけど。まぁ、そこは許してやるとしても、修行までサボってたのはダメじゃない? ホントに引退した方がいいと思う」
「ぐ……」
悔し気な声が響き、実際数人が悔しみの表情を浮かべていた。
咲宗はもう一度ため息を吐いて、視線を背後の森に向ける。
その視線に気づいたのか、森の奥にずっと潜んでいた気配が離れていった。
(……気配の消し方や動き方から同じ穴の貉か。可能性を考えれば九重八雲の弟子ってところだね。やれやれ……最近あちこちに風魔の恥が晒されてるよね、ホント……)
「仕事の件は忘れていいよ。それじゃあ、風魔を続けるならちゃんと修行し直すように。今回は当主には伝えないでおくからさ」
咲宗は冷たく言い放ち、その場から姿を消した。
◆◆◆◆◆
達也と深雪は今朝も九重寺を訪れていた。
達也は基本毎朝この九重寺で八雲に体術の修行にやってきているのだ。
深雪も昔は教わっていたが、今は付き添いだけになっている。
今日も達也と八雲の組手が終わり、八雲と共に朝食を食べていると、
「達也くん、深雪くん。2人は風火奈咲宗君を知っているよね?」
「はい。深雪のクラスメイトですし、交友もあります」
「彼の素性については?」
「本人から聞いています。『忍術使い』風魔の一族だと。また風のエレメンツの被験者であるということも」
「うん、その通り。では、今の風魔の状況も何か聞いてるかい?」
「確か……叔父のせいで仕事でヘマをしたと、本人はぼやいていましたが……」
「なるほどねぇ……。他に何か言ってたかい? 仕事についてとか」
「いえ、俺は特に」
「……そういえば、十師族の小間使いのようなことをすることになったとほのか達が……」
「十師族の小間使い、ねぇ。なるほどなるほどぉ」
「師匠。咲宗がどうかしましたか?」
八雲がただ同じ『忍術使い』というだけで、咲宗のことを聞いてくるわけがない。
達也は目を細めて八雲を見据える。
八雲は飄々とした態度で顎を撫でる。
「いや、実は昨晩、近くの山奥でその咲宗君と風魔の者達が一戦あったみたいでね」
「同じ風魔同士で? 鍛錬ではなく?」
「そんな感じではなかったよ」
「つまり風魔の一族で内輪揉めが起きていると?」
「それは前からなんだけど……。今回咲宗君と戦ったのは『中立派』と呼ばれる者達でね。どうやら彼は『中立派』の人達の手を借りたかったようだねぇ」
「中立派、ですか」
「そ。風魔は現在……いや、少し前まで『正統派』『革新派』『中立派』に分かれていてね。理由は後継者争い、という名の『革新派』の反乱だ。まぁ、この前の騒動で一派は立場を無くしたみたいだけど」
「……随分と欲深い『忍術使い』達のようですね」
「いやいや、正確には咲宗君の叔父とやらが欲深いんだよ。その叔父は実は養子でね。風魔の血を引いていないんだ」
「それなのに勢力を率いる程に人が集まったのですか?」
「いいところ突くねぇ、深雪くん。実は『革新派』の者達は風魔の血が薄い者達で構成されていてね。数は多いけど、実力者と呼べる者はほとんどいない」
「では、今回咲宗と戦った『中立派』は?」
「『革新派』よりは強いけどねぇ。『中立派』と言えば聞こえはいいけど、要は後継者争いに関わる気がなかっただけでね。しばらく風魔の仕事からも距離を取ってたみたいだよ」
「そんな者達に咲宗は手を借りに?」
「いや、結局止めたようだよ。咲宗君1人に手も足も出なかったんだ。むしろ足手纏いになると判断したんだろうねぇ」
「……それは咲宗が強いのか、『中立派』の者達が弱かったのか、どう判断すればいいんですか?」
「両方だよ。『中立派』の者達は明らかに鍛錬不足。咲宗君は『神童』と呼ばれているからねぇ」
「『神童』、ですか……」
「彼は君達と似た存在さ。今は風火奈の名を名乗ってはいるけど、いずれは風魔の当主になることが決定してる」
「「……」」
達也は一切表情を変えずに、深雪は目を伏せて憂いの表情を浮かべる。
「問題は何故咲宗君はそんな者達を頼らざるを得なくなったのか、ということだね」
「それに俺達が関係あると? ……まさか俺達を調べているのですか?」
達也の目が細まり、深雪の顔が強張る。
八雲はゆっくりと顔を横に振り、
「安心したまえ。彼は正しく『忍び』だよ。君達を探るのは止めているようだ。さっき言っていただろう? 十師族の小間使いをしていると。第一高校で十師族と言えば……」
「七草真由美と十文字克人、ですか。つまり、今、咲宗は一高に関することで動いているということですか」
「そのようだね」
「何を調べているかは?」
「もちろん僕も調べてはいるけど、まだ彼と同じくらいしか分かってないんだよねぇ。だから、彼に訊いた方が早いと思うよ」
八雲は顎を撫でながら言い、達也は小さくため息を吐く。
八雲は苦笑を浮かべ、
「彼は僕のことを知ってるから、話してくれるんじゃないかな? 昨日盗み見たこともバレてるみたいだから」
それはそれで不安なのだが、今の言い方からだと訊いても答えてくれないのだろうなと達也は諦めることにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
登校した咲宗は、雫から挨拶の直後、とんでもないことを告げられた。
「………もう一回聞いてもいいかな?」
「SSボード・バイアスロン部に入部した。ほのかと
「……うん。………うん、聞き違いじゃなかったんだね」
眉間を押さえながら項垂れる咲宗。
雫の横にいたほのかも苦笑いを浮かべていた。
「華凜から何も聞いてないの?」
「……なんにも」
昨日は色々とあったので、帰宅したのは日付を跨いでからだ。
華凜が咲宗を待って起きてるわけないので、帰った時にはすでに爆睡していた。
朝も登校する際には何も言わなかったので、確信犯なのだろうと咲宗は理解した。
「まぁ、朝は昨日の達也の大活躍の話で盛り上がってたからね」
「なるほど」
達也は風紀委員活動の初日でいきなり大捕り物の大活躍だった。
剣道部と剣術部が衝突し、剣術部の2年生が振動系攻撃魔法『高周波ブレード』を使用して斬りかかったところを、達也が無手で魔法も使わずに取り押さえた。
二科生の一年生に逮捕されたことに、他の剣術部員達が怒り、太々しい二科生に掴みかかったのだが何と達也は全てそれを躱し、剣術部員達が力尽きるまでいなし続けた。
たった1日で達也は一高の噂の的となってしまったのだ。
良くも悪くも。
ちなみに同じ風紀委員になった森崎は、何もなかったようだ。
だが、やはり達也については敏感になっているようで、登校してきた深雪を見て僅かに顔を顰めていた。
(達也も大変だねぇ。あんまり目立ちたくなさそうだったのに)
今では深雪に負けないレベルで有名人だ。
もちろん嫉妬方面で、あるが。
(けど、ちょっと気になる情報もあるんだよねぇ)
達也が騒動に乱入した時と、剣術部員達をあしらっている最中に、妙に船揺れのような揺れに襲われ、魔法が発動しなくなったという話があったのだ。
咲宗はそれを達也がやったのだと思っている。
だが、今はそれどころではない。
「SSボード・バイアスロン部の人は何も言わなかったの?」
「華凜が『兄は入る気でいました』って言ったから」
「あいつは……!」
「ま、まぁ、仮入部とかも出来るらしいから」
「それに実家の事情で休むのも認められてるみたい。十師族や百家の子が時々いるからって。部長も百家だし」
「なるほどね。ただ……うちは百家支流でもないから物凄く言い訳に困るんだけどなぁ……!」
流石に誰でも彼でも「風魔忍です!」とバラすつもりはない。
というか、雫達に話したのは達也の目を誤魔化せないと判断したからだ。更に達也の師匠が九重八雲というのもある。
雫達やエリカ達には口止めしてあるが、そんなものを信じる咲宗ではない。
すると、深雪が咲宗に歩み寄ってきた。
「おはよう、風火奈くん、ほのか、雫」
「おはよう、深雪さん」
「「おはよう」」
「風火奈くん、今日のお昼なのだけど、少し時間を頂けないかしら?」
教室が一瞬騒めいた。
咲宗に嫉妬の視線が集まるが、もちろん咲宗は涼しい顔で無視する。
「問題ないけど、お兄さんかい?」
「ええ。お兄様が風火奈くんに聞きたいことがあると」
「ふむ……了解」
「では、お願いします」
深雪は軽く一礼して、ほのかや雫に顔を向けて話を始める。
兄というワードで周囲の負の感情は和らいだが、今度は達也に「補欠の分際で司波さんを伝言役に使いやがって!」という場違いな怒りが向けられていた。
咲宗は今の会話で、九重八雲から何かしら聞いたのだろうと推測した。
問題はどこまで話すかだが、ここは達也を梯子にギブアンドテイクの関係を九重八雲と築こうと考えた。
昨日の時点で自身のことや風魔のこともバレていると思っているので、正直こちらはそこまで探られて困ることはない。
部下達に昼休み前に一度報告を寄越すように連絡を入れて、咲宗は部活をどうするかに意識を切り替えるのだった。
そして、昼休み。
咲宗は深雪と共に屋上に向かう。
深雪も話を聞きたいということだったので、術を使って周囲に見られないようにしてから屋上に向かう。
前の休み時間のうちにサンドイッチなどを買っておいたので、昼食を食べ損ねるということはない。
屋上に入ると、すでに達也が椅子に座っており、周囲に人影はない。
深雪が駆け足で達也の元に向かい、左隣に座った。
「お待たせして申し訳ありません、お兄様」
「いや、俺も今さっき来た所だよ」
「お待たせして申し訳ありませんね、達也殿」
「悪ノリはやめてくれ、咲宗」
「いえいえ、大活躍された噂の風紀委員殿にそんな」
「……はぁ、別に大したことはしていない。あれくらい咲宗にも出来るだろう?」
「ごめん。又聞きだから何とも。それにボクは我慢強い方じゃないから、とっとと相手を気絶させてるよ」
咲宗は肩を竦め、達也は苦笑する。
その間に深雪が弁当を取り出して、達也に渡す。
咲宗は達也の右隣に座って、サンドイッチを取り出す。
「で、いきなり本題でいいのかな?」
封を開けながら訊ねた咲宗に、達也も蓋を開けながら頷く。
「ああ、時間が惜しいからな」
「分かった。どこから知りたいの?」
「何を探っているのか、だ」
咲宗はたまごサンドイッチを一口食べる。
「んぐんぐ……ふむ。何を、ねぇ。九重殿から聞いてないの?」
「お前に訊く方が早いと言われた。お前と同じくらいしかまだ把握してないからとな」
「なるほど……。九重寺でもまだ探りきれてないのか……」
「それで、何を探っているんだ?」
「……まぁ、達也ならいいか。ただし、もちろん――」
「口外しない。深雪にも約束させる」
深雪も力強く頷いた。
咲宗も頷いて、
「頼むよ。これは華凜にも話してないからね」
「華凜にもか?」
「アイツに話したら、ツッコんでいきそうだからね」
「ふっ、なるほど」
「さて……達也、君は『ブランシュ』を知ってるかい?」
「反魔法国際政治団体のか?」
「流石だねぇ。その『ブランシュ』だよ」
達也の目が真剣味を帯びる。
深雪は僅かに首を傾げていたが、
「その下部組織『エガリテ』が二科生の上級生を取り込んでることが分かったんだ」
「……『エガリテ』か」
「達也。気を付けなよ」
「というと?」
「『エガリテ』の中心メンバーは剣道部なんだよ。君が昨日活躍したね」
「剣道部とはそこまで関わってない」
「でも、君は昨日彼らの前で何か凄い事をしなかったかい? 例えば、魔法を無効化する、とか」
達也は特に反応しなかったが、深雪が一瞬目を丸くした。
それを咲宗も達也も見逃さなかった。
「……他にも風魔の手の者がいるのか?」
「まさか。噂から推測して、カマかけただけ」
「……本当に忍術使いは恐ろしい者達だな」
「君の師匠はその筆頭だよ。世捨て人とか言っときながらさ」
「それには同意するが、お前も十分脅威だぞ」
「そりゃどうも。まぁ、どうやったかまでは訊かないよ。この前の騒動で使わなかった事を考えれば、あまり使い勝手のいいものじゃないんだろうし」
それが分かるから脅威だと言っているんだ。
そう達也と深雪はツッコみたかったが、八雲で慣れている2人は表情にも出さなかった。
「話を戻して。もし剣道部に達也が何かしたことがバレてるなら、何か仕掛けてくるかもしれないよ」
「分かった。警戒しておこう」
「頑張って。で、実は『ブランシュ』日本支部のリーダーが、その剣道部主将の義理の兄であることまでは判明してる」
流石にその情報には達也も僅かだが驚きを露にした。
「これは七草生徒会長達にも報告してる。厄介なのは、まだ明確な犯罪行為をしたわけではないこと。騙されているのか、本当に構成員となっているのか分からないこと。騙されていたとして、一科生である生徒会や風紀委員会、差別を生み出してると言える教職員では逆にこじれる可能性が高いこと。何より、政府が情報規制をしているから国立の学校としては下手な対処は出来ない。これは十師族であろうとね。実害がない以上、十師族の権力で押し通すのも難しい状況って感じかな」
「だから、咲宗が調べて国や学校が動かざるを得ない証拠を見つけようとしているわけか」
「そういうこと。ただ、今の所はっきりと一高を狙ってる証拠はない。……これはまだ生徒会長には報告してないけど、『ブランシュ』の構成員と会っていた者の1人が銃器を大量に購入して保管してる」
「……それは十分アウトではないのか?」
「そいつらが『ブランシュ』の構成員と接触したのはその一度だけ。『ブランシュ』の拠点や支部にも近づかないし、繋がりを示す物的証拠はまだ見つかってない。だから、そいつらを捕まえても、尻尾切りで終わる可能性がある。もちろん、いつまでも放置する気はないけどさ。出来れば、そいつらを起点に『ブランシュ』に近づきたいんだよね」
「もう少し泳がせたいと言うことか」
「メールや電話まで調べるなら、もうちょっと時間がね。ハッキング技術まではないからねぇ……。でも、他の組織が奴らに目を付けてない訳ないだろうし……」
「他の組織?」
「同業者に公安、国防軍情報部、とかね」
「……なるほどな」
「でさ、どうせ聞いてるんでしょ? うちの馬鹿馬鹿しい内輪揉めや腑抜け共のこと、そしてボクの手が足りてないこととか。昨晩覗き見されてたし」
「少しは聞いている」
「少しねぇ……。まぁいいや。聞いての通り、風魔は今ガタガタでね。ボクが今動かせる戦力では調べるのに手が足りない」
「……だから?」
「九重殿から何か聞いたら、ボクにも教えてくれないか? 今後もボクは
「……分かった。頼むだけ頼んでみよう」
「ホントにマジで心の底からお願いします。うちの腑抜け共を鍛え直す時間はないだろうからさ」
咲宗は俯きながら憤怒のオーラを背中に纏う。
達也は苦笑して、宥める様に背中をポンポンと叩く。
「大変だな」
「……達也は風魔に興味ない?」
「悪いがないな」
「ですよね! はぁ……とりあえず、九重殿に望むなら面会する用意もあるとも伝えてくれ。第一高校に関することはボクが指揮権を持ってるから、うちの当主を気にする必要はないよ」
「……丸投げなのか?」
「邪魔になるからね。現当主はちょっと脳筋で、この手の諜報や策略を考えるとか苦手なんだよ」
「……」
「分かってるよ。それでいいのか風魔当主、でしょ? 良くないからクソ叔父達にいいようにやられて、サボる日和見連中が出てんだよね……!」
達也の瞳に籠った意味を正確に読み取り、頭を抱えて嘆く咲宗。
それに達也は同情するが、それを顔に出すことはない。
深雪の方は心の底から憐憫の視線を向けていた。
「まぁ……そういうわけだから。色々と気を付けなよ。七草生徒会長からの仕事もあるから、どこまで手伝えるか分かんないけど」
「あまり期待しないでおこう」
「そうしてくれたら嬉しいね。あぁ、そうそう。剣術部に関しては多分近い内に華凜がノすと思うから、もう突っかかる余裕はなくなると思うよ」
「……安心していいことなのか?」
「やり過ぎて心が折れる可能性はある」
「それはお前が十文字会頭辺りに怒られるんじゃないか?」
「……流石にクラブ活動にまで苦情を言われたくはない……んだけどなぁ。ボク剣術部に入る気ないし」
「七草生徒会長は言ってくると思うぞ」
「七草生徒会長は幻術で揶揄えばいいから大丈夫」
「「……」」
サラッと言う咲宗に、達也と深雪は顔を見合わせる。
その理由は昨日昼食を生徒会室で食べた時に、真由美が達也に顔を向けて、
『達也くん、九重八雲氏に師事をしてたわよね? 忍術使いの幻術を破る方法って知らない?』
と、何やら凄みのあるにこやかな笑みを浮かべて訊いてきたことを思い出したからだ。
咲宗にやられたんだろうなと思っていたのだが、やはりそうだったようだ。
「多分達也辺りに幻術を破る方法とか聞いてる頃合いだと思うし。ちょっと手法を変えるかな」
しかし、どうやら咲宗の方が一歩上手のようだと、達也は自分に八つ当たりが来ないことを祈るのだった。