ショタっ子魔法師は風魔忍 作:魔法非戦士
四月。
魔法大学付属第一高校、入学式。
咲宗と華凜は互いに第一高校の制服を身に纏い、自宅を一緒に後にした。
もちろん、咲宗は男子制服を着ている。
「インナーガウンはいいの?」
「何かヒラヒラしてて面倒。スカートも動き辛いなぁ」
華凜は不服気に制服を見下ろす。
「そりゃあ、戦闘を想定してる服じゃないしね」
咲宗は苦笑しながら肩を竦める。
華凜は咲宗の制服を上下に見て、首を傾げる。
「そっちは暗器一杯仕掛けられそうだね」
「まぁね」
2人はキャビネットに乗り込んで、第一高校前へと向かう。
「同じクラスかな?」
「流石にそれはないんじゃない? 成績順で決めてるだろうけど、兄妹は別にするでしょ」
スクリーン型の携帯情報端末をイジりながら答える咲宗に、華凜は頬を膨らませる。
拗ねたように腕を組んで、外の景色に目を向ける。
「それで? 今年の新入生って十師族とかいるの?」
「いや、調べた限りではいないね。ただ……十三束家はいるんだよなぁ」
「あらら……って、十三束家の同年代って確か……」
「【レンジ・ゼロ】だね。まぁ、こっちの事を知っている可能性は低いと思うけど」
「ふぅん。他には?」
「百家がチョコチョコいるけど、そこまで目立つ家はないかなぁ。まぁ、どれだけ入学したのか、まだ分かんないんだけどね。流石に第一高校のサーバーに侵入するのはボクには無理。あくまで同年の第一高校に行きそうな家系をピックアップしただけさ」
「じゃあ、二科生とかは?」
「無茶言わないでよ。第一世代もいるし、二十八家や百家本流に支流には名を名乗るのを認められてない子とかもいるんだ。全部把握出来るわけないじゃん」
「そりゃそっか」
駅に到着した2人は、肩を並べて学校へと向かう。
周囲には同じく高校に向かう新入生達が、通りを歩いていた。
しかし、その表情は決して明るいものばかりではなかった。
暗い顔をしてる者達の多くは、胸や肩にエンブレムを持たない者達だった。
「二科生達はせっかく入学したってのに暗いねぇ」
「補欠ってだけなのにね。入学して頑張ればいいのに」
「そう簡単に成長できるもんじゃないからね。独学でって結構無茶だと思うよ?」
二科生には指導員が付かない。
課題を与えられ、それを時間内に終わらせることで授業終了となる。
「そもそもさ、アタシとしてはあの国際ライセンスの選定基準がおかしいと思うんだけどねぇ。まぁ、分かりやすい評価って奴なのかもしれないけど」
「あれは戦力評価じゃないしね。仕方ないでしょ」
そんな会話をしながら2人は校門をくぐる。
向かう先は講堂。
そこで入学式が執り行われる。
今は入学式開会まで20分。
2人はさっさと空いている席に座る。
咲宗は座ったかと思ったら、いきなり携帯情報端末を取り出してイジり出す。
それに華凜は呆れ顔を浮かべるが、周囲は誰も咲宗に視線を向けない。
術で意識を向けさせないようにしているのだ。
そして、入学式が始まり、新入生答辞となる。
「新入生代表、司波深雪」
現れたのは、並外れた美貌を持つ美少女だった。
艶のある黒の長髪に、透き通った白い肌を持つ『無垢で可憐』という言葉がよく似合う。
「お~。ねぇねぇ、めっちゃ美人だよ」
「……司波深雪、ねぇ」
咲宗も深雪に意識を向けていた。
素早く情報端末を操作して、司波深雪の情報を探る。
「……情報がない……?」
「へ?」
「主席になるだけのバックボーンが一個もない。百家でも古式の名門の血筋でもない」
「第一世代ってこと?」
「流石にそれはないと思う」
「調べるの?」
「……やめとく。絶対碌なものが出てこない気がする」
そう言いながらも咲宗の顔は全く納得出来ていない。
しかし、華凜はそれに指摘せず、深雪に意識を戻す。
深雪は堂々と凛とした顔で答辞を述べている。
(探れないなら、近づいてって話してもらえばいいじゃんね。小細工が駄目なら正攻法がベストってね)
華凜は面白い物を見つけたとばかりに口端を吊り上げるのだった。
そして、入学式が終了し、2人はIDカードを受け取った。
「あ、B組だ。サキは?」
「……A組」
「えーズルいー。あの主席ちゃんとクラスメイトじゃん」
「しばらく近づく気はないな。どうせ当分は人で囲まれて、まともに声なんてかけれないでしょ」
「え~。彼女にするくらいの気持ちで行きなよ~」
「ヤダ無理」
「即答ですか!?」
「あそこまで完成されてると、なんか気持ち悪い」
「忍者って損だね」
「うっさいよ」
講堂を出ようとしたところで、人垣が目に入った。
それは案の定というべきか、深雪を中心としていた。
学生が中心となっており、今にも話しかけたそうに頬を赤らめている少年少女が深雪を囲んでいた。
「ほらね……あれに突っ込む体力なんてボクは使いたくないよ」
「まぁ、あれはねぇ……」
流石に囃し立てた華凜も呆れたような顔で人垣を見つめていた。
深雪も心なしか顔が引き攣っているように見えたが、浮かれている周囲はその様子に気づいていないようだった。
咲宗と華凜は巻き込まれたくなかったので、さっさと退散することにした。
その時、2人は出口近くにいた男女3人組に目が止まった。
175cmほどのスラリとした、しかし肩幅が広い男子生徒。
赤茶のショートヘアのスレンダーな美少女生徒。
眼鏡をかけた黒髪で豊満なプロポーションをした女子生徒。
エンブレムがないことから二科生であることは間違いない。
「ねぇ、サキ。あの明るい髪の子と男の人さ」
「うん。かなり出来るね。特に男の方はかなりヤバイ」
「女の子の方は剣術やってるみたいね。あんまり隙がない」
その時、その注目していた2人が顔を咲宗達に向け、咲宗達は自然な仕草で視線を外した。
そのまま講堂の外に出る。
「……バレたかな?」
「女子の方は大丈夫だと思うけど……。男の方はボクの『隠れ蓑』破られたかも」
「うそ……!?」
「でも、なんか普通の視線じゃなかった。なんか『芯』を見られたって感じ……」
「十分ヤバイから」
「まぁ、二科生だからって油断しちゃダメだってことだね。そういう異能に特化してるのかもしれない」
BS(Born Specialized)魔法師と呼ばれる先天的特異魔法師の異能は、一流の魔法師の能力を超えている場合がある。
一つ覚えと呼ばれて見下されることがあるが、だからこそ見た目だけでは分からない。黙っていれば、異能があるかどうかなど判断し辛いからだ。
そして、BS魔法師の特徴の1つとして、その異能を持つが故に通常の魔法が上手く使えないというものがある。
故に油断していると、足を掬われる可能性があるのだ。
咲宗達は学校を後にして、さっさと自宅に戻り、華凜は道場へ行くことにし、咲宗はのんびりすることにしたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
翌日。
登校した2人は教室の前で別れる。
A組の教室に入った咲宗は、さっさと自分の机を探す。
探そうとしたのだが……。
「あ」
と、咲宗を見て、声を上げる少女がいたのだ。
その声と顔を見て、咲宗も僅かに目を丸くする。
あの【ワンダーランド】で助けた少女が、そこにいた。