ショタっ子魔法師は風魔忍   作:魔法非戦士

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意外と早く予定が終わったので、行きますぜ!


6.面倒事は放課後に

 放課後となり、深雪は兄と合流するために早々に教室を出る。

 

 それをクラスメイト達が追いかけ、ほのかも嫌な予感がするからとそれに付いて行った。

 

 そんな同級生を見送って、咲宗と雫は華凜と合流してから校門に向かう。

 雫は間違いなく咲宗が逃げ出すと疑っていた。今もず~~っとじぃ~~っと咲宗を見つめている。

 

 それはどう考えても、咲宗が見つけられなくなるのは影が薄いや武術を嗜んでいるからではないと、確信しているということだ。

 

 どうやら誤魔化し続けるのは無理そうだと咲宗は小さくため息を吐く。

 華凜はニマニマと心の底からこの状況を面白がっていた。

 

 校舎を出た所で妙な雰囲気を感じ取った。

 

「……なんかあったのかな?」

 

「みたいだね。で、アタシは物凄く心当たりがあるよ。ねぇ、雫」

 

「ほのか……!」

 

 雫は駆け出して、現場へと向かう。

 華凜がニコリ(ニンマリ)と笑みを浮かべて兄に顔を向け、咲宗は小さくため息を吐く。

 

「流石にこの状況で逃げたら明日が怖いよねぇ……」

 

「面白い事になるだろうね~」

 

「はぁ……だから主席には近づきたくなかったんだよ」

 

「ほらほら、早く行こ」

 

「はいはい……」

 

 咲宗と華凜も駆け出して、雫の後を追う。

 

 現場は校門前。

 2つの集団が向かい合っており、その両方が咲宗の顔見知りだった。

 

 達也達とA組陣だ。

 

 深雪は達也側におり、主にA組陣といがみ合ってるのはエリカ、レオ、そして意外なことに美月だった。

 ほのかはA組側で宥めようとしているが効果はなかったようで、今は雫に状況を説明していた。

 

「どう思う?」

 

「どうせ達也と帰ろうとした深雪さんを、一緒に帰りたいA組が馬鹿なこと言ったんじゃない? 二科生如きが一科生の交流に出しゃばるな、とかさ」

 

「ワァオ。本当に高校生?」

 

「ある意味高校生らしいと言えるけど? 浮かれてるんでしょ」

 

「それでいいのか、魔法師の卵」

 

「卵の中だから視野が狭いんでしょ」

 

「おのれ黄身!」

 

「そこは親鳥じゃないかな普通。野次馬、双方の間が見える場所に行くよ」

 

「ほ~い」

 

 咲宗は『隠れ蓑』を発動して、野次馬の最前列に移動する。

 

「だったら教えてやる!」

 

 しかしその直後、A組側の先頭にいた男子生徒(昼に華凜が言い負かした)が腰に手をやって、サイオンを活性化させた。

 

 レオが飛び出し、エリカがどこからか取り出した警棒を伸ばす。

 だが、相手の魔法構築は想定以上に速い。

 

 男子生徒が短銃型CADをレオに突きつけ――

 

 突如CADを突き出した右腕が大きく弾かれた。

 

「なっ!?」

 

「え!?」

 

 男子生徒が驚きの声を上げ、いつの間にか目の前まで迫っていたエリカも驚きながら反射的に後ろに跳び下がる。

 

 達也は鋭く視線を動かし、その先に咲宗がいたのを見逃さなかった。

 咲宗も達也に見られたことに気づき、内心舌打ちする。

 

(やっぱり特殊な目を持ってるみたいだな)

 

(やはり認識阻害の古式魔法。それにさっきのは『指弾』か……。つまり、彼は忍術使いに属する魔法師)

 

 互いに互いの警戒度を上げる。

 

 しかし、その間に事態は加速する。

 他のA組連中がCADを起動させ、それを止めようとほのかも魔法を発動しようとする。

 

 それには咲宗と華凜はもちろん、達也も目を丸くしたが、もう発動を止める術はなかった。

 目立たずに、であればだが。

 

 だが、突如サイオンの塊が高速で飛翔し、ほのかが展開していた起動式に直撃して吹き飛ばされた。

 

 ほのかは衝撃でよろめいて、雫が抱き留める。

 

「止めなさい! 自衛目的以外での対人魔法攻撃は校則違反である前に犯罪行為ですよ!」

 

 鋭く声を発したのは生徒会長の七草真由美だった。

 

 生徒会長の登場に、ほのかを筆頭にほぼ全員の顔から血の気が引く。

 

 更に真由美の隣に立ったのは、黒のショートヘアの女子生徒。

 

「風紀委員長の渡辺摩利だ! 事情を聞きます。ついてきなさい」

 

 凜とした佇まいに、硬質な声。

 そして、風紀委員長という肩書に、更に血の気が引くほのか。

 

 一高で生徒を取り締まる存在トップ2が現れたことに、A組陣やエリカ達も硬直してしまう。

 

「あららぁ……」

 

 華凜が思わず声を上げる。

 咲宗も同じ思いだが、あれだけ騒げば当然だなという思いもある。

 

 更に魔法を使おうとしたのだから尚更だ。

 

 そこにこれまで観察者に徹していた達也が泰然とした足取りで、摩利の前に歩み出た。

 

 訝しむ摩利に一礼した達也は、

 

「すみません。悪ふざけが過ぎました」

 

 と、堂々と言い放った。

 

「悪ふざけ?」

 

 摩利が眉を顰め、真由美がパチクリと瞬きをする。

 

 達也は堂々と頷き、一切詰まることなく嘘を言い放っていく。

 

 曰く、先頭にいた男子生徒―森崎駿の実家である森崎一門のクイックドロウを見学させてもらおうとした。

 

 曰く、その際、あまりにも真に迫っており、思わず手が出てしまった。

 

 曰く、女子生徒(ほのか)が使おうとしたのは、攻撃魔法ではなく、ただの閃光魔法である。

 

 曰く、自分(司波達也)は起動式を読み取ることが出来る。

 

 曰く、ちょっとした行き違いだったのです。先輩方のお手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。

 

 最後は深雪の言葉で、それまでの言葉は達也である。

 

 不遜と言える態度で言い放った言葉に、華凜は腹を抱えて必死に声を押さえながら笑う。

 咲宗はため息を吐いて、「良くやるよ……」と呆れていた。

 

 その結果、真由美が摩利を取りなして、この場は不問ということで収めることになった。

 

 真由美と摩利が去る際に達也達当事者は頭を下げたが、野次馬に紛れていた咲宗は真由美と摩利が達也を見てニヤリと顔を見合わせて笑ったのを見逃さなかった。

 

(まぁ、あんなこと言えばロックオンされるよね。それにしても生徒会長と顔見知りだったのか?)

 

 真由美は確かに達也のことを名前で呼んだ。とても親しそうに。

 

 しかし、それにしては深雪も戸惑っているように見えた。つまり、真由美が一方的に知っていただけの可能性が高い。 

 それはそれで、おかしいとしか言えないのだが、咲宗にそれをツッコめるほど真由美の情報はない。

 

 その時、視線を感じて、その方向に意識を向ける。

 

 視線の主は、真由美だった。 

 

「げっ……」

 

 頬を引き攣らせた咲宗に、真由美はニコリと笑って、前を向いて去って行った。

 

 今の意味を咲宗は正確に理解し、手で顔を覆う。

 

(バレてーら。次期当主でなくても十師族の一員ってわけね。しかも、あの状況で遠視魔法を使ってたって、滅茶苦茶おっかないんですけど)

 

 今は『隠れ蓑』は解いているので見られること自体はおかしなことではない。

 しかし、咲宗がいる場所は野次馬の最前列。

 

 今の騒動の現場からも、真由美達の去る方向にもいなかった咲宗を見つけることなど、普通は無理だ。

 つまり普通ではない方法で見つけたということ。

 

 そして、七草真由美の情報から考えられるのは、遠隔視系の知覚魔法『マルチスコープ』。

 実体物をマルチアングルで視認する視覚的多元レーダーのような魔法。

 

(逃げた所で華凜が捕まるだけ。はぁ……しばらくは小間使いかな?)  

 

「はぁ……」

 

「は~、笑った笑ったぁって、どうしたの?」

 

「七草生徒会長に俺の事バレてるみたい。今、眼が合った」

 

「あらら……」

 

「ったく、達也だけでも十分面倒なのに……」

 

「達也くんがどしたの?」

 

「『指弾』使ったのバレた」

 

「……ワァオゥ。ホントに二科生?」

 

「やっぱり何かしら異能を持ってるんだろうね。本当に厄介だ。華凜も気を付けなよ」

 

「はーい。で、そろそろ行かなくていいの?」

 

 華凜が指差した先にいるのは雫。

 

 すでに森崎達A組陣も解散しており、ほのかや雫は達也達と合流していた。

 そして、雫がこっちを見つめており、達也達も咲宗達を待っているようだった。

 

「はぁ……逃げられませんよね」

 

「退学するなら逃げれると思うよ? お母さんに怒られてもいいなら、だけどね」

 

「無理です許してください行ってきま~す」

 

「ですよね~」

 

 双子は大人しく雫達の元に向かう。

 

 華凜は達也達の前に着いた直後、

 

「お疲れ~。面白大変そうだったね」

 

「どっちよ。こっちは寿命がちょっと縮んだんだからね」

 

「……ごめんなさい」

 

「あ、いや。ほのかのせいじゃないから」

 

 エリカが慌てて、俯いたほのかを宥める。 

 それに華凜も参加する。 

 

「そうよ。ほのかが魔法を使わなくても、あのお馬鹿さん達の誰かが使ってたわよ。そもそも、森滝がすでにアウトだったんだしさ」

 

「森崎だからね」

 

「いいのよ。名前なんて間違ったって。森崎家だって、この話を聞いたら嘆くと思うよぉ~」

 

「まぁねぇ」

 

「森崎家ってそんなに有名なのか?」

 

 双子の会話にレオが参加する。

 

「森崎家はボディガードを生業にしてるのよ。お得意様は民間の資産家。つまり、非魔法師を相手にしてるってわけ。それで百家支流でありながら、本流にも劣らないと言われてるわね」

 

「へぇ~」

 

「それが入学2日目で停学相当の違反したとか笑えるわよね。あっははははは!!」

 

「ホントに笑っちゃったよ……」 

 

「だから、ほのかが気にする必要ないってこと。タイミングが悪かっただけよ」

 

「華凜ちゃん……。うん! ありがとう!」

 

「どういたしまして。さ、帰りましょう。へい、達也くん、ゴー!」

 

「……俺が先頭なのか?」

 

「雰囲気的に」

 

 華凜はそう言って、深雪を見る。

 視線を向けられた深雪は意味を理解し、笑みを浮かべて兄の腕を取る。

 

「では、帰りましょう。お兄様」

 

 その言葉をきっかけに達也達も下校を始める。

 

「それにしても、達也のおかげで助かったぜ」

 

 レオが頭の後ろで両手を組んで言う。

 

「そうねぇ。あそこで言い包めてくれなかったら――」

 

「ほのかだけが退学だったでしょうね!」

 

「え!? わ、私だけ!?」

 

「この中、ではね。森柿って奴も退学だったと思うわよ?」

 

「森崎ね。せめて名前を間違えてあげよう? 森崎家の人達は人格者って言われてるんだからさ」

 

「ヤダ無理。あれの名前なんて覚えたくもない」

 

「……なんで華凜が一番嫌ってるのさ」

 

「馬鹿なお坊ちゃんは嫌い」

 

 森崎への嫌悪感を一切隠さず言い放つ華凜に、当事者であるはずのエリカ達は毒気が抜かれて苦笑する。

 

 恐らくわざとであろうと誰もが分かっているので、悪ノリする者はいない。

 

 ちなみに達也は先頭。その左隣に深雪、右隣にほのかがいる。

 雫はほのかの隣だが、チラチラと後ろの咲宗を見ており、その隣が華凜。深雪の背後にエリカ達がいる。

 

「それにしても、起動式を読めるって本当?」

 

「まぁね。と言っても、読めたからって発動を止められるわけじゃない。実技が苦手な俺には、宝の持ち腐れだな」

 

 エリカの質問に達也は肩を竦める。

 

 その後はCADの話などで盛り上がり、テイクアウト用の喫茶店に立ち寄って近くのベンチに座る。

 

 話題はCAD、特にエリカの警棒型デバイスについてだった。

 

「けど、どこにシステムを組み込んでるんだ? 全部が空洞ってわけじゃないんだろ?」

 

「柄以外は全部空洞よ。刻印術式で強度を上げてるの。硬化魔法は得意なんでしょ?」

 

「……術式を幾何学的紋様化して、感応性合金に刻み、サイオンを注入して発動するってアレだろ? そんなモン使ってたら、並みのサイオン量じゃ済まないぜ? よくガス欠にならねぇな?」

 

「お。流石に得意分野。でも、あと一歩ね。強度が必要になるのは振り出しと打ち込みの瞬間だけ。その刹那を捕まえて、サイオンを流してやればそんなに消耗しないわ。兜割りの原理と同じよっ!?」

 

 背後から凄まじい殺気を感じて、素早く身を翻すエリカ。

  

 殺気の主は華凜。

 

 好戦的な笑みを浮かべて、まっすぐにエリカを見据えていた。

 

「ふぅん……エリカって、兜割り出来るんだぁ。それって相当の腕前ってこぉとだぁよねぇ♪」

 

 殺気全開の上機嫌な笑みで言う華凜に、美月やほのかが怯えの表情を浮かべる。

 

 エリカは華凜の様子と指摘されたことの動揺で顔が強張る。

 

「やっぱりな~。入学式の時に見かけた時から~強そうだなって思ってたんだよね~」

 

 華凜の右手にはいつの間にか刀身15cmほどの収納型ナイフCADが握られていた。

 

「いいなぁいいなぁ。面白そうだなぁ! 楽しそうだなぁ!! 楽しんでいいよねぇ!!!」

 

 華凜の笑みが狂気的なものに変わった瞬間、腰を落としてエリカに斬りかかろうとする。

 

 エリカも歯を食いしばって警棒を伸ばして構える。

 

 そして華凜が飛び出した。

 

 

 咲宗が華凜の襟首を掴んで引っ張った。

 

 

「ぐぅえ!?」

 

 華凜は少女が出してはいけない声を上げながら、飛び出した勢いで両足が浮いて空中で仰向けになる。

 

 咲宗はそのまま掴んでいた腕を下ろし、華凜は地面に投げ落とされた。

 

「ぎゃん!?」

 

「バ華凜。剣のこととなると見境なく勝負仕掛けるのやめなよ」

 

「だからって酷くない!?」

 

「母さんに言うからね」

 

「いやぁ!? ごめんなさいもうしません!!」

 

「なら、そっちでお座り」

 

 華凜は素早い動きで、指差された咲宗の背後の建物の壁際に移動して座り込む。

 咲宗は自分が買った飲み物を投げ渡し、こぼさずにキャッチする華凜。

 

「ドリンク」

 

「アタシは犬か」

 

「母さん」

 

「チュー」

 

 呪文を唱えた瞬間、大人しくストローを加えて飲み始める華凜。

 

 咲宗はため息を吐いて、未だ唖然としているエリカ達に向き直る。

 

「ごめんよ。華凜はドが十個くらい付く剣術バカでね。腕が立つ人を見ると、気持ち悪いハイになって斬りかかっちゃうんだよね」

 

「それって凄く危なくねぇか?」

 

「大丈夫。一度我慢したら、もう襲わないから。しつこく勝負に誘われるだろうけど」

 

「全然安心出来ないんだけど」

 

「そこは頑張って。嫌なら嫌ってはっきり言えば、その時は引き下がるから。その時は、だけどね。ボクが近くに居たら止めるよ」

 

 咲宗は肩を竦めて、呆れた眼で華凜を見る。

 華凜はそっぽを向いてストローを吸い続けていた。

 

 エリカはため息を吐いて、構えを解いて警棒を仕舞う。

 

「まぁ、あたしも気持ちは分かるし。何となく止め方も分かったから、もういいわ」

 

「お詫びに奢るけど?」

 

「あ、マジで?」

 

「なら、エリカも咲宗に奢った方がいいんじゃないか?」

 

 達也の突然の言葉にエリカ達は首を傾げた。

 

「え、なんで?」

 

「さっき森崎のCADを弾いたのは咲宗だからだ」

 

「「「えぇ!?」」」

 

 エリカやほのか、美月が驚きの声を上げ、レオや深雪は目を丸くしていた。

 

 咲宗は一瞬眉を顰めたが、すぐに大きくため息を吐く。

 

「……達也。ボク、君に何かしたかい?」

 

()()何もされてないな。だが、別に隠すことでもないだろ?」

 

「まぁね」

 

 咲宗は大袈裟に肩を竦める。

 

「どうやって? 古式魔法?」

 

「いいや? これ」

 

 咲宗は右手を突き出して、掌を上にする。

 掌の上にはパチンコ玉サイズの鉄玉が転がっていた。

 

 エリカ達は咲宗の手を覗き込むようにして、その鉄玉を見る。

 

「こんな小さい玉で?」

 

「『指弾』って技だよ。暗器の一種さ。これを指で弾いて飛ばしただけ」

 

「……暗器って暗殺の技、ですよね?」

 

「そうだよ、深雪さん。ボクは忍術使いの家系だからね」

 

 あっさりと告げられた事実にエリカ達が目を丸くした。

 これには達也も驚愕を隠せなかった。

 

 その宣告に大人しくしていた華凜が顔を向ける。

 

「なに? 結局バラすの?」

 

「どうせ近い内にバレそうだからね。達也の目は誤魔化すのも疲れそうだし」

 

 咲宗は肩を竦めて、達也を見る。

 

 達也は真剣な表情を浮かべていた。

 

「……どこの家系なのか、聞いてもいいか?」

 

「風魔だよ。風魔小太郎の風魔」

 

「風魔小太郎の一族は盗賊として処刑されたんじゃないのか?」

 

「忍術使いがそう簡単に捕まるわけないさ。術で偽物を捕まえさせたらしいよ」

 

「それで今まで潜んでいたと?」

 

「表立って名乗ってないだけで、政府や十師族とかは知ってるよ。七草生徒会長も知ってると思う。さっき目が合ったしね」

 

「ほぅ……風魔は七草家と繋がっているのか?」

 

「違う違う。少し前に一族の馬鹿が仕事でヘマしちゃってね。お説教されたんだよ」

 

 咲宗は雫に目を向ける。

 

 雫は相変わらず表情を変えることなく、咲宗を見つめていた。

 

「やっぱりアレはあなただった」

 

「そういうことだね」

 

「なんで誤魔化そうとしたの?」

 

「今のところ、風魔はその存在を公表する気はないし、存在しない一族という()()だからね。下手に話すわけにはいかなかったの」

 

「では、あのワンダーランドの事件は古式魔法師関連なのか?」

 

「大陸からの亡命者の捕縛。ボクはその手伝いで呼ばれたんだけどねぇ……。馬鹿の指揮官がさぁ、【ワンダーランド】スポンサーの十三束家に連絡もしてなかったんだよ。それであの被害。結果的に捕縛は出来たけど、十三束家はもちろん、七草家からも苦情が来たってわけ」

 

「……それは……」

 

「信じられないくらい馬鹿でしょ? けど、流石に身内の恥を話すのもね。だから、誤魔化そうとしたんだけど……」

 

「雫と達也くんのせいで無理だと思ったと」

 

 エリカの直球な言葉に、咲宗は苦笑して降参とばかりに両手を上げる。

 

「じゃあ華凜さんも?」

 

「まっさかぁ。アタシは火天御剣流一筋だよ。だから、風魔の仕事には関わったことないよ」

 

「……双子でここまで生き方が違うもんなのか?」

 

「実家の関係でね。ちょっと特殊なんだよ」

 

「……あ。まさかお父さんの実家が火天御剣流で、お母さんの実家が風魔なの?」

 

「おぉ、せいか~い!」

 

 華凜が意外そうにほのかを見て拍手する。

 エリカ達も納得したように頷いており、達也も一応納得したようだった。

 

「で、次は達也の番だよ」

 

「……何が俺の番なんだ?」

 

「達也の秘密も聞きたいな。全部だなんて言わないけど。どこで『指弾』を知ったのか、とかさ」

 

 咲宗はいたずらっ子の笑みを浮かべているが、僅かに緊張感が走ったのを誰もが感じ取っていた。

 

 深雪の顔も僅かに強張っている。

 しかし、達也は一切顔色を変えずに口を開く。

 

「別にそのくらいなら構わない。実は、俺は九重八雲氏に体術の指南を受けていてな。その関係で忍術使いの技にはある程度精通している」

 

「九重八雲……。【今果心】、か。……なるほどね。はぁ……そりゃ駄目だ。やっぱり達也達は探らない方が賢明だね」

 

「……別に探られて困ることはないんだが?」 

 

「直感みたいなモノさ。忍術使いとして、直感は疑えない性でね」

 

「……」

 

「だから達也。悪いんだけど……」

 

 咲宗は真剣な表情で達也を見る。

 

 続く言葉を想像したエリカ達は顔を強張らせて息を呑む。

 

 

「在学中に面倒事を持ってくるのは勘弁してね!? ボクは手伝わないよ!!」

 

 

「「「「へ?」」」」

 

「あはははははははは!!」

 

 達也達は唖然として、華凜が爆笑する。

 

 エリカが首を傾げながら、

 

「……ここは達也くんから離れる、って感じじゃないの?」

 

「それが出来たら、ボク風魔! だなんて話してません!!」

 

「「そりゃそうだ」」

 

「達也から離れても、結局深雪さんがクラスメイトだし! 七草生徒会長からも何かしら無茶振りされる予感してるし! その七草生徒会長に達也はロックオンされたみたいだし!! 主席の深雪さんは多分生徒会に勧誘されるはずだし!! だから、結局達也とは関わる気がしてる!!」

 

「説得力が凄いですね……」 

 

「今日の感じから華凜も騒動を起こしそうだしね!! 達也が仲裁役したら悪化しそう!! となるとボクがやることになるよね!? この騒動の種火共!!」

 

「確かに否定は出来ないが、その纏め方には苦情を申したい。俺は華凜やエリカ達と違って、自分から喧嘩を仕掛けたことはない」

 

「巻き込まれたら一緒だい!! 後始末とかしないからね!?」

 

「そろそろ落ち着きなよサキ~。八つ当たりはカッコ悪いよ?」

 

「誰のせいだ単細胞剣術ド馬鹿!!」

 

「そっちが仕事をミスったせいでしょ陰険モグラ忍者」

 

「ボクは呼びつけられただけだー!!」

 

 咲宗は華凜にトドメを刺されて崩れ落ちながらも最後の拠り所を叫ぶ。

 

 その姿を華凜はジト目で、達也達は同情が籠った憐憫の目で見つめる。

 

「だったらお爺ちゃんに連絡して、元凶を絞めてもらえばいいじゃん」

 

「すでに謹慎してるクソ叔父に今更処罰加えたって大して苦しまないじゃんか。今後の達也に巻き込まれるであろう苦労と釣り合わないよ!」

 

「その汚名は強く否定させてくれ」

 

「却下する! じゃあ、司波兄妹にって言っていいの!?」

 

「……仕方ない」

 

「仕方ないんですね」

 

「お兄様……」

 

「そこ、悶えない」

 

 美月とエリカのツッコミは、当人達には届かなかった。

 

 すると、今まで黙っていた雫が崩れ落ちた咲宗の背中に手を置いた。

 

 誰もが慰めるのかと思いきや……。

 

 

「私が巻き込まれた償いは?」

 

 

 空気が凍った。

 

「…………え?」

 

「あなた達が失敗したせいで、私は怪我をした。しかも、それを誤魔化そうとした。その償いは?」

 

「……」

 

 咲宗はダラダラと冷や汗が溢れ出す。

 ほのかはもちろん、華凜すらも頬を引き攣らせて黙り込むほどの気迫が雫から噴き出していた。

 

「た、大変……申し訳――」

 

「謝罪だけ?」

 

「え゛」

 

「謝罪しかしてくれないの?」

 

「…………な、何を……お望みでございましょうか」

 

「ん……父と相談して決める」

 

「北方潮と決めるぅ!?」

 

「父のこと知ってるの? ……私の事調べた?」

 

「あ……」

 

「プライバシーの侵害が追加」

 

「……」

 

「もう止めたげて!! サキのライフはマイナスよ!?」

 

「評価がマイナスだからね」

 

「うはぅ!?」

 

「華凜も撃墜された……。ほのか、止められないの?」

 

「ちょ、ちょっと今の雫は……。多分……ワンダーランドで遊ぼうとしてたところに事件に巻き込まれたから……」

 

「あ、それ有罪。華凜は雫大明神を支持します」

 

「うぐぅ……!」

 

「ということで、また明日。必要ならば契約書を持ってくる」

 

「何させる気ですかーー!?」

 

「償い」

   

「ですよね!!」

 

 

 こうして、咲宗は雫に首輪をつけられたのだった。

 

 

 

 




たいへん、つかまっちゃった
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