三河国の乱   作:Insanity Dudue[BP]

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幕間

2月26日 早朝

 

ダニエルは、すでに豊橋を出て相模に向かっていた。

ここから車で3時間くらいだろうか。

送迎車に乗りながら、ダニエルは昨夜の勝利の知らせを聞いて内心ほっとした。

というのも、昨夜の勝利は、主要な勢力が一つ消滅したことを意味するからだ。

しかし、あまり悠長なことは言っていられない。

モハメドはすでに行動を起こしていたし、ここ遠江にも敵対する勢力がたくさんいた。

マーヴィンが昨日から行動を開始したということは、すでに近隣の国々にその噂が伝わっている証拠だ。

それだけに、蒲郡と隣接する自領を空白にしておくのは気が引けたが、今しかない。

今行かねば、モハメドの思うつぼである。

ダニエルは一抹の不安を抱えながら、旅を急いだ。

 

 

 

一方、モハメドはマーヴィンの死の報告に耳を傾けていた。

 

「やはり、その程度か。」

 

マーヴィンの敗北は予想できた。

ギャングの一人に過ぎないマーヴィンは、たった一日しか持たない。

彼が戦死したことには少し驚いたが、遅かれ早かれそうなることだから、ほとんど気にもしていなかった。

 

(次は誰を使ったらいいんだろう?)

 

モハメドは考えた。

もしマーヴィンが2日もったなら、ダニエルの領地を急襲して占領することができたかもしれない。

しかし、思ったとおり、彼は間違っていた。

今、ダニエル領に電撃戦を仕掛けても、手の空いている博之が攻めてくる可能性があるのだ。

よって、遠江側の反乱軍を敵に回すか、それとも......。

モハメドは決断する。

この戦いは、まるで詰将棋のように、正しい手を打ち続けなければならない。

敵を切り崩し、息の根を止めるのだ。

その頃、鷹狩隊に変装した偵察隊から、ダニエル出発の知らせが届いた。

 

 

 

2月26日の正午過ぎ。

 

博之は勝利の軍団を率いて自国の領土に帰ってくる。

マーヴィンがいなくなり、幸田地方を占領するのは簡単だったが、暴力団はまだ生きていた。

急な占領は彼らがゲリラを始める理由のひとつになり得る。

また、幸田地区が自分たちの領土になれば、モハメドとの領土の境目になる。

陸の国境は、戦争の火種になる。

この点からも、一旦帰国してモハメドとの決戦に備えるのがベターであった。

それに、ダニエルは今、晴信を呼んでいる。

 

(頼むぞ、ダニエル)

 

博之は盟友である晴信の参戦を願い、何事か呟いた。

 

 

 

同じ時間、相模

 

ダニエルの顔には焦りしか感じられない。

ついにこの時が来たか、と思う。

 

「大体見当はついているが...何のために来たんだ?」

 

「共に戦場に行ってください。」

 

私の問いに間髪入れずに答えるダニエル。

やっぱり...そうだったのか。

世界の稀代の梟雄、モハメドの悪行については聞き慣れていた。

この遠い相模の地でも。

それほどに彼は危険な存在なのだ。

味方に危機が迫れば、戦いに出るよりない。

しかし...。

 

「戦場へ戻る気はない。」

 

不甲斐なさを感じながらも、私は続ける。

 

「戦場を離れてから10年は経っているだろう。

軍配の持ち方も忘れたし、人を斬るのも怖い。

今は、畑を耕し、物を売ることに夢中なんだ。」

 

昔の自分はもういない。

 

そうだ...。

たとえ私が参陣したとしても...。

何かいいことがあるのだろうか。

 

そんな私を見て、ダニエルは少し悲しそうな顔をした。

しかし、彼はまだ私を見つめていた。

それを見て、また思う。

 

ああ...そうだ。

彼は知っていたに違いない。

私がもう戦う気がないことを、彼は知っていたに違いない。

それでもダニエルは来た。

危険を冒してまで。

それはきっと...

 

 

彼の友人のために。

 

 

私は今まで自分のために戦ってきた。

幾多の戦いを経て、ついに相模から遠江へ、力を手に入れた。

しかし、人は満足すると、力を失う。

もう望むものは何もない。

もう戦いはしない、もう殺しはしない。

いつから戦争を恐れるようになったのか...。

 

今度こそは...そうなのか?

 

たとえ結果が出なくとも、ここに留まるのは不義理である。

戦場での機械的な同盟ではない。

そもそも"盟友"ではないのか?

そう、友であるならば。

友が望むなら......。

 

 

私は答えなければならない。

 

 

顔を上げ、ダニエルと向き合う。

 

「面目ない。

しばらく時間が経ってしまい、私も年をとってしまったようだ。」

 

「しかし、戦場へ戻ろう。」

 

「旧友のために、我々の勝利のために!」

 

ここに武神が帰ってきた。

ダニエルはそれを確信し、手を差し伸べる。

 

友の挨拶だ。

 

今度は迷うことなく、しっかりとその手を握った。

 




いつものように。
会話文と心情表現は難しいですね。
ただし、今回は人物を追加しています。

読んでくださった方、ありがとうございました!そして、不完全な文章で申し訳ありませんでした。
楽しんでいただけたら幸いです。
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