魔女モルガンに仕えた騎士の最期の話



書きたいから書きました。
好評でしたら続きますがかなり更新は遅くなると思います。あと結構やりたい放題になると思いますのでそこもご注意頂けると嬉しい限りです。



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魔女の騎士

 

これはもしもの物語。本来は有り得ない魔女の騎士の終わり。

 

 

 

カムランの丘。それはアーサー王の物語においてとても重要な場所である。アーサー王と反逆の騎士モードレッドの戦いの場でもあり、物語の、そしてブリテンの終わりを迎える場である。

 

今この丘には三人の人物がいた。

 

アーサー王はキャメロットへ攻め込んで来た反乱軍の指導者であり、元はキャメロットの誉れ高き円卓の騎士であった男、いや、少年にまるで自分の罪を突きつけられているかのような曇った顔を向けていた。

 

今では目の前で処刑を待つ罪人の様にその場で両膝を地につけ首を断ち切り易い姿勢を保ち続ける満身創痍の少年に対して彼女は何故こうなってしまったのかを自分に問い続け、己を責め続ける。

彼女の手には少年との戦闘に使われた聖剣が握られている。だが彼女はこの聖剣に自身が相応しいとは思えなかった。この惨状を作り上げたのは少年では無く自分に咎があると思い、その気持ちが聖剣を握る手を震わせる。

 

 

 

そしてその少年の後ろに立ち、少年の武器である魔剣を今まさに振り下ろさんとする反逆の騎士モードレッドは今にも泣きそうな顔をしていた。

大事な後輩のように思い、共に騎士として過ごして来た彼にその魔剣を振り下ろさなければならない事態に陥った事。

彼が自分の憎悪する憎き魔女の子供であり、その騎士である事。

自分の意思とは関係無く彼の背中から剣を突き刺した挙げ句、今まさに彼の武器である魔剣を振り下ろそうとする言うことを聞かない自分の身体に対する怒り。

それでも尚抵抗を続ける彼女の腕は奇しくもアーサー王と同じく震えていた。

 

 

死を待っていた少年の口が言葉を紡ぐ。

 

「さあ、その剣を振り下ろし騎士王への忠義を果たす時でしょう?私の首を討ち取りこの戦いを終わらせるんだ。サー・モードレッド。」

 

その言葉がモードレッドの身体を動かさせる。

 

魔剣が振り下ろされる。彼の首を狙った必殺の一撃。それはモードレッドが狙っている訳ではなく、彼の掛けた魔術によるモノだと理解出来ているものは彼以外いない。

 

最後に彼は、いつか見せたぎこちない笑顔を向けてその生涯を終えた。

 

惨劇の丘に涙を流す二人の騎士の元に一人の女性が現れる。

 

その女性は魔女という言葉が最も似合うだろう。だが今の彼女はいつもの妖艶な笑みを浮かべていない。少年を見つめる魔女の顔は悲しげに歪められている。彼の頬を一度撫でた後身体を抱き上げアーサー王に向き直る。

 

「別れは済んだだろう。この子は私が連れて行く。」

 

その言葉にアーサー王としての顔を捨て、アルトリアとして言葉を発した。

 

「初めからこうなるように仕組んだのか、モルガン。貴方は彼の死後すら利用するつもりか!」

 

その発言にアーサー王を狙う魔女としてでは無く、少年の母であるモルガンとして彼女は答えた。

 

「この子の母親は私だ。残りの時間を共に過ごすのも私だ。貴様では無い。そして、今の言葉今すぐに撤回しろ。この子の体を利用するだと?」

 

モルガンは久しくアルトリアに向けていなかった殺意を溢れさせた。

 

「お前はいつもそうだな。私から全てを奪っていく。今度は私の愛した息子か?・・・ふざけるな、私には唯一人の家族すら許されないのか!全てを奪われた私に安らぎを与えてくれたのだ。この子だけは渡さん。王座もお前もどうでもいい!私はこの子が守ったこの島で死ぬと決めたのだ。」

 

アルトリアはモルガンの言葉に瞠目し固まっていた。あのモルガンがここまで言うとは思ってもいなかった。だが、それと同時にどれだけ彼を大切に思っていたのかも理解出来た。

 

「ッ!・・・分かった。先程の言葉は撤回しよう。」

 

そういうとモルガンは殺意を抑え別れを告げる。

 

「次は無い。・・・月に一度程度であればこの子に合わせてやる。他の騎士共にも伝えておけ。」

 

別れを告げたモルガンは消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはもしもの話。

 

魔女とその騎士の終わりの物語。

 

騎士の名はエクウェス。彼が自分でつけた騎士の名です。

 

彼は魔女の寂しさを、渇望を知っていました。

 

そんな魔女に寄り添い続けた騎士のお話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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