【第一章 完】ドロップアウト・ツインズ   作:Hannibal

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【前回のあらすじ】
 日曜日。パゼラは実戦テストで使うための道具を作るために、そして機嫌の悪い父親から逃げるために六郎と共に学校へ向かった。
 ロベルト先生の協力もあり、パゼラの道具制作はだいぶ進展した。
 しかしその様子を、パゼラをいじめている三人組のうちの一人であるリリアナがこっそり監視していた。
 ロベルト先生はリリアナに対して「死相が見えている」と占いを交えたアドバイスを送る。


第七話

 リリアナは空き教室にやってきた。例のあの三人組のリーダー格──トリルが机に脚を乗せていた。だらしなく胸元のボタンを開けている。

 リリアナは後ろ手でドアをゆっくりと閉める。

 

「どうだった?」

 

「やっぱり練習してたよ」

 

「どうせ無駄なのによくやるよね」

 

 軽薄な笑みを浮かべながら、トリルは机に置いてある菓子を口に放り込んだ。リリアナはそれを見て作り笑いを浮かべる。

 

「あとは対戦表の改ざんだけだけど……」

 

 勢いよく扉が開かれる。

 トリルは危うく椅子から落ちるところであった。

 

「なんだクレインか。どうだった?」

 

 トリルが空いた扉の方に目をやりながら言う。

 三人組の最後の一人──眼鏡をかけた銀髪ショートの少女だ。

 

「トリルの名前出したら一発だったよ」

 

「でしょ? 私のパパはすごいんだから」

 

 トリルは上機嫌に椅子の足を浮かせている。

 

「じゃあ例のアレ、よろしくね」

 

「はいはい、薬学だっけ? あとで上げとくよ」

 

「あー楽しみだね、パゼラ──あのクソ女を大衆の面前でボコボコにするのは」

 

 それから何かを思いついたように、ピタリと動きを止める。表情がふと真顔に戻る。

 

「それでも、付呪道具でこそこそ用意してるなんて生意気じゃない?」

 

 トリルは手繰るように、考えを掘り起こすように言葉を繋げた。

 

「それをさ……ぶっ壊したらさ……、もっと面白くない?」

 

「いやそれは」

 

 リリアナの口から思わず言葉が漏れた。刺すような二人の視線が突き刺さる。

 何もなかったかのようにリリアナは押し黙っていたが、やがて観念して彼女は改めて口を開いた。

 

「やめた方がいいんじゃない……ロベルト先生にも『遊びはほどほどにしろ』って……」

 

「はぁ? あんたはこれが遊びって言いたいわけ?」

 

 椅子からスッと立ち上がり、リリアナに一歩近づきながらトリルが詰め寄る。

 

「実戦テストの内容が将来のアピールに繋がるってことぐらいあんたにも分かるでしょ?」

 

「そ、それはそうだけど、そこまでやる必要ないでしょ……普通に勝てるんでしょ?」

 

「あんな出来損ないのドブ女に私が負けてるって言いたいわけ!?」

 

 声を荒げながら、トリルが机を叩きつける。リリアナが思わず一歩下がる。

 トリルはその距離をつめ、額がくっつくほど顔を至近距離まで近づけた。リリアナの視界は怒りで震える目に覆われ、彼女は思わず目をそらした。

 

「まあまあ、圧倒的に勝つところを見せて特待をねらうんでしょ? やるなら確実にね」

 

 クレインが口を挟む。

 その軽薄そうな言い方は二人に対して釘をさしているようだ。

 

「……そうそう、"やるなら確実に"、ね」

 

 またもや扉が勢いよく放たれ、サングラスをかけた男が入ってきた。そのまま男はトリルの肩を無遠慮に抱き寄せる。彼女はまんざらでもなさそうだ。

 

 彼の名前は氷魚山(ひおやま)。〈転生者〉であり、トリルと契約を交わしている。

 

「あーん、声ぐらい掛けてよ」

 

 先程までと打って変わったトリルの猫撫で声に、リリアナは顔をしかめた。

 

「別にいいだろ?」

 

 氷魚山はそう言うとトリルの胸をもんだ。甘い喘ぎ声が部屋の中に染み渡る。

 

「ああそうだ、クレインも今度抱いてもらったら? 転生前に仕込んだテクがすごいんだから」

 

「そう? それはすごい楽しみね」

 

 クレインは笑いを保ったままだ。

 

「ああ、俺も楽しみだ」

 

 それから氷魚山は視線をリリアナに移し、その身体をじっくりと眺めた。サングラスでも隠しきれないほどの欲望が見え隠れしている。

 

「俺としてはリリアナの方が気になってるんだがなぁ……まだ処女臭い感じがそそるんだ」

 

 リリアナは今度は顔に出すまいと、表情筋に意識を集中させた。

 

「ちょっとー、気にしてるんだからやめてあげなよ」

 

 トリルが口を挟む。その軽い言い草は明らかにリリアナのことを下に見ていた。

 

「そうなのか? 今日の夜にでも俺が……大人の階段を上がらせてやるよ」

 

「そろそろお暇しようかなぁー、二人の時間を邪魔しちゃ悪いし」

 

 いつの間にかドアの方に移動していたクレインが割って入る。リリアナに向かって一瞬だけ手を招くと、そそくさと教室を後にした。

 

 

ーーーーー

 

 

 いなくなった二人に見向きもせず、トリルと氷魚山はお互いを見つめ合っていた。その絡み合う視線は軽薄で、そしてどことなく淫らである。

 

「それで、実戦テストで俺たちが戦う相手は?」

 

「ああ、パゼラって女。別に覚える必要ないよ? どうせ学校辞めちゃうから」

 

 自然と口角が緩む。

 

「ちょ、おま、何考えてるんだよ?」

 

 トリルのその様子を見て、半ば吹き出しながら氷魚山は応えた。

 

「ほんっとうに邪魔で目障りだから消えてもらおうかと思って。あいつの持ってる武器を全部壊しちゃうの」

 

「お前本当に言ってんのかぁ? 人の心がないぜ」

 

 その軽率な口調は、トリルそのやり口に感心を示している。

 

「そう? これも優しさってやつよ」

 

 

ーーーーー

 

 

 二人の甲高い笑い声を背中で聞きながら、リリアナとクレインは廊下を歩いていた。

 

「本当、嫌になっちゃう」

 

 ため息とともにリリアナがその言葉を吐き出す。

 

「よくあんなのと付き合えるよね」

 

「それって私のこと? それともトリル?」

 

「両方」

 

 クレインの口元が不意に緩んだ。あまりのおかしさに口が勝手に動いたのだ。

 

「昔からそんな気はあったでしょ。誰とでも股を開いてたし。偶然相性のいい奴に会っちゃったってことで」

 

 クレインが続ける。

 

「私はこうなること考えてたしね。それでもメリットの方が大きいからトリルの手下してただけ」

 

 それから一呼吸置いて、クレインがリリアナの横顔を見る。

 

「まさか何も考えないでついて行ってたの?」

 

「まあ、幼馴染だし……」

 

 リリアナは心もとなくそう返すと、顔を反らし、窓の外に目をやった。

 

「あ、あの!」

 

 二人の進行方向に、小さな影が立ちふさがった。かなり小柄で、制服の意匠も異なっている。初等部の生徒である。

 

「部室……返してください!」

 

 リリアナのクレインは二人で顔を見合わせたあと、改めてその初等部の生徒に向き直った。

 

「あれだけやられたのにまだ懲りないの?」

 

 先に口を開いたのはクレインだ。手のひらで頭を押しのける。

 

「だって、あの部室はわたしたちの……」

 

「文句があるなら実力で奪ったら?」

 

 今度はリリアナが割って入る。

 少女は歯を食いしばり、両足に力を込めた。その直後、クレインが右手のひらを少女に向ける。そこから炎がほとばしり、彼女のスカートに火をつけた。

 

「え、きゃあ!」

 

 火のついたところを手で必死に払う。そうして顔を下げた少女の肩に、クレインの足が飛んでくる。

 蹴るのではなく、力を加えて押し飛ばすだけの形だ。

 少女の華奢な体がたやすく倒される。

 

 振り下ろされた足はそのままスカートの火のついた部分を踏みつぶし、火をもみ消した。

 スカートにはほんの少しの焦げ目がついただけであった。

 

「雑魚。そんなんでよく大口叩けたね。家に帰ってママのおっぱいでも吸ってれば?」

 

 初等部の少女は涙を浮かべた顔でクレインを睨みつけると、袖で顔を拭いながら階段を駆け下りていった。

 

「……あそこまでする必要あった?」

 

 まだ少し焦げ臭い廊下でリリアナがつぶやく。

 

「あのままだったらあの二人のイチャイチャ空間に突撃してたよ。氷魚山絡みで機嫌悪くしたトリルの相手とか二度とごめんだからね」

 

「まあ、それはそうだけど」

 

「しっかしスカートが燃えなくてよかったー、さすがに初等部に手を出したらトリルでも隠しきれないからね」

 

 半笑いを浮かべながらクレインが歩き出す。リリアナは、ロベルトの言葉を頭の中で反復していた。

 

「死相が見えてる……か」

 

 

ーーーーー

 

 

 リリアナとクレインは売店を目指して歩き続け、二人は本棟にたどり着いた。階段を降りたところで二人は不意に足を止める。

 視界に飛び込んできたのは、とても背の高い男──六郎だ。

 

 彼女たちの認識では、パゼラと一緒にいた男。彼は初めて会った時、三人に対して無関心を貫いていた。ここはひとつ、自分の立場をわからせなければならない。

 

「どうする? シメておく?」

 

「そうだね」

 

 そんなごく短いやりとりを一瞬で終えると、早歩きで六郎の方へ向かった。

 しかし第一歩を踏み出した瞬間、二人の動きはピタリと停止した。

 

「あら、あなたは……」

 

 六郎に声をかける人物がいる。ルビアだ。

 

「こんなところで会うとは奇遇ですわね、何をしていらしたの?」

 

「連れを待っていたんだ。図書室に籠っていようかと思ったんだが、俺の読める文字の本はなかった」

 

「あらあら……」

 

 周囲に人はたくさん集まり、いつの間にか人だかりができていた。

 

「ルビアさんだ」「あの男は誰?」

 

 そんな状況も意に介さず、ルビアは口を開いた。

 

「そうだ、昨日街中であなたを見かけましたよ」

 

 今までのたおやかな声とはうって変わり、毅然としたものになる。

 

「ネクラマ・ノワールと一緒にいましたね、何かあったのですか?」

 

「別に、食事に誘われただけだ」

 

 うーんと少し唸ってから、ルビアは再び口を開いた。

 

「彼女の周りでは常に黒い噂が絶えません。黒魔術の研究を寮で行っていて、中にははぐれ〈転生者〉を人体実験に使っているとかいないとか……」

 

 六郎が口を挟む間もなく彼女は続ける。

 

「親はあの『片腕の魔女』ですよ? とにかく……危険です」

 

「『片腕の魔女』って?」

 

「ほとんどの主要都市で指名手配されている方ですよ」

 

 後ろから声がかかる。六郎が振り向いた先にいたのは緑髪糸目の男性、ロベルトだ。

 

「やれやれ、人だかりができていると思えば真昼間の、それも廊下のど真ん中で陰口ですか」

 

「い、いえ、私は彼がネクラマと一緒にいるところを見かけて、心配で……」

 

 ルビアが赤面しながら顔を伏せる。

 ロベルトの方はと言うと、相変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「実際にその人を理解する前から偏見を持ってはいけませんよ。貴方の癖の一つでもあります」

 

 それから彼は六郎の方を向き直った。

 

「それで、貴方は……」

 

「異守 六郎、〈転生者〉だ」

 

「ふむふむなるほど」

 

 ロベルトはそう言いながら六郎から視線を外し、人だかりをさらりと一瞥する。

 その直後、人込みから離れる二つの人影があった。

 

 

ーーーーー

 

 

「目が合った」

 

 クレインの手を引きながら人込みから離れるリリアナがそう言う。

 

「だからって逃げ出すのは悪手じゃない?」

 

「そうかも、だけどどうしろっての?」

 

 階段を駆け上り、別の階の廊下に出たところでクレインが手を振りほどいた。

 

「思慮浅いあんたの負けってこと」

 

 クレインが薄ら笑いを浮かべ、リリアナは舌打ちをした。

 

 

ーーーーー

 

 

 視点を戻し、廊下で会話する六郎とロベルトの場面──

 

「……そういうことですか。貴方は渦中にいるようだ」

 

 心なしかロベルトの顔は、普段よりも少し口元が緩んでいるように見える。

 

「そうですね、占いの観点から、一つアドバイスをするなら……」

 

 六郎の顔をじろじろと眺めながらロベルトは続ける。

 

「これ以上落ちるかどうかは貴方次第、ですね」

 

 その言葉を聞いて、六郎はあからさまに顔をしかめた。

 これ以上、どこに落ちるというのか。

 彼は心のなかでそう思った。

 

「……覚えておく」

 

 それから六郎はとぼとぼと歩き始めた。

 

「どこに行きますの?」

 

「連れの様子を見てくる」

 

 姿が見えなくなったところでルビアが声を出す。

 

「あっ……また名前を聞くのを忘れてしまいましたわ」

 

 それから少しの間が訪れる。

 周りにあった人込みはいつの間にかなくなっていた。

 

「しかし──」

 

 去った人々を探すようにロベルトは周囲を見回す。

 

「どうにも私は生徒から避けられている気がします。元暗殺者はやはり世間体があまりよろしくないのでしょうか?」

 

「さあ……? でも、人の顔をみて勝手に占うのはあまりよろしくないのでは?」

 

 

ーーーーー

 

 

 六郎は道行く生徒に道を聞き、工房棟にたどり着いた。

 かすかに物音が聞こえている。

 

 彼が工房棟の中に入っていくと、そこにはせわしなく作業するパゼラの背中があった。

 すでに日は暮れかかっているが、明かりもつけずに作業を続けている。人の気配に感づいた彼女が素早く振り返る。

 

「なんだ、六郎か」

 

 安堵のため息交じりにそう呟く。パゼラの顔や髪の毛、それに服は緑色の粉や土でとても汚れていた。

 

 机の上には大量のメモ書きが置かれている。

 比率を逐一メモして手当たり次第に試し、失敗したものには二重線を引いていたのだ。

 

 六郎はそれをまじまじと見つめてから、訝しむパゼラの目と合った。

 

「……ジロジロみて、どうしたの?」

 

「いや、殴られるかと思ったんだが」

 

 予想外の言葉にパゼラは一旦静止し、少し考えて、それから微笑を浮かべた。

 

「ああ、そういうことね」

 

 大量のメモ書きを見て、実験にうまくいっていないパゼラが苛立っているのではないかと六郎は考えたのだ。

 しかしそうではなかった。それを指摘された彼女も不思議な気分だった。

 

「……わたしみたいなクズでも、案外いいところあるのかもね」

 

「え?」

 

「だからさ、その、こうやって勉強に打ち込めるってのは……長所じゃない?」

 

 彼女は自信なさげにそう呟いた。

 

「そうだな」

 

 二人がそんなやり取りをしている内、チャイムが鳴った。

 

「もう少しだけ作業してるけど、先に帰ってもいいよ。この時間なら……もう、帰っても大丈夫だろうから」

 

 

ーーーーー

 

 

 六郎は一足先に帰ることにした。学校とパゼラの家の行き来も、もう慣れたものだった。

 

 大通りを左に曲がると、みすぼらしい木製の家々が見えてくる。都市を囲う壁の外側にへばりつくように存在しているこの集落は、「壁外町」と呼ばれ、主に肉体労働者や汚れ仕事を生業とする者が住み着いている。

 

 隙間だらけの家屋からよそ者を監視する視線を受けながら、六郎はパゼラの家に前までやってきた。

 そんな軒先には、一人の男が立っていた。

 

「なんだおめぇか……。まあいい、ちょっと付き合え」

 

 パゼラの予想は外れていた。

 

 

ーーーーー

 

 

「まあそうビビるなって。今日は誰かと飲みたい気分なんだ」

 

 六郎が一階のリビングに足を踏み入れたのは初めてだった。

 

 流しには使ってから数日は立っているであろう食器が放置され、部屋のいたるところに空の酒瓶が積み上げられている。

 

 そして恐る恐る椅子に腰掛けた彼に投げかけられた言葉は、意外なものだった。

 

「大変だろ? アイツの側にいるのは」

 

「まあ……」

 

 同意するわけではないが、しかし核心を突いた言葉に思わず苦笑が漏れる。

 

「なんせ癇癪持ちだからな、俺も黙らせるのに手を焼いたもんだぜ」

 

 そんな六郎の表情には目もくれず、一人でそう言って笑うと酒瓶を呷った。

 

「それからもう一つ聞きたいんだがよ、ガッコーってのはどういう所なんだ?」

 

 酒臭い息を撒き散らしながら、六郎の顔を覗きながら言う。

 彼は言葉に詰まった。どこから話したらこの男に通じるものだろうか。

 

「……世の中で役に立つことを大人たちが教える場所」

 

「いまいちピンとこねぇな、俺がガキの頃は数が数えられりゃ働かされてたもんだ」

 

 そう言って酒瓶を呷る。

 

「全くよぉ、昔の俺は冒険者として大成功してたんだ。そりゃあ毎日宴会を開いたって使いきれねぇぐらいの金を稼いでた」

 

 向かいで全く酒には手を付けない六郎には目もくれず、さらにまくしたてる。

 

「それが今じゃ毎日ゴミみてぇな給料で働きながらこんな安酒を毎晩飲むだけの生活!」

 

 突如込みあがった怒りを鎮めるため、男は空の酒瓶を無造作に放り投げた。それは壁にぶつかり、鋭い音を立ててバラバラになった。

 

「『片腕の魔女』の呪いのせいで俺は武器を持てなくなっちまった!」

 

 唐突に椅子から立ち上がると、六郎に歩み寄り拳を振るった。

 パゼラと動きは似ているが、しかしそれとは比べ物にならないほどの強い衝撃が六郎の脳をゆする。椅子から転げ落ちる六郎をよそに、顔を真っ赤にしたパゼラの父は両腕を広げて叫ぶ。

 

「だが俺には商才がある! 長かったがもう少しだ。わざわざパゼラを十三年間育てた甲斐があった! あと数年もすればあいつをガンガン働かせて今よりいい生活にありつけるんだ!」

 

 それから酒瓶を一本まるまる飲み干すと、まるで気絶したかのように眠りこけてしまった。

 

 六郎は起き上がると、倒れたままのパゼラの父を横目に屋根裏部屋に向かった。

 しばらくするとパゼラが帰ってきた。

 

六郎は彼女に何か言おうと思ったが、しかし何を言っても殴られる予感がしたので、黙ったままだった。

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