九尾の狐とヤンデレという概念   作:ぽぽろ

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本当は9話まで伸ばしたかったけど出来なかった。


最終尾

丁度曲がり角で、彼女は「これ以上変な物連れてこないでよ」と言って少し怒り気味に言って別れた。

そして僕は一人、帰路を辿る。

 

「すぐに約束を破りおったな?」

 

僕に後ろに重みを感じた。そして耳元でしゃべられてくすぐったかった。

その様子を見て、ペロリと舌を出し僕の頬を舐めた。

何だか彼女からは懐かしい匂いがした。

 

後ろを向くとそこには九尾がいた。

 

「普通こういうものはあの社から出てこれなれない物だと思うんだけれど」

「別に妾があそこに封印されているものでも無い、ただ力が弱まる為だけの玩具に過ぎない。ただあの灯篭は妾と旦那様を繋ぐ為の運命の赤い糸みたいなもんじゃ」

 

僕は逃げたかったけれど、彼女の九本の尻尾が蔦が木に絡みつくようになっていて、身動き一つ取れなかった。

 

僕が抵抗を諦めたのを彼女は察すると、巫女を模した服の胸元から見せつけるように大麻(おおぬさ)を取り出した。

それを軽く一振すると、次の瞬間あの社にいた。

 

九尾は目をゆっくりと慣らすように開けると尻尾を巻き付けたまま僕を引きづるように社に入っていった。此処に戻るのは二日ぶりで、何も変わってなかった。相変わらず油揚げもあった。

 

「まず話を主から聞こうかの、約束を破った事について。たーんとな」

 

###

 

中央に置かれていた質素な木のテーブルに座ると、九尾は僕のすぐ隣、肩と肩がくっつくくらい近くに座った。

 

「近いと思うんだけど」

「夫婦であるから何もおかしい所はあるまい。もしかして主は案外初心なのか?可愛い所もあるもんじゃ」

 

九尾はカッカッカッと大きく笑った。

僕は訂正するのも面倒だったから流した。

 

「さてとまずは話を聞こう」

「僕は学校という社会にいる。君には分からないかもしれないけれどそこには人との交流が必要なんだ。君たちみたいに一人で生きていく強さはないからね」

「人間は脆い、それはわかる。しかし女子というのが気に食わん。」

「僕の友達が彼女しか居ないだけだよ。特に彼女との間に特別な事は何も無い。彼女もきっとそう思っているはずだよ」

「本当に奴はお主を友達と思っているのか?」

「多分そうだと思う」

 

九尾は呆れた顔をした。

 

「人の心に大分主は疎いな」

「妖怪に人の心は語って欲しくないけれどね」

「同じ女子通し通じ合えるものはあるという事よ」

「同じ人間ならね」

 

僕はテーブルに置かれていたお茶を一口飲んだ。

そして、ふと思う。何故僕は妖怪に人の心を説かれないと行けないんだろう。

 

「まあ、そこは流すとしよう。疎い方が妾は好都合じゃ、あと一つ、先程主は人との交流が必要と言ったが何故主は奴とだけしか交流しないんじゃ」

「僕はそういうのがあまり得意じゃないだけなんだ。別にクラスの人とも話すけれど必要な事以外はあまり話さない。彼女とは趣味も合うし何より気を張らなくていいんだ」

「それは好きな人とは何か違うのか」

 

じっと僕の目を見据えながら九尾は言った。

 

「彼女は友達で大切な人だけどそこには好意が互いに含まれていない。この先もしかしたら好きになるかもしれないけれど現時点ではノーだ。」

「成程、奴はただの片思いという訳か、実に愉快」

 

僕は九尾が言うことに疑問はあったが、きっと禄なことにならない。僕は勘の様な物を感じた。

 

「僕からも質問がいいかな」

「勿論受け付けよう。」

「何故僕なんだ、僕より性格が優れてる人は沢山いる。きっと灯篭を直そうとした人は他にもいる気がするんだ。」

「いい質問じゃな、確かに灯篭を親切心で直す奴もいた。しかし彼らには足りていないものがあった。」

 

九尾はピンとまるで分度器で測ったかのように真っ直ぐに立てた。

 

「想像力じゃ」

「想像力?」

 

僕は自分で咀嚼する様にそのまま言った。

そんなものが気に入られる条件に結びつくとは思わない。何なら僕は乏しい方だと思う。

 

「そんな物は主にはないと言いたげな目じゃな」

 

九尾は僕の心臓を突き刺す様な鋭い目で見た。

 

「妾が見えている事が想像力豊かな証左よ」

 

彼女は自分自身を指さしコチラを馬鹿にする様な吐息を乗せて小さく笑った。

それは静かな部屋に良く響き、僕は音が反響していく様子をじっと耳を済ませて聞いていた。

 

「そうでも無いと一般的な常識を超える妾を見ることとは到底思えん。」

「想像力が豊かである事が君が見える条件になっているってこと?」

「そうじゃな、自分を信じしっかり見つめて、内なる声を耳を済ませる。素晴らしい事じゃ」

 

確かに彼女の言う通り九尾というのは常識を超えるとてつもない力を持っている。

本曰く、全知全能とも言える知識、姿を変えることの出来る妖術、人の懐に入り込む術など持ち合わせている。彼女達の力に追いつく為には必要とでも言うのだろうか

 

「自分が見えない奴には他の人間は見れんし、他の人間が見れんものには自分は見れん。他人は自分であり、自分は他人じゃ」

 

九尾はゆっくりと区切るように言った。まるで石碑に掘られた文字を読むみたいに。

 

「まあ、そんな事はどうでも良い、腹は減ってないか」

「少し空いた。色々やる事かあって昼をあまり食べられていないんだ」

「妾が美味いいなり寿司でも作ってやろう」

 

そう言って九尾はどこかへ襖を開け行った。

キッチンでもあるのだろうか。僕は帰ろうと試みて色々と開けて見たが、空間が歪められた様に同じ場所へ着いた。

 

どうやら本格的に彼女は僕を出すつもりがないようだ。

 

暫くすると皿に五つほどいなり寿司が載せられて出てきた。

 

「遠慮なく食べるといい」

「折角だし頂くよ」

 

僕は一個手に取り、半分程齧った。

酢飯の酢は丁度良かったし、油揚げ自体の味付けも絶妙で本当に美味しいいなり寿司だった。

 

「食べた、食べたのぉ!」

 

実に嬉しそうに九尾は笑った。まるで悪戯の成功した子供みたいに。

 

すると僕は果てしのない気持ち悪さを感じた。僕は脳みそが掻き回されているかの様な気持ち悪さだった。

しばらくするとその気持ち悪さにも慣れ、世界をしっかりと認識する事が出来た。

 

「天秤が今こちらに傾いた、きっと今にも面白い事が起こるじゃろう。外でも行ってみるが良い」

 

僕は言われるがまま外に出てみた。出た瞬間陽の光がいつもより強く眩しく感じた。

別に大して変わりはない。自分の身体も変わってないし、特別なパワーに目覚めたわけでもなさそうだ。

 

「特に変わりは無い」

 

と僕は言った。外に向かって宣言をするみたいに。

 

「本当か?良く見てみるといい」

 

九尾に言われるがままに僕は周りを見渡してみる。

すると僕はある違和感を感じた。

この古びた社にある植物の成長が異様に早い。

僕が目をつぶり、開けた瞬間に背丈は倍以上になり、花が咲き、枯れた。

 

「気づいたか、時間の速さに」

 

僕が瞬きすると弾き出されるように一日が終わっていた。

僕がため息を着くと吹き飛ばされるように一年が終わっていた。

僕が一日が終わったと感じていたら十年過ぎていた。

 

「どうじゃ、こちら側に来た気持ちは」

「これは……?」

「何、人間の寿命は短い。なのでちっとこっちのものを食わせて慣れされて妾と一緒になっただけじゃ。」

 

九尾は嬉しそうに笑いながら、僕の事を見つめていた。




九尾っていいよね!ってお話でした。
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