Bang Dream! ~時空の叫びと星の鼓動~   作:ライノア

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二章、突入です。


チャプター2:文化祭での戦い
第六話:バンド命名 前編


NO SIDE

 

一年前の山吹ベーカリー。

鳥ポケモンの(さえず)りが奏でる朝日が照らす中、父・亘史(こうし)は店主として商品の整理を。

母・千紘は次女の沙南と長男の純に朝食を食べさせながら食器を洗っている。

 

沙綾「行ってきまーす!」

千紘「沙綾。今日も遅くなるの?」

沙綾「うん、練習」 

 

長女である沙綾が外(ぐつ)()き、千紘の呼び掛けに応答する。

 

沙綾「行ってきまーす!行くよ、バシャーモ!」

バシャーモ「バシャッ!」

「「行ってらっしゃーい!」」

 

相棒のバシャーモを含め、背中を見送る様に沙南と純は最愛の姉を送り出す。

沙綾はChispaのドラム担当として、夏希を含めた仲間達三人と練習に励んでいた。

学校帰りにお揃いのシュシュを買いに行ったり、ポケモンバトルでの戦法を考案したりしていた。

彼女はバンドとポケモンバトルを文武両道に愛し、楽しんでいる。『ファーストライブまで、あと二週間』、計画は順調に進行中だ。

今日も朝早く起きた沙綾は、焼き上がったパンをトングで陳列(ちんれつ)台に並べていく。

 

千紘「沙綾。変わるよ」

沙綾「もう終わるから大丈夫...よし!これくらいでいいかな?純達起こしてくるから、母さんはちょっと休憩!」

千紘「はいはい。いつもありがとね、沙綾」

 

千紘が気遣う前に朝のルーテインを終えた沙綾が弟妹達を起こしに二階へと上がった。

この時、当時の彼女は知らなかった。初ライブ当日に悲劇が降り掛かるという事を————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OP『Busy/Be Somewhere』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RIO SIDE

 

ゆりとのポケモンバトルグランプリが終結してから約一週間が経過した。

今日は全校生徒による学年集会が行われるそうだ。噂によると転校生が五人も来るのだとか。

俺以外の女子生徒達は転校生の理想の姿を語っている。イケメンとか優しいとか、そんな生緩い思考をしていた時点でそいつはこの世に甘えている証拠だ。

何やら校長は、今回のポケモンバトルグランプリの優勝者として俺を(たた)えたいとのことだった。

対戦相手だったゆりも同じく舞台に上がっており、諦めずに最後まで戦い抜いたことを賞状として受け取った。

俺は拍手の雨を浴びながら着席すると、隣に座っていた香澄が小声で話し掛ける。

 

香澄「此間(こないだ)のバトル、凄かったねりーくん!」

理央「ああ。次は転校生の紹介らしいが、一体誰なんだろうな...?」

 

校長「それでは、これから皆さんに転校生を紹介します」

 

校長の掛け声で舞台裏から転校生が姿を見せる。

左から一番目は中性的な顔をしている黄色いナチュラルなマッシュショートヘアーに茶色い瞳を持つ少年。

肩に乗っているポケモンは圧倒的知名度を誇るネズミポケモン。その姿を見た女子生徒達の黄色い声が上がった。

円錐(えんすい)の様な形状の長い耳の先端は黒く、チャームポイントである稲妻型の尻尾の付け根はギザギザで茶色い。

赤くて丸い両頬(りょうほお)もまた、チャームポイントの一つだ。

 

理央「''ピカチュウ''...!」

 

ネズミポケモン''ピカチュウ''を見た俺は懐かしさに(あふ)れていた。

その姿はかつてポケモンだった俺と共に星の停止を食い止め、ダークライの野望を阻止した相棒————ピカと同じ姿だからだ。

 

理央「...!」

香澄「りーくん、ピカチュウだよ!テレビでしか見たことなかったけど、初めて見る本物だよ!?...りーくん?」

理央「...いや、何でもない。ピカチュウか。俺にとってはとても懐かしいポケモンだ」

 

敢えて冷静に誤魔化(ごまか)した俺は、ロトムパットを取り出してピカチュウの図鑑説明文が読み上がる。

 

『ピカチュウ ネズミポケモン 電気タイプ ピチューが十分に懐いた状態で進化した姿 ()っぺたの電気袋から電気をビリビリ出している時は相手を警戒している合図。無闇に尻尾を掴まれることを嫌い、無闇に引っ張る者には噛み付くこともあるという』

???「僕は光、弦巻光(つるまきひかる)...皆さん、これからどうぞ宜しくお願いします」

???「ひかるー!学校はとーっても楽しいところよ!何か困ったことがあったら、姉であるあたしが教えてあげるわ!」

光「こ、こころ。それは大丈夫だから...でも、どうしても分からないことがあったら教えてね!」

こころ「ええ。勿論よ!」

 

お辞儀をした黄色い少年こと光に、姉と思わしき少女が笑顔が溢れるはきはきした声でポジティブなアドバイスをする。

どうやらゆりが前に言っていた『時空財閥』と友好関係を持つと噂されている『弦巻財閥』の姉弟らしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

担任「それでは、今日からこのクラスに新しく弦巻光君が入ります。皆、仲良くしてあげてね」

『はーい!』

光「(よろ)しくお願いします」

 

それから(しばら)く経って、光が俺のクラスに入ることとなった。

(ちな)みに残りの四人は事情があって、欠席となっている。

転校生が席に座るといよいよ本題に入り、A組の文化祭実行委員は香澄がやることとなった。

 

香澄「実行委員になりました、戸山香澄です。文化祭イェーイ!」

『イェーイ!!』

 

クラスメイト達の拍手を、香澄が(いさ)める。

 

理央「...それで香澄。出し物は何をやるんだ?」

香澄「ふっふっふ〜、よくぞ聞いてくれたりーくん。出し物はキラっとして、シュッとしてて、可愛いのがいい!」

クラスメイトA「へぇ〜?」

クラスメイトB「擬音だけじゃ分かんないよー」

クラスメイトC「戸山さん。出し物を決める前に肝心な福委員を決めないと」

香澄「ふえっ?あ、そっか。ええっと...」

 

クラスメイトに指摘された香澄は誰を副委員長に決めるべく、クラス内を見渡す。

いやぁ、この日を待ち()びていた甲斐(かい)があったなぁ...!

 

理央(勿論、俺だよな?バカな姉ほど(かしこ)い弟は憑物(つきもの)。此処は義弟(ぎてい)である俺を...!)

 

陽気な姉を支えてやろうと、俺は自分が選ばれることを願いながら手を組んで祈った。

だが、そんな愚かな願いは呆気なく(ちり)と化してしまった。

 

香澄「あ、さーや!」

沙綾「えっ...?」

香澄「さーや!さーや!さーや!」

理央(香澄ぃぃぃぃっ!!其処は俺だろうがあああああァァァァッ!!!!)

 

俺は頭を抱えながら、心の声を()らさずして叫んだ。

 

沙綾「えっ?いや、私は...」

女子生徒D「まぁ、沙綾だよね」

女子生徒E「香澄を何とか出来るのは沙綾しかいない!」

 

その言葉を聞いたクラスメイト達は談笑する。

 

沙綾「...分かった。いいよ」

香澄「いやったぁ〜!」

 

再びクラスメイト達の拍手が教室内に木霊(こだま)する。時間が昼頃になり、香澄達は昼食の弁当を堪能していた。

俺は香澄に選ばれなかったことでやけくそになりながら、自分用のポケモンフーズをデザート代わりにバリバリと食った。

 

理央「どうも納得がいかねぇ!どうせやるなら義姉弟でやるべきだろーが...!!」

???『香澄と明日香を心から愛してる気持ちは理解出来(でき)ないわけでもない。どうせ副委員になりたいなら、来年に持ち越せばいい』

 

俺の肩に手を置きながら、俺の手持ちの一体が(なだ)めてきた。

頭上に炎を(いただ)く白い体毛を(おお)った猫背気味の猿ポケモン。肩・胸・手甲・(ひざ)には金色の装甲のような器官を備えている。

猛火ポケモン『ゴウカザル』のサルヒコ。こいつはオガシマタウンで俺が小2の時に特別支援学級に新入した際に貰ったシンオウ御三家の一体だ。

 

理央「お前は言うけどよサルヒコ。仮にバンド名が決まって、香澄が正式的にバンドのリーダーになった時は俺が皆を支えてやらないといけないんだぞ?」

サルヒコ『その時はその時だ。(たま)には俺もバトルに出させてくれよ?リザストやアロウも『トレーニングばかりで飽き足りない』って言ってたしな』

理央「バトル?...それだ!!」

 

トレーニングばかりでバトルをしていない仲間を気(づか)うサルヒコ。

あの二匹にもまだ出番を出していなかったな。流石に(しゃく)(さわ)られるのは何とか避けたい。

その考えに着想した俺が立ち上がって声を上げる。

突然な大声で片耳を塞ぎ、目を少し丸くしていたサルヒコは直ぐに冷静さを戻しつつ問い掛けてきた。

 

サルヒコ『...少し声を小さくしろ。耳が割れたらどうすんだ』

理央「あ、悪い。つい興奮しちまって...」

サルヒコ『謝ればいいんだ。それで、何か思いついたのか?』

理央「ああ。副委員になれなくても、俺が花咲川でポケモンバトルを開催する!ルールは6vs6のフルバトル。メガシンカもZワザもダイマックスもテラスタルも全部使っていい!そんなバトルを一度はやってみたいけど...やっぱ無理があるよな」

光「まぁ、文化祭に来てる人に危害が加わってしまえば僕でも保証は出来ないけどね」

 

サルヒコの言葉を代弁する様に、背後から転校生である光が俺の背後に立っていた。

 

香澄「うわぁっ!?何だ光君か。吃驚(びっくり)したぁ...!」

有咲「こいつ、いつの間に理央の後ろに...!?」

たえ「まるで電光石火」

光「...あ、いきなり(おど)かして御免ね。僕もちゃんと君達にも挨拶(あいさつ)したかったから。改めて自己紹介、僕は光。弦巻 光...僕の実家の弦巻財閥についてはもう知ってると思うから、(はぶ)かせてもらうね。これから宜しく」

理央「ああ、そっちもな。...!」

 

俺は光と握手をした瞬間、時空の叫びが目眩(めまい)を略して発動する。

視えたのは未来の光景。俺がルカ、光がピカチュウを出して戦っていた。

 

理央『行くぞルカ!光星(こうせい)...波動弾ッ!!!!』

光『七色に(いろど)稲光(いなびかり)。ピカチュウ、1000万ボルトォォォォーーーーーッ!!!!』

 

それぞれの必殺の一撃がぶつかり合ったところで光景は途絶える。

 

光「...どうかしたの?」

理央「いいや、何でもない。少し視界がグラッとした様な気がしたんだが、気のせいだ」

光「...目眩、か。やっぱり君は————」

 

光が何かを言おうとした刹那(せつな)、背後から声が飛び()う。

声の正体は光の姉である弦巻こころ本人であった。

 

???「光ー!一緒に食べましょ!」

光「うん、今行くよ。それじゃ''リオ''、また今度!」

サルヒコ『何だか不思議な野郎だったな。理央のことを前から知っていた様にも聞こえたが...』

理央「一応、寿と同様に様子見って感じだな」

 

姉であるこころに呼ばれた光の背中を、俺は静かに見届けた。

あの光景は恐らく、文化祭が終わった後の出来事だな。何やら楽しそうな雰囲気を(もよお)していたが...。

その事を(しばら)黙考(もっこう)していたら、副委員に選ばれた沙綾に対する嫉妬(しっと)心はとっくに消えていた。

それに光の声を聞いていると、何気に懐かしい感じがする。気のせいだろうか...?

そういや、このバンドメンバーの中では有咲だけB組だったな。文化祭の内容は一応聞いておかないとな。

 

理央「話を戻すが有咲、お前の方は何やるんだ?」

有咲「さぁ?興味ない。つーか...マメパト五羽(ごわ)もいるんだけどおい!?」

 

花園がこまめに千切った山吹ベーカリーのパンで、五羽の小鳩(こばと)ポケモン マメパトに(えさ)やりをしていた。

突然たる予想外な出来事に有咲も突っ込まざるを得なかった。

 

りみ「沙綾ちゃんのパン美味しいから...」

有咲「落ちてんじゃねーかそれ!!」

 

りみと有咲のやり取りに、山吹は苦笑する。

 

香澄「文化祭興味ないの!?絶対楽しいのに信じらんない!」

有咲「うるっせー、興味ねぇもんはねぇ!大体準備とか面倒くせーだろ?ねぇ?」

沙綾「えっ?そんなことは————」

香澄「絶対楽しいよ〜!」

有咲「楽しくねー!!」

 

場の空気を和ませるべく、不意に花園のギターの音色が静かに反響する。

 

香澄「...何の曲?」

たえ「朝、お風呂で考えたの」

香澄「おたえが作ったの?凄い!それ文化祭でやろうよ!すっごくドキドキした!」

たえ「あ、有難(ありがと)う。でも、まだこれだけしか————」

香澄「私も何かやるから、曲作るの手伝うよ!」

有咲「何かって...」

りみ「作詞とか?」

 

作詞を担当したい香澄だったが、擬音だらけを恐れていた有咲に「自分で書け」と返される始末。

花園も曲名を『レッツゴー!四人組』にしていたが、それもダサすぎたので却下された。

 

りみ「バンド名も考えなくちゃだよね」

香澄「そうだった!ええ、どうしよう...」

理央「時間はたんまりあるんだ。気長に考えないとな」

沙綾「そうだね。一つ一つやってかないと」

香澄「うん。ありがとりーくん、さーや!私、頑張るよ!」

 

俺と山吹のアドバイスでやる気を出した香澄。

一方で、サルヒコが山吹のバシャーモと目を合わせながら少し気に掛けていたことを知る(よし)もなかった。

 

サルヒコ(あのバシャーモ、さっきから俺の方を見ていやがる...力はそれなりに感じちゃいないが、まるで本来の力を無理やり抑えている様にも感じ取れる。事情を聞きたいところだが、今はその時を待つしかないな)

バシャーモ『......』

 

 

 

 




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