Bang Dream! ~時空の叫びと星の鼓動~   作:ライノア

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六話 中編、どうぞ。


第六話:バンド命名 中編

NO SIDE

 

七菜「それでは、一回目の会議を終了します」

 

七菜達生徒会を含めた一回目の文化祭の会議が閉会する。

一人一人が生徒会室を後にする中、香澄だけが机で突っ伏す。

文化祭会議に必要な物が記載されている書類は、腕が上に置かれていた影響で少し(しわ)が出来ていた。

 

沙綾「企画書、企画団体シート、模擬店総括ノート。こっちはステージ関係の申請書に機材貸し出しの申請書...」

香澄「ドキドキしないプリントがいっぱい...」

沙綾「ホントに大丈夫?」

香澄「大丈夫。頑張って描く!」

 

香澄が突っ伏していた理由は、書類に記載されていた内容にある。

体育館のステージでバンドをする事は決まってはいるが、企画関連は初心者である香澄にとって面倒事は苦手であると愚痴を(こぼ)したのだ。

 

沙綾「...こら!」

香澄「うへぁっ!?難しいよぉ〜!!」

 

沙綾の声掛けでやる気になった香澄だったが、緊張感が解けていたのを注意される。

理由は申請書の右側にニャースを描いていたからだ。

暇潰しとはいえ、ただ絵を描いただけでは言い訳にはならない。

その様子を見ていた沙綾は少しだけ笑みを浮かべると、香澄は(うつむ)いた顔を上げる。

 

沙綾「御免。何か弟達の宿題を見てる時みたいだなって。家の手伝いもあるから遅くまでは出来ないけど、私も頑張るから」

 

沙綾の実家はパン屋だが、家庭内の事情で夜更(よふ)かし程度の援助は出来ない。

だが、同じ釜の''パン''を食べた者同士ならばまた話は別だ。

 

香澄「さーや...!」

沙綾「出来ないことを可愛いって言うし」

香澄「酷い〜!」

バシャーモ『......?』

 

窓の隙間から様子を(うかが)っていたバシャーモは、密かに香澄を見ていた。

沙綾は確かに面倒見は良いが、心の底から笑っていなかった。

それはあの悲劇(・・・・)があったからだ。''あの悲劇がなければ、俺は今でもバトルを続けられていただろうか?''

自分への不甲斐(ふがい)なさを悔やまんばかりに右拳(うけん)を握る中、小刻む何かが左脚に感触を覚える。

 

バシャーモ『......?』

ヒトカゲ『あ、やっと気付いた。えへへ』

 

香澄のヒトカゲだ。興味本位で手を叩く様子はまるで子供の様であった。

互いの視線が合うと、ヒトカゲは混じり気のない笑顔を見せる。

 

バシャーモ『...何だ?お前に構っている暇はないぞ』

ヒトカゲ『別にそういう訳じゃないよ。君がすごい無口だったから、こうすれば気付くかなって』

バシャーモ『...そうか、誰かによく似ている(・・・・・・・・・)な』

沙綾「バシャーモ。そろそろ行くよー!」

 

沙綾に呼ばれたバシャーモは、去り際に意味深な言葉を残して直ぐにその背中を追った。

 

沙綾「それじゃあね」

香澄「うん。あ、さーや!」

沙綾「え、ちょおっ...!?」

 

時間はとっくに17時を過ぎており、空は夕暮れ時の橙色(だいだいいろ)に染まっていた。

校門を出た二人はそのまま帰路へ向かおうとした沙綾は、香澄に抱き付かれる。

 

香澄「ありがと!」

沙綾「...じゃあ、明日」

香澄「うんっ!」

 

突然感謝の気持ちを伝えられ、沙綾の気持ちは少し(なご)やかになる程に口を緩めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RIO SIDE

 

香澄「1-Aカフェ、オーナーの戸山香澄です。イェーイ!」

理央以外『イェーイ!』

 

翌日、縦文字で『一日店長』と書かれた(たすき)を掛けた香澄が腕を(かか)げて宣言する。

後ろ側の黒板には白チョークで作戦会議と書かれていた。

小刻みに鳴る拍手を(なだ)めると、香澄は早速本題に入る。

 

香澄「コンセプトはキラッ、シュって可愛くて、クイッ、ターンって感じ!」

 

オノマトペな内容にクラスメイト達は首を(かし)げるが、副委員である山吹が『オシャレ、スタイリッシュ、可愛い、落ち着いた感じ』と書き換える。

俺を除いたクラスメイト達は早速、何の店をやるかを話し合う。

 

クラスメイトA「メイド喫茶(きっさ)はどう?」

クラスメイトB「先輩のクラスでやるらしいよ?」

クラスメイトC「男装執事喫茶!」

クラスメイトD「ヤバい、絶対似合う!」

 

ざわつくクラスメイト達の意見を、山吹が聞き逃さずに黒板に書いていく。

 

クラスメイトE「普通にエプロン作っても可愛くない?」

香澄「可愛いエプロン...意義なーし!」

クラスメイトF「アクセで個性出すとか?」

香澄「意義なし、意義なーし!」

沙綾「んじゃあ、衣装はそんな感じで。食べ物はどうする?」

 

今度は食物関連が出て来た。

だが、俺は無意識に元ポケモンとしての本能を曝け出してしまい、さらっと離席した上で挙手(きょしゅ)してしまう。

 

理央「木の実盛り沢山!!」

理央以外のクラスメイト『えっ...?』

 

この時、A組の空気が一瞬にして止まった。

俺は戸惑ってしまい、冷静さを保ちながら目を泳がせて必死に言い訳を考える。

 

理央「ああ、ほら!あれだよ。木の実を沢山(たくさん)持って来て、特製木の実ドリンクを作るとか...駄目、かな?」

 

俺の言い訳には、ポケモンだった頃の思い出が含まれていた。

『パッチールのカフェ』。俺がポケモンだった頃に訪れた水飲み場の左下に存在する施設で、その一つがドリンクスタントだ。

林檎やグミといった食料を渡すとドリンクが作られ、飲むと食った食料よりも良い効果が出るとされている。

特にグミだった場合はステータスの何かが上昇するドーピング性能付き。

(まれ)に当たりが出れば新しいダンジョンに行けたり、偶々(たまたま)来た客が仲間になったり、タマゴをくれることもある。

そういや、ピカが『新しいダンジョンに行きたい』って駄々を()ねて、只管(ひたすら)飲みまくったのが一番の思い出だったな。あの頃が懐かしく思うよ。

一瞬の戸惑いも忘れてポケモン時代の思い出に浸っていると、光が俺の意見に賛同する。

 

光「木の実を使ったドリンクか、悪くないね。木の実の方は僕が手配しておくよ」

???「理央さんのアイデアは独特ながらも凄いです。まさにブシドー!」

???「うん。はぐみも、りーくんのアイデアが凄く良い感じだって思ってたところだよ!」

リオ「そ、そうか?有難(ありがと)な。はぐ、若宮...光まで済まないな」

光「僕はいいよ。それに、木の実を使ったドリンクを提案するなんて、クラスでは滅多にないことだよ」

沙綾「結構斬新なアイデアを出すね。他に何かある?」

 

光を含め、香澄の幼馴染みであるオレンジのボーイッシュの少女 ''はぐ''こと『北沢はぐみ』と、『ブシドー!』が口癖な白い二つ編みヘアーのハーフ少女『若宮イヴ』が俺の意見に賛同してくれた。

危うく自分の正体がバレかけた俺は安堵(あんど)しながら着席すると、気を取り直してクラスメイト達は出し物を談論する。

 

クラスメイトG「ケーキ!」

クラスメイトH「ハンバーガー!」

クラスメイトI「ラーメン!」

クラスメイトJ「たこ焼き!」

たえ「ハバネロピザ!」

 

ケーキは()も角、後の三つに喫茶店には入らないだろ。

そう内心で突っ込みを入れていたが、花園が意見を出してきた。

 

香澄「辛そう...!」

たえ「ハバネロ抜けば辛くないよ」

香澄「いいね!」

沙綾「でも、それハバネロピザじゃ言わなくない?」

理央「いや、ハバネロを抜くという判断はベストだ。隠し味に砂糖とかを少し足せば、甘党なお客でも食い易くなる」

りみ「は、はいっ!」

 

一番左側の席から立ち上がったりみの声が飛び交う。

 

香澄「はい、りみりん!」

りみ「あのっ...パンがいいかなって。チョココロネとか、沙綾ちゃんのお店のパンとか。チョココロネ美味しいし!」

沙綾「うちのパン?」

クラスメイトK「いいじゃん!」

クラスメイトL「山吹パン美味しいよね」

りみ「うん!」

 

後ろの席に居たクラスメイトの発言に、りみは嬉しそうに(うなず)く。

 

沙綾「家かぁ...」

 

りみの『家』の単語で、山吹は一瞬だけ無感情に俯いていた。

その様子を見て、首を傾げた俺は(まゆ)を細める。

若しこれが過去に何かあってバンドを脱退していたとするなら、夏野が上階から見下ろしていたことにも納得が行く。

それか、山吹がバンドをする気になるまで距離を置いていた可能性も大だ。

 

沙綾「...分かった。聞いてみる」

香澄「りみりん、ナイス!」

クラスメイトN「ナ〜イス。りみりん!」

 

(しばら)くして再び口を開いた山吹に許可が降り、拍手喝采(かっさい)が送られたりみはクラスメイト達に手を振った。

 

香澄「皆、文化祭やりたいか〜!?」

『おおーーっ!!』

香澄「可愛い喫茶店にしたいか〜!?」

『おおーーっ!!』

理央(後少しなんだ。どんな状況に(おちい)ろうとも、必ずその真理に辿り着いてみせる...!)

 

それから文化祭の準備をしながら、香澄と山吹は早速行動に移った。

テーブルの模様書きや、クラスメイト達の言質取り。

家の手伝いをしながら両親と文化祭でパンを提供する事を相談をする山吹。

文化祭ライブに向けての新曲の楽譜の完成に因んで、歌詞作りに苦戦している香澄。

それから俺は有咲達と共にパンの試食で山吹の家に(おもむ)くことが多くなると同時に、山吹の過去が明かされるのを虎視眈々(こしたんたん)と待つのだった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO SIDE

 

それから数日が経過し、学校内では文化祭の準備で盛り上がっている。

そんな中、階段の横壁で背中を付けていた有咲は、バンド名の候補の単語が記載していたノートを見ていた。

手に持っていたボールペンのノックカバーを(あご)に当てていた途端、突然誰かに声を掛けられる。

 

???「何してるの?」

有咲「うおああっ!?」

 

声を掛けられた反動で我に返った有咲は身を(かが)めてしまうが、聞き覚えのある声に顔を上げる。

 

有咲「ふぅっ。何だ山吹さんか...」

 

声の正体が沙綾だと分かった有咲は安堵する。

 

沙綾「珍しいね。こんなとこで」

 

そう言って沙綾は有咲の左側に正座し、既に自動販売機で買っていたとされる紙パックのジュースにストローを刺す。

 

有咲「か、香澄は...?」

沙綾「りみりんと買い出し」

クラスメイトM「あ、沙綾」

沙綾「あ、うん」

 

香澄の行方について簡潔に即答し、そのままジュースを飲む沙綾。

偶々通りがかったクラスメイトに声を掛ける。

 

有咲「...よくやるよね。疲れない?何か色々押し付けられてるっぽいじゃん」

沙綾「やりたくてやってるだけだし、楽しいよ」

有咲「ふぅ〜ん...ドM?」

沙綾「あはは。そうかも...作詞?」

 

突然の問題発言をさりげなく返すと、沙綾は有咲が書いていた単語について問い掛ける。

 

有咲「ちょっと書いてみただけ」

沙綾「バンドの事、結構考えてるんだ」

有咲「キラキラなんとかとか、ドキドキなんとかになったら困るし...!」

 

先程の昼休みでたえが命名したバンド名があまりにも幼稚なネーミングセンスであったために却下した事を愚痴(ぐち)る有咲。

仮に決定したバンド名がネット状でネタにされてもおかしくない程のバッシングを受けてしまう(おそれ)を成していたため、候補である単語の中で()れを抜選(ばっせん)すればいいのか悩んでいた。

 

沙綾「あはは...''Poppin''とか、可愛いと思ったけど」

有咲「えっ?マジか...!」

 

寄り添う形で近付いた沙綾にノートに描かれていた単語の一つ『Poppin』を指差され、アドバイスを送られた有咲は不覚を取られてしまう。

 

たえ「うん。何だかポップコーンみたい」

有咲「サラッと入ってくんな!?」

たえ「蔵のスピーカー、借りてもいい?」

沙綾「喫茶店の?」

有咲「ってか、そればーちゃんのなんですけど...」

 

追い討ちを掛ける様にして右側に立っていたたえは、蔵のスピーカーの借用を(こころ)みる。

喫茶店のスピーカーとなれば、A組を含めた他のクラス内に曲が反響する虞があったため、敢えて有咲の家のスピーカーを借りようとしていたのだ。

 

香澄「あっ、皆で何してんの〜?」

りみ「落としてる!落としてるよ〜!」

たえ「どんぐりころころどんぐりこ〜、小池に嵌まって...」

有咲「呑気に歌ってないで、拾うの手伝え〜!!」

 

文化祭の準備をしていた戸山義姉弟とりみが合流し、香澄が階段を渡っている最中で小道具を落としてしまう。

そんな状況の中でどんぐりの歌を呑気に歌っているたえに、有咲は落とした小道具を拾うのを(うなが)すのだった。

 

 

 

 

 




TO BE CONTINUED...








-バンドメンバーのポケモン紹介-

沙綾のバシャーモ(♂)
''加速する炎の突撃ファイター''
ICV:花輪英司
技:ブレイズキック、燕返し、火炎放射、岩雪崩
特性:猛火
沙綾の相棒ポケモンで、口数の少ないクールな性格。
家で両親の手伝いや弟妹の面倒を見る事があり、タイプ相性関係なしに強いと言われる程の実力を持つ。
だが、とある出来事でバトルを控え、家族以外の馴れ合いを嫌っているようで...。

あなたが一番好きな御三家は?(草タイプ編)

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