Bang Dream! ~時空の叫びと星の鼓動~   作:ライノア

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7話 中編、どうぞ。


第七話:申し子の喧嘩 中編

NO SIDE

 

学校の帰路を辿っている沙綾は、一年前の事を振り返る。

それは千紘が退院して、バンド練習に駆け付けようとした時の事だった。

 

文華『そっか、大変だねさーや』

真結『お母さん倒れた後だし、(いそが)しいよ』

 

部屋に入ろうとした瞬間、偶然にも夏希達の話を耳に入れてしまう。

 

夏希『あたしらに手伝える事ないかなぁ...?』

文華『練習時間もっと遅らせてさ!』

真結『それが良いかもね。その分、うちらは自主練ってことで!』

夏希『だね!さーやの分までうちらが頑張る!』

 

千紘が倒れて家事が多忙となっていた沙綾に、夏希達は気を(つか)おうとしていた。

だが、その会話は沙綾にとっては不可解な出来事であった。

(いく)ら家事を手伝っているとはいえど、千紘がいつ貧血気味で倒れてしまってもおかしくはない。

病弱な母親が倒れてしまえば、再びバンドメンバーに迷惑を掛けてしまう。

そんな罪悪感に苛まれてしまった沙綾は、十二月のある日を境に音楽を辞めた。

『もうこれ以上、皆に迷惑を掛けたくない』と、自分の無力さを心から呪った。

過去を振り返っていた沙綾は気が付けば、夕暮れ時の歩道の前で一人立ち止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RIO SIDE

 

俺は24時間ストアで買ってきたアイスを手に持ちながら(たたず)んでいた。

有咲とりみがアイスを買っている間に、香澄とたえはギターについて話し合っている。

本人も名前で呼んでほしいとの事で、既に了承(りょうしょう)済みだ。

 

香澄「へぇ〜。弦って色々あるんだー」

たえ「うん。材質によって素が違うから、好きな音探すの楽しいよ」

香澄「そうなんだ。それでねりーくん、ポケモンのタイプ相性についてなんだけど...」

 

俺にタイプ相性に関しての質問をしようした矢先で声が飛び()う。

有咲とりみがストアから出て来た。

 

りみ「お待たせ」

香澄「アイス、決まった?」

りみ「ううん。決めらんなかったけど、有咲ちゃんが半分こにしてくれるって」

有咲「私はこれが良かったの。はい」

りみ「ありがと〜」

 

有咲は紙袋に入っているパピコを一本りみに手渡す。

 

香澄「有咲、半分頂戴(ちょうだい)!」

たえ「私も!」

理央「いや、お前らはアイス持ってるからいいだろ。有咲の分がなくなる」

香澄「ええー、りーくんのケチ」

理央「ケチで結構。そんなことより、ちょっと寄り道して行きたいところがあるんだが...いいか?」

 

俺の持ち掛けに二人は首を(かし)げる。

早速帰り際にある場所へと(おもむ)くべく、俺とサルヒコはクラウチングスタートに入る。

それを見たヒバニーも俺とサルヒコの真似をしてクラウチングスタートに入った。

 

サルヒコ『お前も駆けっ子に入るのか?言っとくが、今のお前じゃ俺のスピードには付いて行けないぞ?』

ヒバニー『ヤダなぁ、サルヒコさん。オイラはただ、あんたの実力を試したいだけだってば。同じ炎御三家の一匹として...ねっ、いいだろ?』

サルヒコ『...分ぁかったよ。その代わり、俺にスピード勝負で挑んだ事を後悔するなよ?』

理央「二匹共、走る気満々だな。それじゃ、行くぞ?位置について、よーい...どんッ!!」

 

俺の掛け声で後ろ足を振り出し、そのまま走り出した。

訪れたのは江戸川楽器店。鵜沢にランダムスターを修理してくれたことへの礼を言いたいがためにやって来たのだ。

 

たえ「いっちばーん!」

サルヒコ 『俺も一番だ』

理央「お前、以前よりスピード上がったんじゃないか?」

ヒトカゲ『ゼェ、ゼェ、ヒバニーとサルヒコさん速すぎるよぉ〜』

 

有咲とりみはヒトカゲと同じく息切れになっており、荒れた息を整える。

 

有咲「お前ら...!いきなり走んなよ!?」

香澄「ええ〜、良い運動になったでしょ?」

たえ「うん。有咲のためだよ」

有咲「どういう意味だテメェ...!?」

???「市ヶ谷さん...?」

 

俺達に声を飛ばしたのは有咲と同じクラスで、山吹とは元バンド仲間だったと思われる海野夏希だった。

横側に連れ歩いているポケモンは、白い(ひげ)(たくわ)えた四足歩行の水ポケモン。

頭には黄色い(かぶと)を被り、其処から一本角が伸びている。

海野の相棒と思われるポケモンはイッシュ地方の水御三家、ミジュマルが最終進化した貫禄(かんろく)ポケモン『ダイケンキ』。

 

『ダイケンキ 貫禄ポケモン 水タイプ ミジュマルの最終進化系 敵が(まばた)きする間に、前足の鎧に仕込まれたアシガタナと呼ばれる剣の一振りで倒す。一睨みで敵を黙らせ、吠えるだけで威圧するという』

理央(ダイケンキか。それより何故、海野 夏希が此処に?いや、これはチャンスかもしれない。チャンスかもしれないけど...)

 

早速海野に山吹の過去について聞こうと試みたが、ダイケンキは何故か俺の方を見て無言で睥睨(へいげい)して来た。

まるで俺の実力を試そうとしているのか、将又(はたまた)「用がないなら帰れ」と(にら)みを利かせているのは定かである。

 

ダイケンキ『......』

有咲「あっ...!!」

香澄「有咲?」

 

ダイケンキの圧に耐えきれなくなったヒバニーは、慌ててサルヒコの後ろに避難する。

それに合わせて有咲も香澄の背後に避難すると、大きく咳払いをした。

 

有咲「...ご機嫌よう」

たえ「...ご機嫌よう?」

有咲「お前じゃねー!あっ...!!」

 

猫を被ったが、カーテシーをしながら挨拶で返すたえにまんまと破られて怒号を上げる有咲。

その()り取りを終始見ていた海野はふふっと笑った。

 

夏希「あはは...ちょっと意外。市ヶ谷さんもバンドやるんだ?」

有咲「...成り行きで」

香澄「有咲のクラスメイト?」

有咲「うん。まぁ...」

 

有咲は海野がクラスメイトであることを明かすと、俺は目線を海野の背後に居る何かに目を付ける。

 

理央「おい。其処に居るのは若しかしてだが、二十騎か?」

 

ゆりと同じGlitter*Greenで、ドラム担当の二十騎ひなことその相棒ニャースであった。

二十騎は俺達の前に歩み寄ると、何故か優しげな笑顔を見せる。

だが、漂っていた静寂な空気は一瞬にして打ち消された。

 

ひなこ「...集え少年少女よ!大志を抱け!!フウゥーッ!!!!

香澄「えっ?フゥー!抱け〜!」

 

両腕を掲げて突然騒ぎ始めた二十騎を、香澄は同じ様にテンションを上げる。

 

ひなこ「声が小さいッ!!

香澄「抱けェェェェーーーーッ!!!!」

ひなこ「お店に迷惑だーッ!!

香澄「ええっ!?」

理央「いや、何方(どっち)も何方だろ!?」

 

流石に(やかま)しかったのか、俺は二人を制止させる。

 

有咲「ヤベぇ、りみ!あの人相当ヤベェよ!?」

りみ「お姉ちゃんと同じグリグリで、とっても良い人だよ」

夏希「二十騎先輩はバンドの相談とか乗ってくれるし...」

ひなこ「ええっと...キラキラ星の香澄ちゃんにパルデアの現チャンピオン理央くん!花園ミステリアスたえちゃん!蔵弁慶(べんけい)有咲ちゃん!」

有咲「''蔵弁慶''!?」

 

意味不明な渾名(あだな)を勝手に付けられる俺達だが、何で有咲は蔵弁慶なんだよ。

 

ひなこ「そしてマイシスターりみちゃん!」

りみ「違うよ」

ひなこ「可愛い少年少女達は、みーんなひなちゃんワールドにご招待〜!」

有咲「ヤバ過ぎだろ...」

 

流石のハイテンションの差に有咲は唖然としている。

ドゴームの朝礼前の大声で起こされるよりは遥かにマシだが...いや、ドゴームの方はまだマシな方だな。うん。

 

ひなこ「リィちゃん!新しい少女とパルデアチャンピオンまでお迎え出来ちゃった!ありがとハッピ〜!」

リィ「うるせぇ!仕事中だ!!

ひなこ「怒られちゃった〜。でもパーティー、てへっ!」

 

流石にうるさかったのか、仕事中だった鵜沢にキレ散らかされた二十騎は少しだけ声量を低くする。

余りにもハイテンションな性格に、たえと香澄は度肝を抜かれた。

 

たえ「ライブ中は全然(しゃべ)らないから、静かな人だと思ってた...」

りみ「リィちゃんに止められてるんだよね?」

ひなこ「ううーん、何かねー『イメージ壊れるから黙っとけ』って!何でだろうねー。何でかなぁ〜?あ、有咲ちゃんツインテ可愛い〜!!」

 

有咲のおさげ髪を激しく()でているひなこに、早速ある相談を持ち掛ける。

此処まで待ったんだ。言うなら今しかない!

 

理央「...なぁ、二十騎。お前に相談したい事があるんだが...良いか?」

ひなこ「うん!何でも言って良いよ〜!」

理央「三日後の文化祭の日に、俺達がバンド演奏をするって事は知ってるだろ?少し強引な言い方にもなるが...若し良ければ、その空いたドラムの席を文化祭の日だけでもいいから座ってくれないか?」

ひなこ「はい喜んで〜!パルデアチャンピオン様に命じられたなら、断る権利なぁ〜し!うーん。でもぉ、君達の近くにはひなこちゃんよりバッチリな子居るぜ〜。ねぇ、なーちゃん?」

 

その言葉を聞いた海野は少し間を置くと、顔を上げてその人物の名を告げた。

 

夏希「...''さーや''の、事ですか?」

 

真実まで後一歩のところまで来た俺は、一息をして海野に歩み寄る。

 

理央「...やはりな、そうだと思った。通りであの時、俺達を見てた訳だ」

夏希「あの時って...まさかあたしがさーやの様子を窺ってたの、気付いてた訳?」

理央「ああ、悪いな二十騎。こうなる事を想定して敢えてお前を利用した」

ひなこ「えっ、利用...!?」

 

二十騎はまんまと俺に利用された事に動揺する。

ポケモンだった頃の俺なら、本来はこんな行動は起こさないだろう。

だが、今回だけ話は別だ。今此処で疑問点に終止符を打たないと色々と手遅れになるからな。

 

理央「さて、白黒付けようじゃねぇか海野夏希。本来なら3vs3のシングルでやりたいところだが、流石に時間がなくてな...さぁ、どうする?(さい)はもう投げられてんだ。決断するなら今しかないぞ?」

 

俺の条件を既に飲んでいたのか、海野は真剣な表情をしながら俺に宣言した。

 

夏希「...分かった。こうなった以上、どの道決断する訳にはいかないしね。その代わり、あたしから条件がある。あたしに勝ったら、さーやに何があったのかを話してやってもいい。でも逆にあんたが負けたら、何も言わずに立ち去って」

理央「その意見飲もう。言っとくが俺は、このバトルは絶対に負けたくないからな。鵜沢、バトルフィールドはあるか?」

リィ「バトルフィールドなら、楽器店のすぐ近くにある公園にあるわ。一応こっちの地下にもあるけど、ガンガンガンガンうるさくてねぇ...」

理央「よし、ウォーミングアップには丁度良い。早速近くの公園に行くぞ!」

 

俺とサルヒコは楽器店の近くにある公園に向かうべく、全速力で駆け出した。

 

有咲「おいっ!?いきなり走んなよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理央「いきなり悪いが有咲。審判頼む」

有咲「お前なぁ、どんだけ私を振り回せば気が済むんだよ...これより、海野夏希と戸山理央によるシングルバトルを行う!使用ポケモンは二体。何方(どちら)かのポケモン全てを戦闘不能にした者が勝者とする。このバトルでは範囲的にも被害が及ぶのでダイマックスとZワザの使用はなし。よって、メガシンカとテラスタルのどれか一つの使用を許可する!それでは両者、ポケモンを!」

夏希「エクスレッグ!」

 

海野が投入したモンスターボールから出て来たのは、仮面の様な顔に橙色(だいだいいろ)の複眼が()り目で切り込む二足歩行の虫ポケモン。

体色は主に灰色だが光沢(こうたく)のある黒い箇所(かしょ)もあり、胸部と腹部の境は区切られた白い線の中心にx字の模様がある。

前腕に一つ、下腿(かたい)に二つ、そして平たい丸みを帯びた長方形の関節に三つと、橙色の(とげ)が後方に生えている。

 

理央「エクスレッグか...」

『エクスレッグ 飛蝗(ばった)ポケモン 虫 悪タイプ マメバッタの進化系 本気になると(たた)んでいた第三の脚で立ち上がり「決戦モード」で敵を制圧するが、体の負担が大きい為に長くは持たない』

 

特性が虫の知らせならまだしも、隠れ特性の色眼鏡であれば効果が今一つだった時に技の威力が二倍になる。

アロウとサルヒコは文化祭で戦わせる予定であるため、戦わせる訳にはいかない。

俺は直ぐに手持ちの整理を行い、ポケモンボックスから引き出したポケモンの入ったモンスターボールを手に持つ。

 

理央「...出番だ、ビショップ!」

 

投入したモンスターボールから出て来たのは、(おの)の形状を持つ黄色い刃が生えている赤い頭部のポケモン。

黒い腹部には二対の刃が生え、張り出した赤い肩当てに白いミトン状の両腕。

海野は専用のスマホロトムを取り出し、ビショップの図鑑説明を読み込む。

 

『キリキザン 闘刃(とうじん)ポケモン 悪 鋼タイプ コマタナの進化系 コマタナの群れを率いている。ボスの座を奪い合う戦いに敗れると群れを追い出される』

理央「悪タイプには悪タイプ...ってな」

有咲「それじゃあ、第一回戦...始めッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED...




次回、vs夏希!








あなたが一番好きな御三家は?(草タイプ編)

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