Bang Dream! ~時空の叫びと星の鼓動~   作:ライノア

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第七話:申し子の喧嘩 後編 その3

RIO SIDE

有咲「ダイケンキ、戦闘不能!よって勝者、理央!」

理央「ふぅ...!」

 

全身の力を抜いた俺はサルヒコの元へ歩み寄る。

 

サルヒコ『少し手応えはあったが、相当の強さだったな』

理央「ああ、勝負は俺達の勝ちだ海野。話してくれないか?山吹に何があったのかを...」

夏希「分かった、勝負は勝負だからね...」

 

(いさぎよ)く負けを認めた海野は、山吹との間に何があったのかを聞かせてもらった。

今回も時空の叫びを使いたいところだが、香澄と俺だけの秘密であるためか無闇に人前では使用出来ない。

一年前、山吹は海野達を含めた友人三人とChispa(チスパ)というガールズバンドを結成。

だが、夏祭りの日に行う筈だったデビューライブが始まる直前に母親が倒れた事でその場を後にした。

外では雨がザアザアと降り続ける中、香澄は言葉を失う。

 

理央「まさか、そんな事が起きていたなんてな」

香澄「...私達、全然知らなかった。バンドの事も、お母さんの事も」

夏希「ご、御免!知ってる事ばかりで...今のは無しで!」

香澄「なっちゃん!...教えて!私達、さーやに何があったのかちゃんと知りたい...!!」

 

呼び止めた香澄の言葉を繋いだ俺の説得で、海野は続ける。

初ライブ後に山吹と再会したのは、母親が病院に帰って来た後だった。

その後は皆で(また)バンドをやろうと約束したが、四ヶ月後の冬に突然にバンドを脱退すると通告した。

 

夏希「きっと理由は色々あったんだと思う。でもさーや、言ってくれないから。一人で悩んで、全部一人で決め付けちゃって...私達も続けて良いのか迷ってた。でもいつかさーやが又ドラムを叩きたいって思った時、私達がCHISPAを辞めちゃってたらさーや絶対自分を責めるから...いつかを信じて前を進もうって決めたの」

 

突然の事で脱退してしまった仲間を心配していたのか...窓際から山吹の様子を見ていたのも納得だな。

 

夏希「高校生になって、戸山さん達や理央が居るところ見てたよ。さーやの笑顔が少しだけ増えた気がして嬉しかった...宣伝ポスターに名前を見つけた瞬間はやっとって思って、でもちょっと...早とちり...」

 

話を終えたところに追い討ちを掛ける様にして俺は冷静に口を開いた。

 

理央「...お前と山吹の関係は分かった。家族とバンドの事はまだしも、バシャーモの負った傷と何か関係があるんじゃないか?」

夏希「さーやのバシャーモが?でも、遠くから見た感じだと全然そんな感じじゃ...!」

理央「じゃあ逆に質問するが、山吹がバンドを脱退する際にバシャーモは連れ歩いてなかったか?」

夏希「えっ、連れ歩いてないけど...?」

 

やはりそうか。これで全てが一致した。

 

理央「お前はあの時気付いてなかったんだろうが、サルヒコは既にバシャーモの異変に気付いてたぞ。木に背中を当てながら座る際には右足を伸ばしていた。明らかに何かありそうだなと思ったんだよ...あいつはきっと、元メンバーであるお前に無様な姿を見せたくなかったんだろう」

夏希「...そっか。そうだったんだね」

 

俺の考察に海野は納得する。

サルヒコが言う様に、去年の冬に山吹のバシャーモが何者かによって重傷を負わされた可能性は大だ。

 

夏希「お願い。まださーやが自分から言ってないなら...そっとしてあげてくれないかな?」

 

そう言って海野は楽器店を後にした。

俺達も午後6時過ぎに出て、海野の話を振り返る。

 

たえ「...凄いね。中学の時からバンドやってたなんて」

りみ「...うん」

香澄「写真のさーや、いっぱい笑ってた...お母さんの事も全然気付けなかった」

有咲「言われてみればスコアとか読めたりしてたし、気付けるチャンスは(いく)らでもあった(はず)なのに...」

 

山吹の過去を知って俺以外が全員意気消沈になっていた。

 

香澄「なっちゃん...本当にそれで良いのかな...?」

有咲「分かんねーけど、そうするしかねーだろ」

香澄「...さーや」

 

香澄の呟きを耳に、俺達は帰路を辿(たど)るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NO SIDE

 

千紘「ん...」

沙綾「...母さん!」

沙南「おかーさん!起きたー?」

沙綾「熱出して倒れたの、覚えてる!?」

千紘「...!私ったら、今何時...「まだ横になってて!!」でも...」

 

山吹ベーカリーの和室にて、千紘は目を覚ます。

脆弱な体質である為か貧血に見舞われる事が多く、沙綾はその時倒れた時間について(たず)ねる。

 

沙綾「良いから!!お店は父さんがやってくれてるし、ご飯は私が作るから...」

千紘「沙綾...」

 

再度倒れたら弟妹(ていまい)にも迷惑を掛けてしまう。

沙綾は声を上げて制止すると、純と沙南に支度(したく)の手伝いを要求する。

 

沙綾「...よぉーし、純!沙南!お手伝いして!」

純「えー、やだ!此処に居る!」

沙綾「だーめ!うるさくしたら母さん休めないでしょ?」

沙南「さ、さなも手伝う!」

純「えーっ...じゃあ、俺も...」

沙綾「よーし、じゃあ二人共。手を洗っておいで。今日はてごねハンバーグだよー」

「「はーい!」」

 

純と沙南は早速調理の準備に取り掛かるべく、仲良くシンクで手を洗う。

沙南は沙綾の背中を見る。その手は明らかに小刻みに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RIO SIDE

 

文化祭まで後一日となり、学校の校門前で女子生徒達がスマホロトムで写真を撮ったりと外でも賑やかな雰囲気を漂わせる。

一方1-Aでは、四つの机を応用したテーブルの上に敷いた白い花が描かれたピンクのマット中央に置かれた調味料。

窓には「1-A」の文字が貼ってあり、黒板のメニューボードには『1-A Cafe』と書かれてあった。

 

理央「遂に明日か」

沙綾「...うん」

香澄「さーや、りーくん。イェーイ!」

 

三人でハイタッチをした後、香澄は1-Aカフェの完成を報告。

クラス内は大いに盛り上がった。

 

香澄「1-Aカフェ、完成!!」

クラスメイトA「やったね香澄、さーや!実行委員ありがとー!!」

理央「いいや、頑張ったのは皆一緒だ。明日は本番だから、気は抜かない様に」

クラスメイトA「あはは、確かに」

イヴ「香澄サン!理央サン!いっぱい写真撮りましょう!」

 

そんな光景を見届けた沙綾とバシャーモは又しても早退しようと無言で去ろうとした。

 

香澄「あれ、さーや。もう帰るの?」

沙綾「うん。ちょっとね...香澄達もいよいよライブだね。この後も練習でしょ?」

香澄「う、うん...!」

沙綾「楽しみにしてるね」

 

笑顔で手を振りながら後ろ姿を見届ける香澄は呼び止めようとしたが、昨日の件で中々言い出せなかった。

呼び止めようとした手を有咲が軽く叩いて制止する。

 

有咲「おいおい、何て顔してんだ理央のバカ姉貴。皆で決めたろ?」

理央「気持ちは分からなくもない。だが、此処は海野の気持ちを尊重してやれ」

香澄「そうなんだけど...!」

りみ「あ、海野さん...!」

 

文化祭の合同ライブの練習で体育館に向かおうとする中、俺達は海野達と出会す。

海野が無言でお辞儀をすると、香澄の悲しみが一気に込み上げられた。

 

香澄「...御免有咲、りーくん。やっぱり無理ーーー!!!!」

理央「あのバカ!悪いが先にやっててくれ。俺は香澄の後を追う!」

有咲「おい香澄、理央!体育館の合同練習どうすんだよ!?待っててー!!」

 

俺は()ぐ様香澄の後を追う。

そんな中、一時的に連れ歩いていたサルヒコが海野と同行していたショートヘアーの女子生徒と目を合わせると、俺達の後を追って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BASYAAMO SIDE

 

千紘「お母さん一人でも出来るのに...」

沙綾「私とバシャーモがやりたいからいいの」

 

俺と沙綾は母さんの晩飯の調理を手伝っている。

暫くして野菜を調理していると、母さんが感謝の言葉を述べながら文化祭の話題を出してきた。

 

千紘「御免ね二人共、明日は文化祭でしょう。無理して早く帰って来たんじゃない?」

沙綾「大丈夫。もうクラスの準備は終わらせてきたから。皆凄いよ、準備頑張って...香澄と理央が率先してるからかな?ホント楽しそうで...「沙綾は?」えっ?」

沙綾「...楽しんでるよ」

千紘「もっと!」

 

普段の態度で接していたが、沙綾は黙り込んでしまう。

 

亘史「沙綾、バシャーモ。お友達が来てるぞ」

 

父さんに呼び掛けられた俺達は直ぐに店内へ向かうと、何やら(にぎ)やかな声が聞こえてくる。

其処には何故か香澄と理央が純達と外で鬼ごっこをしていた。

沙綾の手持ちの一匹である『南瓜(かぼちゃ)ポケモン』バケッチャや、グライガーも鬼ごっこの対象となったいた。

ヒトカゲは二人に触られても問題はなかったが、逆にサルヒコは連れ歩いていないためか代役としてアーマーガアのアロウがその様子を見守っている。

 

沙綾「香澄!?理央までどうしたの!?クラスの準備で何かあった...!?」

理央「ああ。ちょっとな。明日は本番なんだけどよ...」

沙綾「若しかして...小腹が空いて皆の分買いに来たとか?もう売り切れちゃったのもあるけど今なら————「俺達はそういう訳で此処へ来たんじゃない」えっ...?」

 

沙綾の気遣いに構わず、理央は強い眼差しを向けながら本題に入る。

 

沙綾「どうしたの理央?今日変だよ」

理央「うちのバカ姉貴が、お前に話があるって。本来なら止めるつもりだったんだが...融通効かなくてさ」

沙綾「話...?」

香澄「あ、あのね...聞いちゃったんだ、さーやが中学からバンドやってた時の事。そ、それでね。明日の文化祭で、さーやも一緒にバンドやらないかって————「ストップ」...」

沙綾「部屋行こ。話、聞かれたくない...」

 

理央達は沙綾の過去を話すべく、自室へ足を踏み入れた————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RIO SIDE

 

山吹は俺達に自室でジュースとメロンパンを差し出す。

 

沙綾「...そっか。ナツから全部聞いたんだ」

理央「ああ。お前のバシャーモが戦闘を拒んでいたのも、何者かによって重症を負わされたんじゃないかって...急に悪いな。こんな空気の悪い話しちまって」

沙綾「ううん、気にしないで。別に聞かれなかったし...」

香澄「なっちゃん、心配してたよ。『さーや、何も言ってくれない』って。今のままじゃ、嫌だなって...私、さーやがドラム叩いてるところ見たいし、バトルもしてみたい。やろっ、さーや!」

バシャーモ『...悪いが、他の人間を能ってくれ』

 

香澄の言葉に視線を逸らし、山吹は不安な声を上げる。

 

理央「香澄は山吹が良いと言っていた。ヒトカゲはリザードンに最終進化したらバシャーモと戦いたいって————『「無理だよ(出来ない)」』...!!」

沙綾「練習してないし、迷惑掛けるだけ。もう、バンドもポケモンバトルもやるつもりないから」

理央「...何故そう思う?」

沙綾「帰り遅くなるの、嫌なんだ。純達寂しがるし、母さん無理しちゃうから...」

理央「昔から体が脆弱だったんだろ?だから母親の代わりに家事を手伝っていた。違うか?」

 

山吹とバシャーモは自身の過去を洗いざらい吐き出した。

 

沙綾「...体弱いのに家の事全部やろうとしてて、バシャーモは知らない間に重傷負ってて...私、二人が倒れるまで何も気付かなかった。純達凄い泣いて、ナツ達にも迷惑掛けた...これ以上迷惑掛けたくない」

香澄「私もりーくんも掛けた。さーやにいっぱい!迷惑なんて思わない...だから、一緒にやろ?」

理央「店が忙しかったり、弟妹の相手も(いく)らでもしてやる。一人で背負(しょ)い込むよりも、皆でやった方が手っ取り早い。文化祭の時もそうだったろ?」

 

俺と香澄は山吹に手を差し伸べるが、今の二人には届く事はなかった。

 

バシャーモ『...止めろ。止めろッ!!!!』

ヒトカゲ『うあぁっ!?』

 

何者かに重傷を負わされた時の事を思い出したのか、怒りの頂点に達したバシャーモはヒトカゲを壁に強く蹴り飛ばした。

 

香澄「ヒトカゲ!!何で!?バンド嫌いなっちゃったの...!?」

沙綾「ッ!!そんな訳ないじゃんッ!!!!」

バシャーモ『お前に俺の...!!俺と沙綾の何が分かるって言うんだッ!!!?あの夏の日に見知らぬポケモンに脅迫(きょうはく)され、自分の力の無さを徹底的に思い知らされた俺の気持ちが...戦闘経験が浅はかなお前に理解されてたまるか!!』

沙綾「ライブ滅茶苦茶にして...なのに皆気遣って、自分の事より私達の心配ばっか!それでいいの!?皆に負担を掛けて...私達だけ楽しむの!?出来る訳ないっ...!!!!純も沙南もあれから家から離れたがらなくて、ずっと不安にさせてる...もうあんな思いは絶対させたくないのっ...!!」

 

自分の無力さを、自分の不甲斐なさを打つけられた俺達は言い返す余裕もなかった。

 

香澄「でも...さーやっ...!!」

沙綾「一緒にやっても全然練習行けない...!香澄だってSPACEでライブしたり、ポケモンバトルしたいんでしょ!?もっと練習しなきゃ無理だよ!足手(まと)いになるだけじゃん!!」

バシャーモ『どれだけ力を付け直しても、又あの日と同じになるだけだ!!こんな事になるくらいなら、一生木偶(でく)の坊になった方がよっぽどマシだッ!!!!』

沙綾「それで又皆気遣う...『大丈夫だよ』って、大丈夫な訳ないじゃん!楽しく出来(でき)る訳ない、ていうかどんな顔して出れば良いのッ!!!?私の代わりに...誰かが損して、だから辞めたのにっ...!!」

「『今更出来る訳がない(じゃん)っ...!!』」

 

慟哭した二人の言葉を受け止めていたのは、ヒトカゲだった。

実力は未熟ではあるが、それでも立ち直らせる気力は残っていた。

 

ヒトカゲ『それでも、僕は信じてるよ...!君と沙綾が、過去を振り切って、前へ進んでくれる日を...!!』

バシャーモ『黙れ...!黙れ黙れ!!黙れェッ!!!!何が過去を振り切るだ!何が前へ進む日だ!お前が俺の前に現れたから...!お前達が俺達の前に現れなければ!!俺達の過去が再び掘り返される事もなかった!!全てお前のせいだ...!お前は...!!お前は俺の手で簡単に消え去るんだああああああああッ!!!!』

香澄「...っ!!」

理央「止めろ、バシャーモ!!!!」

 

怒りに飲まれたバシャーモは(かざ)した両手から波動弾を投げ打つ。

俺は身を張ってでも守ろうとしたが、瞬時にモンスターボールから出て来たサルヒコが波動弾を弾く。

弾かれた波動弾によって壁に穴が空き、中から風が透き通る。

 

ヒトカゲ『...サルヒコ、さん...!』

サルヒコ『...ヒデェ傷だな』

 

形相を変えてバシャーモと対峙する。

 

サルヒコ『黙って聞いてれば、自分だけ逃げる言い訳ばっか作りやがって。おまけに俺の後輩を蹴っ飛ばしておいて、一体どういう風の吹き回しだ...!?』

バシャーモ『...貴様らの綺麗(きれい)事なんぞ、簡単に消え去るんだ。今のあいつの様に...あんな風にな!!』

 

サルヒコは強く拳を握り締める。

その声色(こわいろ)からしてみれば、完全にブチギレていた。

 

サルヒコ『まさかテメェがそんな事を言うとはな...この俺が期待して損した。今更謝っても許さねぇぞ...!!炎御三家の、面汚しがァァァァァァァァッ!!!!』

 

怒りを爆発させたサルヒコの鉄拳(マッハパンチ)が振り下ろされ、バシャーモを窓ガラスごと打ち破り、二階から一階まで殴り飛ばした。

 

理央「サルヒコ!!」

サルヒコ『止めるな理央!これは、俺とこのクズ野郎の問題だ...!!』

 

サルヒコは二階のバルコニーを蹴って飛び降り、大の字に倒れていたバシャーモに膝蹴りを繰り出す。

 

バシャーモ「がはぁッ...!?」

 

腹部に重い一撃が入り、バシャーモは(うめ)き声を上げた。

商店街の人間達はさっきの轟音を聞いて現場に駆け付ける。

 

サルヒコ「テメェはこれから、この商店街の見せしめだ。精々自分の(なま)り切った力の弱さを後悔しやがれ!」

 

『役割破壊の申し子』サルヒコ。

仲間思いで冷静かつワイルドな性格だが、一度怒らせれば容赦のなさと圧倒的な力、タフさを発揮する。

最早、奴を止められる者は誰一人居ない。

 

 

 




TO BE CONTINUED...

あなたが一番好きな御三家は?(草タイプ編)

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