Bang Dream! ~時空の叫びと星の鼓動~   作:ライノア

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お待たせ致しました。第二話 後編です。


第二話:甘辛パーソナリティ 後編

RIO SIDE

 

有咲「...おい」

「「バレた」」

有咲「『バレた』じゃねー。邪魔」

 

夕暮れ時となり、ランダムスターが入っている星のギターケースを置きながら溜息をつく市ヶ谷。

気配を感じ取られた俺達を退かせる様に荷物が入った段ボールを外に出す。

 

有咲「うぜえ...」

 

不満を吐き出し、『かねめのもの』と平仮名で書かれている段ボールを運ぼうとした市ヶ谷の様子に俺達は体を動かす。

 

有咲「...何してんの?」

理央「何って、手伝ってんだよ」

香澄「ボーッと見てるのも何かなって」

有咲「帰れ」

 

けど断る。後日も市ヶ谷の家で朝飯を食っている。

香澄の『有咲攻略大作戦』が開始したばかりか、俺達は市ヶ谷を朝から夕方まで付き纏う事となった。

 

有咲「ふん!ぐぐぐぐぐぐ...ああ、無理...!」

 

今日も蔵の中で様子を見に来た。段ボールを一人で持とうとしたが余りの重さだったのか、すぐに手放してしまう。

 

理央「手伝ってやろうか?」

香澄「大丈夫?重たい...?」

有咲「すげー重い...」

 

ニコニコマークが書かれた段ボールを三人で外まで運ぶと、市ヶ谷は猫背になりながら蔵に入る。

 

有咲「どうも...!」

香澄「手伝うよ」

 

香澄が市ヶ谷の蔵整理を手伝おうと告げると、視線が星のハードケースに入ってしまう。

 

有咲「おい」

香澄「あ、御免」

 

声を掛けられ、怒られるのかと警戒した香澄は蔵の中から一歩外まで下がる。

 

有咲「...見れば?」

香澄「えっ、いいの!?」

有咲「やっぱギター目的...」

香澄「有難う!」

 

満面の笑みを浮かべる様子に市ヶ谷の心が大きく動かされそうのなるが、これで落とされる筈がない。

 

理央「よかったな、バカ姉貴。んじゃ入るぞ」

有咲「あ!ちょっと待って!」

 

俺達は足を踏み入れると、市ヶ谷がゆっくりとハードケースを蔵の床下に置く。

 

有咲「一瞬ね?」

香澄「うん!」

有咲「...はい終わり」

香澄「ええっ!?」

理央「早っ!」

 

錠前を外し、ランダムスターを露わにするも市ヶ谷が数秒で閉めてしまった。

 

香澄「はぁ...でも有難う」

有咲「別に」

 

市ヶ谷に礼を言った香澄はランダムスターが入っているハードケースに(しか)るべき人間の手に渡れる事を願う様に話し掛ける。

その後も付き纏い生活が続き、遂には市ヶ谷が香澄に片付けの指示を出したりしている。

俺は手持ちに入れておいたゴーリキーのきんにくやチラチーノのミラの協力を得て、蔵の清掃をしている。

 

香澄「いいの!?」

有咲「...別にいいけど。五秒ね?」

香澄「短い」

理央「まぁいいじゃないか。五秒でも十分拝めるって」

有咲「1、2、345!」

理央「数えるの早えよ!?」

 

片付けしている最中で香澄が振り回している(ほうき)にくっ付いていたイトマルはネットボールで捕獲した。

如何やらこの蔵は野生のポケモンが住み着いている個体が多いようだ。

片付けが終わる中、今日は蔵に泊まらない事にした。流石に明日香達も心配していたから少しは顔を拝みに行かなきゃな。

 

万実「止まってけばいいのに...」

理央「いえ、家族が心配していますので」

香澄「又来ます。じゃあね」

有咲「はいはい」

 

引き戸を閉め、ボールから外に出したアロウに乗った俺達は家に帰る事にしたが...一つだけ行きたい場所がある。

 

理央「...香澄。家に帰る前に寄りたい場所があるんだが、いいか?直ぐ終わる」

香澄「えっ?まぁ、いいけど...」

理央「サンキューな」

 

香澄の承諾(しょうだく)を得て、俺はある場所へ赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理央「おい、又来たぞ...って、もう寝てるか」

 

俺達はアロウから降りると、岩の上には(だい)色の蜥蜴(とかげ)ポケモンが一匹横たわりながら眠っていた。

 

香澄「そのポケモンって、ヒトカゲだよね?何でこんなところに...?」

理央「トレーナーに捨てられたんだよ」

香澄「トレーナーに捨てられた!?誰がそんな酷い事を...!」

理央「...声がデカいぞ!捨てられた理由は恐らくだが、あのヒトカゲはまともに戦える個体でなかった可能性が高い。俺が夜中に目が覚めるのがトイレに行く習性だって昔から知ってるだろ?実はトイレに行ったと同時に、ちょくちょく様子を見に行ってたんだ」

香澄「そうだったんだ...」

 

そういう個体のポケモンは自然に還してやるのが当然の行為だが、『必ず迎えに行く』と嘘をついて置き去りにしたり、『育てるのが面倒』『バトルで負けたから気に入らない』といった身勝手な理由で一方的に逃すトレーナーは今でも多くいる。

そんな行為をするトレーナーを、俺は呆れる程に何度か見て来た。

し、このヒトカゲを捨てたトレーナーと遭遇したら半殺しにしてやる。

そう思いながら俺は強く握った手を解くと、ヒトカゲを捨てたトレーナーが誰なのかを確認するため、時空の叫びを発動しようとした。

だが、ヒトカゲを手で触れるまで後数ミリもあるというのに何故か躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

 

ヒトカゲ『う、ううん...行かないで...ちゆ...』

 

アロウで我が家へ向かう途中に横に寝ているヒトカゲの寝言で唾を一気に飲み込み、橙色の皮膚(ひふ)に触れる。

数秒経ってから目眩が始まり、俺の脳裏を過ると時空の叫びが発動する。

映っていたのは飛び出した目元が特徴の二足歩行の青いポケモン。白い腹部は渦巻模様が描かれており、両手は白いグローブを()めた様な形をしている。

そのポケモン達を率いていると思われる青いポケモンの目は鋭く、筋肉質になった様な外見をしている。

 

???『俺様達の仲間になるなら、命だけは助けてやる。まぁ、ヒトカゲだから直ぐに死ぬか...ハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!』

 

おたまポケモン ニョロゾの数体を率いるニョロボンは尻尾を掴みながらヒトカゲを配下に勧誘しようとするが、尻尾の炎が消えると死ぬと分かった上で(あざ)笑う。

尻尾の炎を見てみると、雨が降っている影響もあってか今でも消えかかっている状態でもあった。

 

ヒトカゲ『僕は...最後まで諦めないぞ...。例え力が弱くても...尻尾の炎が消えようとも...僕の事をいつも気に掛けてくれたあの人みたいに...!だから...お前達みたいな弱いポケモンを平気で傷み付ける奴等の、仲間になんてなれるかッ!!!!』

 

湧き上がった怒りで消えかけた尻尾の炎が青白く燃え上がると未来の光景が途絶え、俺の視界が現実世界に戻る。

 

理央「......!」

香澄「りーくん、如何したの?」

理央「...香澄。話がある」

 

空気が静かに反響する中、俺は冷静な眼差しを香澄に向けながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蔵の手伝いが終わりそうなある日、今日は雨宿りをする形で俺達は山吹ベーカリーに来ている。

 

???「チョココロネ四つですね?」

香澄「袋分けてください」

???『そりゃー!』

???「だーん!」

香澄「えっ?わぁっ!?」

理央「ふんっ!」

???『うわあっ!?おいコラ、離せよ!』

理央「『離せ』と言って離すバカは此処には居ないぞ...って、誰かと思えばグライガーか」

 

チョココロネを買おうとしている最中に背後から水色のパーカーを着た少年が抱き付くも、すぐに人違いだと分かるとと逃走を図る。

俺の方も何かを感づきながら波動を発動し、飛び交う何かの尻尾を掴む。

その正体は青い飛膜が生えているピンクのポケモン 飛び(さそり)ポケモン グライガーだった。

 

『グライガー 飛び蠍ポケモン 地面 飛行タイプ 尻尾の先端には太い針を持つ。獲物の顔面に被さって視界を覆った後、尻尾の針で毒を流し込んで仕留めるという』

???「あ、ヤベ。間違えた」

???「純!すいません...」

沙綾「こら!お母さんの邪魔しちゃ...!あ、香澄。理央まで」

 

店の様子を見に来た山吹に身を隠していたのは、黄色いリボンを結んでいるおさげの少女。

 

理央「山吹。そのグライガーお前のか?それにこの子達は...!」

沙綾「うん。妹の紗南と、弟の純」

理央「そうか。ポケモンって、自分の子供みたいなモンだしな」

香澄「こんにちは」

紗南「...こんにちは」

純「こんちは」

香澄「可愛い...!」

純「う、うっせー!う○こ!」

沙綾「コラ!そういう事言っちゃ駄目って言ってるでしょ!?」

 

まさか山吹に弟妹(ていまい)がいたとはな。控えめな態度で挨拶(あいさつ)している妹の紗南に対し、投げやりや態度で挨拶する弟の純は香澄に『可愛い』と言われ、言ってはいけない言葉で捨て台詞を吐く様子に山吹の母親は唖然とする。

こいつはクソガキ確定だな。流石に少しキレかけたが、今度会ったら如何いう風にシバくべきか考えておこう。

 

???「すみません...」

理央「いえ、良いんです。こういう奴は人見知りが激しいモンですから」

グライガー『おい!良い加減離せよ〜!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして市ヶ谷の蔵で香澄がランダムスターを見ていた。

 

有咲「...何で?バンドやりたいんでしょ。ギターなら何でもよくね?」

香澄「星がね、壁とか電柱とか色んなところに貼ってあってあったから...うーん、何て言うか?」

 

市ヶ谷の問いに香澄は理由の一つとして、スマホカバーに貼ってある星のシールを見せる。

 

理央「あの星のシールを貼ったのはお前だろ?」

香澄「えっ!?そうなの?それじゃあ、有咲が私達を呼んでくれたの!?」

理央「いや、そういう意味じゃない」

有咲「...あんたの言う通り、あのシールを貼ったのは私。小学生の時にピアノ習ってて...一つ曲が弾けたら貰えたの」

 

恐らく、家に帰る途中で好きなところに貼っていたのだと思われる。

実は市ヶ谷と初めて出会った日、電柱に貼ってあったシールに触れて時空の叫びを発動させていた。

 

理央「けどあのシール、よく剥がれなかったな」

有咲「まぁな」

香澄「辞めちゃったの?」

理央「中学受験もあっただろうし、辞めざるを得なかったんだろう」

 

俺は市ヶ谷の過去を代弁する。

 

香澄「キラキラしてた?」

有咲「えっ...?」

香澄「ドキドキした?ピアノやってた時...」

有咲「まぁ、発表会とかは緊張...」

 

途中で言葉を止めてしまった市ヶ谷に、香澄は自分の目標を語り出す。

 

香澄「私も見つけたんだ。キラキラドキドキする事...出来るか如何か分かんないけど、ドキドキしてる」

 

立ち上がった香澄は改めて宣言する。

 

香澄「りーくん、有咲。バンドやろう!」

有咲「はぁ?」

香澄「バンドって、ギターとベースとキーボードもあるんだって!」

理央「ドラム脱けてるぞ!?」

香澄「あ、ドラム脱けてた...。ピアノ弾けるんでしょ?」

有咲「もう弾けないし...」

理央「出来るか出来ないかなんて関係ない...大事なのは、今の自分に出来るか如何か。そうしなきゃ、人は前に進めない。お前もグリグリのライブでドキドキしていた筈だ」

有咲「...してない」

 

視線をスマホの方へと向けながら誤魔化す。

 

香澄「ええっ!?」

有咲「もうギター見せねー!」

香澄「ああっ!ダメ〜!!」

 

そんな様子も見ておきたいが、ヒトカゲの様子も心配だ。

 

理央「...そういや香澄。雨は何時頃止むんだ?」

香澄「えっ?大体五時半くらいだけど...?」

理央「不味い...!二人共、蔵の整理は任せた!」

有咲「えっ!?ちょっと...!」

 

俺は急いで蔵を出てアロウをモンスターボールから出すと、両脚を掴みながらヒトカゲがいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニョロボン『俺様達の仲間になるなら、命だけは助けてやる。まぁ、ヒトカゲだからすぐに死ぬか...ハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!』

 

ニョロゾの数体を率いるニョロボンは満身創痍寸前のヒトカゲの尻尾を掴んでいる光景を目にする。

時空の叫び通りだ。俺は気付かれないところで地面に着陸したアロウをボールに戻し、別のモンスターボールから飛行ポケモンを外に出す。

 

ヒトカゲ『僕は...最後まで諦めないぞ...。例え力が弱くても...尻尾の炎が消えようとも...僕の事をいつも気に掛けてくれたあの人みたいに...!だから...お前達みたいな弱いポケモンを平気で傷み付ける奴等の、仲間になんてなれるかッ!!!!』

ニョロボン『そうか...それなら仕方がないな!!』

理央「カゲロウ、火炎放射!!」

ニョロボン『うおっ!?ぐっ!?』

理央「らあッ!!」

ニョロボン『ぐおああッ!?』

 

ヒトカゲに当たらない程度の橙色の火炎がニョロボンの視界を眩ませ、俺は渦巻状の腹に右拳を打ち込んでそのまま殴り飛ばした。

これでも俺は元ポケモン。トレーニングは毎日透かさずしておけなければならない。

その衝撃で掴んでいた手が解かれ、ヒトカゲを救出しながら即座に一定の距離を取った。

 

理央「大丈夫か?ヒトカゲ」

ヒトカゲ『まぁね。でも...理央さんが助けに来てくれるって信じてたから』

???『理央が躊躇(ためら)って時空の叫びを発動していなければ、間違いなくお前はニョロボン達(奴ら)によって命を落としていただろう...まぁ、間一髪と言ったところか』

 

ニョロボンの視界を眩ませた正体はヒトカゲと同じ体色と尻尾の炎、そして背中には翼竜の様な大きな翼を持つ二本角を生やしたドラゴンを彷彿(ほうふつ)とさせる火炎ポケモン リザードン。ニックネームはカゲロウ。

中1の離任式でケンゴ先生から貰ったタマゴから(かえ)ったヒトカゲを育て上げたポケモン。

現在はリザフィックパレーで修行中だが、緊急事態の時には手持ちに入れている。

 

ニョロゾA『あの人間...俺達の言葉が分かるだけじゃなく、親分を拳一発で殴り飛ばしやがった!?』

ニョロゾB「一体何者だよこいつ...!」

ニョロボン「怯むな!相手はリザードン。タイプ相性と数なら此方が上だ!」

ニョロゾ達『うおおおおーッ!!』

???「ドダイトス、リーフストーム!!」

???『どりゃあ!!』

ニョロゾ達『うわああーッ!?』

ニョロボン『何ィッ!?』

 

一度は怯むニョロゾ達だがニョロボンの喝破(かっぱ)で理性を取り戻すと一斉に俺達を囲んで水技を放とうとするが、それを阻むかの様に(とが)った葉っぱの嵐がニョロゾ達を襲う。

ニョロボンがその方向へ向き直ると、市ヶ谷と香澄の姿を目撃する。

 

理央「あれは...ドダイトス !?」

 

俺は市ヶ谷の左側にいる四足歩行で重量な巨体を持つポケモンに目を見開きながら驚愕の声を上げる。

背中の甲羅には(いく)つもの山と一本の木が生えている光景はまさに優美と言うべきだろう。

 

香澄「りーくん!」

理央「香澄!蔵の整理は如何した?」

有咲「お前の言うバカ姉貴がギターぶっ壊してさ。泣き崩れてるところを(かつ)噛ましてでも店行ってさ、そんでケースごとギター修理してもらってる」

香澄「...その間にりーくんの事だから、心配でヒトカゲのところまで来ちゃった!」

理央「本当にぶっ壊したのか?ってか、ホントにケースごと?」

有咲「ああ。随分昔のやつだったからな」

 

バトル挿入歌『閃耀 / Feryquitous × 可不』

 

俺は別のモンスターボールを取り出し、中央のボタンを押すと、大きな黄色い嘴を持つ顔だけの体に翼と足が生えている白い鳥ポケモンが姿を現す。

水鳥ポケモン ペリッパー。俺が小五の時にゲットした水 飛行タイプのポケモン。ニックネームはペッパー。

 

理央「ペッパー、ヒトカゲと香澄を守るで守護してやってくれ。奴らは俺と市ヶ谷が引き受ける」

ペッパー『分かりました。無理はしないでくださいね』

 

ヒトカゲと香澄を守護を任せられたペッパーは緑色の結界を張ったのを確認した。

大陸ポケモン ドダイトスは重量な前足を出しながらニョロボンと対峙する。

 

ドダイトス『弱えポケモン虐めるとは、おめえらかなりの悪だな。ちょいと俺達が懲らしめてやらあ!』

ニョロボン『ほざくな!お前達やれ!』

理央「避けながら突っ込め!」

 

ニョロボンの指示で一斉に水流を放つニョロゾ達。

水流を避けながらカゲロウは最終進化前のヒトカゲの姿を見て怒りの形相を顕し、尻尾の炎を青白く燃え上がらせる。

 

有咲「ニョロゾ達が邪魔だな...。ドダイトス、タネマシンガン!」

 

市ヶ谷の指示で種の弾幕を飛ばしてニョロゾ達の攻撃を阻むドダイトス。

 

理央「カゲロウ、鋼の翼!」

ニョロゾ達『ぐああっ!?』

 

その隙にカゲロウはエネルギーを集束させて硬質化させた両翼でニョロゾ達を一掃。

残るは親玉のニョロボンだけだ。

 

ニョロボン『貴様ら、よくも...!ハイドロポンプ!!』

理央「火炎放射!!」

 

口から放った水流にカゲロウは青白い尻尾の炎と同じ色の炎を噴き出す。

遠距離攻撃の鍔迫(つばぜ)り合いの中、カゲロウの噴き出した蒼炎がハイドロポンプを押し出す度に湯気が発生。

ニョロボンを飲み込むと同時に木木を()ぎ倒す程に。

 

有咲「す、すげえ...こんなの普通の火炎放射でもねえ。あの威力だとオーバーヒート並みの火力だ...!!」

理央「早めに終わらせるぞ、カゲロウ!」

 

俺はバッグから取り出した黒いバンドを右腕に付ける。

 

理央「群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)に羽ばたく自由の翼よ。晴天に輝く希望を抱き、天地を駆け巡る風となれ!」

 

中央に羽ばたく翼の紋章が刻印されている三角形の形状をしている結晶を嵌め込んでクロスにした両腕を広げる。

再びクロスにした両腕を突き出し、両腕で羽を広げる様にしゃがみ込むと、最後に右腕を真上に突き出す形で一気に立ち上がる。

すると黒いバンドから水色のエネルギーが放出し、カゲロウへと注ぎ込まれる。

 

理央「全力の飛翔、''ファイナルダイブクラッシュ''!!」

 

空気中のエネルギーを集束させたカゲロウ。

後は上空に飛び上がって相手に急降下しながら突っ込むだけだが、これだけじゃ物足りない。

 

理央「そのままフレアドライブだ!!」

 

炎を全身に纏いながら急降下する姿は全てを焼き払う獄炎となってニョロボンへと急降下していく。

攻撃が当たると地面を抉れる程の衝撃を与え、割れた地面の(ひび)から高度の炎が噴き上がる。

 

ニョロボン『うおあああッ!!』

理央「キャプチャーチャンス、ネット!」

 

網状の黒い装飾が付いているターコイズの上面を持つモンスターボール『ネットボール』を投擲(とうてき)する。

このボールは水と虫のポケモンを捕まえ易くするボールだ。

ボールが接触を果たすと、ニョロボンは赤い閃光となって格納される。

地面に落ち、中央のボタンが赤く点滅しながら揺れ動く。後はニョロボンが捕獲されるのを待つだけ。

 

ポンッ!

 

揺れが収まり、星のエフェクトが捕獲完了を合図する。

 

理央「ニョロボン、捕獲完了。ニョロゾ達、お前達は自由だ」

 

俺はそれだけを言い渡すと、ニョロゾ達は早々と立ち去って行く。

その表情は、今まで自分達が散々扱き使わされていた地獄に解放された事を喜ぶかの様だった。

ニョロゾ達が去ってから数分が経つと雨はとっくに止んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒトカゲをポケセンに運んでから治療を受け、引き取られた時には尻尾の炎が(わず)かに灯っていた。

続けて楽器屋に行ってみるとランダムギターは修理済みで、逆にケースは修理不可能だったとの事。

修理代は基本調整学割で3000円。市ヶ谷が払おうとしたが、ギターをケースごとぶっ壊した張本人である香澄が払う事となった。

夕暮れの帰り道は水溜りが出来ていた為、ヒトカゲは俺の肩に乗せる事にした。

 

香澄「よかったぁ...!」

理央「しっかし、今日は災難な日だったぜ。ヒトカゲは殺されかけたわ、バカ姉貴はケースをギターごとぶっ壊すわ、状況整理も出来ないこっちの身にもなれってんだ...けど、最悪な事態だけは免れる事が出来たのが何よりの幸いだ。さて、ランダムスターも修理出来たし早速オークションに売ろう」

有咲「...そのギター、持って帰れば?出品取り下げたから」

 

香澄「えっ?何で...!」

理央「要するに『大事にする条件付きでくれてやる』って意味だよ。そのギター...大事にするか?」

 

挿入歌『井口裕香/一番星ソノリティ』

 

香澄「する!」

 

俺が市ヶ谷の気持ちを代弁した言葉を聞いた香澄の瞳が輝き、大きく頷く。

 

有咲「よし...540円」

理央「540!?」

有咲「奥の取り下げ手数料。30万はおまけしてあげる」

香澄「うん...あ!」

理央「如何かしたか?香澄」

香澄「後300円しかない...」

「「やっぱ売る(わ)!」」

香澄「ああっ!売っちゃ駄目〜!」

 

市ヶ谷の蔵の戸を開けると、祖母である万実さんが立っていた。

 

有咲「ばーちゃん...!」

万実「きれいになったね。約束通り、有咲の部屋にして。はい」

 

万実さんが手渡したのは蔵の鍵だった。

開けてもらった真っ暗な部屋の階段を下り、市ヶ谷は蔵の部屋を照明する。

貼られてあるポスターやソファーなどがあり、最早大部屋と言っても過言じゃないくらいの広さだった。

 

有咲「えーっと...挿して」

 

市ヶ谷の言われた通りに香澄はランダムスターにシールドを接続。

互いの目が合い、市ヶ谷はアンプの電源をオンにする。

電源を入れた事でスピーカーから途切れた様な雑音が小さく鳴り響く。

緊張ながらも香澄は試しにランダムスターの6弦を手で弾くと、音が大きく反響する。

 

理央「...鳴った」

香澄「すごい。すごい!すごい!すごい!すごいよ〜!」

有咲「...香澄、理央。此処で練習すれば?」

香澄「えっ...?」

理央「良いのか?此処でバトルの練習しても!?」

有咲「ただし!昼休み一緒にご飯...それにバトルの方も...嫌ならいいけど!?」

理央「もちろん、大歓迎だ!」

 

香澄に抱き付けれる市ヶ谷。

その光景にヒトカゲは喜びのステップを踏みながら尻尾の炎をゆらゆらと燃やす。

 

ヒトカゲ『理央さん』

理央「如何かしたか、ヒトカゲ?」

ヒトカゲ『考えてみたんだけど、僕はあの香澄って子について行くよ。あの子は、消えかけた僕の尻尾の炎を守ってくれた...きっと何かの縁だよ』

理央「分かった。香澄」

 

俺はバッグから取り出したモンスターボールを香澄に投げ渡すと、ヒトカゲは香澄の足元に近付く。

 

香澄「これって...モンスターボール?」

理央「そのヒトカゲ、お前にゲットしてほしいんだってさ」

香澄「いいの?こんな私でも...」

ヒトカゲ『うん(カゲ)!』

香澄「...分かった。これからよろしくねヒトカゲ!」

 

大きく頷き、香澄とハイタッチをする形でモンスターボールのボタンに触れたヒトカゲは格納される。

数秒間の軽い触れが収まると、星のエフェクトがゲットの合図を知らせた。

 

香澄「ゲットした...ゲットしたんだよね!?」

有咲「はいはいゲットしたよ。これでお前もポケモントレーナーだな」

香澄「やったー!これでりーくんと同じだー!」

理央「うわっ!?急に抱き付くなよバカ姉貴!おい、市ヶ谷!誰かこいつを引っぺがしてくれー!!」

 

香澄が記念すべき最初のポケモンをゲットしたと同時にポケモントレーナーとなり、バンドメンバーは俺を含めて三人となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「お婆ちゃん、此処でライブしたいです!」

オーナー「オーナーだよバカタレ。ヒトカゲを捕まえたくらいでそう簡単にライブはやらせないよ」

香澄「戸山香澄です!」

ゆり「お疲れさまです」

 

香澄が詩船さんにライブをしたいと頼んでいると、牛込姉妹がSPACEに偶然訪れた。

 

りみ「こんちには。あっ...」

理央「牛込とゆり...まさかライブしに来たのか?」

詩船「知り合いかい?」

理央「同じクラスでゆりの妹だ。バカ姉貴が一緒にライブをする子だって言ってるけど、まだそうとは決まってない」

 

それから数分後、控室に入ろうとした俺はドアの隙間を少し開けて様子を見る。

 

ゆり「りみ」

りみ「違っ...あのっ...!」

 

バンドをやる事に決意が出たのかとゆりは微笑んだが、実際は違かった。

 

りみ「やらない...」

ゆり「?」

りみ「バンド...やらない...!」

 

牛込が出したのはバンドをやらないという否定の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理央「次回、『これでイチコロネ』」

 

 

 

 

 




理央のポケモン紹介

きんにく(ゴーリキー)♀
''筋肉無痛姉御肌''
ICV:斎藤貴美子
技:リベンジ、バレットパンチ、空元気、ビルドアップ
特性:根性
スリープと交換して入手した雌のワンリキーを進化させた。気に入った相手に対する面倒見も良い姉御肌。一人称は『俺』。

ミラ(チラチーノ)♂
''全チラチーノ最強の個体''
ICV:神谷浩史
技:スイープビンタ、ロックブラスト、タネマシンガン、身代わり
特性:スキルリンク
潔癖症のチラーミィに光の石を与えて進化させた。相手を威圧する様な冷徹な雰囲気を持ち、理央のポケモン達からは別名『掃除の鬼司令官』と恐れられている。一人称は『俺』。

イトマル♂
ICV:???
技:糸を吐く、毒針、吸い取る、纏わり付く
香澄の箒にくっ付いていたところを理央にネットボールで捕獲された。

ペッパー(ペリッパー)♂
''ポケモン救助宿''
ICV:山寺宏一
技:ウェザーボール、ハイドロポンプ、エアスラッシュ、守る
特性:鋭い目
小5時代にゲットしたキャモメを進化させた。
敬語を使って話し、人やポケモンを助ける事に命を賭けている。一人称は『私』。

リザードン(カゲロウ)♂
''青白き獄炎''
ICV:三木眞一郎
技:火炎放射、鋼の翼、フレアドライブ、エアスラッシュ
特性:猛火
中1時代の担任ケンゴから貰ったタマゴから孵ったヒトカゲを最終進化させた。
ガマロクと同じく弱いポケモンを虐める者は絶対許さない熱い闘志を燃やす性格。リザフィックパレーで修行中で、理央が呼び出す時には手持ちに入れている。一人称は『俺』。

ボンボン(ニョロボン)♂
''平泳ぎ先生''
ICV:稲田徹
技:ハイドロポンプ(ゲット前)→アクアブレイク(ゲット後)、爆裂パンチ(ゲット前)→ドレインパンチ(ゲット後)、サイコキネシス、腹太鼓
特性:貯水
嘗てはニョロゾ達を連れていた親玉。香澄のヒトカゲを一方的に追い込んだが青白い炎を噴き出したカゲロウに敗れると同時にネットボールでゲットされ、技構成を大幅に変更された。
今でもカゲロウをライバル視している。一人称は『俺様』。



理央君の手持ちの中で活躍に期待したいポケモンは...?

  • ルカリオ
  • アーマーガア
  • ゴウカザル
  • ゲッコウガ
  • ジュカイン
  • ルガルガン
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