─────やめろ、来るな。ここは私の……!
────ごめんなさい。でも、私はあなたを討つ
─────嫌だ、立ち去れ!私は!
────……あなたに非は無いの。これは、私達の
帰ってきただけなのに!!!
─────────
懐かしいものを夢として見た。そう思いながら、アークは布団から体を起こす。
「ふぁああ……」
私────ではなく、彼はアーク。イフウ村に住む14歳の、人間の子供だ。しかし、彼は普通の人間の子ではない。
かつて、天廻龍・シャガルマガラだった者。ある種の転生者とも言えるだろうか。
「いただきます」
昔、やっと黒き幼竜から純白の龍へと変異を遂げて故郷たる地へ戻った彼だったが、その途端、ある人間───ハンターと呼ばれる者だったか───に討たれてしまった。
だが、死して魂となり地に還る寸前、天を廻りし純白よりも更に白の龍に出逢った。真白の龍は『
そして『
『お前の生は短すぎた。お前にはやるべきことがあり、お前はまだ世界を見るべきだ………だから我は、お前に新たな生をくれてやる。せいぜい、我が与えた生の意味でも考えるがいい』
それに答えることは純白の龍には許されず、そして気がつけば、純白の龍はアークという、人間の子となっていた。
「ごちそうさま」
そうこう生きて、既に14。アークも、人としての生になんだかんだと慣れていた。
さてそんな彼だが、彼にはひとつ、考えている事がある。
「アーク?起きているか?」
コンコンと、アークの住む家屋の戸が叩かれる。女性の声が、アークがいるかと尋ねる。朝食の片付けを丁度し終えたアークは、戸を開けに行く。
そこには、青い毛皮の装備を纏った女性がいた。
「おはようございます、ユウ先生」
「おはよう、アーク。今日はいい天気だから、絶好の狩り日和だ」
彼女はユウ。イフウ村の狩人……ハンターだ。アークのハンターとしての師でもある。
「アーク、今日が何の日かは分かっているな?」
そうユウが言うと、アークは頷く。
「分かってますよ。山の方に行っての実践ですよね?」
「その通りだ。だから、早く準備をして来い。……まあどうせ、出来ているのだろうが」
ユウがそう言い終わらないうちに、アークは見習い用の装備と、山に行くための準備を終えていた。準備が早いとよく言われるが、それはおそらく、天廻龍……その前の黒蝕竜として入念に感知や探知を行っていた頃からの癖だろう。できる時にできる準備はするべきだ、と。
「うむ。それでは早速行こう」
「はい、先生」
あまり長くないやりとりをしてから、家屋を出る。
朝まだ早いというのに、村はそれなりの活気を持っている。
イフウ村は山に囲まれた海岸に存在する村だ。西は高い山、東は崖と海。名産品は『風芋』という芋。詰まっているのに軽い不思議な芋。焼いてバターとハチミツを添えると美味しい。
村の各所……例えば家屋の戸の上などには、風袋を纏ったような姿の龍を象ったエンブレムが飾られている。
これはこの村で信仰される『アマカゼ様』を象ったものなのだそうだ。
2人が山の方へと向かっていると、農作業の準備をしていた村人が挨拶してくる。
「んお?ユウとアークか!凄い朝からどうしたんだ?」
「おはようございます。今からコイツに実践を積ませるんです」
ユウはアークの頭をわしっと掴む。それにより、ちょっとアークは転けかけた。その様子に村人は微笑ましそうに笑う。
「そうかそうか!頑張って来いよ!」
「あ、ありがとうございます……?」
お礼をどうしてか疑問形で言いつつ、そのまま引きずられるようにアークは山の方へと連れていかれた。