「おい、起きろ」
その言葉と共に感じた痛みで、アークは目を覚ました。
ぼんやりする視界の中に、青熊ま↓獣の装備が目に入る。
ユウだ。
「大丈夫か?よく生きていたな」
「は、はい……」
とりあえず立て、と言われてアークは立ち上がる。
周囲を見渡せば、あの道化は落とし穴にかけられすやすやと深く眠っている。
いったい何があったのか分からない────いや、ユウがあの道化を捕獲したのだということはアークは分かっていたが、それでも困惑が勝っていた。
その様子に、ユウは説明をする。
「聞き慣れない咆哮が聞こえたからな。嫌な予感がしてこっちまで来たんだ」
イフウ村周辺には、夜鳥は生息していない。少なくとも山をひとつ越えたところで出会うことは無いはずだ。
何故なら、空は特に「アマカゼ様」の影響が強い。常に風が強いため、そこらの鳥竜や飛竜では簡単に来れないのだ。
それこそ空の王者や千刃の長、電の叛逆者等の高い飛行能力を持ち合わせなければ越えられない。
尤も、そういった強大な力の飛竜は例外を除いてアマカゼ様に撃墜されたりするのでそう滅多に越えることはないのだが。
と、アークはふとユウが武器……大きな盾と、銃口を備えた槍を────ガンランスを持っていることに気がつく。
確か、メモを渡された時にはユウは武器を持っていなかったはずだとアークは首を傾げる。
「ん?ああ、
「ライさんとソラですか」
「ああ。私達よりも先に朧隠の情報を掴んでいたみたいでな。……まったく、私だったから良かったものの……」
ユウは溜息をつきつつ、ガンランスを納刀する。
ライとソラ。ライはイフウ村に住むライダーだ。ソラはそのオトモンの
ライは基本的に真面目なユウとは反対に、楽観的な人物。だからユウは少し苦手としていたが、アークにとっては兄のような人物だ。
ソラも
「ギルドへの連絡は全て奴らに押し付……任せてきた。
それで、アーク。起きたばかりだが、物は集まったか?」
そういえばそんなことの真っ最中だったと思い出したアークは頷き、ポーチの中からメモに書かれていた、集めた品々を取り出し、渡した。
「ふむ……よし、及第点をやろう。」
及第点と言うものの、ユウの表情は少し笑っている。つまるところ、「合格」というところだ。
さて何故実践の筈なのに「合格」なのだろうかと疑問が残るだろうが、少し待って欲しい。
ともかく、アークは一足先に村へ戻ることになった。
────────
その晩、諸々終わらせてきたユウが戻ってきて、アークの家を訪ねた。
2人が晩御飯を終えると、ユウは話し出した。
「アーク、それで、もう一度聞くが……本当に村を出るつもりなのか?」
アークは頷く。
「はい。わた……僕は、どうしても会いたい人がいるので」
「なんだったか?昔のお前を討ったハンター……だったか?」
ユウはその少しふざけた言葉と裏腹に、真剣な様子だ。
アークがまだ人としての生に慣れきらない小さな頃、彼は村の大人に「自分は龍だった」と言い回っていたことがある。ほとんどの者は子供特有の妄想だと真面目にとりあうことはなかった。
ただ、ユウとライ(と、ソラ)は何か思ったのだろう。少なくとも半分は信じていた。
「強大な力を持つ龍を討った者は何人かいる。けど、それは過去の人だったりすることも多い。もしかしたら、既にこの世に居ないかもしれない。ハンターとはそんなものだからな」
それでも探しに行くのか?とユウは問う。
「勿論。僕は、どうしても……一度会いたいんです」
アークの金色の瞳が、確固たる意志を灯してユウを真っ直ぐと見る。
するとユウは、ふっと笑った。
「ああ、分かっている。だからこその合格なんだ」
『合格』……あの実践は、アークが村から出ても大丈夫かというようなものだった。きちんと基礎が出来ているか測るためのアイテム群だった。
齢14?関係ない。ハンターのデビュー時期と実力は、必ずしも比例しないのだから。
さてそろそろユウも帰るかと戸を開け、外へ出た。
アークはその姿を見送る中、ユウが「あっ」と言って振り返った。
「そうそう。出発は明日だ。ライ達に街まで連れてってもらえ」
「えっ」
アークが「待って」という前に、ユウは「早く寝ろよー」と言い去ってしまった。
「ええ……」
嘘をつくような人ではない。仕方がないので、あらかた準備をしてから眠ることにした。