アークがイフウ村から発つその日はとてもよく晴れていて、天風山から吹き降ろす風がとても気持ちいい。
数少ない少年が村の外に行ってしまうということからか、村人総出での見送りになっている。
「おおんおおん……ほんと大きくなって……」
「頑張って来るんだよ〜!」
「からだに気をつけてねぇ」
村の人達がおんおんと大袈裟にそうする様子に、アークは苦笑いしつつも嫌ではなかった。
「大丈夫だから、村長さんに風車のお婆さんに風芋畑のおじさん」
老人とは涙が脆いものなのだろうかと考える。
「おはよ、アーク!元気してるかー?」
『ギャウッ』
アークに話しかける男性と、その隣に竜が一匹。
男性は、所々ネオンブルーのラインが走った、黒いコートのような装備を着ていた。見た目はかなり違うが、『青電主』の装備であるとアークは聞かされていた。
竜は、黒い外骨格に覆われたようにも見える竜だ。その翼はむしろ翅と呼んだ方がしっくり来るような、半透明の美しい翼膜をもったものだ。
それぞれ、ライとソラ。昨日ユウに武器と情報を届けた
ライは自身の荷物を持ち、ソラは2人乗りの鞍を付けて準備万端といった様子だ。
「元気かと言われれば元気……かな。どちらかと言うと、ワクワク?ソワソワ?そんな感じがしている」
「そーかそーか!ま、ならヨシってやつだな!」
ライのテンションの高い様子に、ソラもうんうんと頷いている。
これからアークはソラに乗り、最も近くにある街へと行くのだ。
と、ユウがやってくる。見送りに来たのか。
「アーク、準備万端の様子だな」
「はい。色々教えてくださって、ありがとうございました」
ユウは得意げな笑顔を浮かべる。
「ふふん。まあだが、まだまだ駆け出しだ。死ぬようなことがないようにな」
「わ、分かってますよ」
からかうような、でも忠告でもあるそれにどんな反応をすればいいか分からなかったのか、アークは頭をかいた。
「ま、風祭りにたまに顔を見せに来るといい。それと……」
ユウは封筒をひとつ、アークに手渡す。
封筒にはユウの名前と、見慣れない『バルク』という名前が書かれている。
それを見て、アークは首を傾げた。
「これは……?」
「龍識船という船があってな。その船にいるハンターに、私の師であるバルクという人物がいる。彼なら、何某かお前の探しているハンターについての手がかりも持ってる可能性が高い」
龍識船の位置は大きな町のギルドで聞け、そしてその人物を頼れ、と。
アークは目を見開くと、頷き、頭を下げた。
「ありがとう、ございます」
「ああ。頑張れよ」
そろそろ行くぞー!というライの声に急かされ、アークは礼をするとソラへと駆け寄り、鞍の後ろ側へ乗り込んだ。
「それじゃ、出発するぞー!」
『ギャーウ!!』
村人達の声を下に、ソラは飛び立った。
清浄な風の中を、その風をものともせずソラは飛行する。
山を越えるためか、雲の高さまで行く。
天風山のすぐ側の雲の中を通るその瞬間、雲間から見えた龍と、アークは目が合った。
その龍は風を纏い、天風山の周囲の雲間を
羽衣のような鰭を持ったその龍は、アーク達を認識するものの敵意はなかった。
祝福のつもりなのか、それともほかの意味があるのかわからない。
『ヒュオオオオオオオオオ…………!』
ただひとつ龍は咆哮を響かせた。
アークはそれに驚きつつも意図を理解し、ほんの少し笑った。