しばらく飛び、天風山の風も弱まるほどの位置に来た頃。ライはふとアークに話しかけた。
「なあ、アーク」
「?」
「アークは昔、龍だったってのはまあアークがちっちゃい頃から散々聞いてきたけどさ……どうして自分を倒した相手に会いたいんだ?」
そう問われて、アークは少し悩んだ。特に『コレ』という理由はなく、ただなんとなく……だけど「必ず会ってみたい」という気持ちが強いのだ。
「えっと……ほとんどは興味。自分を討った人がどんな奴なのかとか、そう分かるチャンスはないし」
少し誤魔化してそれっぽく答えた。嘘は言っていないし大丈夫だろう、と。
するとライは、あっはっは!と笑った。
「そうか!ま、そういうのもあるか!!はははは!」
『ギャウッ、ギャウッ!』
「ふ、2人して笑わないでって……?!」
つられたのか笑いだしたソラにも慌てて言うが、笑いが簡単に止まったりしなかった。なのでアークは諦めた。
「……っと、さて。今向かっている場所は分かるな?」
ライの問いかけにアークは頷く。
「ルルシオンだっけ。そこから船でギルデカランに行って、ギルデカランから出る船に乗ってモガの村?に行く」
「そうそう。とは言っても船の来るまでの間隔は広い。その間、しばらくクエストをこなしてるといいよ」
ルルシオンは海上都市。だが、そこにギルド本部はなく、ギルデカランギルドの出張所となっている。
とはいえ、ギルデカランの本部と同じくらいの権限はあるようで、大体のことはルルシオンでもできる。
しかし、アークを討ったハンターは『禁足地』に来た……つまり、少なくとも天空山がある島国が近い大陸にいる確率の方が高い。龍識船も、その大陸の未開の空を飛ぶことが多い。
それを知ってか知らずか、それとも直感か、アークはこの大陸から海を渡ろうとしているのだ。
「つい最近まで『リオレウス事変』とかで色々騒がしかったけど……ま、ルルシオンはいいとこだよ。ただ、ちょっとハンターの治安は悪いから気をつけるんだぞ」
『ギャウッ』
「はーい」
─────────
その会話から何度か地上で休みを挟みつつ、翌日の真昼。折り返し地点はとうに過ぎて、あと3分の1も切ろうというところの事だった。
そろそろ海も少しずつ見えて来た。ここまで来ればあともうひと息、といったところか。
穏やかな空模様、空ゆく他の生物は鳥程度。平和にたどり着けると3人とも思っていた。
突然、ソラが唸り出した。
『ヴヴヴ……』
「どうしたんだ?ソ……うおあ!」
ソラが咄嗟に高度を下げると、頭上スレスレを何かが掠めた。
「な、何うわあっ?!」
『グシャァァァァ!』
ソラが咆哮を上げ、何者かへと威嚇する。しかし何者かは姿を表さない。
それどころか、ソラより航空から何かを放ってきた。
「アーク、捕まれ!」
ライの声に、アークは鞍へと捕まる。
するとソラは放たれた何かの間を縫って上昇しつつ、蒼色の雷ブレスを放つ。
蒼色の雷ブレスは何者かへと直撃し、何者かはバランスを失い墜ちる。
墜落しつつある何者かは、金色の鱗を持った飛竜だった。なんだったか、どこかで見覚えがあるな……と、アークは思った。
が、その思考はライとソラの会話にさえぎられて。
「ソラ、今のうちに!」
『ギャウッ!!』
即座にライの指示を受けたソラは、牽制のために1発だけ雷ブレスを放ってからその場を離脱する。
追撃を受けた金色の竜を確認する間もなく、ソラは全力飛行を行い、遠くに見えた街の壁目指して飛んだ。