帝國の書庫番   作:跳魚誘

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砂粒を集めて、絵を描くが如く。


帝國の書庫番 丗六幕

誰も寄せ付けぬ筈の女は男の手を振り解く事無く其処にあり、誰もが恐れる女を全く恐れる事無く男は其処にあった。有坂十技子は自身の首に絡み付かれても無表情のままであったが、やがて「鬱陶しいのう」と一言吐く。有坂孝晴と、その兄である孝成によく似た面立ちに着物を着流した初老の男は、その反応に笑みを深めた。

「なんでィ母ちゃん、そんな不機嫌な顔して。別嬪が台無しだぜぃ。」

「何故(なにゆえ)に此処に現れたのだえ。」

「自分の嫁さんに旦那が会っちゃならねェ理由もあるめえよ。」

素気無く告げられた言葉に漸く男は腕を離すが、にへらと笑ってその場に留まる。

「それに、あたしらの『契約』の事もあるしなァ。」

「……。」

その言葉に、有坂十技子の目だけが背後の男の方へ動いた。男は笑みを崩さぬままだ。

「あたしゃあこの通り粗忽者なモンでね。うっかり忘れちゃならねェから確認しなきゃあと思ったのよ。勿論、母ちゃんが忘れてる筈ぁ無ェからなァ。」

「御託は良い。何が言いたいのだえ。」

「あの娘(むすめ)は、契約にゃ含まれて無ェ。」

男は言った。そう、有坂十技子は、それについてまさに考えていた。彼女と男――有坂家現当主であり、彼女の夫である有坂督孝(よしたか)の間には、婚姻に際して契約が結ばれた。否、その契約があったからこそ、彼女は有坂家に嫁ぐ事を了承したのだ。布都宮(ふつのみや)の娘である十技子を娶る事で、有坂は帝室との縁を得て生き残り、そして十技子は有坂を得る事で自身の願望を達成する。それが二人の間の契約だ。しかし、其処には「息子の妻」に関する項は含まれていない。

「邪魔立てする気かえ?」

十技子はゆうるりと言葉を吐く。有坂督孝はそれを聞き、からからと笑った。

「うんにゃ?そんなつもりは無ェよ。あたしゃァこの家の事にゃ関わら無ェ。けど、母ちゃんが契約から外れるンなら、あたしも其処は、手ェ出しちまうかも知れねぇなァ。」

なー母ちゃん、と再び身を寄せて来た督孝の薄い額に優雅に扇の骨を喰らわせつつ、食えぬ男よ、と内心で呟き、有坂十技子は小さく鼻を鳴らした。

 

 

二月も過ぎ、警兵隊内には年末程の慌ただしさは無い。首無事件、兵舎狙撃事件、そして顔無事件。何れの事件も捜査は続いているが、出て来るのは他愛の無い情報ばかり。首無事件の男の家の屋根裏に屡々子供が入り込んで遊んでいたという情報は、屋根裏に埃が少なかった理由として辻褄が合うものの、捜査の進展には繋がっていない。そのような中、警兵兵舎内で同室の将校三人は顔を合わせていた。刀祢麟太郎、白鞘亀巳弥(きみや)、柄本(つかもと)雨竜。入隊時期も違えば年齢も異なる三名であるが、警兵には珍しく、同じ階級の者同士、そして同室によしみを結んだ同士の気兼ねの無さが生まれていた。その中の一人、未だ二十代ながら白髪混じりの髪をした白鞘が口を開く。

「貴様等は既に『あの件』について、調査の為に語り尽くしたと思う。だが、俺個人の感覚を貴様等に共有して置きたい。」

「回りくどい言い方してんじゃねぇ、狙撃事件だろ、テメェが言いてぇのはよ。」

「左様だ。話が遅れたのは……単純に、時が合わなかった。」

軽く頭を下げる白鞘に、柄本は顔を顰めて頭を掻いた。

「それで、一体何なのですか。感覚というのは。」

真っ直ぐに白鞘を見て言ったのは麟太郎だ。他の二人は足を崩しているが、麟太郎は正座の膝の上に「くろすけ」を載せている。羽の包帯は取れたが、まだ飛び回るまでには至っていない「くろすけ」に目を遣ると、白鞘は軽く咳を払う。

「あの夜、俺は初めにその鴉が窓に向かって戻るのに気付いた。しかし、あの矢が射掛けられた時。瞬間的に思ったのは、……鴉が危いという事だった。鴉の飛ぶ先にある窓に刺さったのだからな。故に、俺は鴉を追い返そうとした。明かりの漏れる兵舎より、暗がりの方が、狙いが定まらず安全だ。そう思った。しかし結果は……知っての通り。頭の良い鴉と思ってはいたが、まさか、此方に『抗議する』とは思わなかった。そしてその為に、射手に機会を与えた。鴉を射る機会をな。」

「その状況は全員知ってる。で、何が言いたいんだよテメェは?」

柄本が口を挟むが、口調に怒りや苛立ちは無い。ただ口が荒いだけの彼の普段通りの問いかけだ。白鞘は頷く。

「俺は……射手の狙いが『俺』であると感じた。恐らく、射手からは窓の内側まで見えていた。外が暗ければ、明かりの灯った部屋の内側の方がよく見えるものだ。窓枠への一射は、兵舎を狙った訳でも、撃ち損じた訳でも無い。俺を煽る為に、鴉を確実に撃つ為にそうしたのだ。最も重要な狙いは、鴉だったのだ。俺は、そう感じた。」

「……。」

麟太郎は無言で「くろすけ」に目を遣る。「くろすけ」は麟太郎を見上げて首を傾げた。孝晴は、初めから「くろすけ」が狙いであったと推測していた。それは、白鞘の感じたものと一致している。そして、それが本当ならば、射手の真の狙いは、孝晴なのだ。しかし、射手は死んだ。……死んだ射手の後ろに、一体何が存在しているのか。

「刀祢?」

「はい。」

「どうした。反応が無かったが。」

「申し訳ありません。……同じ事を、私の主も推測していましたので、それを考えていました。」

白鞘は眉を寄せて「同じ?」と首を傾けた。

「狙いは兵舎では無く、『くろすけ』であったと。……その理由までは、分かりませんが。」

麟太郎は「必要な嘘」をついた。孝晴が狙われた事は、公にする訳にいかない。しかし、そこでふと、麟太郎は思い至る。孝晴が撃たれた時、彼は死んだふり――と言うには余りにも無謀な方法ではあるが――をして、その場を切り抜けた。という事は、彼を狙撃した者は、孝晴が死んだと思ったのではないか。しかし孝晴が「怪我」をして生きているのは周知の事実。これでは、狙撃手には、いや、その背後に居る何者かには、孝晴の異常が伝わってしまうのでは……。そう考えつつ、麟太郎は思考を引き戻した。白鞘は顎に手を当てて考える素振りを見せ、やがて目線を麟太郎の膝の上に向ける。

「少なくともその鴉は、他の鴉とは明らかに異なる。電信の隙間を埋める重要な通信手段の担い手として狙われた可能性も、無くはないだろう。」

「珍しいな、テメェが推測だけの物言いすんのは。」

「その後全く動きが無い故な。無駄な推測やも知れんが、今はそれしか出来ん。」

白鞘の返答を聞いた柄本も、「くろすけ」に向けた目を細めた。麟太郎も目線を下げると、「くろすけ」の黒い眼(まなこ)が此方を見上げている。孝晴は自分が狙われた事実と絡めたが、もっと単純に、警兵に対する反感が表れたという可能性もあるのだろうか。仮にそうだとしても。

「……今後は、『くろすけ』を簡単には使えなくなるやも知れませんね。」

麟太郎は呟くと、「くろすけ」の艶々とした黒い羽の根に指を差し込み、掻くようにして撫でてやった。

 

 

まだ日も落ちる時間は早く、夕刻になれば気温も下がる。上着の釦を閉めて退勤する文官達を他所に、有坂孝晴は一人机に向かっていた。誰も居なくなった部屋の中、鉛筆の先を紙に走らせる音だけが暫くの間響いていたが、やがて戸が外から叩かれる。

「遅くなりました、有坂書記。」

声と共に戸が引かれ、一人の青年が姿を現す。孝晴と同じく鶯色の文官服を着た霧生立夏は、一つ会釈をしてから静かに戸を閉めた。

「お話の時間を作って下さり、有難うございます。」

「構わねェよ、俺もお前さんとは話したいと思ってた。」

鉛筆を置いた孝晴は軽く笑みを作って立ち上がると、適当な椅子を引いて座す場所を作り、互いに向かい合うようにそれぞれの椅子に座る。

「で、態々二人っきりになってしたい話ってのは、何なんだィ。」

「そうですね、では、単刀直入に。」

霧生立夏は真っ直ぐに孝晴に目を向け、言った。

「新しい姓は、もう決めましたか。」

「は?」

それは余りにも唐突な問いだった。いや、孝晴は妻を娶る事になっている。有坂家が分家を作らない事は周知の事実だ。家を出る時、同じ有坂の姓を使わなくなる事もまた、事実。しかし、何故それをわざわざ尋ねるのか、理由が全く分からない。疑問符で返した孝晴の前で、霧生は顎に手を当て、呟くように言った。

「成程、まだ何も聞いていないのですね……ふむ……。」

「オイ、何を納得してンだ?お前さん、一体俺の何を知ってる。」

「安心なさってください、私は貴方の味方ですから。ただ、今の貴方に協力していただきたい事があるだけで。その為には、貴方に知って貰わねばならない事があります。――有坂の、『分家』について。」

その言葉に、孝晴の眉根に皺が寄る。今まさに考えたとおり、そんなものは存在しない筈だ。孝晴が無言で先を促したのを確認すると、霧生は口を開く。

「有坂家は、直系の子のうち当主が定めた一子を次の当主とします。そして、他に子があった場合、有坂とは別の姓を得て、有坂の身分や関係は引き継がず新たな家を作る。これが家令にも記載されている決まりであるのは事実。しかし……ここには例外が存在しているんです。」

一つ息を吐き、霧生は孝晴の目を見詰めた。

「有坂書記。貴方は、何故有坂家がこれ程の権力を持っているか、疑問に思った事はありませんか。」

「……。」

「答えは、この例外にあります。有坂家は、かつて中泡海(なかあわみ)の一豪族でした。生き残りを賭けた戦乱の時代、当主が生み出した諜報戦術。それが、血を分けた子を表向きには一族から切り離して追放し、情報収集に当たらせるというものです。遠方に追放され、身分も失い、一見有坂とは無関係となっても、その実有坂への忠義を捨てずに生き延びた『分家』。それが、この國の各地に、至る所に、存在している訳です。彼らは有坂の要請があれば、自身の所属する身分や職分に従って得られる情報を提供し、また有坂から与えられた情報を使って利益を得る。そうして広範囲に渡る諜報網を築いた有坂は、やがて働きを評価され、現在に至る地位を得ました。」

「お前さんが、『ソレ』だってのかぃ?」

「そうです。」

孝晴の問いに、霧生は当然の如く頷く。つまり、彼は。

「私は有坂書記とは、遠い遠い血縁になる訳ですね。」

軽く微笑む霧生を見て、孝晴は目を細める。

「そりゃあ、軽々しく他人にして良い話じゃねぇンじゃねぇかィ。何で俺に漏らした。」

「それは勿論、貴方もいずれ、私と同じ立場になるからです、有坂書記。貴方には既に許嫁がいらっしゃいます。兄君が家を出られない以上、今代で役目を負うのは貴方しかいません。」

孝晴は無意識に奥歯に力を入れた。その理由を考える前に、孝晴は思考を敢えて断ち切る。今は、目の前の男が何を目的にしているのかの方が重要だ。

「……で?俺にそれを伝えて、お前さんにどんな利があンだ。」

「そう、本題はそこなんです。有坂書記。」

孝晴の問いに頷くと、霧生は悩まし気に目を細める。

「我々の活動は、有坂への古典的な忠義で成り立っています。褒賞や見返りがある訳では無いんですよ。当然ですよね、我々は有坂とは無関係の間柄、万一の時には切り捨てられる訳ですし、痕跡は残らないに越した事は無い。けれど、有坂を支えるのは自分達だという自負があります。……それを、父が、裏切ろうとしているんです。」

「……。」

「私にこの使命を伝え、有坂に尽くす事を教えたのは父です。しかし、最近の父はおかしくなってしまった。ある時から、有坂から離れると言い出しました。そこで、貴方の力をお借りしたいんです。未だ有坂に属する貴方なら、父の……、」

「ちょっと、待て。」

孝晴が手を上げ、霧生の言葉を遮った。そして、大きく息を吐く。

「そりゃあ、別に、親父さんの好きにすりゃ良いんじゃねェか。離れるとか離れないとか、ンなの有坂家(うち)にとっちゃ屁でも無ェよ。どうせ見返りも無(ね)ンだろィ。辞めちまえ、そんなもん。」

霧生は目を丸くして、ぽかんと口を開けた。そして信じられないものを見るように首をゆるゆると振る。

「貴方が、お役目を否定するんですか?」

「そもそも俺にゃそんな話されて無ェし、する気も無ェからな。それに俺ァ出来損ないだ。向こうだって、そんな事任せるつもりも無ェだろうよ。」

「……。」

言葉を失ってしまった霧生に、孝晴はもう一度息を吐く。まさか有坂家にそんな独自の情報網があったとは。それを全く知らなかった自分にも、嫌気がさす。きっと後継者である孝雅は知っているのだろう。今それを使っているのが母なのだとすれば、あの母がどんな事でも手に取るように知っている理由にもなる。首を振って話を切り上げようとした孝晴に、霧生は僅かに慌てる様子を見せた。

「待って下さい、有坂書記。私が父を引き留めたい理由は、お役目があるからだけでは無いんですよ。父は何か良からぬ事に手を染めているように感じるのです。頸に妙な印まで入れて、」

「頸に印って言ったか?」

唐突に孝晴が口を挟み、霧生は目を瞬く。

「はい。……何か心当たりがあるんですか?」

「……そりゃあ、赤い印じゃ無ェだろうな。」

「その通りです。ご存知なんですか?」

霧生は眉を寄せ、孝晴の目を見た。まさか、こんな所で繋がるとは。

 

――「頸に赤い印のある者」を見たら、注意して頂きたく存じます――

 

四辻鞠哉の囁きが脳裏に浮かび上がる。切裂事件はぱったりと消えたが、太田家にあの書状を送り付けた者が現れた訳ではない。ここで手掛かりを得られるならば。

「頸に印がある奴に注意しろ、って言われた事がある。俺が知ってる件に絡んでるかも知れねェ。お前さんは、その印について何を知ってる?」

「……有坂書記は、それを知ったら、父の説得に力を貸して下さいますか。」

僅かに目を細めた霧生に、孝晴は応える。

「お前さんらのお役目とやらについては、俺はどうでも良い。けど、先ず、その印が本当に怪しいモンなのか調べてやる。その結果によっては、親父さんに忠告に行ってやるよ。同僚としてな。」

「……分かりました。」

霧生は息を吐く。彼の中では想定通りに事が進んだとは言い難いだろうが、それでも折り合いを付けたようで、改めて話し出す。

「初めは傷だと思いました。火傷でもしたような痕になっていて。ただ、傷にしては余りにも綺麗というか、円形をしていたんです。それで奇妙に思って訊ねました。すると、『アカツキの証』だと言ったんです。」

「アカツキ?」

「『アカツキ』が何を指すのかまでは、私には分かりません。ただ、有坂に縛られる必要は無いのだと言われた時に、こうも言っていました。『アカツキ』こそが世を創るのだ、と。」

「世を創る……。」

きな臭いな、と孝晴は思った。榮羽音の元に届いた手紙も、異人との関係を崩し混乱を呼ぼうとしているようにも受け取れるものだ。國を乱し力を削ごうとしている勢力が存在しているのだろうか。書面上の情報では、今の所そのような気配は無いが。

「その印ってのは、具体的にどんな模様なんだ?」

「具体的にと言っても、赤い円模様、としか。」

ただの円。となると、何の象徴か確定するのは難しい。円には様々な意味がある。ただ、赤い円と「アカツキ」という言葉から真っ先に思い浮かぶのは太陽だ。太陽の名を標榜して政権に叛旗を翻すような集団は、以前調査した時には存在しなかった。どちらかと言うと、國の雅称や別称、地域名や神話を用いる事が多い。しかし。

(『今』潜伏してる組織なら、記録には出て来ない可能性は充分ある。何が目的かも分からねぇが……。)

「なぁ、お前さん、武橋って野郎の事、何か知ってっか?」

「何ですか急に…武橋と言えば、太田家の分家ですよね。御子息については……素行が良くないらしいとしか。」

「まぁ、そんなもんか。ソイツがもしかしたら、『印』の件にも絡んでるかも知れなくてな。お前さんも気にしといてくれ。」

そう言うと孝晴は立ち上がる。もう話を続ける気は無いのだと察した霧生も、息を吐いて立ち上がったが、椅子を片付ける孝晴に目を向けて言った。

「有坂書記、やはり貴方は私と同じ立場になる気がします。貴方が、周りと比べて劣っているようには、私には見えませんし。」

「そりゃどうも。俺の監視も、お役目か?」

へらりと返された言葉に、霧生は苦笑する。

「気付いていらっしゃいましたか。」

「お前さんが気付くように仕向けただろぃ。さ、話は終いだ。さっさと帰らねェと嫁にどやされる。」

「……ふふっ。」

自席に戻って片付けを始めた孝晴を見て、霧生は小さく声を出して笑った。

 

 

私立望月医科学研究所、廊下の奥。月の光が落ちる中庭を横目に、青年――アカツキは手を動かしていた。かりかり、かりかり。頁に文字が刻まれてゆく。彼が産まれてから、それが不可能な期間を除いて書き続けて来た日記は、この部屋を埋める程の膨大な量になった。使う道具も随分と変わった。長く筆を使って来たが、羊皮紙やペンでも書き、そして今は鉛筆だ。かりかり、かり。最後の文字を書き終わると、アカツキは帳面を閉じてその表紙を満足気に撫でる。そして何気無く机の上に置いてあった本を手に取った。この本も、初めに見た時から随分形を変えて来た。何度も読み込んだ為、どの辺りに何が書いてあるかも大まかに覚えてしまった、この國の創世からの神話を綴った歴史集。ぱらぱらと頁を捲り、指を挟んで止める。そこに記されているのは、とある神の来歴だった。

 

赫赫タル月ノ隠レシ夜。媛神ノ腹裂キテ鬼神産マレリ。身丈成人ニ等ク、髪身丈程ニ長ク、牙鋭ク、口耳迄裂ケリ。鬼神、天空ニ咆哮ス。雲晴レ、赤キ月在リ。凶兆タリ。鬼神、舟ニテ常世國ヘト流サレリ。其鬼神、名ヲ――

 

「ふふ……。」

アカツキは小さく微笑むと、指を退かして本を閉じる。そして頬杖をつき、小さく呟く。

「『かはたれそ』、か。」

どこか懐かしむような色を孕んだその言葉は、その真意を知る者も、またそれを聞いた者もおらず、白い光の作る影の中に静かに溶けて行った。

 

「帝國の書庫番」

丗六幕「点描」

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