ラブライブ! ~黒一点~   作:フチタカ

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第四十一話 吐露

「こんにちは!」

 

 私、南ことりは最近始めたバイト先にやってきていた。

 いろいろ事情があって始めたメイド喫茶での勤務だったけど、思っていたよりも自分の性格や趣味にもあっていたようです。最初は大変だったけど、今ではμ’sの練習と同じくらい楽しく参加することができていました。

 

「今日も頑張ってね、ミナリンスキーちゃん」

「はい!頑張ります!」

 

 到着してすぐに店長さんがメイド服を抱えて持ってきてくれる。

 うわぁ、やっぱりここの制服可愛いよぉ!

 渡されたメイド服を広げてみて改めて思います。いつか私もこれくらい可愛くて、見ている人の心を掴む衣装を作れるようになりたいなぁ。たしかに私は『ミナリンスキー』っていう名前を貰って、一部の人からは伝説のメイド……なんて呼ばれているけど、実際は私の力なんて大したことはないんです。

 

 このお店の雰囲気や、衣装に助けられてるだけだから。

 

 そろそろ交代の時間も近づいているので、ことりは更衣室に小走りに向かいます。急いで着替えてお手伝いしないとね。

 素早く来ていた服を脱いで、作りが細かい分少しだけ着辛い衣装を羽織った。

 優しい柔軟剤の香りが鼻孔をくすぐる。

 

「お待たせしました、交代します!」

「あ、ミナリンスキーちゃん。それじゃ、お願いしますね」

 

 お客さんにお冷を運び終えて戻ってきた先輩に一声かけて、持ち場を交代する。

 大きく深呼吸して笑顔の練習。よし、今日も頑張ります!

 

 気持ちを入れ直して入口の近くでスタンバイ。すると……。

 

 

 

 カランカラン

 

 

 さすがは人気店。すぐにドアに備え付けられているベルが鳴った。

 

「いらっしゃいませ、ご主人様。今日はお二人でお越しですか?」

 

 今の私にできる最高の笑顔でご挨拶。

 まず最初に目に入ってきたのはマスクをつけた長身の女性。腰まで伸びる艶やかな髪やすらりと伸びた肢体がいかにも大人の女性といった感じで格好いい。絵里先輩とちょっと似てる感じかな。

 いいなぁ、ことりは背も高くないし雰囲気も大人っぽくないし……羨ましいです。

 

 しかし、続いて入ってきた男性の姿をみて凍り付いてしまった。

 

 男性としては平均的、もしくは少し高めの身長に人並みには整えられている短髪。一応容姿は格好いい部類にはいるだろう。その人はメイド喫茶が珍しいのか目を爛々と輝かせながら店内を見渡していた。

 ことりはこの人の事、知っています。

 

 

 他でもない、古雪海菜さんが目の前に立っていました。

 

 

「……」

「ぴぃっ!」

 

 目が合ってお互いに動きが止まる。

 よほど驚いたのか、海菜さんは口をあんぐりと開けてこちらを見つめています。ことりはというと、予想外過ぎて変な声が出てしまいました。

 

 な、なんで海菜さんがここに!?

 偶然だよね、驚きようから考えると……!でもなんで?

 

 あたまがぐるぐると回る。

 

 穂乃果ちゃん海未ちゃんにも伝えてなかったし、内緒にしてたのにこんなところでばれてしまうとは。

 本当は海菜さんに口止めやら、お願いやらをしなくてはいけなかったんだろうけどその時のことりにはそんなことまで気を回す余裕はなくて……。気付いたら厨房まで逃げ込んでいました。

 

 

 うぅ……あとでちゃんとお話ししなきゃ。

 

 

***

 

 結局、海菜さんともう一人の女性が帰るまではこそこそと洗い場で皿洗いばかりこなしていました。一回逃げてしまった手前、なかなか二人の前に姿を現す勇気が出なくて……。

 

「お疲れ様でした」

 

 二人が出て行ったあとからはいつも通り働いて、特に店長さんに叱られることもなく今日のバイトは終了。店から出ると外は夕日に照らされて真っ赤に染まっていた。

 でもことりにはまだやらなきゃいけないことが残っています。

 

 スマホをカバンから取り出して、溜まっていたメッセージをとりあえずは放置。電話帳から古雪海菜の名前を探して通話ボタンを押した。彼に電話をかけるのはにこ先輩の件以来で、少しだけ緊張します。

 優しい人だとはいっても、一応は先輩だし……なにより男の人と話す事なんて共学だった中学まででもそれほど得意ではなかったから。

 

 ドキドキしながらコール音が鳴り続けるのを聞いていると、割とすぐに出てくれた。

 

『もしもし、古雪だけど。ことり?』

「はい!ことりです。すみません、いまお話良いですか?」

『あ、あぁ。いいけど……もしかして今日の話?』

「そうなんです」

 

 声を聴く限り、いきなりのことりからの電話で戸惑っていたみたいだけど、どうやら要件の方は察してくれたみたいでした。電話越しにドアが開く音や足音が聞こえてくる。場所を変えてくれてるのかな?

 

『それで、どうしたの?』

「いや、今日はいきなり逃げちゃってごめんなさい……驚いちゃって」

『あぁ、そんな事?別にいいよ。お互いびっくりしたよね』

 

 笑いながら答えてくれた。

 よかった、失礼な子だとは思われてないみたい。よくお世話になってるのにあんなことになっちゃって申し訳ないです。

 

「それとあと、その……」

『なに?』

「お願いがあるんですけど、これからお会いできませんか?」

 

 そう、切り出した。

 お願い事というのは、今日私とメイド喫茶であったことを穂乃果ちゃん達に内緒にしていて欲しいといったもの。でも、それをなんの理由も話さずに電話で頼むっていうのはさすがに失礼すぎるかなって。

 海菜さんなら気にしないと思うけど、やっぱり私自身が納得できない。

 

 

『これからかー、出来れば遠慮したいかなぁ。悪いけど今、勉強してるし』

 

 やんわりと拒否されてしまった。

 海菜さんのその返答を聞いてことりの言葉が足りなかったことに気付く。

 たしかに、これじゃいきなり頼みごとをするよりも礼儀がなっていないよね。

 

「あ、もちろん。私が海菜さんのおうちに行きます!玄関先でも良いのでお話を聞いて頂ければ大丈夫です。お時間はとらせませんから」

『そっかー、だけど大変じゃない?俺、明日朝練見に行くつもりだし、その時でもいいんじゃないの?』

「すみません、それじゃダメなんです……。それに、海菜さんの家って穂乃果ちゃんの家からそんなに離れてなかったですよね?なら徒歩で行けますから!」

 

 あまり乗り気じゃない海菜さんに何とか食い下がる。

 すると、彼も何かを察したのか少しだけ真剣な声に変わった。

 

『……。なら穂むら近くの公園にしない?うち来て貰っても君も気使うでしょ。休憩がてら饅頭買って帰ることにするよ』

「すみません、ありがとうございます」

『いいよ!まぁ君と二人で話すこともあんまりないし、これを機に仲良くなろっか』

 

 きっと気を使ってくれているのだろう。そう言ってくれた。ことりも緊張してるけど、海菜さんからしてもそれほど絡みの無い後輩だもんね。穂乃果ちゃんは毎回人懐っこく自分からアクションをかけていけるし、海未ちゃんもいじりやすい性格をしてるからきっと私と違って先輩もやりやすいに違いない。

 今頃彼は電話の向こう側で困ったように笑っているんだと思います。

 

「それじゃ、これから30分後にお願いします」

『しゃーなしやで!じゃ、そゆことで』

 

 

***

 

 

「あ、海菜さん!こちらです。すみませんわざわざ」

「いえいえ、ことりのお願いなんて珍しいから別に……で、どうかしたの?」

 

 ゆっくりと歩いてきた海菜さんは、気にすんなと手を横に振りながら笑っていた。そして、早速本題に入る。先輩も忙しいらしく、それほど時間は取れないらしい。もちろん、ことりも長居して貰う必要がないよう簡潔にお話する予定です。

 

「一つ頼みごとがあるんです」

「頼み事?」

「はい、今日の事は穂乃果ちゃん達には内緒にしててもらえませんか?」

「あぁ……」

 

 少し予想外だったのか、海菜さんは考え込むそぶりを見せる。

 

「穂乃果たちは君がメイド喫茶でバイトしてること知らないのかー。なんか意外だね」

「そうですか?」

「うん。傍から見ててすごく仲が良いのも伝わってくるし、隠し事とかは無いものだと」

「あ、もちろん、いじわるとかで内緒にしてるわけじゃないですよ?」

「分かってるよ。ま、いろいろ君も考えることがあるんだろうね。恥ずかしながら全然わかんないけど」

 

 ことりが、どんなリアクションを取られるか不安でじぃっと見つめていると、海菜さんはあはは、と笑いながら頭を掻いた。そして二、三度コクコクっと頷いて再び口を開く。

 

「ことりがそういうなら秘密にしておくよ」

 

 良かったぁ。

 ことりはそっと胸を撫で下ろした。今はあんまりほかのμ’sメンバー。特に穂乃果ちゃんと海未ちゃんには知られたくない。

 

「でも……バレるのは時間の問題だと思うけどなぁ」

「そ、そうですか?」

「うん。事実俺にバレた訳だし」

 

 確かにその通りです。

 バイト先は一応みんなの活動圏内だし、特に花陽ちゃんとニコ先輩はよくあの場所付近のアイドルショップに通ってるらしいので、いつばれてもおかしくないですから。それでも……。

 

「でも、いまは……」

 

 私の思いを汲み取ったのか、それともただ単に考えるのをやめたのかは分からないが、海菜さんはあっけらかんとした様子で伸びをした。

 

「りょーかい!俺からは漏れないようにする」

「ありがとうごいます」

 

 良かった!……のかは分からないけれど、今はこれで。

 ことりは海菜さんに向けて手を振った。これ以上時間とらせてしまったら申し訳ないですよね。

 すると海菜さんは少しだけ考え込む様子を見せる。

 

「なんというか、その」

「はい?」

 

 なぜか言い辛そうに口ごもりながら切り出す。

 視線を泳がせてことりの様子を直視せずにチラチラと観察していた。一体どうしたんだろう。首を傾げて続く言葉を待った。

 

 

 

 

「ことり、前からそんなに自信ない性格だったっけ?」

 

 

 

 

 海菜さんが恐る恐る紡いだ言葉はことりの胸にまっすぐ突き刺さった。

 

 

「別に俺に対してそんなに気を遣わなくてもいいよ?なんなら穂乃果達みたいにガンガンきてくれても構わないし」

「……っ!」

 

 思わず息をのんで唇をかみしめる。

 穂乃果ちゃんみたいに……ですか。ことりには出来ないよぉ……。

 

 そんな私の様子を見た海菜さんは慌てて弁明を始めた。

 

「いや、深い意味はないんだよ!単純に、もっと遠慮なく絡んでくれていいよってこと!俺も君とせっかく友達になれたんだから仲良くしたいし!」

「……」

 

 うまく言葉が返せない。

 でも、決して海菜さんに対して腹を立ているから沈黙を守っている、という訳ではなかった。純粋に今ことりの中にある問題の核心を突かれたことに驚いただけ。

 どうして分かったのだろう……いや、違う。

 きっと海菜さんに気付かれてしまう程、今のことりは自信を無くしてしまってるんだね。

 

「ことりは……」

 

 かぁーと目頭が熱くなって視界が滲む。

 それを見た海菜さんは夕日に照らされているにもかかわらず視認できるくらい、顔を真っ青にしてわたわたと落ち着きなく視線をさまよわせた。

 それを見てより申し訳なさが募って、涙が零れ落ちてしまいました。別に海菜さんが悪い訳じゃないのに私のせいで……。

 

「こ、ことり!?落ち着けって!ごめんな?言いすぎた……かも」

「いえ、海菜さんの、せいじゃないです」

「いや……俺の悪いとこ、出た。結構遠慮なく言っちゃうことあるし」

 

 ぐしぐしと目をこすって涙を拭った。

 彼も思う所があるのか、深く反省した様子で申し訳なさそうに眉を下げている。

 

 やっと気持ちも落ち着いたのでぺこりとお辞儀。

 

「ごめんなさい、海菜さん。急に泣き出したりして」

「や、こっちこそ。……なんというか、悩み事があるならきくよ?穂乃果や海未には話せない事なんだろ?そりゃ、力になれるかは分からないけど……」

 

 本気で心配してくれているのだろう、真っ直ぐにことりの目をみつめてそう言ってくれました。相談してもいいのかな?もちろん聞いてもらいたい。でも、迷惑じゃないかな?

 

 そんな心の葛藤を今度こそ完璧に見透かされたようで、少しだけ怒った顔で海菜さんは腕を腰にあててじろりと軽くことりを睨んだ。

 

「あのね、たかが一時間やそこら後輩の為に使えないほど俺も余裕が無い訳じゃないよ。てか、そんな顔してる後輩放っておいて帰るなんて勉強以前に人としてカスじゃん。だから君がそんなに遠慮することはないって」

 

 俺ってそんなにアホそうかなぁ?そう呟いてため息一つ。

 

 ……じゃあ、少しだけお言葉に甘えさせて貰っても良いかな?

 

「……海菜さんは、どうしてことりが自信ないって思ったんですか?」

「そうだなー。なんとなく顔色をうかがう雰囲気が多くなったような気もしたし、妙に申し訳なさそうだったから。会った頃とは少し違う感じがしたのは確かだね」

 

 海菜さんと会ったのはμ’sの活動を始めて間もないころ。たしかに、あの頃は特に何も考えることなくほかの二人について行ってただけだったよね。今みたいに自分の力の無さを悲しく思うなんてことはなかった。

 

「でも、別にそれがダメだって事じゃないよ?」

「……」

「いや、慰めとかじゃなく。周りをちゃんと見ることが出来るのが君の良い所だと思うし。ただ、個人的に先輩だからって理由で遠慮されるのは寂しかっただけで」

 

 そういって恥ずかしそうに笑う。

 

 

 

「でも、ことりは……。周りを見ることしか出来ないんです」

 

 

 

 海菜さんのその優しい笑顔を見ていると、思わず本音が零れ落ちてしまいました。この人になら話したってきちんと真意を分かって貰える。なんとなく、そう感じます。

 

「……」

 

 彼の返答は沈黙。

 慰めや同情の言葉を吐くのではなく、ただ純粋にことりの真意を読み取ろうとするかのように黒曜石みたいに真っ黒で深い瞳でじっと見つめています。

 

「いつもいつも、穂乃果ちゃんや海未ちゃんのあとについていくばっかりなんです、ことりは」

「……確かに、自分からみんなを引っ張っていくタイプではないよね」

「はい。だからこそ、そんな自分を変えたくて……」

「バイトを始めたのか。ほかのメンバーには内緒で」

 

 新しいことに挑戦すれば何かが変わってくると思って始めたバイト。そこでの経験や、μ’sでの活動も相まってすこしずつ成長できている気はするものの、ことりの中にあった自信はなくなっていった。

 

「でも、いくら頑張っても穂乃果ちゃん達のようにはなれなくて……」

「そっか。それで少しずつ自信が無くなっちゃった訳だ?」

「そうです」

 

 ことりは少しだけ悲しくなって目を伏せました。

でも、それとは対照的に海菜さんはにこりと笑っています。

 

「いい関係だね、君たち3人は」

「いい関係?」

「うん。最高の仲間であり、同時に最大のライバル!って感じでしょ?いいじゃん、なんか燃えるよねその感じ」

 

 ぐっと拳を握り込んで見せながら海菜さんはそう言った。

 

「いえ、そんな!私は二人についていくのが精いっぱいで……」

「いやいや、ついていくだけじゃダメだと思ったから成長できる手段を自分で見つけたんだろ。それに、どうしてバイトの事を内緒にする必要があるんだって話!」

「それは……」

「二人に負けたくないって言う対抗心がそうさせたんだと、俺は思うよ」

 

 対抗心。

 そうなのかな?にわかには信じられない。

 だって、いつだってことりは穂乃果ちゃんや海未ちゃんの背中を追いかけて来たんだから。でも、海菜さんの使った『ライバル』という言葉は不思議と良く馴染んだ。

 

「まぁ、俺から言えることは一つだけかな。君が君自身の意思で何かを掴もうと頑張ってるなら、きっとなにか大切なものは見つかるよ。ほかは難しくても、そのことに関してだけは自信を持っていい。俺が保証する!」

 

 親指を立ててサムズアップ。

 その言葉にことりは少しだけ勇気づけられました。

 

「そうですね……。ありがとうございます海菜さん」

 

 もう一度ぺこりと一礼。

 海菜さんは笑って手を振ってくれる。これ以上の事は先輩も話すつもりはないようです。きっと、今彼がいろんな言葉を飲み込んで一つのことに意見を絞ったのはことりの為。

 

 

 後はもう少し、自分一人で考えなくちゃ……。

 ですよね、海菜さん?

 

 

***

 

 

 ことりと少しだけ真面目な話をしてしまった次の日。

 俺は彼女たちが練習をしている神社へ向けて歩いていた。さすがに初めから最後まで参加するのは面倒なので、途中ちらりと顔を出すことにしている。

 

 それにしても、彼女がああいう事を悩みとして持っていたなんてな。

 

 でも、あの感じなら心配ないと思う。

 一番ダメなのはただ単に落ち込んでじっとしてること。

 その点、彼女はなんとか自分に力をつけようと、必死に手さぐりではあるものの頑張っているみたいだ。だとしたら俺の口から言えることなんてほとんどないし、その権利もない。彼女に本当に意味のある台詞を届けることが出来るのはきっと、穂乃果や海未だけだ。

 

 いまは多分しんどい時期だと思う。

 自分自身の思いさえまだはっきりと理解できていない段階だろう。だからこそ出所が分からない不安や焦燥感に襲われて自信を無くしていく。

 でも、きっとことりなら大丈夫だ。

 

 もちろん言いたいことはあるよ?

 そもそもことりはことり。穂乃果のようになる必要もなければ、海未のような人間を目指す必要もない。それに、彼女は自分で思っている以上にμ’sのメンバーとして欠かせない役割を担ってると俺は感じてる。

 ま、でもそんなこと言ったって慰めの言葉にしか聞こえないから。

 そんなセリフを欲しがるほど彼女は弱い子じゃない。

 

 

 だから俺は頑張って応援しておこう!頑張れ、ことり!

 俺ごときには、それしか出来ないから。

 

 

 無責任にエールを送りながら石段を登りきると、九人が勢ぞろいして朝の練習を行っていた。

 

「海菜さん!おはようございます!」

「かいな先輩!おそいにゃー!」

「り、凜ちゃん。わざわざきてくださってるのに失礼だよぅ」

 

 俺の姿を確認するとすぐに駆け寄ってきてくれる、穂乃果と凜、花陽。

 でも、今日は少し珍しいメンバーも挨拶に来てくれた。

 

「海菜さん、おはようございます」

「よっ、ことり。おはよう」

 

 軽くアイコンタクト。

 ことりは、にこりと天使のような微笑みを残して自分のフォーメーション位置へと戻っていった。心配ないですよ、の事らしい。なら良かったよ。

 

「ことり、海菜さんと何かあったのですか?」

 

 海未がいつもと違うことりの様子に気が付いたのか、そう問いかけた。

 なぜか絵里と希も興味ありそうな表情でそちらを向いていた。

 

 

 ……あれ、なんか忘れているような。

 

 

 俺のその嫌な予感はすぐに当たることになる。

 

「昨日偶然町であったの」

「あぁ、なるほど」

 

 海未は納得したようにうなずく。

 絵里も希もこれまたなぜか安心したように持ち場にもどりかけた……その時。

 

 ことりが俺の方に振り向いて言った。

 

 

 

 

「そういえば、昨日一緒にいた女の人は……彼女さんですか?」

 

 

 

 あ、やべぇ。

 そういえば口止めするの忘れてたぁぁぁああああ!!!!!

 

 

 

 その場にいる全員。特に3年生組の表情が凍り付く。

 

 結論から言おう。

 誤解を解くのに軽く数十分かかりました。

 

 

 

 

 

 ひ、人の心配してる場合じゃなかったな……。

 

 

 

 

 

 




アニメ版とは少し解釈が違うかもしれません。
肩の力を抜いて楽しんでいって下さいね(笑)

ではまた、次の更新でお会いしましょう。
それでは、失礼いたします。

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