しかしその偶然は、本当に偶然なのか
それを知るのは、偶然でない偶然を仕組んだ者のみである
そしてそれは、時に世界を大きく動かすキッカケとなる
南極での一件の後、刹那には6日間の独房入りが課せられた。
ミデンとレイは、当然ソレスタルビーイングの側にいられるはずもなく、プトレマイオスから脱走した。
幸い機体も持ち出せ、戦闘力を持ったままでいられた。
「でもまぁ、GN粒子が尽きればそれでおしまいだけどね。」
「これも策略か…大した女だ。」
どうしたものかと考えていると、フュゼ戦のことを思い出した。
「確かジンクスっていう機体に、擬似太陽炉が積んであったはず。」
「それを奪いに行くか?」
「ううん…一つ当てがあるわ…でも、会えるかどうか…」
ミデンとレイは僅かな希望に賭けて、月へと向かった。
その頃、とある宙域で戦闘が行われていた。
新地球統合同盟の偵察部隊とジヴァイスの偵察部隊が偶然出会ったのだ。
そう、偶然。
「ったく! なんでこんな時に!!」
新地球統合同盟偵察部隊隊長の女MSパイロットが、ジヴァイスのギラ・ズール数機と交戦しながら愚痴をこぼしていた。
「ウィズ隊長! 敵の隊長機が現れました! データ照合…し、シナンジュです!!」
「フル・フロンタルか!!」
偵察部隊隊長ウィズ・ルッツは、愛機であるスタークジェガンをシナンジュへと向かわせた。
彼女の機体は、通常のスタークジェガンとは違っていた。
機体色は白を基調とし、強化装甲の部分を青、頭部には地球連邦軍には珍しいツノのようなブレードアンテナがある。
シナンジュもすぐにこちらに気付き、ビームサーベルを抜いた。
「はぁあっ!!」
互いに思い切りビームサーベルを振り下ろし、弾かれた流れでもう一発斬撃を繰り出す。
が、やはり鍔迫り合いになり、激しいスパークが発生した。
(!?)
頭を刺すような感覚が襲った直後、高出力のビームが2機を引き離した。
『遅いぞアンジェロ。』
『申し訳ありません大佐。』
ウィズのスタークジェガンは3連装ミサイル・ランチャーを全弾発射するが、シナンジュは滑らかな動きでくぐり抜け、援護に来たローゼン・ズールはシールドで凌いだ。
『隊長機は私が倒す。』
『了解、大佐!』
ローゼン・ズールは標的を変え、ジェガンをインコムで撃ち抜いていく。
「フロンタル!!」
スタークジェガンはビームライフルを連射し、シナンジュを迎え撃つ。
が、やはりこれも回避された。
ビームライフルを投げ付け、ビームサーベルで格闘戦を受けることにした。
シナンジュの方が格闘武装が豊富で、やはり少し押され気味になる。
「しょうがない…わね……!!」
ウィズは手元のキーボードで4文字アルファベットを入力した。
すると、コックピット内に機械の声が響いた。
=EXAMシステム、スタンバイ=
スタークジェガンのカメラアイが赤に変色した。
それと同時に、運動性や反応速度が飛躍的に向上し、シナンジュと互角に渡り合えるようになった。
「これでも互角…まぁそんなもんよね…!」
『動きが変わった…? これがあのEXAMとやらか!』
シナンジュが突き出したシールドないしビームアックスを手で受け止め投げ捨てた。
武装的にはこれで互角である。
「システム的にはこちらが上!!」
スタークジェガンの攻撃は、獲物に喰らい付く猛獣のように激しく、機体の限界を超えた動きをしている。
『驚いたぞ…!』
スタークジェガンの猛攻に対し、フロンタルは顔色一つ変えずに戦っていた。
その様子から見て、まだ余裕がありそうだ。
『だが、お遊びはここまでだ。』
突然、シナンジュの動きが速くなり今までの猛攻が嘘のように、スタークジェガンは押されていく。
数回の攻防の後、ついにスタークジェガンのビームサーベルが弾かれた。
「くそっ!!」
ウィズは兵士の中では若い方だが、若者にありがちな迷いや無謀な勢いがなく、口調とは裏腹に常に冷静である。
今回も、迷わずに後退し、部隊に撤退を指示した。
フロンタルはそれを見て感心した。
『あのパイロット…まだ若いが随分と戦場慣れしている。』
『どういたしましょう大佐。』
『放っておけ。我々の目的は、あの宙域に誰も近付けさせないことだ。』
フロンタル率いるジヴァイスの部隊も、戦闘を終了し引き上げた。
「……申し訳ありません閣下。自分では辿り着けそうにありません。」
ウィズは小型の腕時計型通信機で誰かと会話をしていた。
浮かび上がるヴァーチャルディスプレイには大きくSOUND ONLY と表示されている。
『ご苦労だった。私も、彼をそう簡単に突破できるとは思っていない。だが、君は十分な爪痕を残してくれた。』
「と、言いますと?」
『フロンタルや親衛隊隊長アンジェロ・ザウパーにとって、君は意識せざるを得ない存在となった。これで少しでも彼らの意識がそれてくれれば、付け入る隙ができる。』
「その時は閣下、全員で総攻撃ですか?」
『あぁ、すぐにとは考えにくいが、そう遠い話でもない。そのつもりでいてくれ給え。』
「了解。」
ヴァーチャルディスプレイが閉じ、ウィズの左腕にはデジタル時計が巻いてあるだけとなった。
その頃、地球から見て反対側の月面では、スタークグランシャリオとガンキャノンが宇宙を眺めていた。
ミデンの言う"当て"を探しているのだ。
「ここに来てから2時間か…ミデン、本当に奴らがここを通るのか?」
「保証は出来ないけど、ここが一番可能性が高いわ。」
「確かにこういう場所好きそうだが…」
しばらくそこで待機していると、頭上で閃光弾が起動した。
ミデンとレイが仕掛けておいたのだ。
仕組みとしては、張り巡らされたワイヤーに何かがぶつかると起動するようにしてある。
見上げるが、そこには閃光弾の消えそうな光があるだけである。
「かかった…!」
「本当に来やがった…」
ミデンとレイはそれぞれの機体を立ち上がらせ、跳び上がった。
重力が地球の1/6のため、推進剤をあまり使えわずに跳び上がることができた。
「はぁ…あいつら、流石だな。」
ワイヤートラップに引っかかった戦艦、バロノークのキャプテンチェアに座るキャプテン・アッシュがため息混じりに言った。
顔にはうっすらと笑みが伺え、こうなることが分かっていたかのような雰囲気をかもしだしている。
「拾ってやるか? アセム。」
「その名で呼ぶなと言ってるだろシーブック。」
「俺はキンケドゥだ。で、どうする?」
「当然、拾うさ。面白そうじゃないか。」
キンケドゥとのやりとりの後、アッシュはあるパイロットを呼び出した。
キャプテンチェアの左手元にヴァーチャルディスプレイが展開され、1人の少年の顔が映し出された。
「あの2人を案内しろ。君の機体の慣らしも兼ねてな。」
『了解ですキャプテン・アッシュ!』
通信してすぐに、MSデッキからガンダム1機とGエグゼス2機が発進した。
手には誘導灯を持ち、"見えざる傘"を展開中のバロノークのMSデッキへと導く。
「キャプテン・アッシュも私たちに気付いていたのかしら?」
「分からない。ただ、これだけ丁寧な誘導をするということは、敵対心はなさそうだな。」
MSデッキが開き、目の前の空間が口を開いた。
先行するガンダム、クロスボーンガンダムX3が「入れ」とハンドサインで示すが、2人はそれに応じなかった。
「機体を委ねるなんて危険な真似はしないわ。キャプテン・アッシュと映像通信を繋げてもらいたい。」
数秒後、モニターにブロンズヘアの男が現れた。
『また会ったな。しかも今回はアンタたちの方からときた。要件はなんだ?』
「僕たちはあるパーツを探している。海賊であるお前たちなら持っていると踏んでわざわざ会いにきた。」
『あいにく最近は不漁続きでお宝は少ないが…まぁその度胸を買って、協力することにする。』
「ありがとうございます。」
『で、何が欲しい? 物によっては渡せないかもしれないが。』
「擬似太陽炉…フュゼのアロウズのMSジンクスⅢが積んでる動力システムよ。確かスサノオとリボーンズガンダムも同じの積んでた気がするわ。」
アッシュは少し考え込み、隣のキンケドゥに話しかけた。
何やら小声で相談し、再びモニターに向かった。
『あぁ、あるぞ。しかもキッチリ2つな。もしよければバロノークの整備室を貸すが、どうだ?』
「……見返りに何をやらせる気かしら?」
『どうやら全く俺たちを信用してないようだな。お前たちには便利屋として俺たち海賊を使ってもらっても構わないと思ってるんだがな。』
「…そう。その言葉の真偽が何にせよ、バロノークの整備室、使わせてもらうわ。」
『了解。そこのX3とそのパイロットに誘導させる。トビア、分かったか!』
『任せといてくださいキャプテン!』
X3の誘導で、スタークグランシャリオとガンキャノンは整備室に格納された。
道具や施設をフル回転させて、今度もたった2人で作業を進めて行った。
(便利屋…か……)
(海賊の世話になるのは嫌だけど、正直そんなことも言ってられないか…)
「ミデン…ここを新たな拠点にするつもりか…?」
「えぇ…とりあえずは、仕方ないわ。」
どうも星々です!
なんかOOが沢山出てきたのでいい加減他にも手を出そうと思ったんですが、やはり擬似太陽炉は必要なようですw