願い、記憶、感情
彼女の人間たるものが蘇る
「嘘……嘘…でしょ…」
アタシが聞いたのは、間違いなくあの人の声だ。
でも、目の前にいるのは時空を歪め、世界を脅かす扉の鍵。
そんな物に乗ってるはずがない。
だけど、あれは…ガンダムだ。
「お姉…ちゃん…?」
「このパイロットがか!?」
普段は表情を変えないexも驚いていた。
やっぱり神様はアタシに優しくない。
『ヌクスィル?……ヌクスィルなの!?』
嘘だ…そんな酷い事…
敵、メテオリティスガンダムが近付いてきた。
アタシの脳波は乱れ、サイコミュが機能しない。
メテオリティスからの敵意が薄れ始めた。
「や、やめろ…そんな、これは…悪夢だ…」
メテオリティスから映像通信が入った。
コックピットには2人のパイロットがいて、その内のメインパイロットの方に見覚えがあった。
バイカルで戦った時は気付かなかったけど、この顔とこの声は、間違いない。
「これ以上ヌクスィルに近づかないでもらおうか。」
exが割り入り、メテオリティスを制した。
『やっぱり、ヌクスィル・アナズィなのね…!』
『アナズィ…!? ミデンの妹か!』
「正直私も驚いた。私たちが狙っている目標のパイロットであるお前が、彼女が大切にしている人だったとはな。」
やっぱりそうだ。
でも、オペレーション・メテオで降ろされたガンダムのパイロットは皆少年だった。
じゃあなんでお姉ちゃんがガンダムに…
しかも時空を開く扉の鍵に…
「まさか…AC-200のガンダム部隊の長が…!?」
『私よヌクスィル。ごめんね、こんな事になってしまって…』
あれ?
アタシ今AC-200って言った?
トレーズって195に戦死したはずじゃ…
時間軸ズレがあったとしても、アタシはトレーズの死という事実を経験している。
なのになんでトレーズ殺すなんて…
「……そうか…アタシ、踊らされてただけなんだ…」
『え…?』
お姉ちゃんとの再会で、アタシの記憶が掘り起こされたような気がした。
そして、この世界に来てからのことも、色々蘇って来た。
時は遡って、この世界に来たその日。
数ヶ月前になるであろうか。
アタシは南米の、後に"ネオ・ジャブロー"と呼ばれる新地球統合同盟の本拠地で目覚めた。
聞いた話では、宇宙から降りてきたホワイトベースという戦艦が、ここに来るまでの間にアタシを見つけ、拾ってくれたらしい。
周りの環境もなかなか快適で、身体の痛みも無い。
とは言うものの、状況が全くつかめてないアタシは、情報収集のために基地内を歩いて回っていた。
その一角で偶然耳にしてしまった話がある。
「例のホワイトベースが拾ってきた非検体の様子を聞きたい。」
「はっ。健康状態は問題なし、精神も安定しています。」
「そうか…では、本日中に記憶の調整もできそうだな。」
(……え?)
「はい。強化人間としては万全ですので、すぐにでも開始できます。」
この後、アタシはカプセルに入れられ、施設への輸送機に乗せられた。
この間にも、頭の中をかき回される感覚が続いた。
「な、なんだあれは…!?」
「が、ガンダムです! こちらへ来ます!」
「くっ…脱出だ! モルモット共は置いて行っても構わん!!」
全く酷い話だ。
助けられたとおもったら、何の説明もなくまた実験代にされて、挙句の果てにモルモット呼ばわりされて捨てられた。
そんなアタシを、この輸送機を襲ったexが助けてくれた。
それ以降、exの世話になり、MSも与えてくれた。
しかし、モルモットにされた時点でアタシの願いはすり替えられていたのだ。
アタシはただ、姉に会いたかっただけなのに。
それを、アタシをこの戦争で使う駒として都合良くするために、敵であるジヴァイスの権力者、トレーズ・クシュリナーダへの復讐心へと勝手に結びつけられていた。
そして現在に至る。
「会えた……」
「本来の自分を取り戻しつつあるのか…ヌクスィル。」
アタシの頬を、しばらく忘れていた感覚が走る。
目頭が熱くなり、顔が濡れていくのが分かる。
これって、涙…だよね。
「そっか…アタシ、泣けるんだ……」
自分で呟いたその一言が、さらに感情の復活を加速させた。
アタシはそのまま号泣した。
メテオリティスもイグニスも他のガンダムたちも、動かずにただアタシの泣き声を聴いているのだろう。
しばらくして、exが話しかけてきた。
アタシの感情の覚醒が影響してか、データの塊であるexにも、少し優しさの表情が見られた。
「お前の望む道を進むがいい。すり替えられた願いを取り戻したのなら、その願いに従うべきだ。」
「マスター…!」
「私はもはやお前のマスターではない。お前は自らの
「…はい。私は…私の今の願いは……姉と一緒にいたい!」
「そうか…ならば行け。お前はもうex-saの一員ではない。1人の少女だ。」
アタシは画面越しに敬礼をし、メテオリティスに飛びついた。
腹部のコックピットを開くと、それに応えるようにメテオリティスもコックピットを開いた。
「お姉ちゃん!!」
「ヌクスィル!!」
アタシは、コックピットから飛び出し、メテオリティスで腕を広げるお姉ちゃんに抱き付いた。
もう何年ぶりのことだろうか。
「さてと、迎えも来たようだし、私はもう行くとしよう。」
「ex!」
背中を向けるイグニスを引き止める。
「今までありがとうございます。そして…生きてください。それが、あなたに贈るアタシの願いです。」
exはなにも言わずに、そこから飛び去った。
だが、少し笑ったように見えた。
exサイド
「また来たか。」
『ex…俺はお前を倒す。お前が言う扉の先の絶望は、お前が"絶望"と形容している限り、絶望でありつづける。』
「お前ならそれを希望に変えられるというのか? 私が消えようとも、ヤツが目覚めれば希望など消え去る。」
『…………』
「貴様も知っているはずだ。ヤツの力を。」
『あぁ…だが、お前を生かしておくわけにはいかないんだよ‼︎』
exの前に立ちはだかった敵、エクストリームガンダム(typeレオス)は、光と共に姿を変えた。
『ファンネル進化! 未来を守ろう、アイオス・フェース!!』
「私の前に立ちはだかるのならば貴様に未来はない、レオス!!」
イグニスとアイオスの背中の翼が開き、多数のファンネルが射出された。
互いのファンネルが撃ち合いながら舞う。
「レオス、お前は何も分かっていない。私は扉が開かれることによって極限の絶望が訪れるという悲劇を阻止しようとしているのだ。」
『じゃあこの世界に取り込まれた人たちは、元の世界に戻れなくなってもいいって言うのか!』
「どの道同じことだ!」
『いいや違うね! ずっと閉じこもっていれば、希望どころか、可能性まで失ってしまう!』
「その可能性とやらから自ら目を背けているのは誰だ!」
『確かに、人々はこの世界で統合を果たそうとしている。だが、それも閉塞という恐怖から逃れるための手段なんじゃないのか? 間違っているのは確かだが、それでもこの世界から逃れたいと思ってるんだ!!』
「人類の代弁者にでもなったつもりかレオス。私もお前も、所詮はデータだ。人の感情などわかるものか!」
『俺は人間だ! 様々な世界で学習し、お前との戦いによって得たものが、俺の人間たる証なんだ‼︎』
イグニスとアイオスの戦いは激化していった。
ファンネルの数と火力はイグニスの方が上回っているため、やはり優勢ではある。
「そこまで言うのなら、もう一度私に示してみろ。貴様の言う希望を!‼︎」
『いいだろう! 極限の希望をくれてやる!‼︎』
どうも星々です
バイカルで一度戦った姉妹が、ここで互いを姉妹と認識しての再会となりました!
さて、ヌクスィルも仲間に加わり、ミデン、レイ、ヌクスィルはこの先どんな戦いをくぐり抜けていくか、乞うご期待!w