Fateを布教したい一般転生者藤丸立香の話   作:食卓の英雄

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日刊ランキング1位!?本題にも入ってないタイトル詐欺のパク……二番煎じ作品が!?
それだけ元ネタ様の人気があったってことですね。私も本家読みたいな〜。せや

拙作が人気になる→この作品の元ネタはどんな話なんだろう?→元ネタ様面白い!→体は闘争を求める→元ネタ様の人気が増す→元ネタ様の新作が出る。

完璧じゃないか……!


言峰のセリフってこう……背中にゾワゾワって期待と興奮が湧いてくるよね

 

 燃えに燃えた議論も終結したその翌日。ギルドから許可を貰った立香は皆が起き朝食を終えた程度。つまりは人の往来が盛んになった時間帯に狙って詠唱を唱える。

 

「【素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公―――」

 

 次の瞬間、バベルの側壁に巨大なモニターが現れた。

 

 当然人通りの多い道であり、ましてや目立つバベルだ。人々はその光景に戸惑いの声を上げていく。それは暇を持て余して散歩している神々も同様であった。

 

「な、なんだアレ!?」

「バベルになんか映ってるぞ!」

「神の鏡…!? いや、似てるけど違うな…」 

 

「…あれは、一体?」

 

「んー? なんや、あれ」

 

 どよめく状況の中、ギルド職員に詰め寄る者も現れるが、彼らは毅然として落ち着いた態度を変えずに対応する。とうとうその混乱がピークに達しようとした瞬間、デフォルメされた赤目の白兎がとてとてとやってきて杵で鐘を打ち鳴らして大火が生じる映像が浮かび上がる。

 

 

 そして、まだあどけなさの残る男の声と共に、数字が現れた。0から始まった数字はとてつもない速さでそのカウントを進め、2004の値で完全に停止する。

 

 

 

 

『かつてモンスターに脅かされていた時代を古代だとするのであれば、神々が降臨した後の時代を神話時代だと称する。それは神々の戯れであり、人類にとっても著しい成長の基礎となった。

 

 

 

 

―――しかし、いつの日にか神々は地上から姿を消した。かつての脅威は鳴りを潜め、正に人類の最盛期とも呼べる時代が訪れた。モンスターの脅威は辺境に追いやられ、人々の生活はより豊かに、より広大に発展していった』

 

 

 

 

 遠巻きに映される、摩天楼や人の営みの数々。人々は未知のそれに息を呑み、神々はその完成度に舌を巻く。魔石灯が並びたち、石畳の敷かれた公園が寂しくも佇み、またも場面は切り替わり広大な橋をくぐる。

 

 

 

 

『されど、神秘は失われた訳ではない。ごく限られた一部の勢力が神の恩恵に頼らない技術体系を身に着けた』

『それは魔術。存在すら秘匿された、魔法に似て異なるそれは世界に散らばっていた。そして、神の降臨から時を経て2000年余り。極東にて、とある大儀式が行われようとしていた』

 

 

 

 

 瞬間、場面は暗転して金色の杯が浮かぶ。

 この騒ぎに何事かと建物の中からも人が現れその光景を目にする。誰もがバベルを仰ぎ見、次の変化を見逃さないようにと注視する。変わって、低くハリのある声が続き、次々と男の声が切り替わっていく。

 

 

 

 

『聖杯とは、あらゆる願いを叶える願望機だ』

 

 

 

 

『過去の英雄を、サーヴァントとして召喚し、最後の一騎になるまで争う』

 

 

 

 

 光をまとう魔法陣は輝きを広げ、その上に形の異なる七つの駒が現れては、都度その数を減らしていく。

 

 

 

 

『そしてその勝者は、すべての願望を叶える権利が与えられる』

 

 

 

 

『あらゆる時代、あらゆる地域の英雄が現代に蘇り、覇を競い合う殺し合い』

 

 

 

 

『――それが聖杯戦争だ』

 

 

 

 

 ゾクリと、心臓に直接響くような声に思わず背筋を震わせ、言い表せぬ興奮がそれを捉えて離さない。

 

 

 場面はまたも移り変わる。

 どこかの建物。誰かの視点。砂塵舞う広場を見つめる。赤と青の影が砂埃を立てながら壮絶な死闘を繰り広げる。二刀使いは子供にしても小さすぎる槍兵の神速の突きを交差した双刃により受け止め、弾き飛ばし、一気呵成と裂帛の一息で踏み込み首を狩るが、跳ね上げられた勢いをそのまま地面に槍を突き立てその上で体を支える。落下を見誤った赤の戦士は咄嗟に片刃で強烈な薙を受け、背後へ飛ばされる。

 超高度な戦闘を経て尚、互いに無傷。態勢を戻した槍兵は腰だめに低く朱槍を構え異様な空気を醸し出した。場は緊迫し、相対する赤の男が警戒に入った瞬間。

 この視点の持ち主が、パキリと音を立てて枝を踏み割る。その人物の息が荒くなり、駆け出すと同時に、片割れの影が駆け出す。

 

 

 走る。走る。はあはあと息をつき、喉を枯らしながら何かの施設の中を走り回る。躍動感溢れる全力の逃走。

 

 あまりに緊迫した状況から、知れず誰かが息を呑む。

 

 角を曲がり、道を変え、なんとか振り切ろうと次の一角を超えた先に、目の前に男が現れた。いつの間に追いついたのか、待っていた様な余裕を見せる青い髪の小人族は、手に握る朱槍を無造作に突き出した。

 

『運が無かったな坊主。ま、見られたからには死んでくれや』

 

 視線が下がり、己の胸に深々と突き刺さる槍。崩れ落ちる視界。閉じかけの瞳は、立ち去る男の姿を捉え、暗転していった。

 

 完全に閉じた瞳。暗転した画面。思わずどうなったのかと声を失う中、闇夜に赤く美しい不可思議な紋様が浮かび上がり、その上から不思議な書体の文字が綴られる。

 

 

 

 

――Fate/staynight

 

 

 

 

『問おう、あなたが私の―――マスターか』

 

 

 

 

――それは、信念を貫く物語。

 

 

 

 

『来週月曜17:00から毎日一挙3話放送――【※この物語はフィクションです】

 

 ―――沈黙。

 普段は煩いほどの喧騒に覆われている中央通りはいっそ不気味なほどの静寂に包み込まれていた。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!???」」」」

 

 雷声。

 喉が張り裂けんばかりの大絶叫を張り上げる聴衆達。その筆頭には暇を持て余した神々が興奮した面持ちで参加していた。

 一番大きな声を上げるのは神々だが、下界の民も負けてはいない。年齢、性別、種族を問わず、この未知の物語に、その心の深くからこみ上げる思いを乗せた。

 

「何だ今のは!? 放送って、物語としてあれをやるのかよ!?」

「いや、動く絵もヤバいって! 上級冒険者だってあんな動きは出来ねぇぞ!?なんでそんなのを書けるんだよ!」

「英雄って聞いたか!」

小人族(パルゥム)だったよな、 そんなのいたか?」

「分からん! オリジナルかもしれんが…それでも絶対これ面白いって!」

「設定も斬新だぞ! 俺たちが退去した未来で、過去の英雄と戦うって…!? 今まで考えもしなかったぞオイ!」

「フェイトなんちゃら…いつやるって言ってた!? 興奮しすぎて見てなかったぁ! 誰か教えてくれぇー!」

「バッカお前、月曜の5時からだ!」

「サンキュー! その日絶対空けるわ。元々予定ないけど」

 

 手当り次第、近くの者と語り合う神々の喧騒は止まず、熱気は人々の目を輝かせる。未知が、英雄が、物語が好きなのは神に限った話ではない。

 

「おお…! あんな話聞いたこともない!」

「俺、絶対観るぞ!」

「クソオオォォォ――! 俺その時間仕事だあぁっ!?」

「マジで鳥肌が立ってきた…!」

「ゾクゾクするよな」

「あれを創ったのは一体どこの誰なんだ…!? 神が創ったんじゃないよな…!?」

「一挙3話って、何で3話なんだ…?」

 

「あれは…、すごいですね」

「やっぱりリューも気になる!? 私見に行っちゃおうかな…?」

「いえ、気にならないと言えば嘘にはなりますが…その時間は店の仕事があるので、ミア母さんに叱られてしまう」

「もう! リューは固いんだから〜! ちょっと見てサッと帰れば仕事も間に合うって!」

「で、ですが…」

 

「おぉ〜っ!? みんなおらんから暇しとったけど、アレは期待出来そうやな。おもろかったら他の子も誘うかぁ」

 

「小人族で…英雄…? そんなものが、一体何になると言うのですか。 物語の英雄を見て舞い上がるなんて、さぞや随分と幸せな人生を送って来たのでしょうね…」

 

 それぞれの感動、それぞれの思いが渦巻き、オラリオの興味は今一心に注がれたのだった。

 

 

 そして、バベルの中からその反応を見守る影が二つ。

 立香とアーディだ。アーディは人目があるから全身をローブで深く覆い隠し、湧き立つ聴衆の興奮もあって正体がバレることもないだろう。

 俺の魔法で文明レベルや街並み、世界設定などのフレーバーをこの世界に馴染ませることが出来た。例えば電化製品を魔石製品に変えたり、種族を増やしたり、果てにはそもそもの英雄の姿を差し替えたり、などと色々と融通が効いたことにより、未来の姿としての違和感を少なくすることが出来た。

 そして、俺が流す予定なのはセイバールートだ。あのストーリーをそのままこちらに落とし込み、UBWやHFクラスの作画で流すことが可能だ。やはり王道を最初に持ってきた方が分かりやすいだろうとの考えだ。

 

「あ〜…緊張した…っていうかまだしてる」

「そう? いつも通りに見えるんだけど…」

「いやいや心臓バクバクしてるよ。どんだけ面白いって思っても他の人の評価は分からないからさ…」

 

 実際、このpvの時点で酷評なら相当心に来ただろう。まだ本編ですらないのにこれでは心臓がいくつあっても足りない。足りないのは蛮神の心臓だけで十分だ。

 

「でも今のところ好評そうだね。…っていうかすごい活気。本当に暗黒期は終わったんだ…」

「………。えっと、好評なのはいいんだけど…」

 

 ちらりと、外を覗いて狂乱の域に差し掛かっている神々を視界に捉える。

 

「あれだけ盛り上がってると逆に不安になってくるよ…」

 

 これには同感なのか顔を見合わせて苦笑い。荷が重い…。

 

「あ、ところでさ、聞きたかったことがあるんたけど。なんで3話ずつなの? 初めてのアニメ?なんだから普通に1話ずつとかでいいんじゃないの?」

「ああ、うん。初めてのアニメだから3話にしたんだよ。これはいっちゃなんだけど結構時間がかかるんだよ。最初予定してた一週間に1話っていうのでも良かったんだけど、アニメはこれしかないのに待つのは難しいでしょ? それでもって人は少なからずいるだろうけど、あれだけ興奮してる中でちまちまやってたら熱が冷めちゃうかも……。っていうのは建前でー!」

「建前言っちゃうんだ」

「実際は、利益も大切だけどこの作品を知ってほしいってのが一番かな。当然、この話だけじゃなくてFateシリーズはまだまだあるから、その下地作りも兼ねてるけどね」

 

 そう、具体的にはzeroやUBWなどだ。セイバールートは王道とはいえ、今はネットで知れ渡ったアーチャーの真名や、第四次聖杯戦争のことなど。作中では言及されない謎も残る。

 だから、無料公開するセイバールート視聴後の彼らに有料でそれらの購入を進める。そうすれば、利益も十分に見込めるはずだ。……大丈夫だよね?

 

「さて、取り敢えず朝の分は終わったし、どうしようかな…。見逃した人のためのカセットは実際の放送後にまた様子を見てって話だったからね」

 

 先日魔石製品関係のファミリアに出向いたときに作中に映っていたテレビに主神が食いついたのだ。テレビとしては放送する局がなければ意味はないが、映像を流す媒体としては使える。

 よって、見逃した人やもう一度見たい人が買えるように投射機を作ってもらっている。

 その条件として、投影機の権利や利益全てを明け渡す代わりに、それに対応したカセットの製作をタダでやってもらうことを契約した。

 つまり後はカセットに映像を吹き込めば、何処でも…は無理だけど個人で見直すことや他作品を見ることだってできるのだ。(因みにカセットの方の売上取り分は7:3で俺たちが7だ)音圧や画面のサイズなんかは本物と比べると見劣りするが、それでもという人は後をたたないことだろう。

 

「でも一つ問題があってね……」

「問題…?」

 

 そう、致命的な問題が残っているのだ。これを解決できなければ、放送する以前の話だ。

 憂いを瞳にため、こちらを見つめるアーディに対して俺は喉から声を絞り出す。

 

お金(ヴァリス)がっ……ありませんっ!」

「あぁ……」

 

 今のままではお金が足りないのだ。

 昨日班長と話したレンタル料金なのだが、一時間あたり5万ヴァリス必要なのだ。これに俺はヒュッ…と声を失ったし、ベル達も恐れおののいていた。何せ、こちとら一日の収入か2000と少しだったのだ。そこから生活費を抜き、ベルの装備の借金の返済も含めれば、後に残るのは雀の涙ほど。今から全力で貯めたところで、あと5日では一万にも満たないだろう。

 放送さえしてしまえば後の商品なんかで元は取れるのだろうが、そもそも放送するためにも金が必要だ。

 さらに、初日だけ放送できればいいという問題ではない。初回を見たものはその印象は刻まれるであろうし、今すぐに投影機を買おうという発想にはならないだろう。これは見ていない人も同じことで、見ていないのだから面白さが分からない。そのために少なくない金を使うのは憚られる。ということだ。

 

 故に大きなリターンが来るのは時間が経つのが必至であり、そこに至るまでに金が必要なのだ。一応権利を買うこともできたが、それにはやはり大金が必要で、現時点では無名で零細ファミリアな俺たちでは手が届かないものだった。

 

「俺もバイトとかしようかな…。実入りのいいやつ」

「ダンジョン行けばいいんじゃない?」

 

 苦い顔で呟くと、アーディはなんの躊躇いもなく言ってくるが、それは難しい。

 

「いや、ベルと俺二人合わせても1日の稼ぎはあんまりいかないと思う。それに、進行確認とか製作とかあるからあんまり長い時間は潜れないし、危険を冒してもっと下に潜ったところで成り立てのLv.1二人なんてあっさり死ぬのが関の山じゃないかな…?」

 

 そう現実は上手くないのだよ。俺の1個下の少女に諭せば、アーディは自らを指した。

 

「だから、私私」

「ん?」

「私を見てってば」

 

 指を指せば、彼女が自らの装備をローブの隙間からちらちらと覗かせている。……なんか所作が誤解されかねないな。

 

「……可愛いね?」

「なんで疑問形? ってそうじゃなくて、私、これでもLv.3なんだよ?」

「あっ…!」

「そう、中層までなら君を庇いながらでも安全に戦えるだけの力は持ってるんだよ」

 

 ふふんとそれなりに豊満な胸を張り、危うくフードが脱げかける。しかし俺の目にはアーディが救世主のように見えた。多分後光とか差してるタイプのやつ。

 

「私は立香のお陰でここにいるんだから、このくらい返させてよ」

「本当にありがとう…!」

 

 固く手を握り、ぶんぶんと振る。俺の大げさな反応に恥ずかしそうにはにかみ、早速と装備を整え迷宮へ向かうのであった。

 




おまけ

(そういえば死んでるアーディは恩恵はどうなってるんだ…? 確か主神には授けた恩恵持ちの生死が分かるんだったよね…?)
「アーディ」
「ん、何? 必要なもの纏めようか?」
「(恩恵の有無とかどのくらい機能してるかはわからないしなぁ…。概念礼装も試してみたいし……)ちょっと脱いでくれる?」
「脱っ………!?」

「………あっ」

※使えました

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