字を詰めこみすぎると真面目な読み物ならいいけどこういう反応モノには臨場感が欠けるかなと思った。などと供述しており……
あと、アンケートはやっちゃえバーサーカーが最も多かったので原作ママです。
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魔石で動く時計の長針が頂点を指す。時刻は5時。昨日に引き続き広場には大勢の人々が集まっている。唯一昨日と違う点といえば、最も見やすい地点にいくつもの席が設けられ、そこでは多少の喧しさこそあれど秩序はとれていた。
昨日の場所取り合戦による反省から完全予約制で有料の優先席を作り、無用な争いを減らした。観ること自体は無料だが、良い席、良い環境で観ることが出来るこの優先席は直ぐに埋まったのだった。
最早恒例の白ウサギの寸劇を終え、場面は夜の冬木。二人と二騎の前に現れた雪の精の様な童女と武人然とした佇まいを見せる大男。
『やっちゃえ、バーサーカー!』
彼女の指示によりバーサーカーがその猛威を振るう。セイバーも善戦するが、ランサーとの戦いの傷が癒えていない彼女は劣勢に立たされていた。その圧倒的な膂力の前に構えた剣ごと弾かれ、如何なるカラクリか全力で叩きつけた攻撃が効果を及ぼさない。そして優位に立つバーサーカーのマスター、イリヤからその真名が明かされる。
「ヘラクレス……だと…!?」
「あの、恩恵貰ってないくせに死後に神の座まで辿り着いたあいつか!?」
「確かあいつの前例があるから俺たちの恩恵って神に近づくとか言われてるんだっけ」
「オイオイ勝てるわけないだろそんなの。俺ですら無理だぞ」
「お前酪農の神だろ」
今の下界の民たちに馴染みはないが、その名は神たちにとってよく知られている。そして、失伝した地域が多いとはいえこのオラリオにおいてもヘラクレスの記述自体は伝わっていた。
「神になった人間だって…!?」
「それ本当なのかよ」
「いやでもあの興奮の感じだしよ…」
半信半疑ながらも一先ずは飲み込み、物語は新たな展開を迎える。
辛うじて打ち合っていたセイバーがとうとう膝を突き、バーサーカーの強烈な一撃がその身体を捉える。
「脇腹が…」
「あれは痛い…!力で負けてる相手にこの傷は駄目だろ…」
「内臓が零れ落ちないのが不思議なほどの欠損…。立って戦闘することは自殺行為です」
最早セイバーにこの状況を打開できる力はない。故に、士郎が走った。
『がっ…あぁ…!』
「士郎ーっ!?」
「マスターが死んだら終わりだって聞いてただろ!?」
「あの傷じゃあ高レベルの恩恵があっても厳しいだろ…」
その愚かな行動にイリヤは興味を失い、バーサーカーを連れて道を引き返していった。士郎は赤くなる視界の中、ノイズ混じりの美麗な鞘を想起して場面は暗転した。
「え、死んだ?」
「短期間で致命傷負いすぎだろ…」
時は戻り、幼い士郎と生前の切嗣が月の出る世に語らい合っている。切嗣はかつての夢を語る。諦観したように語る切嗣に士郎は応えた。
『任せろって、爺さんの夢は、俺がちゃんと形にしてやるから』
『ああ、安心した』
そうやって、眠るように切嗣は息を引き取った。
結局、エミヤ・士郎は次の朝に自宅の布団の上で目を覚ました。包帯まみれではあるが、深々と刻まれたはずの斬撃のあとは無い。
「士郎ー!」
「生きとったんかワレ!」
「勝手に治ってったのか?」
「何それ怖…」
理由は不明だが無事生き残った士郎は凛からは共闘の申し出を受ける。未熟なマスターだが悪辣ではない士郎と深い傷を負うも優秀なセイバー。そして凛のアーチャーも傷を負っているこの状況では、あのバーサーカーが襲ってきた際に抵抗できない。よって、双方に利のある同盟を結んだのだ。
凛によるサーヴァントや宝具に関しての詳しい説明を聞き、念には念を重ねて同じ拠点に滞在―――つまりはこの屋敷に住むことになった。次いで、道場に佇んでいたセイバーとも話をつけて最初の話は終了した。EDに耳を傾ける間にも、考察の声は止む様子を見せない。
「にしてもヘラクレスか…どうやって勝つんだ…?」
「バーサーカーは自滅するとか言った奴誰だよ」
「というかアーチャーとセイバーの名前はまだ出てこないんだな」
「あのときセイバーがアーチャーに深手さえ負わせなければ共闘して撃退も出来ただろうに…」
「宝具…か。無難だけどこう、舌に馴染むいい名称だな」
「あれか、英雄の持ってる代表的な武具ってことか」
「じゃあもしエピメテウス辺りが出てくれば
次の話が始まる頃にはその考察の声も小さくなっていった。
前回から続き、セイバーは家で待機してもらうよう説得し、エミヤ・士郎の学校生活は平穏に終わった。
その後、家に後輩と姉代わりの存在が訪れ、夕飯時に二人を引き合わせる。セイバーはアーチャーのように霊体になることは出来ないらしく、何とか誤魔化しながらもカバーストーリーを説明した。するとどういう訳かセイバーと姉代わりの人物の剣の勝負となった。
「剣道5段って何?」
「タケなら知ってるんじゃね?」
「アイツ今ジャガ丸くんのバイトだぞ」
「ぷっ、ド貧乏ファミリアの主神は違いますねぇ」
「……今、馬鹿にされた気がするぞ」
当然勝負はセイバーの圧勝。捨て台詞を吐きながら退散する虎の様子に苦笑しながら、次の日を迎えた。
セイバーに留守を任せ、士郎と凛と桜は学校へ出発した。
正門を超えたあたりで凛はこの学校に結界が張られていることを告げる。
なんでも厄介らしく、発動すればこの学校をまるごと覆いつくし、血肉を溶かすものだという。
放課後、そのことに関して話し合おうとする二人の耳に女子生徒の悲鳴が届く。駆け寄る凛の顔、つまりは明確な殺意のこもった攻撃を士郎が突き飛ばして身代わりになる。
「何だ…!?杭…?」
「また重傷負ってるのに動く…。こいつ本当に今まで戦闘と無縁なのかよ」
単身敵を引き付けた士郎は枯れた林に身を構え、挑発を投げかける。現れたのは、紫の長髪を靡かせる美しい女性のサーヴァント。
『あなたは、優しく殺してあげます』
「エッッ」
「ボディコンに目隠し…。製作者わかってるな」
5人目のサーヴァントが消したかに見えた杭は士郎に突き刺さったまま。木々に絡め取られた鎖を引かれて士郎は宙に持ち上げられる。
間一髪、凛の手助けにより窮地を脱するが、結局サーヴァントのクラスすら判明しないままに逃げられたのだった。
楽しい時間は早く過ぎ、もう最後の話の終わりの歌が流れ始める。
「ああ!もう終わりなのか…。クソッ、時間が経つの早えな…」
「あのお姉さんなら生気を吸い取られてもいいかも…」
「士郎ケガしすぎ問題」
「着々とサーヴァントが揃い始めてきたな…」
「また新しい情報が来たな」
「あの姉ちゃんの真名を考えるか」
「メイン人物なのに誰にも名前知られてないセイバーw」
「エッチなお姉さんは好きかぁー!?」
「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
「ヘルメス様、一体何をやっているんですか…。……それにしても、消える武器の活用法は素晴らしかったですね」
こうして、二日目の放送も好評に終わった。
◆
そして、更に翌日。
【ガネーシャ・ファミリア】はこの人員整理にも慣れ始め、集まる人をターゲットとした軽食の屋台が風に乗せて腹の空く匂いを流していた。
やはり画面がつくと同時に清聴するかれらの姿は、それだけこの作品に向ける情熱を伝えている。
襲撃の件で警戒する士郎たちだが、結界はあと2、3日で発動してしまうらしい。よって、いくつも存在するという結界の基点を探して破壊するために分担して作業をする士郎の前に桜の兄、マトウ・慎二が現れる。
何と自らを昨日のサーヴァントであるライダーのマスターだと名乗った彼は、学校を抜け出して士郎を家へ招く。
「えっ、無用心だろ」
「なるほど…魔術師じゃないからセイバーがいないのがわからないのか」
「じゃあライダーは何で言わないんだ?」
明かされたのは慎二の言い分。彼自身の境遇や間桐の家による知識。柳洞寺にサーヴァントがいるであろうことや、トオサカ・凛が察知したのは別のマスターであり、自分の結界も保険と牽制であることを説明した。
「じゃあ桜ちゃんは無関係か。よかったよかった」
「狭い学校にマスター集まりすぎじゃないか?」
「えーと、セイバーが士郎、アーチャーはトオサカ。ライダーが慎二でバーサーカーはイリヤたん。そして寺にいるのが魔女ならキャスターだろ…?じゃあ学校にいるのは……分かった。きっとランサーのマスターだ」
もとからの友人ということもあり、巻き込まれた者同士同盟を結ばないかと申し出る。
しかし士郎はそれを凛の名前を出して先送りにする。明らかに苛立っているのが分かる物言いの慎二は、けれど手を出すことはなく士郎を見送った。
「怒られてらぁ」
「正論ワロタ」
「やっぱり王道な感じだな士郎は」
その情報から、セイバーは柳洞寺に討ってでようと言うが、士郎はそれを拒否。二人に険悪な空気が流れ始める。
「これは士郎が言ってる方が正しいか」
「相手がサーヴァントなら罠もやばいだろうしな」
「無謀な特攻はだめって、お前が言うか」
夜。士郎が寝たあとにセイバーは単身屋敷を抜け出して柳洞寺へ向かっていた。柳洞寺に戦力の低下なく行ける唯一の道。そこを進もうとするセイバーの前に、新たなサーヴァントが立ち塞がる。
「こいつは極東っぽいぞ」
「サムライだな」
「あれ、でも極東のは召喚されないんじゃなかったのか?」
「どうなってるんだ」
「むむ、あの長大な刀…。もしや名はあのササキ・小次郎では?」
次の話に移り、サーヴァントアサシンは自ら名乗りを上げる。
「名前バレすると不利になるからって誰も名乗らないのに名乗るとかカッコいいかよ…」
「アサシンなのにめっちゃ正々堂々くるじゃん」
「おお、やはりササキ・小次郎でしたか! ……何故アサシン?」
名のりを返そうとするセイバーを制し、互いに得物をぶつけ合う。恐ろしいことに、アサシンはセイバーの攻撃を悉く受け止め、挙げ句にその長さを読み当てた。
「嘘だろ、ちょっと戦っただけで見破りやがった」
「暗殺者なのに剣士以上の剣技ってやばくね?」
「っていうか、柳洞寺には魔女って言ってたから、もしかして同じようにマスター同士が協力してるんじゃないのか?」
考察が入るもその戦いは苛烈さを極め、階段の中腹にてアサシンは構えた。
『秘剣――燕返し!』
「「「うおおおおぉぉぉぉ!??」」」
「何だ今のは! 同時に出てたぞ!」
「催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」
「え、今ので不完全だって?」
「キシュア・ゼルレッチ?」
「何それ。説明はよ」
「今の宝具じゃないのか…」
アサシンは今度こそ完全な『燕返し』を披露しようとし、セイバーは迎え撃つために己の宝具を開放しようと暴風を発生させる。
「とうとうセイバーの宝具が分かるぞ…!」
「女騎士で有名な剣使い…。うーん、誰だ?」
変わって士郎の視点。セイバーが抜け出したことに気がついた士郎は凜を起こさずに無事柳洞寺の麓に辿り着く。が、林の奥から短剣が飛び込み間一髪で回避する。
姿を表さない闖入者に士郎が歯噛みする中、アサシンがその構えを解いた。それは二騎の偵察に来たライダーの存在に気がついたからであり、また同様に背後に迫る士郎の姿を視界に収めたからでもあった。
山門の門番として立ちはだかるという宣言をしたアサシンの言葉を最後に、戦いは終了した。
士郎が声をかけると、ふらりとセイバーが倒れ伏す。身に纏う鎧も霧散し、声に反応する様子もない。力尽きてしまったらしく、士郎はひいこらと担いで帰るのであった。
「結局勝負はお預けか…」
「セイバーが勝ってた戦いってアーチャーに不意打ちした時だけじゃん」
「もしかしてそこまで強力な英霊じゃないとか?」
「いや、たぶん士郎が未熟だからじゃないか?」
何とか家に帰りつくも、そこには凜がいっそ清々しいほどの笑顔で待ち構えていた…。
「ひえっ…」
「ああいう笑顔が一番怖いんだよな…」
紆余曲折、セイバーと士郎の言い争いを凛が仲裁したりして…セイバーが士郎を鍛えることで話はついた。エンディングテーマが流れた瞬間に、皆が大きな息を吐く。よほど見入っていたらしい。
「今日もいい話だった……」
「クラス詐欺アサシンは強かったですね」
「結局キシュアなんとかって何なんだよ」
「ライダーのほうがアサシンしてたな」
「今日ので俺は小次郎推しになった。あれはカッコ良すぎるわ」
「俺は王道女騎士なセイバーかな」
「俺はツインテ好きだからトオサカ」
「巨乳後輩の桜ちゃんと同じく巨乳で色気のあるのライダーで。あれに囲まれてるワカメは死ねばいいと思う」
「ウチは…やっぱイリヤたんやな。ドSなところもええわ」
「(胸を見る)あっ…」
「おい今ウチの何処見て反応した? 喧嘩売っとんのかワレ」
そして他ファミリアのCMが入り視線もバラバラになった辺りで、投射機とカセットのコマーシャルが流れ出す。
「な、なんだってー!」
「10000ヴァリス…高いがこれは買うしかねぇ!」
「いつ発売するんだ!」
「何回でも見れるなら買うぞ俺は!」
「眷属と相談する必要がある………か…!」
「おー、あんくらいなら買ってもええな。アイズたんと一緒におうちで鑑賞デートや!ぐふふふふ…」
「俺が!ガネーシャだ!」
◆
「燕返し…理屈は分かりませんが目指すべき剣技はあの域です!そのためにも鍛錬あるのみ!」
「命がんばってるなぁ」
「おーい、今帰ったぞー。あれのお陰でジャガ丸くんの売れ行きが良くてなー」
◆
「「…………」」
「…流石にこれをあんな目につく場所で流すわけにはいかないな……ベルとヘスティア様がいないときで良かった…」
「あの、魔力供給とか、経路を強くするって。……ああいうのが必要なの…? 私なら、別に、大丈夫、だよ……?」
「いやいやいや違うから!あれは士郎が間違った学び方してたせいでややこしくなっちゃってただけだから!信じて!?」
書いてみた。読みたいならあげる。
評価?したいならすればいいわ。私は気にしないから。でも、そうね…お気に入り四千五百件越えは素直に嬉しい。ありがとう。
元ネタ様がツンデレだからクーデレ風にしてみた